業績不振で回復の見込みがない、後継者がいないなど事業の継続が困難な場合、法人の解散、清算を検討する企業もいるのではないでしょうか。
法人の解散から清算までの流れは、手続きが複雑ですが、正しい知識があれば確実に進めることが可能です。
本記事では、法人解散から清算までの流れを11のステップに分けてわかりやすく解説します。また、法人解散から清算までに注意すべきポイントや必要な期間、費用なども紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
法人の解散とは
法人の解散とは、会社が通常の事業活動を停止し、清算手続きに入ることを意味します。ただし、解散したからといって会社の法人格がすぐに消滅するわけではありません。
解散後も会社は、清算会社として清算の目的の範囲内でのみ存続します。
たとえば、解散登記から清算結了登記までの間も、債権の回収や債務の弁済といった清算業務をおこなうために法人格は存続しています。
法人の解散を検討する際は、解散したらすぐに会社がなくなるというわけではありません。解散はあくまで事業活動の終了を意味し、その後は法人格を消滅させるために清算という一連の手続きが必要になります。
解散は終わりではなく、清算という次のステージへの移行点と捉えることが重要です。
法人解散後の清算とは?
法人が解散しても法人格は残ります。解散後、法人格を完全に消滅させるためには、解散後の清算が必要です。
清算とは、解散した会社の法律関係を整理し、債権者への公平な弁済と株主への残余財産分配を実現するための法的に重要なプロセスです。
清算の主な目的は、会社の財産を現金化し、債権者に対して公平に弁済をおこなうことを指します。清算は単なる事務処理ではなく、会社の終焉における社会的かつ法的責任を果たすための制度として位置づけられています。
清算手続きを経ずに会社を放置すると、債権者の権利が侵害されるだけでなく、将来的に取締役や株主に対して予期せぬ問題が発生するかもしれません。
なお、清算には以下2つの種類があり、それぞれの特徴は以下のとおりです。
| 清算の種類 | 内容 |
|---|---|
| 通常清算 | ・会社が支払能力を有している場合におこなわれる ・原則裁判所の監督は受けない |
| 特別清算 | ・債務超過の疑いがある場合におこなわれる ・清算の遂行に著しい支障がある場合に、裁判所の監督のもとでおこなわれる |
法人解散から清算までの流れ
実際に法人解散から清算までの流れは、以下の順です。
- 株主総会で解散を決議する
- 清算人を選任し法務局で登記する
- 関係機関に対し解散を届け出る
- 財産目録および貸借対照表を作成する
- 債権者に対して公告・催告を実施する
- 解散時の確定申告をおこなう
- 残余財産を確定し株主等へ分配する
- 清算に関する確定申告を提出する
- 清算手続きの完了報告を承認してもらう
- 清算結了の登記をおこなう
- 関係官庁へ清算結了を届け出る
それぞれ具体的な内容を確認しましょう。
1. 株主総会で解散を決議する
会社を解散するには、まず株主総会の特別決議によって、解散を決議する必要があります。特別決議とは、議決権を行使できる株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要な重要決議です。
株主総会では、解散する旨や解散事由、解散の年月日などを明確に議事録に記載します。
解散事由としては、株主総会の決議が一般的ですが、定款で定めた存続期間の満了や事由の発生、合併による消滅や破産手続開始の決定なども会社法で定められています。
会社の解散は単なる事業活動の停止ではなく、その後の清算手続きへとつながる重要な法的手続きの第一歩です。
解散を決議する際は、株主間で十分な合意形成を図り、特別決議の成立要件を満たすよう事前準備を整えておくことが大切です。
2. 清算人を選任し法務局で登記する
解散を決議した後は、清算人を選任し、解散の日から2週間以内に法務局で解散登記と清算人選任登記をおこないます。
清算人は、解散した会社の財産管理や債権の整理、残余財産の分配など、清算事務全般を執行する重要な役割です。
清算人の選任方法には、定款による定め、株主総会での選任、法定清算人の3つがあります。一般的には、解散前の代表取締役がそのまま清算人に就任します。
解散登記の申請には、解散および清算人選任を決議した株主総会議事録や定款、清算人の就任承諾書や清算人の印鑑証明書、株主リストなどが必要です。
登記完了後に発行される登記事項証明書は、税務署や社会保険事務所など各種関係機関への届出に必要となるため、事前に必要部数を取得しておきましょう。
3. 関係機関に対し解散を届け出る
解散登記が完了したら、すみやかに以下のような関係機関に必要書類を提出します。
| 関係機関 | 必要書類 |
|---|---|
| 税務署 | 異動届出書・登記事項証明書 |
| 都道府県税事務所 | |
| 市区町村役場 | |
| 年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届 |
| ハローワーク | 雇用保険適用事業所廃止届 |
| 労働基準監督署 | 労働保険保険関係成立届 |
上記の中でも、社会保険関係の届出は期限が短く、年金事務所への届出は事実発生から5日以内、ハローワークへの届出は10日以内と期限が設けられています。
届出をおこなわないと不要な税金や保険料の請求が継続したり、後日のトラブルの原因となったりする可能性があるため、解散登記完了後は、すぐに各関係機関への届出リストを作成し計画的に手続きを進めましょう。
4. 財産目録および貸借対照表を作成する
清算人は、就任後遅滞なく会社の財産状況を調査し、解散日時点における財産目録および貸借対照表を作成した上で、株主総会の承認を得る必要があります。
財産目録および貸借対照表は、解散時点での会社の資産や負債の状況を正確に把握するための重要な書類です。
財産目録には、解散日時点での会社のすべての資産と負債を、項目ごとに明細化して記載します。貸借対照表は、資産と負債を一覧にした財務諸表です。
書類作成後は、株主総会を開催して承認を得ます。ここで開催される株主総会は、解散決議の株主総会の次におこなわれる2回目の株主総会となるのが一般的です。
財産目録と貸借対照表は、すべての資産と負債を漏れなく調査し計上することが重要なため、必要に応じて税理士や公認会計士のサポートを受けましょう。
5. 債権者に対して公告・催告を実施する
法人解散後は、遅滞なく官報に解散公告を掲載し、債権者には個別に催告をおこなう必要があります。
公平な弁済を実現するために会社の債権者に解散の事実を知らせ、債権の申出を促すことで、すべての債務を漏れなく把握することが重要です。
官報公告に記載する内容は、以下のとおりです。
- 会社が解散した事実
- 債権者は一定の期間内に債権を申し出る旨
- 期間内に申出がない場合は清算から除斥される可能性があること
官報公告の費用は行数によって変動します。債権申出期間中は、原則として債務の弁済や残余財産の分配はできないだけでなく、清算結了までの最短期間を決定づける重要な要素でもあります。
このような債権者に対して適切に告知し、申出の機会を設ける債権者保護手続きは、解散後の清算を適正に進めるために省略できない重要なステップです。
6. 解散時の確定申告をおこなう
会社が解散したら、事業年度開始の日から解散の日までの期間について、解散日の翌日から2ヶ月以内に解散確定申告をおこなう必要があります。
解散したからといって税務申告義務が消滅するわけではなく、解散事業年度の所得に対する法人税等の申告と納付が必要です。
たとえば、4月1日に事業年度がはじまり、9月30日に解散した場合は4月1日から9月30日までの6ヶ月間が解散事業年度となり、11月30日までに確定申告が必要です。
申告にあたっては、通常の確定申告書様式を使用しますが、解散事業年度分であることを明記してください。
とくに、解散にともなって役員や従業員に退職金を支払った場合は、適正な処理が重要です。申告期限を遵守しないと、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課されるでしょう。
7. 残余財産を確定し株主等へ分配する
債権者保護手続きの期間が経過し、すべての債務を弁済した後、残余財産といわれる残った財産を確定し、株主に分配します。
分配は原則として株主の持株数に応じておこなわれますが、定款に特別の定めがある場合はしたがう必要があります。
資本金等の額を超える部分は、みなし配当として課税対象となり、解散した会社はみなし配当部分に対して、所得税および復興特別所得税を源泉徴収して納付することが義務です。
残余財産の分配は、まずすべての債務が完済されていることを確認し、未払税金や社会保険料などの公租公課、退職金などの従業員債務が漏れなく処理されているかチェックしましょう。
株主への分配では、資本の払戻し部分やみなし配当部分など、分配金額の内訳を明示した通知書を交付し、税務上の取扱いについても説明するといいでしょう。
8. 清算に関する確定申告を提出する
清算確定申告は、残余財産が確定した日から1ヶ月以内におこなう必要があり、通常の確定申告と異なり延長特例が適用されないため、とくに注意が必要です。
申告の対象となる期間は、解散日の翌日(または直前の清算事業年度の翌日)から残余財産確定日までです。
期間中に発生した資産の売却益や受取利息などの所得に対して、法人税や地方法人税、法人住民税や法人事業税などが課税されます。
なお、解散から1年以内に残余財産が確定しない場合は、1年ごとに区切って清算事業年度の申告をおこなう必要があります。
また、申告と同時に納税も必要となるため、残余財産を分配する前に、法人税などの納付資金をあらかじめ確保しておくことが重要です。スムーズな申告と納付のためには、事前の準備が欠かせません。
9. 清算手続きの完了報告を承認してもらう
債権回収や債務弁済、残余財産の分配などすべての清算事務が完了した後、清算人は決算報告書を作成し、株主総会でその承認を得ることが必要です。
決算報告書には、清算期間中の収支状況や残余財産の額、1株あたりの分配額や分配完了日などを、以下のように具体的に記されます。
- 総収入額:5,000万円
- 総支出額:3,000万円
- 残余財産:2,000万円
- 1株あたり分配額:2万円
- 分配完了日:2023年12月15日
決算報告書は、清算手続き中の3回目の株主総会で提出され、出席株主の議決権の過半数による普通決議で承認されます。
株主総会で承認を得ることにより、清算事務は実質的に終了し、次のステップである清算結了登記に進むことが可能です。
承認された決算報告書は清算結了登記の添付書類としても使用されるため、必要な記載事項が正しく盛り込まれているか十分に確認することが重要です。
10. 清算結了の登記をおこなう
株主総会で決算報告書の承認を得た後は、2週間以内に法務局へ清算結了登記を申請することが必要です。たとえば、12月1日に承認を得た場合、12月15日までに申請しなければなりません。
登記の申請によって、会社の法人格は完全に消滅します。申請に必要な書類は、以下のとおりです。
- 清算結了登記申請書
- 決算報告書
- 株主総会議事録株主リスト
上記の書類は登記完了までには通常数日〜1週間程度かかり、登記事項証明書が発行されて、税務署など関係機関への届出に必要な書類です。
ただし、解散公告後2ヶ月の公告期間が経過してはじめて登録の申請が可能になるため、清算結了までの最短期間は約2ヶ月となります。
また、登記は債務がすべて弁済されていることが前提であり、負債が残っている場合には清算結了登記は認められません。負債が残っており債務超過の場合は、特別清算や破産手続きへの移行が必要です。
11. 関係官庁へ清算結了を届け出る
清算結了登記が完了したら、すみやかに税務署や都道府県税事務所、市区町村役場などへ清算結了の届出をおこない、税務や行政上の手続きを正式に終了させましょう。
提出書類は、異動届出書に清算結了の登記事項証明書のコピーを添付したものです。
たとえば、東京都23区内では、法人住民税に関して東京都主税局に届け出れば、各特別区への個別の提出は不要です。しかし、23区外に事業所がある場合は、各市町村にも別途届出が必要になります。
また、清算結了後も会社の帳簿をはじめとした書類は10年間の保存義務があるため、保存責任者を決めておくことも重要です。
保存対象には、総勘定元帳や仕訳帳、契約書や株主総会議事録、財産目録や清算関係書類などが含まれます。手続きを確実に完了させることで、会社の歴史を正式に締めくくることが可能です。
法人解散から清算までに注意すべきポイント
法人解散から清算までには、以下の3つのポイントに注意することが大切です。
それぞれ具体的な内容を見ていきましょう。
1. 債権者の保護手続きを確実におこなう
債権者保護手続きは、会社法第499条にもとづく法的義務であり、清算の重要なステップのひとつです。
会社の債権者に解散の事実を知らせ債権の申出を促すことで、すべての債務を漏れなく把握し、公平な弁済を実現するためにおこないます。
具体的には、官報に解散公告を掲載し、知れている債権者には個別に催告をおこなうことが必要です。
官報公告には、会社が解散した事実や最低2ヶ月以内に債権を申し出るべきこと、期間内に申出がない場合は清算から除斥される可能性があることなどを記載します。
債権者保護の公告期間である最低2ヶ月間が経過するまでは、原則として債務の弁済や残余財産の分配をおこなうことはできません。債権者からの申出があった場合は記録を残し、債務の存在を確認した上で、適切に対応しましょう。
2. 税務申告の期限を厳守する
会社が解散しても税務申告義務はすぐに消滅せず、複数回の確定申告が必要となります。申告には厳格な期限が設定されており、遵守しなければ無申告加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性があります。
法人清算における主な税務申告は、以下のような内容です。
- 解散確定申告(解散日の翌日から2ヶ月以内)
- 清算事業年度の確定申告(解散後1年で残余財産が確定しない際は1年ごとに申告)
- 清算確定申告(残余財産確定日の翌日から1ヶ月以内)
とくに清算確定申告は期限は非常に短く、通常の確定申告で認められる1ヶ月の延長特例も適用されないため、すみやかに対応することが重要です。
また、消費税や源泉所得税など、法人税以外の税金についても漏れなく申告、納付する必要があります。清算中の税務処理で複雑な点もあるため、税理士に相談し適切に対応しましょう。
3. 残余財産の分配ルールを確認する
残余財産の分配は、すべての債務弁済後におこなう清算の最終段階です。
分配は原則として株主の持株数に応じておこなわれますが、定款に特別の定めがある場合はしたがい、税務上の重要な影響があることを理解しておくことが重要です。
とくに注意すべきは「みなし配当」の取扱いで、株主が受け取る残余財産の分配額のうち、資本金等の額を超える部分は、税法上は配当とみなされ課税対象となります。
会社を清算する場合は、みなし配当部分に対して所得税および復興特別所得税を源泉徴収して納付する義務があります。
株主への分配にあたっては、分配金額の内訳と税務上の取扱いを明示した通知書を交付することが大切です。また、分配前にすべての債務が完済されていることを再確認することも重要です。
法人解散から清算までの期間
法人解散から清算結了までの期間は、最短でおよそ3ヶ月程度です。会社法では、債権者保護のための公告期間として最低2ヶ月間を設けることが義務付けられており、公告期間を短縮できません。
さらに、以下のようなことも、2週間以内というある程度期間が定められています。
- 解散登記
- 財産目録作成
- 株主総会開催
- 清算結了登記
債権者保護のための公告期間である2ヶ月間は、原則として債務の弁済や残余財産の分配をおこなえず、当然ながら清算結了登記も申請できません。
清算を効率的に進めるためには、債権者保護手続きの2ヶ月間を活用し、並行して債権回収や資産売却、債務整理などの作業を進めることが重要です。
また、株主総会の日程を前もって調整し、必要な承認をタイムリーに得られるよう準備しておくことも、手続きを遅延させないためのポイントとなるでしょう。
会社の規模や債務の複雑さなどによっても、解散から清算完了までの期間は異なる可能性もあるため、前もって専門家に相談し水面下で準備を進めながら清算結了を目指しましょう。
法人解散から清算までにかかる費用
法人解散から清算までにかかる費用は、会社の規模や債務の内容によって異なります。主にかかる費用は、以下のとおりです。
| 手続きの内容 | 費用 |
|---|---|
| 登録免許税 | 解散・清算人選任登記:39,000円 |
| 清算結了登記:2,000円 | |
| 官報公告費用 | 約3万〜4万円 |
登記申請時の登録免許税は収入印紙での納付が一般的なので、事前に必要金額の収入印紙を準備しておくことが重要です。
そのほか、司法書士や弁護士、税理士等の報酬も必要で、会社の規模や債務状況によって異なります。相場は数十万円ですが、状況によっては数百万円かかるケースもあります。
料金の詳細については、各専門家に問い合わせて見積もりを依頼しましょう。
税金面では、会社の解散後も段階ごとに申告と納税が必要です。具体的には、解散事業年度や清算事業年度、残余財産確定事業年度のそれぞれの所得に対して、法人税や地方法人税、法人住民税や法人事業税が課税されます。
各年度ごとに適切な時期に申告、納付をおこなう必要があるため、スケジュール管理と事前の準備が重要です。
さらに、残余財産分配時には、みなし配当に対する源泉所得税(原則10.21%、非上場株式の場合は20.42%)も発生します。さらに、事務所の維持費や書類費用などの諸経費も必要です。
法人の解散から清算までにかかる費用は、会社の状況や清算の進め方によって大きく変動するため、事前に計画を立て十分な資金を確保しておくことが重要です。
まとめ
法人の清算は、解散決議から清算結了まで複数のステップが必要な重要手続きです。
まず株主総会での解散決議をおこない、清算人を選任して登記し、関係機関への届出や財産目録の作成、債権者への公告など順序を立てた対応が求められます。
とくに注意すべきは、債権者保護手続きの確実な実施と税務申告の期限厳守、残余財産の適切な分配で、怠ることでトラブルの原因となります。
清算完了までの期間は、最短でも3ヶ月程度かかり、6ヶ月〜1年程度かかるのが一般的です。登記費用や税理士費用などの経費も発生するため、計画的に進めることで、予算内での適切な処理が可能になります。
専門家のサポートを受けながら手続きを進めることで、法的義務を果たし、解散後の新たなスタートにつながるでしょう。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

