事業をたたむ際は、会社の清算が必要になります。清算を担当するのは「清算人」と呼ばれる人で、登記手続きなどを行い、会社の解散を進めていきます。
清算人は、どういった役割で、なぜ登記手続きが求められるのでしょうか。また、手続きに必要な書類や申請手順についても正しく理解しておく必要があります。
この記事では、清算人の登記手続きについて、清算人の選任方法や必要書類、申請手順などを解説します。
清算人の選任登記とは

会社を解散する際、残った財産や借金を整理するために「清算人」を選任する必要があります。
この清算人が誰なのかを法務局に届け出て、登記簿に記録する手続きを「清算人の選任登記」といいます。
清算人の役割や登記手続きが必要な理由、手続きを怠るリスクを解説します。
清算人の役割
清算人は、取締役に代わって会社の清算業務に関する権限を持つ責任者です。主な職務は、以下のとおりです。
| 主な職務 | 詳細 |
|---|---|
| 現務の結了 | 解散前に締結した契約の履行や在庫の処分 |
| 債権の取立てと債務の弁済 | 未回収金の回収や借金の返済 |
| 残余財産の分配 | 債務支払後に残った資産の分配 |
清算人の役割についてより詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
清算人とは?役割や業務内容、選任の仕方などを解説 | 千代田中央法律事務所
清算人が登記手続きを求められる理由
清算人に登記手続きが求められる理由は、解散した会社の代表は代表取締役ではなくなるためです。
会社が解散すると、代表取締役はその地位を失うため、誰が新しい代表者なのかを明確にする必要があります。登記を行わなければ、銀行口座の名義変更や不動産の売却といった清算業務は進められません。
登記簿を書き換えれば、第三者に対して正当な権限を持つことを証明できます。そのため、債権者や取引先も安心して手続きに応じられるのです。
清算人が登記手続きを怠るリスク
清算人の登記は、解散日の翌日から2週間以内に済ませなければなりません。期限を過ぎると、会社ではなく代表者個人に対して過料が請求される可能性があります。
過料とは、行政上のルール違反に対して科される罰金のようなものです。刑事罰ではありませんが、必ず自分自身のお金で支払わなければなりません。期限を過ぎても登記手続き自体は可能ですが、過料が請求されないよう、早めに手続きを進めておくとよいです。
また、登記を放置すると清算手続きが停滞し、会社の法人格を消滅させられない状況が続きます。法人格が消滅しないと、法人住民税などの支払いが停止されず、支出がかさみます。清算人に選任された際は、弁護士や司法書士などの専門家に依頼し、早急に登記手続きを進めましょう。
清算人の選任の仕方

会社解散の手続きをスムーズに進めるためには、清算人の選任を適切に進めていくのが重要です。清算人の選任の仕方には、いくつかのパターンがあります。
ここでは、主に3つの選任パターンについて解説していきます。
1. 定款の定めに従う
会社設立時に作成した定款に、あらかじめ清算人を決めておくと、定款にしたがって選任できるためスムーズです。
この方法は「定款指定」と呼ばれ、「解散時は代表取締役が清算人になる」といった規定がある場合、その内容に従います。
また、定款に記載があっても、内容が現状にそぐわない可能性もあります。事前に定款を確認し、記述の有無と内容の正当性を確かめましょう。
2. 株主総会決議で選ぶ
定款に定めがない場合は、株主総会で清算人を選任するのが一般的です。株主総会で選任する際は特定の人物を指名できるため、清算実務に詳しい人を選ぶことも可能です。
加えて、ほかの役員は全員退任扱いとなるため、登記申請で書類に目を通したり押印したりする手間もかかりません。清算手続きを比較的スムーズに進めやすい方法といえるでしょう。
株主総会で清算人を選任する際は、議事録を作成して、誰を選任したか記録として残しておく必要があります。
3. 裁判所が選任する
清算人として適任者がいない場合や、意見が対立して決まらないときは、裁判所に選任を申し立てるケースがあります。債権者などの利害関係人が申し立てることで、手続きが進められます。会社側で会議を開く必要がないため、必要以上に揉める可能性も低くなります。
ただし、予納金として高額な費用が発生したり、手続きに時間を要したりするリスクがあるのが難点です。基本的には株主総会での選任を目指し、裁判所の手続きは最終手段と考えるのが現実的でしょう。
清算人の選任登記でかかる費用

清算人の登記手続きでは、税金や官報への掲載代などの費用が発生します。登記手続きで発生する各種費用について、解説します。
登録免許税
清算人の選任登記や解散登記では、登録免許税がかかります。具体的な税額は、以下のとおりです。
- 清算人選任登記:9,000円
- 解散登記:30,000円
登録免許税は法律で金額が定められているため、自分で登記申請する場合も専門家に依頼する場合も、同じ金額を納めます。
官報公告費用
登記費用とは別に、国が発行する「官報」に解散公告を掲載する費用が必要です。官報公告は、債権者に対し、一定期間内に債権の有無や内容を申し出るよう知らせるための義務的な手続きです。
掲載料としては、約3万円から4万円程度かかります。登録免許税と合わせると、最低でも7万円〜8万円程度の実費が見込まれます。
掲載を怠ると、法人格を消滅させる登記が受けつけられないため、必ず掲載しなければなりません。また、最低でも2ヶ月間は載せ続ける必要があるため、早めに申し込みを済ませておく必要があります。
専門家への費用
弁護士や司法書士などの専門家に手続きを依頼する場合は、別途報酬が必要です。報酬相場は4万円から7万円程度が一般的で、実費を含めた総額は11万円〜15万円程度になります。
自分で手続きを行えば報酬分は節約できますが、書類作成には膨大な手間がかかり、法務局へ行く時間を確保しなければなりません。手間や時間を考慮すると、専門家に依頼したほうが手続きの正当性や労力の面でも安心でしょう。
清算人の選任登記で必要な書類

清算人の登記手続きでは、複数の書類を用意する必要があります。単なる届出だけでなく、意思表示を示したことがわかる証拠書類なども必要です。
法務局へ提出する書類のなかから、とくに重要な書類の役割について解説します。
登記申請書
登記申請書は、解散の事実や清算人の氏名、登録免許税額などを記載します。記載内容に不備があると受理されないため、正確な記入が求められます。
数字や住所など、間違えやすい箇所はとくに注意して記載するようにしてください。
株主総会の議事録
株主総会の議事録は、株主総会で解散および清算人の選任を決議したことを証明する書類です。議事録には、以下のような内容を記載します。
- 開催日時
- 場所
- 出席株主数
- 特別決議の要件(議決権の3分の2以上の賛成)を満たしていること
正当な話し合いを経て清算人が選任され、会社の解散が決定していることを証明するためにも、重要な証拠書類となります。押印忘れなど細かなミスがないかよく確認しましょう。
定款
定款とは、会社を設立したときに決めたルールのことです。定款に定められた方法で清算人を選任した場合や、解散時の取締役がそのまま就任する「法定清算人」が手続きする場合に必要になります。
株主総会で選任した場合は提出を省略できることもありますが、場合によっては提出を求められるため、手元に用意しておくと安心です。
その他
清算人の登記手続きにほかにも必要な書類としては、以下のものを用意しておきましょう。
| 株主リスト | 議決権数上位10名、または割合が3分の2に達するまでの株主を記載したもの |
| 就任承諾書 | 選任された清算人が就任を承諾したことを証明する書類(押印が必要) |
| 印鑑届書・印鑑証明書 | 清算人としての会社実印の登録と、清算人個人の実印証明書(発行3ヶ月以内) |
こうした書類をひとりで揃えるのは、手間がかかるものです。書類が欠けると過料を支払うリスクも発生するため、専門家の力を借りるなどして確実に用意しましょう。
清算人選任登記の申請の仕方

会社の解散が決まったら、速やかに清算人の登記申請を行います。期限は、前述のとおり解散日の翌日から2週間以内です。期限を過ぎると、裁判所から過料の通知が届く可能性があります。
申請方法は、自分で書類を作成して法務局へ提出するか、弁護士・司法書士など専門家に依頼するかのいずれかです。
株主が少なかったり親族経営だったりする場合は自分で書類を作成できる可能性もありますが、基本的に登記に必要な書類を用意するのには手間や時間がかかります。十分な知識を有している人以外は、専門家に依頼したほうが安心でしょう。
手続きに必要な書類を用意する際は、法務局の「QRコード付き書面申請」を利用すれば、入力漏れのチェックができ、手書きよりもミスを減らせます。チェックリストとして有効活用しましょう。
清算人の登記申請から会社解散までの流れ

会社を解散するには、清算人の選任や登記申請など、各ステップを適切に完了する必要があります。会社解散までのフローをひと通り把握し、それぞれのステップですべき作業や手続きをおさえておきましょう。
1. 株主総会での解散決議・清算人の選任
まずは、株主総会を開催し、解散についての合意や清算人の選任をする必要があります。
株式会社を解散させるには、議決権の3分の2以上の賛成が必要な「特別決議」を行います。特別決議で否決されると会社の解散ができないため、事前に株主へ説明しておくとよいでしょう。
同時に、清算人の選任手続きもこの段階で行います。誰も選ばないと解散時の取締役が全員清算人になってしまい、書類作成が大変になるため、特定の1名を選ぶのが重要です。
2. 解散・清算人の登記申請
株主総会で解散が決まったら、解散および清算人選任の事実を法務局へ届け出て、登記簿に記録します。解散日の翌日から2週間以内に、管轄の法務局に申請しましょう。
期限を過ぎると過料発生の可能性があるため、必ず期限内に済ませてください。また、記載の際は数字や住所などの情報を正確に記載しましょう。
3. 官報公告への掲載
登記申請と並行して、官報に解散公告を掲載し債権者へ申し出るよう通知しましょう。掲載期間は最低2ヶ月間必要で、この期間が経過するまでは清算を結了できません。
また、手続きをしていないと清算結了登記が受理されないため、必ず済ませるようにしてください。
4. 財産調査や財産目録の作成
清算人は会社の財産状況を調査し、財産目録と貸借対照表を作成します。財産は、プラス・マイナス含めてリストアップし、会社の財務状況がわかるように書類をつくるのがポイントです。
財産目録および貸借対照表は、株主総会で承認を受ける必要があります。時間のかかる作業のため、まずは売掛金の回収や資産の売却による現金化を進めつつ、そのほかの資産の把握に努めましょう。財産調査などが完了すれば、債務の弁済に移ります。
5. 残余財産の分配
債務をすべて弁済した後、残った財産があれば株主へ分配します。債務が残っている状態で分配を行うことはできないため、まずは債務弁済を優先しましょう。財産額によっては債務弁済で財産がなくなり、株主へ分配する財産が残らない場合もあります。
また、親族経営の場合は分配する財産の額や分け方をめぐってトラブルになる可能性もあるため、分配の際はよく話し合いながら進めていくことが重要です。
6. 決算報告の作成・承認
すべての財産整理が終わり分配が完了したら、決算報告書を作成し、株主総会で承認を得ます。承認された日が「清算結了日」となり、この日をもって会社の法人格が消滅します。
この報告が承認されない限り、いつまでも会社を閉じることはできません。速やかに決算報告書を作成し、承認を得ましょう。
7. 清算結了登記の申請
決算報告の承認により、実質的に会社の法人格は消滅しますが、登記簿自体はまだ存在しています。そのため、決算報告の承認から2週間以内に「清算結了登記」を申請する必要があります。
この際には2,000円の登録免許税がかかるため、注意しましょう。清算結了登記が完了すれば、会社解散の手続きはすべて終了します。
清算結了登記についてより詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
清算結了の申告期限はいつまで?延長の可否や怠った際のリスクを解説 | 千代田中央法律事務所
特別なケースでの清算人の選任登記

会社の解散手続きは、法人の種類や解散にいたった事情によって、準備すべき書類や進め方が異なります。株式会社のように株主総会を開くのが基本ですが、出資者が自ら経営する合同会社や、長期間の放置で強制的に解散させられた会社では独自のルールが存在します。
合同会社・みなし解散の2つのケースにおける選任登記について解説します。
合同会社の場合
合同会社は、原則として定款に別段の定めがなければ、業務執行社員が清算人となります。選任にあたっては、株主総会ではなく「総社員の同意」が必要となるのが一般的です。
一方、合同会社は定款自治の範囲が広いため、書類作成前には定款の内容をあらためて確認しておく必要があります。特定の人物を清算人に選びたいなら、同意書を作成して証拠を残しておくことが重要です。
みなし解散の場合
最後の登記から12年が経過し、職権で解散登記がなされた状態を「みなし解散」といいます。みなし解散の状態で会社を消滅させるには、あらためて清算人選任登記を行い、通常の清算手続きを経て結了登記をします。
みなし解散の状態を放置していると、過料が科されるリスクが高まります。気づいた時点で速やかに法務局や専門家へ相談し、手続きを開始してください。
まとめ

清算人は、会社解散のために債務返済や財産分与など、さまざまな業務に対応する必要があります。株主総会や裁判所で選任され、清算人となった際は適切に解散の手続きを進めていくことが求められます。
登記手続きを放っておくと、解散手続きは進みません。とはいえ、会社の解散を経験したことがある人は少なく、手続きに不安を感じる人もいるでしょう。
千代田中央法律事務所では、会社の廃業・清算にかかるさまざまな手続きを支援しています。初回は無料で相談できるため、必要書類の作成や登記手続きで悩んでいる人は、ぜひ相談ください。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

