民事再生・個人再生

【徹底比較】民事再生と会社更生の違いとは?経営者が知るべき選択基準を解説 | 千代田中央法律事務所

民事再生法と六法全書 民事再生・個人再生

会社の再建を迫られたとき、民事再生と会社更生のどちらを選ぶべきか、その違いがわからず悩んでいませんか。

この選択は、会社の未来を大きく左右するため、それぞれの違いを明確に把握しておくべきです。

本記事を読めば、それぞれの手続きのメリット・デメリットを理解でき、自社の状況に適した再建方法はどちらなのか判断できるようになります。

民事再生と会社更生の違いを知りたい経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

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民事再生と会社更生の概要と違い

オフィス、会議室、ミーティング

事業の再建を目指す法的整理手続きには、大きく分けて民事再生と会社更生の2つがあります。それぞれの違いは、以下のとおりです。

民事再生会社更生
経営権の帰属原則として現経営陣が維持(DIP型)更生管財人に交代(現経営陣は退任)
主な対象企業中小企業から大企業まで(法人格の制限なし)主に大規模な株式会社
担保権の扱い原則、実行を阻止できない(別除権として扱われる)全面的に禁止できる(更生担保権として扱われる)
株主の権利原則として維持される100%減資で失われるのが一般的
手続き費用比較的、低額(最低200万円~)高額(最低でも数百万円〜数千万円)
手続き期間比較的、短期間(約6か月~1年)長期間(数年単位)

制度の基本的な仕組みと違いを理解し、自社の状況に最適な道筋を見極めましょう。

民事再生の概要

民事再生とは、経営状況が悪化した企業が、裁判所の監督のもとで事業の再建を目指すための法的手続きです。

この制度の特徴は、原則として現在の経営陣が退任することなく、自らの手で再建の主導権を握り続けられる点です。

具体的には、裁判所の監督下で債権者と協議をおこない、債務の一部免除や返済期間の猶予を得て再生計画を策定します。

現在の経営陣が退任しない理由は、会社の事業内容や内情を深く理解している現経営者こそが、再建の舵取り役としてもっともふさわしいという考えが根底にあるためです。

会社更生の概要

会社更生とは、主に大規模な株式会社を対象とした、きわめて強力な再建型の手続きです。

民事再生との決定的な違いは、申立てと同時に会社の経営権および財産の管理処分権が、裁判所によって選任される第三者(更生管財人)に全面的に移る点です。

過去のしがらみや不適切な経営判断を断ち切ることで、利害関係者の信頼を回復し、会社の事業を抜本的に立て直すことを目的としています。

この手続きの強力さはとくに担保権の扱いに表れており、民事再生では原則として阻止できない銀行からの資産差し押さえを、会社更生では全面的に禁止できます。

ただし、強力な手続きである分、プロセスは複雑で長期間におよびます。

また費用も高額になるため、体力のある大企業向けの制度であり、中小企業が利用するのは現実的ではありません。

【比較表】民事再生と会社更生の違い

以下の表に、双方の制度の違いをまとめました。

民事再生会社更生
経営権の帰属原則として現経営陣が維持(DIP型)更生管財人に交代(現経営陣は退任)
主な対象企業中小企業から大企業まで(法人格の制限なし)主に大規模な株式会社
担保権の扱い原則、実行を阻止できない(別除権として扱われる)全面的に禁止できる(更生担保権として扱われる)
株主の権利原則として維持される100%減資で失われるのが一般的
手続き費用比較的、低額(最低200万円~)高額(最低でも数百万円〜数千万円)
手続き期間比較的、短期間(約6か月~1年)長期間(数年単位)

この表からもわかるように、それぞれの制度では重視するポイントが異なります。

どちらが優れているというわけではなく、企業の規模や財務状況、そして何を守り抜きたいのかによって選択すべき道は変わってきます。

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民事再生を利用するメリット

MERIT メリット

ここでは、民事再生がもたらすメリットを3つ解説します。

  1. 経営権を維持したまま再建できる
  2. 比較的スピーディーに手続きが進む
  3. 会社更生より費用が少なく済む

経営の危機に直面した中小企業の経営者にとって、民事再生は有力な再建の選択肢となるでしょう。

1. 経営権を維持したまま再建できる

民事再生が持つ魅力は、原則として現在の経営陣が退任することなく、自らの手で会社の再建プロセスを主導できる点にあります。

これは、申立てと同時に経営権が更生管財人に移る会社更生手続きとの決定的な違いです。

経営者がこれまで培ってきた、以下のような目に見えない資産(無形資産)こそが、再建の原動力になると考えられているのです。

  • 専門的な知識と技術ノウハウ
  • 取引先との信頼関係
  • 従業員との人間関係

「自分の手で立て直したい」という強い意志を持つ経営者にとって、経営の主導権を失わないことは何よりも大きなメリットであり、困難な再建への道のりを乗り越えるためのモチベーションにもつながるでしょう。

2. 比較的スピーディーに手続きが進む

民事再生は、数年単位の期間を要する会社更生に比べて短期間で進むというメリットがあります。

民事再生手続きを開始してから再生計画が認可されるまでの、一般的な期間の目安は以下のとおりです。

手続きのステップ期間の目安
申立て~開始決定約1~4週間
債権届出・調査約2~3か月
再生計画案の作成・提出約3~5か月
再生計画の決議・認可約6か月

※あくまで目安であり、実際にかかる日数は案件により異なります。

事業価値の劣化を防ぎ、1日でも早く正常な経営状態に戻りたいと考える企業にとって、手続きの迅速さは利点といえるでしょう。

3. 会社更生より費用が少なく済む

民事再生は、会社更生と比較して、裁判所に納める予納金や弁護士費用といったコストを大幅に低く抑えられるという大きなメリットがあります。

とくに大きな差が出るのが、申立て時に裁判所へ現金で納付する予納金です。

これは、手続きを監督する監督委員の報酬などに充てられる費用ですが、以下のように会社の負債総額に応じて金額が定められています。

【予納金の目安(東京地方裁判所の場合)】

負債総額民事再生
5,000万円未満200万円
5,000万円~1億円未満300万円
1億円~5億円未満400万円
50億円~100億円未満700万円

※あくまで目安であり、実際にかかる費用は案件により異なる場合があります。

費用負担が比較的軽い民事再生は、多くの中小企業にとって現実的な選択肢となります。

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民事再生のデメリットや注意点

Demerit デメリット

次に、経営者が知っておくべき民事再生の3つのデメリットを具体的に解説します。

  1. 担保権の実行(差し押さえなど)を阻止できない
  2. 再建計画の承認を得るのが難しい
  3. 会社の信用力が低下する

メリットだけに目を向けて安易に選択すると、思わぬ落とし穴にはまり、再建が頓挫するリスクもあるため注意しましょう。

1. 担保権の実行(差し押さえなど)を阻止できない

民事再生の手続きで注意すべきは、銀行などの金融機関が持つ担保権の実行を、原則として法的に阻止できないことです。

つまり、たとえ会社が民事再生を申し立てても、銀行は担保権のついている資産を競売にかけたり、差し押さえたりすることが可能です。

たとえば事業に必須な設備や車両、自社ビルなどが担保として取り上げられてしまえば、再建計画は失敗に終わるでしょう。

この致命的なリスクを回避するためには、申立て前に弁護士を介して担保権者である金融機関と個別に交渉し、再生手続き中の担保権行使を待ってもらう旨の同意を取り付けておくことが必須となります。

この点は、すべての担保権を法的に凍結できる会社更生との決定的な違いであり、民事再生を選択する際の大きなハードルのひとつです。

2. 再建計画の承認を得るのが難しい

再建計画が法的に可決されるためには、債権者集会において、以下の要件を同時に満たす必要があります。

  • 頭数要件:議決権を持つ債権者の過半数の賛成
  • 債権額要件:議決権を持つ債権者の債権総額の2分の1以上の賛成

過去の経営の失敗に対する真摯な反省がなく、希望的観測にもとづいた甘い見通しの計画では、債権者のシビアな評価をクリアし、同意を得ることはきわめて困難です。

万が一、この債権者集会で計画がひとつでも否決されれば、その時点で再建の道は絶たれます。

その場合、裁判所は再建手続きを打ち切り、破産手続きへと移行させるのが一般的です。

再建計画の承認を得るには、債権者一人ひとりに対して誠実な説明を尽くし、納得感のある計画を策定することが強く求められます。

3. 会社の信用力が低下する

民事再生を申し立てた事実は、国の機関紙である官報に公告されるため、社会的な信用力が著しく低下することは避けられません。

この信用の低下によって、以下のようなリスクが考えられます。

  • 金融機関から当面のあいだ融資を受けられなくなる
  • 仕入先などとの商取引を断られる可能性がある
  • 人材の採用に悪影響を与える

これらの影響によって、資金面でも苦しい状況になることが考えられます。民事再生を成功させるためには、申立て後の事業継続に必要な運転資金を確保しておくことも大切です。

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会社更生を利用するメリット

天秤とミニ黒板にMeritの文字

次に、会社更生が持つ3つのメリットについて解説します。

  1. 事業を守るための強い権限が与えられる
  2. 担保に取られた資産の差し押さえを防げる
  3. 大規模な事業再編が可能になる

会社更生は、多くの利害関係者が複雑に絡み合う大企業の再建などにおいて、その真価を発揮しやすいでしょう。

1. 事業を守るための強い権限が与えられる

会社更生の手続きでは、裁判所が選任する中立的な専門家(更生管財人)が、経営と財産管理に関する全権を掌握します。

この強力な権限は、旧経営陣のしがらみや特定の債権者の意向といった、外部からの干渉を法的に排除するためのものです。

更生管財人は客観的な立場で社内外の混乱を収め、事業再生に向かって一貫した方針をトップダウンで断行します。これにより、事業を停止せずに継続できる可能性が高まるでしょう。

2. 担保に取られた資産の差し押さえを防げる

民事再生との決定的な違いとなるメリットが、担保権の扱いに関する効力です。

手続きが開始されると、金融機関などが個別に持つ担保権はすべて「更生担保権」として会社更生手続きのなかに強制的に取り込まれ、競売や差し押さえが全面的に禁止されます。

事業の命綱となる資産を確実に守れるこの効力は、会社更生を選択するうえで、重要な判断材料のひとつとなります。

3. 大規模な事業再編が可能になる

会社更生手続きでは、会社の組織や事業構造を根本から作り変えるために、以下のような大規模な再編がおこなわれます。

再編手法目的と概要
100%減資・経営破綻の責任を明確にするため、既存の株式をすべて無価値にする
・過去の資本構成を一掃し、新たなスポンサーを迎え入れやすい白紙の状態を作る
M&Aや会社分割・更生管財人の主導で、不採算事業を売却したり、優良事業を他社と統合したりする
・会社の収益構造を抜本的に改善し、企業価値の向上を目指す
新株の発行・新たなスポンサー企業に対して新株を発行し、大規模な資金を調達する
・資金を元手に設備投資や新規事業開発を進め、会社の成長軌道への回帰を図る

更生管財人の強力なリーダーシップのもと、これらの手法を組み合わせることで会社を再生へと導きます。

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会社更生のデメリットや注意点

天秤とミニ黒板にDemeritの文字

ここでは、会社更生を選択する際に直面する3つのデメリットについて解説します。

  1. 原則として現経営陣は退任する
  2. 手続きが複雑で費用が高額になる
  3. 利用できるのは株式会社のみ

会社更生が持つ強力な権限は事業を抜本的に立て直すための大きな武器となりますが、デメリットもしっかり把握しておきましょう。

1. 原則として現経営陣は退任する

会社更生の際、経営者は申立てと同時に会社の経営権を完全に失い、その職を退任させられることになります。

これは、経営不振に陥った責任を明確化し、債権者や社会からの信頼を回復するという会社更生法の基本思想にもとづくものです。

つまり、「会社と従業員が存続するためなら、自らは会社を去る」という、相当な覚悟が求められるのです。

もし自身の経営への関与を続けたいという強い意思がある場合は、会社更生の手続きは選択すべきではありません。

2. 手続きが複雑で費用が高額になる

会社更生は、その手続きが複雑で専門性が高く、申立てから完了まで数年単位の長期戦となるのが一般的です。

利害関係者が多数にのぼり、資産評価や権利関係の調整に膨大な時間と労力を要するためです。

それに加え、費用が民事再生とは比較にならないほど高額になるというデメリットがあります。

期間と費用の両面から見ても、会社更生は相応の体力を持つ大企業向けの制度であるといえるでしょう。

3. 利用できるのは株式会社のみ

会社更生という再建手法は、法律によって利用できる法人の種類が株式会社に限定されています。

これは、会社更生法が、以下のような株式会社特有の組織構造を前提とした抜本的な再編スキームを想定しているためです。

  • 株式の存在:株主の権利を100%減資によって消滅させること
  • 株主と経営の分離:新たなスポンサーのもとで新株を発行し、経営体制を刷新すること

したがって、合同会社(LLC)や、医療法人・学校法人などの組織は、会社更生を申し立てること自体ができません。

これらの法人格を持つ事業者が、破産を避けつつ再建型の法的整理を検討する場合には、その選択肢は必然的に民事再生手続きへと絞られることになります。

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民事再生や会社更生に関するよくある質問

ノート、Clerking、書き込み

最後に、民事再生や会社更生に関する、よくある質問に回答します。

不明点を解消したうえで手続きを進めましょう。

Q. 民事再生の成功率は?

A. 各種調査機関のデータによれば、手続きを申し立てた法人格そのものが存続し、再生計画を完遂する確率は25~40%前後です。

なお、民事再生法の申立件数は合計で266件にのぼり、前年同期比で15.7%の増加を記録しました。このうち個人の事案が193件、法人の事案が73件を占めています。

参照:帝国データバンク│倒産集計 2024年報(1月~12月)

Q. 民事再生が失敗したらどうなる?

A. 民事再生は、常に破産と隣り合わせの厳しい手続きです。

もし手続きが失敗した場合は、最終的に裁判所の職権によって破産手続きへと移行し、会社は消滅(倒産)します。

失敗と見なされるケースには、主に以下の2つの段階があります。

  • ケース1:再生計画案が否決される
    債権者集会で、前述した可決要件を満たせず、計画案が否決された場合です。債権者の納得を得られるだけの説得力ある計画が作れなければ、その時点で再生の道は絶たれます。
  • ケース2:再生計画が履行できなくなる
    計画は一度可決されたものの、その後の業績が計画通りに進まず、債権者への弁済が不可能になった場合です。この場合も、裁判所は再生手続きを打ち切り(廃止)とします。

いずれのケースでも、再生手続きは終了し、会社の財産をすべての債権者に公平に分配するための破産手続きが開始されます。

したがって、再生計画の策定は、その実現可能性を客観的なデータにもとづいて徹底的に吟味したうえで、慎重に進めなければなりません。

Q. 会社更生にかかる費用はどのくらい?

A. 会社更生にかかる費用は、民事再生とは比較にならないほど高額であり、これが中小企業にとって大きな壁となります。

費用は大きく分けて予納金と専門家への報酬から構成されますが、とくに負担が重いのが、申立て時に裁判所へ一括で納付する予納金です。

負債総額が50億円未満の比較的小規模な会社更生であっても、予納金だけで最低でも800万円以上の現金が必要になるのが一般的です。※自己申し立ての場合。

参照:裁判所│会社更生事件の手続費用一覧

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まとめ

アーキテクチャ、建物、視点

民事再生は経営権を維持したまま、比較的迅速かつ低コストで手続きを進められるため、多くの中小企業にとって現実的な再建手法です。

しかし、担保権を原則として止められないなど、債権者との協力関係が不可欠となる側面もあります。

一方で、会社更生は経営陣の退任と高額な費用という大きな代償を伴うものの、担保権を無力化できる点が特徴です。

どちらの手続きが最適かは、会社の規模や財務状況、そして経営者が何を最優先で守りたいかによって異なります。

どちらの道を選ぶにしても、手遅れになる前の早期の決断が再建の可能性を大きく左右することは間違いありません。

経営状態に不安を感じたら、まずは倒産や事業再生に精通した弁護士などの専門家に相談することがおすすめです。ひとりで抱え込まず、専門家のサポートを受けて最善の道を選択しましょう。

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京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。

千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。