個人再生を検討する際、「保証人にどのような影響があるのか」「いつ伝えるべきなのか」と不安に感じる方もいるでしょう。
個人再生では、本人の借金は減額される可能性がある一方で、保証人には原則としてその効果が及びません。そのため、手続きを進める前に、保証人への影響や説明のタイミングを正しく理解することが大切です。
本記事では、個人再生によって保証人に生じる影響、事前に説明しておきたい内容、手続きの際に注意すべきポイントをわかりやすく解説します。保証人とのトラブルをできるだけ避けながら、今後の生活再建を進めるための参考にしてください。
個人再生による保証人への影響

個人再生で保証人に生じる影響を把握しておくことで、適切な対応を取りやすくなります。
ここでは、個人再生によって保証人に生じる主な影響を解説します。
個人再生の具体的な手順や注意点は、以下の記事を参考にしてください。
個人再生とは?メリットやデメリット・具体的な手順や利用時の注意点を解説 | 千代田中央法律事務所
保証人が残りの借金を一括で請求される
個人再生の手続きを開始すると、保証人に残りの借金が一括請求される可能性があります。
弁護士が債権者へ受任通知を送ると、それまで認められていた分割払いができなくなり(期限の利益が失われ)、債権者は残っている借金の全額を一括請求できるためです。
300万円の借入が残っている場合、これまで月々返済していた契約であっても、保証人に対して一括での支払いを求められるケースがあります。
本人の返済が減額されても保証人の支払い義務はそのまま残る
個人再生で借金が減額されても、その効果は保証人には及びません。民事再生法177条2項により、再生計画の効力は主債務者に限定されているためです。
たとえば、申立て時点で残債が500万円あった場合、本人の返済義務が100万円まで減額されても、保証人は原則として500万円(残債全額)の一括請求を受ける可能性があります。なお、本人への求償は再生計画で定められた範囲内に限られます。
保証人が立て替えても全額を本人に請求できない場合がある
個人再生の場合、保証人が代わりに返済しても、全額を本人に請求できない場合があります。再生計画で定めた金額以上の支払い義務が免除されるためです。
保証人が立て替えた費用については、民事再生法232条2項の権利変更効により、再生計画で定めた金額を超えた部分について本人への請求が制限される場合があります。
このような仕組みを知らないまま進めると、保証人とのトラブルにつながります。弁護士への相談も含め、制度上の制限を事前に共有し、保証人の負担金額や対応方法をあらかじめ整理しておきましょう。
個人再生する際は保証人に何をいつ説明すべき?

個人再生をしても、保証人には減額の効果が及ばず、残りの借金について請求される可能性があるため、保証人への説明のタイミングと内容の整理が必要です。
ここでは、個人再生に関して、保証人に説明すべき内容と適切なタイミングを解説します。
受任通知が届く前に、個人再生する事情を直接会って説明する
受任通知が債権者に届くと、保証人への請求が始まる可能性があります。そのため、弁護士に依頼する前に、保証人へ事情を直接説明しておくことが重要です。
何も伝えないまま通知が送付されると、保証人に突然督促状が届き、状況を理解できないまま混乱するおそれがあります。こうした事後報告は、信頼関係の悪化にもつながりかねません。
あらかじめ経緯や背景を伝えておくことで、保証人も事前に心構えをして対応でき、不要な不信感を防ぎやすくなります。
一括請求が届く前に、請求の可能性と今後の流れを説明する
保証人には、一括請求が発生する可能性や今後の流れを具体的に伝えておくことが大切です。個人再生を申し立てると、分割での返済ができなくなり、残りの借金が保証人に一括請求されます。
たとえば、200万円の借入が残っている場合、全額請求されるのが一般的です。こうした仕組みを知らないと、保証人は適切に対応できず、混乱を招く原因になります。
事前に金額の目安や手続きの流れまで共有しておくことで、保証人も具体的な対応を検討しやすくなります。
手続き開始前に、返済方針や負担を減らす対応策を共有する
保証人への影響を最小限にするには、具体的な対応策まで含めて共有しておくことが重要です。ただ状況を説明するだけでは、保証人の負担軽減にはつながりません。
たとえば、保証人付きの借入では、金融機関への相談によって分割での支払いに応じてもらえる場合があります。また、保証人が全額を負担するのではなく、家族で返済を分担する方法も考えられます。
こうした選択肢を事前に共有しておけば、保証人も現実的な対応を検討しやすくなります。債務の内容や家計状況を整理し、弁護士とともに具体策を共有しておきましょう。
個人再生する際にやってはいけないこと

個人再生では保証人への影響を踏まえ適切な対応が欠かせません。不適切な進め方は手続きの失敗やトラブルにつながります。
ここでは、個人再生で避けるべき行動とその理由を解説します。
個人再生を進める際の禁止事項は、以下の記事を参考にしてください。
個人再生でやってはいけないことを解説|失敗時のリスクや適切に進めるポイントも紹介 | 千代田中央法律事務所
保証人に事前説明をせず手続きを進める
個人再生をする際は、保証人への事前説明なしで手続きを進めることは避けましょう。状況を知らないままだと、保証人の手元にいきなり請求が届いた際に混乱します。
何も知らない状況で、急に数百万円の請求書が届くと、保証人は状況を把握できず対応に追われるでしょう。その結果、保証人との信頼関係が崩れるおそれがあります。
事前に事情や今後の流れを説明しておけば、保証人も準備ができ、冷静に対応しやすくなります。
一括請求の可能性や影響を曖昧に伝える
個人再生では、保証人含め分割での返済ができなくなり、残りの借金が一括請求されるため、保証人への影響を曖昧に伝えることは避けましょう。
たとえば、「大きな影響はない」と説明した場合、実際に全額請求が届いた際に矛盾が生じ、保証人との関係悪化やトラブルに発展します。
不要な誤解を防ぐためにも、個人再生による借金減額は本人に限られ、保証人には及ばない点を具体的な金額で共有しておきましょう。
支払い方針や今後の対応を決めないで手続きを進める
個人再生は、支払い方針や今後の対応を決めないまま、手続きを進めるのはリスクが高いでしょう。個人再生ではすべての債務を平等に扱う必要があり、不適切な対応は手続きに悪影響を及ぼします。
一例として、偏頗弁済(へんぱべんさい)が挙げられます。これは、特定の債権者だけを優先して返済する行為です。個人再生における、すべての債務を平等に扱うという原則に反するため、再生計画が認められないおそれもあります。
こうしたリスクを避けるためにも、事前に弁護士に相談し、支払い方針や対応方法を整理しておきましょう。
個人再生する際に保証人への影響を軽減する方法

個人再生で保証人への影響を完全に避けることはできませんが、事前の対応によって負担を抑えることは可能です。
ここでは、個人再生する際に保証人への影響を軽減する方法を解説します。
個人再生する前に保証人がいない借入を優先して整理する
保証人への影響を抑えるためには、個人再生の手続きを開始する前の段階で、保証人がいない借入から優先的に返済するのが有効です。
個人再生の手続きが始まると、すべての債務を平等に扱う必要があり、特定の借入だけを優先して返済できません。万が一、個人再生中に特定の債権者だけに返済すると、偏頗弁済とみなされ、再生計画が取り消されるおそれがあります。
保証人がいない借り入れを優先して整理する場合は、弁護士に相談し、適切な手順で返済しましょう。
住宅ローン特則を利用する
住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用すると、住宅ローンはこれまで通り返済を継続するため、その分については請求が及ばず、保証人への影響を抑えられます。
たとえば、配偶者が連帯保証人となっている住宅ローンの場合、返済を継続している限り、配偶者に対して一括請求が行われることはありません。
住宅ローン特則は自宅を守りながら、他の借金のみを整理できる点もメリットです。住宅ローンがある場合は、特則について事前に弁護士に相談しましょう。
事前に保証人と返済方法や対応方針を話し合う
個人再生を行う場合は、保証人と事前に具体的な対応方針を共有しておきましょう。あらかじめ情報を共有しておけば、保証人も必要な準備を進めやすくなります。
請求が届いてから対応を考えると、事前準備ができず、負担が大きくなる可能性があります。
具体的には、保証人に一括請求が行われた場合でも、債権者に相談することで分割での支払いに応じてもらえるケースがあります。状況を整理しておけば、こうした交渉も進めやすくなります。
保証人の混乱や負担を抑えるためにも、弁護士に相談しながら、あらかじめ対応策を整理しておきましょう。
弁護士に相談して最適な手続きを選択する
個人再生は法的ルールが厳しく、判断を誤ると手続き自体に影響が出るため、保証人への影響を抑えるためにも、弁護士に相談することが重要です。
たとえば、申立ての内容に不備があったり、収支状況の説明が不十分な場合、再生計画が認められないおそれがあります。
弁護士は、分割交渉や同時再生など、状況に応じた具体策を提示できます。専門的な助言を前提に進めることで、法的リスクを回避しながら、保証人への影響を最小限に抑えられるでしょう。
ただし、弁護士への依頼には費用がかかるため、事前に相場や支払い方法を把握しておくことも重要です。手続きを進めるうえで気になる費用については、以下の記事で詳しく解説しています。
個人再生の費用の相場は?負担を抑える方法や払えない場合の対処法を解説 | 千代田中央法律事務所
個人再生を検討する際に弁護士への相談が重要な理由

個人再生では保証人への影響を考慮した判断が求められます。
ここでは、個人再生を検討する際に弁護士に相談する重要性を解説します。
保証人への請求リスクを踏まえ、最適な手続きを選べる
弁護士に相談することで、保証人への影響を踏まえた最適な手続きを選択できます。個人再生は債務の種類によって影響が異なり、判断を誤ると保証人への負担が大きくなります。
たとえば、住宅ローンがある場合は住宅ローン特則を適用できれば保証人への請求を回避できるでしょう。
保証人への請求リスクを踏まえた判断は、人によって状況が異なるため、適切な対応のためにも、積極的に弁護士のサポートを受けましょう。
説明のタイミングや伝え方を整理し、関係悪化を防げる
保証人との関係悪化を防ぐには、弁護士に相談して説明のタイミングや伝え方を事前に整理しておくことが重要です。
一括請求の可能性や金額の目安を事前に共有しておくことで、保証人も必要な準備ができます。また、弁護士に相談すれば、説明すべき内容や順序を整理でき、過不足のなく伝えられます。
不要な誤解や感情的な対立も防ぎやすくなり、保証人との関係性を維持しながら手続きを進めやすくなるでしょう。
一括請求や求償トラブルなどを事前に回避できる
個人再生を進める際に弁護士が関与すれば、一括請求や求償トラブルのリスクを事前に抑えられます。個人再生では保証人への請求や求償権の制限(保証人が立て替えたお金を本人に請求しにくくなる)など、複雑な問題が生じるためです。
たとえば、カードローンの返済を保証人が肩代わりした場合でも、個人再生の影響で本人への請求が制限され、すぐに回収できないケースがあります。
このような状況を踏まえ、弁護士に相談して事前に対応方針を整理しておくことで、保証人との認識のズレやトラブルを防ぎやすくなります。
個人再生と他の債務整理の違い|保証人への影響を比較

債務整理は自己破産・任意整理・個人再生の3つが主な手段であり、保証人への影響は手続きによって異なります。
それぞれの保証人への影響や、手続き自体のメリット・注意点は以下のとおりです。
| 手続きの種類 | 本人の減額幅 | 保証人への請求 | 主なメリット・注意点 |
|---|---|---|---|
| 自己破産 | 原則として全額免除 | 残債全額を一括請求 | ・借金はゼロになる ・保証人が返済を求められる |
| 任意整理 | 利息のカットや過払い金の請求など | 対象から外せば影響なし | ・整理する借金を選べる ・元金の減額は難しい |
| 個人再生 | 5分の1〜10分の1程度に減額(ただし清算価値や収入によって異なる) | 残債全額を一括請求 | ・自宅を残せる可能性がある ・保証人への請求は避けられない |
自己破産した場合の保証人への影響は、以下の記事でも詳しく解説しています。
自己破産した場合に連帯保証人はどうなる?影響を抑えるポイントを解説 | 千代田中央法律事務所
個人再生と保証人に関するよくある質問

最後に、個人再生と保証人に関するよくある疑問に回答します。
Q. 個人再生をすると保証人に必ず請求がいく?
Q. 保証人に内緒で個人再生できる?
Q. 保証人が借金を支払えない場合はどうなる?
Q. 個人再生をすると保証人に必ず請求がいく?
A. 個人再生を開始すると、原則保証人に請求が及びます。受任通知が債権者に届くと、分割払いが認められなくなり、残っている借金の一括返済を求められる可能性があるためです。
借入残高が100万円の場合、分割ではなく全額の支払いを求められるケースがあります。請求のタイミングは受任通知後や申立て直後が一般的です。
事前に保証人と発生時期や内容について相談し、影響を見越して対応しましょう。
Q. 保証人に内緒で個人再生できる?
A. 保証人付きの借入がある場合、内緒で個人再生を進められせん。すべての債務を申告する必要があり、保証人付きの借金を除外すると手続き自体が認められないためです。
たとえば、特定の借入を隠して申立てを行うと、再生計画が取り消されるリスクがあります。また、個人再生後に債権者から保証人へ連絡が入ります。
事前に保証人に説明せず進めるとトラブルにつながるため、早い段階で状況を共有しておくことが大切です。
Q. 保証人が借金を支払えない場合はどうなる?
A. 保証人が支払いできない場合は、分割交渉や債務整理を検討する必要があります。一括請求に応じられない場合でも、状況に応じて柔軟な対応が可能です。
奨学金の場合、収入状況に応じて分割払いが認められる可能性があります。対応が難しい場合は、保証人自身も個人再生や自己破産を選択するケースもあるでしょう。
カードローンや住宅ローンなどは、返済額の減額や返済期間の延長といった条件変更を交渉できる場合もあります。
事前に選択肢を整理し、個人再生に強い弁護士と方針を検討しておくことで、スムーズに対応できます。
まとめ

個人再生をすると、本人の返済負担は軽くなる可能性がありますが、保証人には原則としてその減額の効果は及びません。
そのため、保証人がいる借金については、手続き前に影響を理解し、できるだけ早い段階で事情や今後の見通しを説明することが重要です。
また、住宅ローンがある場合は、住宅資金特別条項の利用によって扱いが異なることもあります。
借入の内容や保証の有無によって適切な進め方は変わるため、自己判断で進めず、早めに弁護士へ相談したうえで方針を決めることが大切です。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

