「個人再生を検討しているけれど、自分にもできるのだろうか」「まず何からやればよいのかわからない」このような悩みをお持ちの方はいませんか。
個人再生は、裁判所の認可を得ることで、借金を大幅に減額できる可能性がある手続きです。返済額は借金総額や財産状況、手続きの種類によって異なりますが、一定の条件を満たせば借金を5分の1程度まで減額できるケースもあります。
本記事では、個人再生を行う流れについて、専門家への相談から裁判所での審査、そして認可後の返済完了まで時系列で詳しく解説します。
借金問題に悩んでいて「もうどうにもできない」といった状況であっても、個人再生の流れを正しく理解すれば人生を再出発させる道筋が見えてくるでしょう。
個人再生の流れ【申立前・申立後・認可後】

個人再生の手続きは、大きく分けて準備期間と審査期間、返済期間の3つのステップで進みます。
各フェーズの流れと目安期間と内容は以下のとおりです。
| フェーズ | 主な内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 相談〜準備 | 弁護士への依頼・書類収集・受任通知 | 約1〜4か月 |
| 申立て〜開始決定 | 裁判所への提出・個人再生委員面談 | 約1〜2か月 |
| 開始決定〜認可 | 債権認否・再生計画案提出・書面決議 | 約4〜6か月 |
| 認可後〜完済 | 計画通りの分割返済・生活再建 | 原則3年 |
個人再生の期間については、以下の記事もあわせて参考にしてください。
個人再生にかかる期間は?手続きの流れや返済スケジュールなどを解説
【申立前】個人再生の流れ
個人再生の第一歩は、現状を正しく把握し、専門家の力を借りて生活環境を整えることから始まります。
この準備段階は、その後の手続きがスムーズに進むかどうかを左右する重要な期間です。自分一人で抱え込まず、プロの指示を受けながら必要な書類を揃えましょう。
1. 弁護士に相談する
まずは、債務整理の専門家である弁護士に相談し、今の自分の状況で個人再生が最適かどうかを判断してもらう必要があります。
個人再生を利用するには、以下の条件をクリアしなければなりません。
- 将来にわたって、反復継続して収入を得る見込みがあること(会社員、公務員のほか、安定した個人事業主や年金受給者も対象)
- 住宅ローンを除いた借金の総額が5,000万円以下であること
- 減額された後の借金を、3〜5年かけて支払える余力があること
弁護士に相談することで、前提として個人再生の対象なのかどうかが判明します。
2. 受任通知の発送で債権者から本人への直接連絡や督促が原則止まる
弁護士に正式に依頼し委任契約を結ぶと、各業者へ受任通知という書類が送られます。受任通知とは、弁護士が代理人として債務整理を受任したことを、債権者に知らせる書面です。
受任通知が債権者に届くと、貸金業者などから本人への直接の督促は原則として止まります。これにより督促から解放され、精神的な落ち着きを取り戻せるでしょう。
同時に、これまでの借金返済も一時的にストップします。ただし、この浮いたお金は生活費や娯楽に使うのではなく、裁判所へ納める費用(予納金)の準備や、将来の返済に向けた積み立てに充てる必要があります。
3. 家計収支や財産・債務の資料を準備する
裁判所に再生計画を認めてもらうためには、自分の財産や家計の状況を証明する資料を揃えなければなりません。
一例として以下のような資料が必要です。
- 直近2か月分以上の給与明細、源泉徴収票、課税証明書
- 過去2年分の全ての通帳の写し、保険の解約返戻金見込額証明書、退職金見込額証明書、車検証、不動産登記簿謄本など
- 同居家族全員の収支を記録した家計収支表
裁判所は、これらの書類をもとに、財産や収入、家計状況、再生計画の履行可能性などを確認します。
【申立後】個人再生の流れ
書類が整い、弁護士を通じて裁判所に申立てを行うと、いよいよ法的な審査が始まります。ここからは裁判所が選んだ監督役である個人再生委員とのやり取りや、実際に返済を続けられるかを確認する履行テストなどが続きます。
たとえば、東京地裁では、申立てから認可決定まで約25週間を目安に進む運用があります。ただし、裁判所や事案によって期間は変わる点に注意が必要です。
4. 裁判所へ申立てを行う
弁護士が作成した「個人再生申立書」と、その他の必要資料を裁判所へ提出します。この際、裁判所の事務手続きに必要な予納金の納付も必要です。
申立書には、借金が増えた経緯(陳述書)や現在の全財産、今後の返済予定などが詳細に記載されており、裁判官はこれを見て手続きを開始するかどうかを判断します。
提出後も裁判所から追加の質問や資料提出を求められることがあるため、迅速に対応できるよう弁護士と密な連携を保つことが大切です。
5. 個人再生委員の選任や面談に対応する
東京地裁など一部の裁判所では、個人再生委員が選任される運用があります。選任の有無は、裁判所や申立ての内容によって異なる点に注意しましょう。委員は、提出された書類が正しいかを確認し、申立人の財産状況や収入を調査します。
また、この時期から履行テストが始まります。これは、再生計画案で予定している毎月の返済額を、裁判所が指定する口座へ実際に積み立てる訓練です。履行テストで遅れや不足が生じると、返済能力に疑問を持たれ、手続きに悪影響が出るおそれがあります。そのため、履行テストのスケジュールは確実に守りましょう。
6. 再生手続開始決定を受ける
書類審査や委員面談、数回の履行テストを経て、裁判所が許可を下すと、「再生手続開始決定」が出されます。
これが認められると、次に「債権届出・認否」のステップへ移ります。銀行やカード会社などの債権者から届いた借金額の申告を確認し、最終的に減額対象となる借金の総額を確定させます。これはあくまでスタートラインですが、裁判所から再出発の可能性を認められた重要な一歩です。
7. 再生計画案を作成して提出する
確定した借金額をベースに、今後3年間(または5年間)でいつ、誰に、いくら支払うかを記した「再生計画案」を作成し、裁判所に提出します。
ここで重要なのは、最低弁済額のルールです。
- 小規模個人再生の場合は、借金総額に応じた法定の最低額、または自分の財産価値(清算価値)のいずれか高い方を支払う
- 給与所得者等再生の場合は、上記に加え、手取り収入から最低限の生活費を除いた可処分所得の2年分のうち最も高い金額を支払う
ここでいう最低限の生活費とは、個人の家計簿上の実際の生活費のことではなく、政令(民事再生法)によって住んでいる地域や家族構成ごとに機械的に算出される一律の基準額を指します。そのため、実際の生活費よりも可処分所得(=返済に充てるべき額)が高く計算され、小規模個人再生よりも返済総額が多くなる傾向があります。会社員の場合、想定より返済額が高くなるケースもあるため、事前のシミュレーションが不可欠です。
なお、住宅ローンがある場合は、住宅ローン特則を盛り込むことで、家を手放さずに他の借金を圧縮するプランで返済を行えます。
8. 書面決議・意見聴取を経て認可決定を受ける
小規模個人再生では、書面決議が行われます。債権者数の半分以上、または負債総額の過半数を持つ債権者が反対しなければ可決となる仕組みです。
給与所得者等再生の場合、債権者の決議は不要ですが、返済額が小規模個人再生より高くなる傾向があります。反対がない、あるいは要件を満たした場合、裁判所から「認可決定」が出され、借金の大幅な減額が法的に確定します。
【認可後】個人再生の流れ
認可決定が確定すると、その情報が官報に掲載されます。このあとは、認可された計画どおりに、3年間の分割返済を最後までやり遂げなければなりません。
もし返済が途中で止まってしまうと、せっかく減額された借金が元の金額に戻り、さらに遅延損害金まで加算されて一括請求されるという現実が待っています。
9. 再生計画どおり返済を始める
認可決定が確定した翌月など、指定されたタイミングから各債権者への振込を開始します。裁判所や弁護士が代わりに振り込んでくれるわけではないため(振込代行サービスを利用する場合を除く)、自分で振込先口座を管理し正確な送金が必要です。
履行テストで積み立ててきたお金を、第1回目の返済資金に充てられることもあるので、条件については確認してみてください。返済日が業者ごとに異なると管理ミスが起きやすいため、給与日の直後に全て振り込むなど、自分なりのルーティンを作ることが重要です。
10. 原則3年で分割返済を続ける
減額後の借金を、原則3年(特別な事情がある場合は最長5年)かけて完済を目指します。この期間中は「ブラックリスト」に載るため、クレジットカードの作成や新たな借入れは一切できません。これを不便と感じるかもしれませんが、むしろ「手元にある現金だけで生活する能力を養う期間」とポジティブに捉えましょう。
もし病気や解雇などでどうしても支払いが苦しくなった場合は、絶対に放置してはいけません。早めに弁護士に相談すれば、再生計画の変更などが認められる可能性があります。最後まで払い終えたとき、残りの借金はすべて法律的に免除され、経済的更生は完了です。
個人再生にかかる期間の目安

個人再生は生活を立て直す抜本的な解決策ですが、完了までには半年から1年程度の長い時間を要します。
この期間は裁判所に申立てる前の準備と申立てた後の審査の2段階にわけられます。全体像を知ることで、先の見えない不安を解消しましょう。
| 手続きの段階 | 期間の目安 |
|---|---|
| 相談から申立て準備 | 約1〜4か月 |
| 申立てから開始決定 | 約1〜2か月 |
| 決定から認可まで | 約4〜6か月 |
| 認可後の返済期間 | 原則3年 |
手続きを開始してから裁判所へ申立てるまでには、通常1か月から4か月程度の準備期間が必要です。裁判所へ申立てた後は、およそ半年(約25週間)かけて審査が行われます。
この期間中には、個人再生委員との面談や、半年間に及ぶ履行テストが行われます。
また、債権者からの異議申立てがないかを確認する期間も設けられます。これらすべてのハードルをクリアしたのちに認可決定が下ります。
個人再生をスムーズに進めるためのポイント

個人再生をスムーズに進行させるための、5つのポイントを紹介します。
個人再生を成功させるには、裁判所の認可を得るだけでなく、その後の返済を最後までやり遂げる決意が欠かせません。認可後も気を抜かないことが大切です。
1. 自分の借金を正しく把握する
個人再生をスムーズに進めるためには、借入先と残高を正確に整理することが大切です。特定の業者(銀行や勤務先の労働金庫など)を隠すと、不誠実な行為とみなされ手続きが打ち切られます。
また、清算価値(自分の財産額)を正確に出すためにも、正直な申告が必要です。知人や親族からの借り入れも債権者として報告しなければならない点に注意しましょう。
2. 書類を期限までに提出する
裁判所の手続きには厳格な期限があります。特に再生計画案の提出期限は、1日でも過ぎると即座に手続きが強制終了されるため注意してください。
通帳の記帳や領収書の保管を習慣化し、弁護士から求められた資料は即座に提出できる状態を整えておきましょう。
3. 無理のない再生計画にする
個人再生の認可を得るために、生活費を無理に削った計画を立てるのは禁物です。履行テスト期間中にこの金額を払っても、急な冠婚葬祭や医療費に対応できるかという点をしっかり検証してください。
会社員の場合、手取り収入から算出される可処分所得が返済基準になることもあり、想定より返済額が高くなるケースもあるため、事前のシミュレーションが不可欠です。
4. 認可後に返済の遅延をしないこと
認可後の3年間の返済において、一度でも滞納することは許されないと考えてください。返済の滞納が続き、再生計画が取り消されると、減額の効果が失われるおそれがあります。もし返済が困難な事態が起きたら、放置せずにすぐ弁護士に相談してください。
再生計画の変更により、返済期間を2年延長できる(合計5年)可能性があります。
5. 個人再生に詳しい弁護士に依頼する
個人再生は債務整理のなかでも複雑で、裁判所ごとに運用ルールが異なります。
実績豊富な弁護士に依頼することで、複雑な清算価値の算出や、住宅ローン特則の調整、個人再生委員との面談対策などを一任できます。信頼できるパートナー選びが成功の鍵です。
個人再生の費用相場

個人再生には、弁護士報酬と裁判所実費が必要です。主な費用は以下のとおりです。
| 項目の種類 | 費用の目安 | 内容 |
|---|---|---|
| 弁護士報酬 | 50万円〜60万円 | 書類作成、債権者対応、手続きサポート |
| 住宅ローン特則加算 | 5万円〜10万円 | 住宅ローンを残すための複雑な調整費用 |
| 裁判所実費 | 数万円 | 官報掲載費、印紙代、予納郵券 |
| 個人再生委員予納金 | 15万円〜25万円 | 手続きを監督する弁護士(再生委員)への報酬 |
個人再生の費用について、詳しくは以下の記事でも紹介しています。
個人再生の費用の相場は?負担を抑える方法や払えない場合の対処法を解説 | 千代田中央法律事務所
弁護士報酬は50〜60万円
弁護士への報酬相場は50〜60万円程度です。住宅ローン特則を利用する場合は、銀行との複雑な調整が必要になるため、追加費用がかかるのが一般的です。
多くの弁護士事務所では分割での支払いに対応してくれるため、遠慮せずに相談しましょう。
裁判所費用は数万円
印紙代や官報掲載代として数万円が必要です。ただし、個人再生委員が選任される場合は、その報酬として15〜25万円程度の予納金が必要になります。
この予納金は履行テストの積立金から充当できるケースもあるため、現金の準備については弁護士とよく相談しましょう。
個人再生に関するよくある質問

個人再生を検討する際によくある疑問を整理しました。
Q. 個人再生の失敗率は?
Q. 個人再生の落とし穴は?
Q. 個人再生で失うものは何ですか?
Q. 個人再生の失敗率は?
A. 個人再生の失敗率は、非常に低いのが現状です。令和6年司法統計年報の「第109表 再生既済事件数」によると、小規模個人再生と給与所得者等再生の既済事件のうち、「再生手続終結」となった割合は合計で約92.8%です。
失敗(廃止・不認可)の主な原因は、提出期限の遅れ、書類の虚偽記載などです。また、小規模個人再生の場合、債権者の過半数が反対だった場合も認可がおりず失敗となります。
個人再生が失敗する原因について詳しくは、以下の記事でも詳しくまとめています。
個人再生が失敗する原因と対策│成功させるポイントまとめ | 千代田中央法律事務所
Q. 個人再生の落とし穴は?
A. 個人再生の落とし穴のひとつとして、偏頗弁済(へんぱべんさい)に注意しましょう。偏頗弁済とは、手続き直前に親や友人にだけ借金を返したり、特定のカードだけ支払いを続けたりする行為です。
これを行うと、その返済額が自分の財産に加算され、結果として返済総額が増えてしまうというペナルティが生じます。
Q. 個人再生で失うものは何ですか?
A. 個人再生で失うものは、数年間の新規借り入れ能力、ローン返済中の車などです。具体的には、信用情報に傷がつくためクレジットカードは使えなくなるデメリットがあります。
一方で、借金を整理しながらも、マイホームだけは残せるのはメリットです。個人再生で失うものと残せるものをしっかり把握したうえで手続きを進めましょう。
まとめ

借金問題の解消に向けた個人再生は、家計再建を目指す中長期的な道のりで行う債務整理です。住宅ローン特則を活用してマイホームを守りつつ、借金を大幅に減額できる点は、自己破産を避けたい方にとって有効な制度です。
手続きを完遂するには、履行テストによる返済能力の証明や、書類提出期限の遵守が欠かせません。家計の再建を成功させるためには、ひとりで悩まず、弁護士に依頼し、適切なサポートを受けましょう。正しい選択肢を取ることが、平穏な日常を取り戻すための確実な近道となります。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

