個人再生を検討する際、「どのくらいの確率で成功するのか」「途中で失敗することはあるのか」と不安に感じる方もいるでしょう。
個人再生は、裁判所に再生計画が認可される割合でみると、9割を超える高い水準にあります。一方で、書類の不備や履行テストの失敗、無謀な返済計画などにより、手続きが廃止されたり不認可になったりする可能性もあります。
本記事では、個人再生の成功率の目安や失敗する主な理由、成功に近づけるための5つのステップをわかりやすく解説します。
個人再生の成功率は約93%

最高裁判所事務総局の「令和6年司法統計年報」によると、個人再生の成功率(認可率)は約93%と高く、多くのケースで再生計画が認められています。
具体的には、小規模個人再生と給与所得者等再生の件数を合計した総数10,061件に対して、再生計画が認可され手続きが完了した状態である「再生手続終結」が9,308件と、多くの手続きが認可されています。
ただし、この数字はあくまで認可された段階を示すものです。実際には、認可後に3年から5年かけて返済を続け、完済して初めて生活再建が実現します。
個人再生は成功率は高いものの、再生計画案の提出遅れや履行テストの失敗、債権者の不同意などがあると、手続廃止や不認可につながるおそれがあります。
成功率だけを見るのではなく、その後の継続的な返済も考慮し、無理のない再生計画を立てることが大切です。
個人再生が失敗する主な理由

個人再生は高い成功率がある一方で、裁判所のルール違反や返済能力の不足などにより失敗するケースもあります。主な原因は、以下のとおりです。
- 再生計画案の提出遅れ
- 債権者の不同意
- 履行テストでの返済遅延
さらに、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)の条件を満たしていない場合や、特定の債権者だけに返済する偏頗弁済(へんぱべんさい)も重大な失敗要因です。
万が一、個人再生が認められなかった場合でも、任意整理や自己破産といった別の解決策が残されています。弁護士に相談しながら、状況に応じて適切な手段を検討しましょう。
個人再生を成功させる方法5ステップ

個人再生では、手続きの流れと注意点を把握することで、失敗リスクを抑えやすくなります。
ここでは、具体的な5つのステップを解説します。
- 専門知識のある弁護士へ早めに相談・依頼する
- 必要書類や収支状況を整理し事前準備を徹底する
- 裁判所や再生委員の指示に正確かつ迅速に対応する
- 無理のない返済計画(再生計画案)を作成する
- 認可後も返済を滞らせず継続する
1. 専門知識のある弁護士へ早めに相談・依頼する
個人再生を成功させるには、早い段階で弁護士に相談し、認可の可能性を事前に見極めることが重要です。
個人再生は法的な手続きも多く、弁護士のサポートを受けるのが一般的です。その結果、高い成功率につながっています。
とくに、住宅ローン特則の適用可否や返済計画の妥当性は、個人で判断すると見誤るリスクがあります。早期に弁護士に相談することで、適切な手続きや準備ができ、失敗を回避しやすくなるでしょう。
2. 必要書類や収支状況を整理し事前準備を徹底する
続いて、弁護士にサポートを受けながら、必要書類や収支状況の整理をしましょう。裁判所は提出された資料をもとに返済能力を判断するため、成功率を高めるためには事前準備が重要です。
住民票や収入証明に加え、家計収支表の作成が求められ、日々の支出を具体的に示す必要があります。毎月の収支が把握できていない場合、「返済継続が難しい」と判断される可能性があります。
また、事前に支出を見直し、毎月の返済額を明確にしておくことで、現実的な再生計画を立てられるでしょう。
3. 裁判所や再生委員の指示に正確かつ迅速に対応する
必要書類や収支状況が整理できたら、裁判所や再生委員の指示に迅速に対応することを心がけましょう。再生委員とは、裁判所が選ぶ専門家(主に弁護士)です。主な役割は、財産や返済計画の妥当性を確認することです。
期限や指示を守れないと、手続きが中断されるリスクがあります。とくに履行テストでは、数ヶ月間、指定された金額を期限通りに積み立てる必要があります。
1回でも入金が遅れると、計画性がないと判断され、最悪の場合、個人再生が認められません。裁判所や再生委員の指示はこまめに確認し、確実に対応できる体制を整えることが重要です。
4. 無理のない返済計画(再生計画案)を作成する
必要書類を提出し、裁判所とのやり取りも問題なく進んだら、弁護士と協力し返済計画(再生計画案)を作成しましょう。
返済額が高すぎると、継続できないと判断されるため、無理のない計画を立てることが重要です。個人再生では、財産額以上の返済が必要となる清算価値保障原則によって、想定より返済額が増えるケースもあります。
自宅の評価額が高い場合、毎月の返済額が大きくなり、家計を圧迫するかもしれません。将来の支出も見据え、余裕を持った返済計画を立てることが重要です。
5. 認可後も返済を滞らせず継続する
無事に個人再生が認められたら、確実に返済を継続することが大切です。途中で支払いが滞ると、認可が取り消される可能性があります。
個人再生は、一般的に3年から5年かけて返済を続ける必要があります。その間、1回の滞納がきっかけで手続きが無効となり、減額前の借金に戻るケースもあります。
こうしたリスクを防ぐためには、返済期日を確認し、返済計画に沿った支払いを最優先にした家計管理が欠かせません。
個人再生できない場合の5つの対処法

個人再生が認められなかった場合でも、状況に応じた対処法を選ぶことで借金問題は解決できます。
ここでは、個人再生できない場合の5つの対処法を解説します。
個人再生の条件やできないケース、メリット・デメリットについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
個人再生の条件とは?できないケースやメリット・デメリットも解説 | 千代田中央法律事務所
1. 弁護士へ相談し状況に応じた最適な手続きを選ぶ
個人再生が認められなかった場合は、まず弁護士に相談することが重要です。不認可の原因を正確に把握しないまま次の行動を選ぶと、同じ失敗を繰り返す可能性があります。
認められない原因が、書類不備なのか、返済能力不足なのか、債権者の反対なのかによって取るべき対処は異なります。
弁護士であれば原因を客観的に分析し、任意整理や自己破産など含め最適な方法を提示してくれるでしょう。ひとりで悩まず、専門家の視点を取り入れることが解決への近道です。
2. 返済計画を見直し、再度個人再生を検討する
個人再生の不認可の原因が一時的な問題であれば、再度個人再生を検討することも可能です。ただし、同じ条件のまま再申立てをしないことがポイントです。
たとえば、返済額が高すぎて認められなかった場合は、支出を見直して毎月の余剰資金を確保する必要があります。また、債権者の反対が原因であれば、給与所得者等再生のような別の手続きを検討するのも有効です。
不認可の原因に応じて改善策を講じることで、個人再生の成功率を高められるでしょう。
3. 収入改善や支出の見直しで返済体制を立て直す
裁判所は継続的に返済できるかどうかを最も重視するため、返済能力が不足している場合は、家計の見直しが不可欠です。
具体的には、スマホ料金やサブスクを見直し、毎月1万円の支出を削減できれば、その分を返済に回せます。また、副業や転職による収入増加も有効な手段です。
家計収支を明確にし、安定して返済できる状態を作ることで、再申立てや他の債務整理を選択する場合でも、有利に手続きを進められるでしょう。
4. 任意整理で返済負担の軽減を図る
借金総額が比較的少ない場合は、任意整理を選択するのも有効です。任意整理は裁判所を通さず、債権者と直接交渉して利息をカットする手続きです。
年利15%の借入であれば、利息を止めるだけで総返済額を減らせる可能性があります。手続きがシンプルで、家族に知られにくい点もメリットです。
ただし、元本は減らせないため、収入内で完済できるかを事前に確認することが重要です。
5. 自己破産を検討し借金の免責を目指す
個人再生で借金を減額しても返済の見込みが立たない場合は、自己破産を検討することが現実的です。自己破産では、裁判所の判断により借金の支払い義務が免除されます。
個人再生で返済が困難と判断された事実は、支払不能の証明として自己破産の認可に役立ちます。
収入が大幅に減少している場合は、無理に返済を続けるよりも、自己破産で早期にリセットする方が生活再建しやすいでしょう。
ただし、資産処分や職業制限などの制約があるため、弁護士に相談し、自分に合う債務整理を選択することが大切です。
自己破産について、手続きの方法や条件、費用相場など詳しくは以下の記事を参考にしてください。
自己破産とは?手続きの進め方や条件、費用相場、注意点を解説 | 千代田中央法律事務所
個人再生の成功率に関するよくある質問

個人再生の手続きを進める際、「本当にマイホームを守れるのか」「自分だけ失敗しないか」と不安を感じるケースもあるでしょう。
ここでは、個人再生の成功率に関するよくある疑問に回答します。
Q. 個人再生で住宅ローン特則を利用すると成功率は下がる?
Q. 弁護士に依頼すると個人再生の成功率は上がる?
Q. 個人再生のメリット・デメリットは?
Q. 個人再生に失敗すると手続き費用はどうなる?
Q. 個人再生に反対する業者はいる?
Q. 個人再生で住宅ローン特則を利用すると成功率は下がる?
A. 個人再生で住宅ローン特則を利用したからといって、それだけで成功率が下がるわけではありません。ただし、利用には一定の条件があるため、事前に要件を満たしているかを確認しておくことが重要です。
たとえば、固定資産税やマンションの管理費を滞納している場合、住宅ローン特則の適用が認められない可能性があります。また、税金の滞納により自宅に差押えがされているケースでも、原則利用できません。
住宅ローン特則自体が不利になるわけではなく、条件を満たしているかどうかが結果を左右します。事前に弁護士へ相談し、適用可否を確認しておくことで、手続きの失敗リスクを抑えやすくなります。
Q. 弁護士に依頼すると個人再生の成功率は上がる?
A. 弁護士などの専門家に依頼すれば、個人再生の成功率が必ず上がるわけではありませんが、手続きがスムーズに進みやすくなるメリットはあります。
個人再生は書類作成や要件判断が複雑で、自己判断では見落とす可能性があります。現実的な返済計画か、住宅ローン特則は利用するべきかなどは、専門的な判断が必要です。
弁護士は申立て前に状況を整理し、認可の見込みが低い場合は別の手続きを提案してくれます。そのため、借金問題を解決するためには、弁護士に依頼したほうがよいでしょう。
Q. 個人再生のメリット・デメリットは?
A. 個人再生のメリットは、持ち家を守りながら借金を大幅に減額できる点です。借金総額に応じて、原則として5分の1〜10分の1程度まで圧縮できます。
一方で、手続きが複雑で書類準備に時間がかかる点はデメリットです。また、減額するとはいえ、借金を3年から5年かけて確実に返済し続ける負担もあります。
メリットとデメリットを把握し、弁護士に相談しながら、最適な解決策を検討しましょう。
個人再生のメリット・デメリットについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
個人再生とは?メリットやデメリット・具体的な手順や利用時の注意点を解説 | 千代田中央法律事務所
Q. 個人再生に失敗すると手続き費用はどうなる?
A. 個人再生に失敗し不認可となった場合でも、それまでにかかった費用が返金されることは原則ありません。裁判所に納める予納金や、再生委員への報酬などは手続きの進行とともに消費されるためです。
ただし、個人再生で返済能力がないと判断された事実は、自己破産における支払不能の判断材料となる可能性があります。そのため、費用が無駄になったと考えるだけでなく、次の手続きにつなげる視点を持つことが重要です。
費用負担が難しい場合でも、法律事務所の分割払いや、法テラスの民事法律扶助制度などを利用すれば、費用負担を抑えながら自己破産や任意整理を検討できます。
以下の記事では、個人再生の費用に関する内容や、債務整理で費用が準備できない場合の対処法を解説しています。
個人再生の費用の相場は?負担を抑える方法や払えない場合の対処法を解説 | 千代田中央法律事務所
Q. 個人再生に反対する債権者はいる?
A. 日本弁護士連合会の2023年調査によると、小規模個人再生の事件のうち、1社でも不同意の債権者が存在した事件は5.24%(573件中30件)でした。
なお、実際に手続が否決されるには債権者数または債権額の過半数の反対が必要であり、1社の反対だけでは手続は停止しません。
債権者が手続きに反対するケースはありますが、実際に反対によって否決される割合は限定的と言えます。多くのケースで手続きが成立していることから、債権者側も一定の回収が見込める場合には個人再生に応じる傾向があると考えられるでしょう。
ただし、特定の業者や借入状況によっては不同意となる可能性があります。事前に債権者の構成や傾向を把握し、リスクがある場合は弁護士に相談しましょう。
参照:2023年破産事件及び個人再生事件記録調査|日本弁護士連合会
まとめ

個人再生は、成功率(裁判所の認可率)でみると9割を超えており、利用しやすい手続きと言えます。ただし、成功率が高いからといって、誰でも問題なく進められるわけではありません。
書類提出の遅れや履行テストの失敗、無理のある返済計画、財産状況の見落としなどが原因で、手続きが廃止されたり不認可となったりすることがあります。自宅を残したい場合に住宅ローン特則を利用する場合は、より丁寧な事前準備と正確な判断が欠かせません。
個人再生を成功させるには、早い段階で弁護士に相談し、必要書類や家計状況を整理した上で、現実的な返済計画を立てることが大切です。不安がある場合は自己判断で進めず、状況に合った方法を弁護士と確認しながら進めましょう。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

