共有分割とは、相続した不動産を複数の相続人で共有名義にして引き継ぐ遺産分割方法です。
相続人全員が財産を取得できるため公平に見える一方で、不動産の売却や活用の際に共有者同士の意見調整が必要になる場合があります。そのため、将来的な管理や処分の方法まで見据えて検討することが大切です。
本記事では、共有分割の仕組みやメリット・デメリット、他の分割方法との違いについて解説します。また、共有状態で起こりやすいトラブルや、解消方法についても紹介しています。
共有分割を含め遺産相続についてわかりやすく理解したい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
遺産相続は何からはじめる?手続きの流れ・期限や分割方法、相続税の申告まで解説
共有分割とは?

共有分割とは、相続した不動産を複数の相続人が共有名義で取得する遺産分割方法です。
たとえば、実家を長男・次男・長女の3人で相続し、それぞれ法定相続分に応じた持分を取得するケースが該当します。不動産を売却せずに相続人全員が財産を取得できる点が特徴です。
一方で、共有名義にすると将来の売却や活用の際に共有者同士の調整が必要になるため、メリットだけでなく注意点も理解した上で選択することが大切です。
共有分割を理解するためには、不動産相続全体の流れや分割方法について把握しておくことも大切です。詳しくは以下の記事をご覧ください。
不動産相続の手続きはどのように進める?期限・費用・税金・分け方まで解説
共有分割の具体例
共有分割では、一つの不動産を複数の相続人で共有します。
たとえば、亡くなった親が住んでいた実家を、長男・次男・長女の3人で相続するケースがあります。長男が2分の1、次男と長女がそれぞれ4分の1ずつの持分を取得し、実家を共有名義にするのが共有分割です。
相続時は公平に分けられたように見えますが、将来実家を売却したり建て替えたりする際には、共有者同士で話し合いが必要になります。そのため、共有分割を選ぶ場合は、将来的な管理や処分の方法もあわせて検討しておくことが重要です。
現物分割・代償分割・換価分割との違い
共有分割以外にも、不動産の相続には現物分割・代償分割・換価分割といった方法があります。それぞれ特徴が異なるため、状況に応じて適した方法を選ぶことが大切です。
| 分割方法 | 概要 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 共有分割 | 複数人で共有名義にする | 売却せずに保有できる | 将来的な管理や処分でトラブルになりやすい |
| 現物分割 | 財産をそのまま相続人へ分配する | 手続きが比較的シンプルで財産を残せる | 財産価値に差が生じやすい |
| 代償分割 | 一人が財産を取得し、他の相続人へ代償金を支払う | 不動産を維持しながら公平性を確保しやすい | 代償金を支払う資金が必要になる |
| 換価分割 | 財産を売却して現金で分配する | 分配額を調整しやすい | 財産を手放すことになる |
どの分割方法が適しているかは、不動産の利用予定や相続人の意向によって異なります。共有分割は選択肢の一つですが、将来的な管理や売却も見据えながら慎重に検討しましょう。
各遺産相続の詳しい内容は、それぞれ以下の記事を参考にしてください。
現物分割とは?メリット・デメリットや流れ、費用、他の分割方法との違いを解説
代償分割とは?代償金の決め方・税金・支払えない場合の対応まで解説
換価分割とは?メリットやデメリット、手続きの流れをわかりやすく解説
共有分割を選択するメリット

共有分割には、不動産を売却せずに相続できることや、相続人全員が財産を取得できることなどのメリットがあります。
状況によっては円滑に遺産分割を進めやすくなるため、共有分割が選ばれるケースもあるでしょう。
ここでは、共有分割のメリットを紹介します。
不動産を売却せずに遺産分割を成立させられる
共有分割のメリットは、不動産を売却せずに遺産分割を進められることです。
たとえば、相続財産が実家のみで、相続人の間で売却の意見がまとまっていない場合でも、共有名義にすることで相続手続きを進められます。思い出のある実家をすぐに手放したくない場合にも選択肢の一つになるでしょう。
不動産を残したまま相続できるため、売却時期や活用方法を検討する時間を確保できる点も強みといえます。
相続人全員が財産を取得できる
共有分割では、相続人全員が持分を取得できるため、公平感を得やすいというメリットがあります。
相続人が兄弟3人の場合、それぞれの持分割合を決めて共有名義にすることで、特定の人だけが不動産を取得する状況を避けられます。
また、アパートや賃貸マンションなどの収益不動産であれば、持分割合に応じて家賃収入を受け取ることも可能です。相続人全員が不動産の権利を持ち続けたい場合に適した方法です。
不動産だけでなく、株式を複数の相続人で相続するケースもあります。株式相続の流れや注意点については、以下の記事をご覧ください。
株式の相続手続きは5ステップ!税金・分割方法、売却の流れ、注意点まで解説
今すぐ売却・活用を決めずに選択肢を残しておける
共有分割は、不動産の売却や活用方法をすぐに決められない場合にも有効です。
たとえば、実家を売却するか賃貸に出すかで意見が分かれている場合、一旦共有名義にしておくことで相続手続きを進めながら今後の方針を検討できます。
将来の活用方法を考える時間を確保できる点はメリットですが、共有状態が長引くとトラブルにつながるおそれもあります。そのため、共有分割を選ぶ場合は、将来の方針についても話し合っておくことが大切です。
共有分割を選択するデメリット

共有分割は、不動産を売却せずに相続できる一方で、将来的なトラブルにつながりやすい分割方法です。相続時は公平に見えても、売却や管理、次の相続が発生した際に問題が表面化することがあります。
共有分割を選ぶ前に、どのようなリスクがあるのか確認しておきましょう。
不動産の売却や活用の範囲によっては共有者全員の同意が必要になる
共有不動産は、売却や建て替えなどの重要な決定を行う際に、共有者全員の同意が必要になる場合があります。
仮に共有者の一人が「売却したい」と考えていても、他の共有者が反対すれば手続きを進められません。また、建物の建て替えや大規模な活用についても意見がまとまらず、長期間放置されるケースもあるでしょう。
共有者が増えるほど意思決定は難しくなるため、将来的な活用方法も見据えて共有分割を検討することが大切です。
相続が重なると権利関係が複雑化しやすい
相続を繰り返すことで権利関係が複雑になることも、共有分割の問題点の一つです。
たとえば、兄弟2人で共有していた不動産でも、その後それぞれに相続が発生すると、子どもや配偶者へ持分が引き継がれ、共有者が増えていきます。
共有者が多くなると連絡や意思確認が難しくなり、売却や管理について合意を得ることが困難になるケースも少なくありません。そのため、将来的な相続まで見据えて判断しましょう。
固定資産税や管理費の負担でトラブルになりやすい
共有不動産では、固定資産税や修繕費などの負担を巡ってトラブルになることがあります。
固定資産税の納税通知書は代表者に送付されるため、一人が立て替えて支払うケースも少なくありません。また、屋根や外壁の修繕が必要になった際に、費用負担について意見がまとまらないこともあります。
共有者同士の関係が良好なうちは問題になりにくいものの、長期間共有状態が続くと負担割合を巡る争いにつながります。共有分割を選ぶ場合は、費用負担のルールや精算方法についてあらかじめ決めておきましょう。
共有分割が適しているケース・適していないケース

共有分割は将来的なトラブルにつながるリスクがあるため、慎重な判断が求められます。ただし、相続人同士の関係性や不動産の利用目的によっては、有効な選択肢となります。
ここでは、共有分割を選ぶべきケースと避けた方がよいケースを確認しておきましょう。
| 判断ポイント | 共有分割が適しているケース | 共有分割が適していないケース |
|---|---|---|
| 相続人の関係性 | 相続人全員が不動産を活用する予定がある | 誰も住む予定がなく売却を検討している |
| 将来の方針 | 賃貸アパートや駐車場など家賃収入を分配できる | 収益を生まない空き家や遊休地である |
| 管理体制 | 相続人が少なく、話し合いがしやすい | 相続人が多い、または遠方に住んでいる |
| 不動産の状況 | 当面売却や建て替えの予定がない | 将来的に売却や建て替えを予定している |
共有分割が適しているケース
共有分割が適しているのは、相続人全員が不動産の保有や活用について共通の考えを持っている場合です。
たとえば、親から相続した賃貸アパートを兄弟で共有し、家賃収入を持分割合に応じて受け取るケースが考えられます。また、「数年後に売却する」「管理会社へ委託する」など、将来の方針について事前に合意できている場合も共有分割を選択しやすいでしょう。
ただし、共有分割は長期間続けるほど管理や意思決定が複雑になりやすいため、共有を続ける期間や売却時期、費用負担のルールなどをあらかじめ決めておくことが重要です。
共有分割が適していないケース
共有分割は、相続人同士の意見がまとまりにくい場合や、将来的に売却を予定している場合には適していません。
具体的には、兄は売却したいと考えている一方で、弟は残したいと考えているようなケースでは、共有状態になることで意思決定が難しくなります。また、相続人が複数いる場合は、将来さらに相続が発生して共有者が増え、権利関係が複雑になる可能性もあります。
空き家になる見込みの不動産や、管理費・固定資産税の負担を巡って対立が生じる可能性がある場合は、現物分割や換価分割、代償分割など他の方法も含めて検討したほうがよいでしょう。
共有分割後に想定されるトラブルと解消方法

共有不動産でトラブルが発生した場合は、いきなり裁判になるわけではありません。
共有不動産の解消は、まず共有者同士の協議で解決を目指します。協議で合意できない場合は、民事調停を利用する方法もあります。
最終的に合意できないときは、共有物分割請求訴訟により裁判所へ共有状態の解消を求めるという流れです。なお、遺産分割が完了していない場合は、遺産分割調停・審判の対象になることがあります。
共有状態を長期間放置すると問題が複雑化しやすいため、早めに解決方法を検討することが大切です。
ここでは、ケース別のトラブルと解消法を紹介します。
共有者間で意見が対立した場合|話し合いで売却や持分整理を進める
共有不動産を巡るトラブルは、まず共有者同士の話し合いによる解決を目指します。
たとえば、実家を売却したい人と残したい人で意見が分かれた場合は、不動産全体を売却して代金を分ける方法や、一人が他の共有者の持分を買い取る方法などが考えられます。また、共有者同士で持分を譲渡し、単独所有に整理するケースもあるでしょう。
話し合いで解決できれば、裁判所の手続きを利用する必要がなく、費用や時間の負担も抑えられます。共有状態が長引くほど解決が難しくなるため、早い段階で協議を行うことが重要です。
話し合いで解決できない場合|共有物分割調停・審判を利用する
話し合いで解決できない場合は、裁判所の手続きを利用する方法があります。
共有物分割調停では、裁判所の調停委員が間に入り、共有者それぞれの意見を聞きながら合意形成を目指します。当事者同士が直接交渉する必要がないため、感情的な対立が生じている場合でも話し合いを進めやすい点が特徴です。
調停でも合意に至らない場合は、裁判所が判断を示す審判手続きへ進みます。共有者同士で解決が難しい場合は、早めに専門家へ相談することも検討しましょう。
共有者同士の話し合いで解決できない場合は、遺産分割調停などの裁判所手続きが必要になることもあります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
遺産分割調停とは?手続きの流れと費用・争点をわかりやすく解説
共有状態を解消できない場合|共有物分割請求訴訟を検討する
調停や協議でも解決できない場合は、共有物分割請求訴訟を提起できます。共有物分割請求訴訟とは、共有者の一人が裁判所に対して共有状態の解消を求める手続きです。
裁判所は事情を踏まえた上で、現物分割や持分買取、売却による分配などの方法を検討します。ただし、最終的に競売による売却が選択されるケースもあります。
競売では市場価格より低い価格で売却されることがあるため、共有者全員にとって不利益になる可能性があります。訴訟はあくまで最終手段として考え、可能な限り協議や調停での解決を目指すことが望ましいでしょう。
共有分割に関するよくある質問

共有分割について検討している方の中には、「共有名義のままでも問題ないのか」「将来どのような手続きが必要になるのか」と疑問を持つ方もいるでしょう。
ここでは、共有分割に関してよくある質問にわかりやすく回答します。
Q. 共有物分割請求とは?
Q. 共有分割後の相続登記はどうすればよい?
Q. 共有分割をすると所得税や固定資産税などの税金はどうなる?
Q. 共有状態を解消するときに共有物分割登記や共有物分割協議書は必要?
Q. 共有物分割請求とは?
A. 共有物分割請求とは、共有状態を解消するために共有者が行える法的な手続きです。
共有不動産は、共有者全員の同意がなければ売却できません。そのため、話し合いで解決できないときは、裁判所に共有物分割請求を行い、共有状態の解消を求められます。
裁判所は事情に応じて、現物分割や持分の買取、売却による代金分配などの方法を検討します。共有状態を続けることが難しい場合の、最終的な解決手段といえるでしょう。
Q. 共有分割後の相続登記はどうすればよい?
A. 共有分割を行った場合は、相続人それぞれの持分を反映した相続登記を行います。
相続登記は2024年4月から義務化されており、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。登記を行うことで、不動産の所有者が正式に記録されます。
必要書類には戸籍謄本や遺産分割協議書などがあります。手続きに不安がある場合は、弁護士をはじめ、専門家へ相談するとスムーズに進められるでしょう。
Q. 共有分割をすると所得税や固定資産税などの税金はどうなる?
A. 共有分割をしただけでは、原則として所得税は発生しません。一方で、不動産を共有で所有することになるため、固定資産税は各共有者が持分割合に応じて負担するのが一般的です。
ただし、納税通知書は代表者へ送付されるため、実際の負担方法について事前に話し合っておくことが重要です。
また、将来不動産を売却した場合は、譲渡所得税が発生する可能性があります。税金の取り扱いは状況によって異なるため、売却前に確認しておきましょう。
Q. 共有状態を解消するときに共有物分割登記や共有物分割協議書は必要?
A. 共有状態を解消する場合は、共有物分割協議書を作成し、その内容に基づいて登記手続きを行うのが一般的です。
共有物分割協議書には、誰がどの不動産を取得するのか、代償金の支払いがあるのかなどを明記します。協議内容を文書化しておくことで、後のトラブル防止にもつながるでしょう。
共有状態の解消後は名義変更が必要になるため、法務局で登記手続きを行う必要があります。内容によって税金の扱いも変わるため、専門家へ相談しながら進めると安心です。
まとめ

共有分割は、不動産を売却せずに複数の相続人で引き継ぐ遺産分割方法です。相続人全員が財産を取得できる一方で、売却や大規模な活用を行う際には共有者間での調整が必要になる場合があります。
また、共有状態が長期間続くと、相続の発生によって権利関係が複雑になることもあります。そのため、共有分割を選択する際は、将来の管理方法や共有状態を解消するタイミングについてもあらかじめ話し合っておくことが重要です。
共有分割以外にも、現物分割・代償分割・換価分割といった方法があります。それぞれの特徴を比較しながら、自分たちの状況に合った分割方法を検討しましょう。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

