親が残した実家や農地を引き継ぎたいと思っても、ほかの相続人から「自分の取り分はどうなるのか」と求められれば、容易には話を進められません。
相続財産の多くが不動産で、手元の現金が少ない場合、代償金をいくら支払うのか、そもそも支払えるのかといった問題があります。
こうした場面で検討されるのが、特定の相続人が不動産などを取得し、ほかの相続人へ金銭を支払って調整する「代償分割」です。
この記事では、代償分割の仕組みや代償金の決め方、税金の注意点、支払えない場合の対応策を解説します。実家や事業用財産を残す方法を検討する前に、まずは代償分割の基本と注意点を整理していきましょう。
代償分割とは?

代償分割とは、特定の相続人が不動産や事業用財産などの相続財産を取得し、その価値に相当する金銭(代償金)をほかの相続人へ支払う遺産分割の方法です。
遺産分割の方法は1種類に限定されておらず、遺言による分割禁止などの例外がない限り、共同相続人の協議によって決められます(民法907条1項)。
たとえば、評価額3,000万円の実家を3人の子(長男・長女・次女)が均等相続する場合、長男が実家を取得し、長女・次女にそれぞれ1,000万円を支払えば、3人が1,000万円相当を均等に受け取った形になります。
代償分割が選ばれる主な場面は、次の3つです。
- 実家など、売らずに手元に残したい不動産がある場合
- 農地・事業用財産・自社株など、特定の相続人へ承継させたい財産がある場合
- 相続財産の大半が不動産で、現金が少ない場合
代償分割は財産の形を変えずに相続を整理できる反面、代償金を用意できることが前提条件となります。
代償分割を進める際は、相続人同士の調整や法的な判断が必要です。遺産相続にお悩みの際はぜひ千代田中央法律事務所にご相談ください。
代償分割とほかの遺産分割方法の違い

遺産の分割方法には代償分割のほかに、3種類の方法があります。それぞれの特徴を比較すれば、代償分割が選ばれる理由とほかの方法を選ぶべき場面が明確になります。
代償分割を含めた遺産分割の方法は、以下のとおりです。
| 分割方法 | 財産の形 | 主な利点 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 代償分割 | 財産を守りながら金銭で調整 | 不動産を手放さずに公平性を保てる | 代償金の資力が必要 |
| 現物分割 | そのままの形で割り振る | 手続きが比較的シンプル | 取り分の不公平が生じやすい |
| 換価分割 | 売却して現金化 | 金額で均等に分けやすい | 実家を手放すことになる |
| 共有分割 | 共有名義のまま | その場で合意しやすい | 将来の管理・処分で揉めやすい |
現物分割:財産をそのまま分ける方法
現物分割とは、遺産をそのままの形で各相続人に割り振る方法です。長男が実家を、次男が預貯金を引き継ぐといった形で、手続きが比較的シンプルです。
財産の種類や価値が相続人の取り分とかみ合わない場合は不公平が生じやすく、代償分割のように金銭で取り分の差を補填する仕組みがありません。
換価分割:財産を売却して現金を分ける方法
換価分割とは、不動産などを売却して現金に換え、代金を相続人で分ける方法です。金額で均等に分けやすく、公平性が保ちやすいのが利点です。
実家を守ることを優先する場合は代償分割が適していますが、誰も住む予定がない不動産がある場合や代償金を用意できない場合には、換価分割が選ばれる傾向があります。
売却には、仲介手数料などのコストと時間がかかります。
共有分割:複数の相続人で財産を共有する方法
共有分割とは、不動産などを複数の相続人の共有名義のままにする方法です。
その場では合意が取りやすい反面、共有不動産全体の売却や大規模な変更・処分には原則として共有者全員の同意が必要です。
管理行為や軽微な変更は持分価格の過半数で決められる場合がありますが、共有者が増えるほど合意形成や管理が複雑になります。
相続が次の世代に引き継がれると共有者が増え、権利関係がさらに複雑になりがちです。ほかの方法で合意形成が難しい場合の選択肢として検討されることがあります。
代償分割のメリット

代償分割を選ぶことで得られるメリットは、主に3つあります。財産の種類や相続人の状況に照らして、代償分割が適した場面かどうかを確認しましょう。
1. 実家などの不動産を売却せずに守れる
代償分割のメリットは、不動産を売らずに特定の相続人が引き継げる点です。親の代から住み続けている実家や、引き続き居住を希望する相続人がいる場合に適しています。
換価分割では不動産の売却が前提ですが、代償分割では代償金で取り分の差を補填するため、実家を守りながら相続を完了できる点が特徴です。
2. 事業用財産・農地・自社株を特定の相続人に承継できる
代償分割は、事業用財産や農地、自社株のように、複数人で分けると管理が難しくなる財産にも向いています。
農地や事業用設備、非上場株式である自社株は、単純に人数で分ければよい財産ではありません。複数の相続人が共有すると、売却や活用、経営判断のたびに調整が必要になります。場合によっては、事業や農業の継続に影響が出ることもあるでしょう。
事業や農地を引き継ぐ相続人が財産を一括で取得し、ほかの相続人には代償金を支払えば、相続分を調整できます。
農地を相続した場合は、農地法第3条の3に基づき、農業委員会への届出が必要です。届出期限や必要書類は自治体によって案内が異なるため、相続した農地の所在地を管轄する農業委員会に確認しましょう。
自社株は評価算定が複雑なこともあるため、事業承継で代償分割をする際は専門家へ相談するのが望ましいです。
3. 遺産分割の公平性を保ちやすい
代償分割では、財産を取得した相続人が代償金を支払うため、財産の価値に応じて取り分を調整できます。
不動産や事業用の財産のように、分けにくい財産がある場合でも、金銭で取り分を調整できるため、相続人間の不公平感を軽減しやすいのがメリットです。
ただし、公平性を保つには、代償金の算定基準について相続人同士が合意していることが前提です。不動産や株式の評価額に意見の違いがあると、代償金の金額をめぐって争いになることがあります。
そのため、先に客観的な評価を確立しておくことが重要です。感覚ではなく、評価資料や専門家の意見をもとに話しあうと、納得しやすい遺産分割につながります。
代償分割のデメリット

代償分割は、分けにくい財産を残しやすい一方で、代償金の準備と財産評価をめぐる調整が負担になりやすい方法です。
代償分割の具体的なデメリットは以下のとおりです。
代償金を支払うための資金を用意する必要がある
代償分割では、財産を取得する相続人が、ほかの相続人に代償金を支払う必要があります。そのため、現金や預貯金に余裕がない場合は、支払い自体が大きな負担になるでしょう。
不動産の評価額が高い場合は注意が必要です。実家や土地を取得できたとしても、その価値に応じた代償金を用意しなければなりません。
資金が不足する場合は、分割払いにする、ローンを利用する、換価分割へ切り替えるといった対応を検討しましょう。
不動産などの評価額をめぐって揉めやすい
代償分割では、不動産などの評価額をどのように決めるかで揉めやすくなります。不動産の評価額は、どの基準を使うかによって代償金の金額が変わるためです。
主な評価基準は次のとおりです。
| 評価基準 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 時価 | 市場で売却した場合に近い価格 | 実態に近いが、高めになりやすい |
| 相続税評価額 | 相続税の計算に使う評価額 | 税務上使いやすいが、時価より低いことがある |
| 固定資産税評価額 | 固定資産税の計算に使う評価額 | 確認しやすいが、時価との差が出やすい |
代償分割では、財産を取得する相続人と代償金を受け取る相続人で希望する評価額が分かれやすくなります。そのため、どの評価基準を使うのかを事前に話し合い、相続人全員で合意しておくことが大切です。
合意が難しい場合は、不動産鑑定士による鑑定を利用する方法もあります。客観的な評価額をもとにすれば、感情的な対立を避けやすくなり、納得感のある遺産分割につながります。
代償分割を進める流れ

代償分割は、相続財産の確定から遺産分割協議書の作成・代償金の支払いまで、5つのステップで進みます。各ステップを押さえておきましょう。
1. 相続人と相続財産を確定する
代償分割を進める前に、まず相続人と相続財産を正確に確認します。
相続人や財産の範囲が曖昧なままだと、後から新たな相続人や財産が見つかり、協議をやり直すことになりかねません。代償金の計算にも影響するため、最初の確認が大切です。
具体的には、次の内容を整理します。
- 戸籍を集めて相続人を確定する
- 不動産、預貯金、有価証券などを確認する
- 借入金や未払い金などの負債も確認する
- 財産目録を作成する
財産全体を把握しておけば、代償金の計算や遺産分割協議を進めやすくなります。
2. 不動産評価をもとに代償金の合意を取る
代償金を決める前に、不動産の評価方法について相続人全員で合意しておきましょう。
不動産の評価額は、採用する基準によって変わります。評価額が変われば、代償金の金額も変わるためです。
話し合いでまとまらない場合は、不動産鑑定士に鑑定を依頼する方法もあります。
3. 代償分割であることを遺産分割協議書に明記する
代償金の内容が決まったら、遺産分割協議書に代償分割であることを明記します。
具体的な記載内容は以下のとおりです。
- 誰がどの財産を取得するのか
- 誰が誰に代償金を支払うのか
- 代償金の金額
- 支払期限と支払方法
代償分割であることが書かれていないと、代償金の支払いが贈与と判断されるおそれがあります。税務上のトラブルを防ぐためにも、協議書には支払いの理由と内容を具体的に残しておきましょう。
4. 代償金の金額・支払期限・支払方法を具体的に決める
代償金については、金額・支払期限・支払方法を具体的に決めておくことが重要です。
遺産分割協議書には、次のように明確に記載します。
- ○年○月○日までに金○○万円を支払う
- 分割払いの場合は、毎月○万円を○回に分けて支払う
- ○○銀行○○支店の○○名義の普通預金口座に振り込む
記載が曖昧だと、後から払った・払っていないという争いになるおそれがあります。支払いの記録が残るよう、銀行振込にするなど、証明しやすい方法まで決めておくと安心です。
5. 不払いに備えて公正証書化を検討する
代償金の支払いが確実に行われるよう、不払いに備えて公正証書を作成するのもおすすめです。
代償金が高額な場合や分割払いにする場合は、支払いが途中で止まるリスクがあります。そのため、遺産分割協議書の内容を公正証書にしておくと安心です。
公正証書を作成する際は、次の内容を明確にします。
- 代償金の金額
- 支払期限
- 支払方法
- 分割払いの場合の回数や期限
- 支払いが遅れた場合の扱い
強制執行認諾条項付きの公正証書にしておけば、不払いが起きた場合に、要件を満たせば裁判を経ずに強制執行を申し立てられることがあります。
代償金が高額な場合や支払い期間が長くなる場合は、公正証書化を検討しておきましょう。
参考:法務省:公証制度について
代償分割の代償金はどのように決めるのか

代償金の額は法律で一律に決まるわけではなく、相続人全員の合意で定めます。
ただし、感覚だけで金額を決めると、後から揉める原因になります。とくに不動産を取得する場合は、どの評価額をもとにするかによって、代償金の金額が変わるためです。
代償金を決める際は、主に次の考え方があります。
不動産の時価を代償金の計算基準にする
時価(実勢価格)とは、不動産が市場で実際に取引される価格です。不動産鑑定士による鑑定評価や、近隣の取引事例をもとに算出します。
相続人間で納得感を得やすい基準で、代償金の根拠として提示しやすいのが利点です。鑑定費用がかかる点と、市場の変動によって評価時点が異なると金額が変わることには注意が必要です。
相続税評価額を基準にする
相続税評価額とは、相続税を計算するときに使われる評価額です。土地は路線価方式や倍率方式、建物は固定資産税評価額をもとに評価されます。
時価より低くなることがあるため、財産を取得する相続人にとっては、負担を抑えやすい基準です。ただし、代償金を受け取る相続人から見ると、受け取れる金額が少なく感じられる場合があります。
また、代償金の基準を相続税評価額にする場合でも、相続税の計算は別途整理が必要です。税務上の扱いに不安がある場合は、税理士に確認しておきましょう。
法定相続分を目安に代償金を算出する
代償金は、法定相続分を目安に計算することがあります。
法定相続分とは、民法で定められた相続人ごとの基本的な取り分の割合です。たとえば、子ども3人だけが相続人であれば、原則としてそれぞれ3分の1ずつが目安になります。
計算の流れは、次のとおりです。
- 相続財産全体の評価額を確認する
- 各相続人の法定相続分に応じた取得額を計算する
- 財産を取得する相続人の取り分との差額を代償金として調整する
たとえば、評価額3,000万円の実家を子ども3人で均等に相続する場合、1人あたりの取り分は1,000万円です。長男が実家を取得する場合は、長女と次女にそれぞれ1,000万円を支払うと、3人の取り分を調整できます。
ただし、法定相続分はあくまで目安です。生前贈与や介護への貢献などを考慮する必要がある場合は、実際の代償金が変わることもあります。相続人全員で事情を確認し、納得できる金額を決めることが大切です。
代償分割にかかる税金

代償金は相続人同士でやり取りするお金ですが、条件によっては税金がかかります。正しく税務処理をするために。どのような目的で、どの財産の代わりに支払うのかを明確にしておきましょう。
代償分割で関係する主な税金は、次の3つです。
- 相続税
- 贈与税
- 譲渡所得税
相続税の課税価格は評価額と代償金の関係で計算する
代償分割をした場合、相続税の課税価格は、取得した財産の評価額と代償金の金額をもとに計算します。
基本的な考え方は、次のとおりです。
| 対象者 | 相続税の課税価格の考え方 |
|---|---|
| 代償金を支払った相続人 | 取得した財産の相続税評価額から、支払った代償金を差し引く |
| 代償金を受け取った相続人 | 受け取った代償金を、相続税の課税価格に加える |
実家を取得した相続人は、不動産の評価額から代償金を差し引いて相続税を計算します。一方、代償金を受け取った相続人は、その金額を相続で取得した財産として扱います。
ただし、代償金を不動産の時価をもとに決めた場合は注意が必要です。相続税評価額と時価に差があると、税務上の計算で調整が必要になることがあります。
代償金の決め方によって相続税の計算も変わるため、金額を決める段階で専門家に確認しておくと安心です。
参考:No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算|国税庁
遺産分割協議書の記載がないと贈与税の対象になり得る
代償金の支払いは、遺産分割協議書に内容を明記しておくことが重要です。
遺産分割協議書に代償分割の内容が明記されていない場合、代償金として支払った事実を税務上説明しにくくなります。
遺産分割協議書には、相続とは別の贈与と判断されるリスクを避けるため、以下のような項目を具体的に記載しましょう。
- 代償分割であること
- 誰がどの財産を取得するのか
- 誰が誰に代償金を支払うのか
- 代償金の金額
- 支払期限と支払方法
自己所有の不動産を代償財産として渡した場合は譲渡所得税がかかる
代償金は現金で支払うのが一般的ですが、現金の代わりに自分が所有する不動産を渡す場合もあります。
この場合、税務上はその不動産を譲渡したものとして扱われ、渡した側に譲渡所得税がかかることがあります。
たとえば、実家を取得した相続人が、代償金の代わりに自分名義の土地をほかの相続人へ渡すケースです。土地の取得時より価値が上がっている場合は、譲渡時に利益が出たものとして、譲渡所得税の対象になる可能性があります。
特に、次のような場合は注意が必要です。
- 取得時より不動産の価値が上がっている
- 取得費が不明で売却価格が高額
- 不動産を渡す側に納税資金の準備がない
現金以外で代償する場合は、相続税だけでなく譲渡所得税も確認する必要があります。思わぬ税負担を避けるためにも、専門家へ相談すると安心です。
参考:No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法|国税庁
代償分割でトラブルを防ぐための注意点

代償分割のトラブルを防ぐには、代償金の決め方と相続人全員の合意を明確にしておくことが重要です。
代償分割は、不動産などを残しながら相続人間の公平性を調整できる方法です。ただし、代償金の金額や評価方法について認識がずれていると、あとから揉める原因になります。
とくに注意したい点は、次の2つです。
1. 代償金は法定相続分どおりに決まるとは限らない
代償金は、法定相続分を目安にして計算することがあります。ただし、必ず法定相続分どおりの金額になるわけではありません。
法定相続分は、相続人ごとの基本的な取り分を考えるための基準です。一方で、実際の代償金は、不動産の評価額やほかの相続財産の内容、相続人ごとの事情を踏まえて決めます。
たとえば、次のような事情がある場合は、代償金の金額が変わることがあります。
- 特定の相続人が生前贈与を受けていた
- 一部の相続人が被相続人の介護をしていた
- 事業を引き継ぐために、特定の相続人が財産を取得する必要がある
- 不動産以外に預貯金や有価証券などの財産がある
法定相続分どおりに支払えば問題ないと思い込んで進めると、後からほかの相続人が不公平だと感じることがあります。
代償金を決める際は、法定相続分をひとつの目安にしつつ、相続財産全体と相続人ごとの事情を整理したうえで話し合うことが大切です。
2. 代償分割は相続人のひとりの意思だけでは決められない
代償分割は、相続人のひとりが希望するだけでは成立しません。
遺産分割協議の成立には、相続人全員の合意が必要だからです。たとえば、長男が実家を取得したいと考えていても、ほかの相続人が代償金の金額や支払方法に納得していなければ、代償分割はできません。
話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停や審判に進むことがあります。
代償分割を円滑に進めるには、早い段階で評価方法や支払条件を整理し、相続人全員が納得できる内容を目指すことが大切です。
参考:遺産分割調停 | 裁判所
代償金を支払えない場合の対応方法

代償金を一括で用意できない場合でも、分割払いやローン、換価分割への切り替えによって対応できる場合があります。
代償分割は、財産を取得する相続人がほかの相続人へ代償金を支払う方法です。そのため、実家や土地を引き継ぎたいと思っても、手元に資金が足りなければすぐに進められないことがあります。
代償金を支払えない場合の主な対応方法は、次の3つです。
1. 分割払いにする場合は支払期限や遅延時の扱いを決める
代償金を一括で用意できない場合は、相続人全員の合意があれば分割払いにできます。
ただし、分割払いにする場合は、支払条件を曖昧にしないことが重要です。口約束だけで進めると、後から支払いが遅れたり、支払ったかどうかで揉めたりするおそれがあります。
遺産分割協議書には、次の内容を具体的に記載しておきましょう。
- 毎回の支払額
- 支払回数
- 支払期限
- 振込先口座
- 支払いが遅れた場合の扱い
- 遅延損害金や一括請求の条件
たとえば、毎月末日までに○万円を○回支払う、支払いが○回遅れた場合は残額を一括で支払うといった形で決めておくと安心です。
分割払いは、代償金を用意しやすくなる反面、支払いが長期化するほど不払いのリスクも高まります。支払いの記録が残るよう、銀行振込を利用し、協議書にも具体的な条件を残しておきましょう。
2. 相続ローン・不動産担保ローンで代償金を準備する
代償金を手元資金だけで用意できない場合は、ローンを利用して資金を準備する方法があります。
たとえば、相続時に利用できるローンや、不動産を担保にして借り入れる不動産担保ローンなどです。実家や土地を手放さずに代償分割を進めたい場合の選択肢になります。
ただし、ローンを利用するには金融機関の審査があります。借入額や返済期間、金利によって毎月の負担も変わるため、無理のない返済計画を立てることが大切です。
確認しておきたい点は、次のとおりです。
- 借入可能額
- 金利や返済期間
- 毎月の返済額
- 担保にできる不動産の有無
- 審査に必要な書類
相続ローンは法律上の制度名ではなく、金融機関の商品名や通称として使われており、利用条件は金融機関によって異なります。
3. 資金を用意できない場合は換価分割への切り替えも検討する
代償金をどうしても用意できない場合は、換価分割への切り替えも検討します。
換価分割とは、不動産などの財産を売却し、その代金を相続人で分ける方法です。実家や土地を手放すことにはなりますが、現金で分けられるため、代償金の支払い能力をめぐる不安を解消しやすくなります。
代償分割を希望していたものの、換価分割を検討するのは、次のような場合です。
- 代償金を用意できない
- 分割払いでも合意が難しい
- ローンの審査に通らない
ただし、換価分割に切り替えるには、相続人全員の合意が必要です。売却価格や売却時期、仲介手数料などの費用負担についても話しあっておきましょう。
代償分割にこだわると支払いが停滞し、トラブルにつながる場合があります。資金の見通しが立たないときは、換価分割も含めて、現実的に進められる方法を選ぶことが大切です。
代償分割に関するよくある質問

ここでは、代償分割をする際の代償金の準備や税金の扱いについて、よくある質問をまとめました。
Q. 代償分割で現金がない場合はどうすればいいですか?
Q. 代償分割の代償金はどのように決めますか?
Q. 代償分割で相続税は誰が払いますか?
Q. 代償分割は贈与税の対象になりますか?
Q. 代償分割で現金がない場合はどうすればいいですか?
A. 代償金を一括で用意できない場合は、次の方法を検討します。
- 分割払いにする
- 相続ローンや不動産担保ローンを利用する
- 換価分割に切り替える
分割払いにする場合は、相続人全員の合意が必要です。支払期限や支払方法、遅れた場合の扱いも、遺産分割協議書に明記しておきましょう。
どうしても資金を用意できない場合は、不動産を売却して現金で分ける換価分割も選択肢になります。
Q. 代償分割の代償金はどのように決めますか?
A. 代償金は、法律で一律に決まるものではありません。相続人全員の話し合いで決めます。
代償分割の代償金を決める際の主な基準は次のとおりです。
- 不動産の時価
- 相続税評価額
- 法定相続分をもとにした取得額
どの基準を使うかによって、代償金の金額は変わります。合意が難しい場合は、不動産鑑定士や税理士に相談すると、客観的な金額を検討しやすくなります。
Q. 代償分割で相続税は誰が払いますか?
A. 相続税は、各相続人が取得した財産に応じて、それぞれ申告・納税します。
代償金を支払った相続人は原則として、取得した財産の相続税評価額から代償金を差し引いて課税価格を計算します。一方、代償金を受け取った相続人は、その代償金を課税価格に加えて計算します。
代償金の金額や評価基準によって税額が変わるため、申告前に税理士へ確認しておくと安心です。
Q. 代償分割は贈与税の対象になりますか?
A. 遺産分割協議書に代償分割であることが明記されていれば、代償金は原則として相続税の対象になります。
ただし、協議書に記載がない場合は、相続とは別の金銭のやり取りと見なされ、贈与税の対象になるおそれがあります。
まとめ

代償分割は、実家や農地、事業用財産などを売却せずに残しながら、相続人間の取り分を金銭で調整できる方法です。
不動産のように分けにくい財産がある場合でも、特定の相続人が取得し、ほかの相続人へ代償金を支払うことで公平性を保ちやすくなります。
ただし、代償金を用意する資金力や、不動産の評価方法についての合意が必要です。遺産分割協議書には、代償分割であること、代償金の金額、支払期限、支払方法を明記しておきましょう。
支払いが難しい場合は、分割払いやローンの利用、換価分割への切り替えも選択肢になります。税金や評価額で揉める可能性がある場合は、早めに専門家へ相談することが大切です。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

