スタートアップにとって、成長の先にある「出口戦略」は重要な経営判断のひとつです。近年は、IPO(新規上場株式)だけでなく、M&A(企業の合併・買収)を選択するスタートアップも増えています。
しかし、M&Aにはバリュエーション(企業価値評価)の算定やストックオプションの扱い、税制対応など、専門的で複雑な課題が多く存在するのも実情です。
本記事では、スタートアップM&Aの基礎知識からメリット、課題や成功のポイントまでをわかりやすく解説します。さらに、経済産業省の最新動向や2024年以降の注目事例も交えながら、IPOとの比較やスキーム別の違いも整理します。
これからM&Aを検討する経営者が、最適な戦略を描くための道筋を見つけられる内容なので参考にしてください。
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スタートアップのM&Aとは

まずは、スタートアップの出口戦略として重要性を増しているM&Aについて、基本的な定義からIPOとの違いまでを、経営者の意思決定に直結する視点で解説します。
複雑に見えるM&Aの全体像を掴むことで、自社にとって最適な戦略を描くための第一歩を踏み出せるでしょう。
スタートアップの定義
M&Aの場面でいう「スタートアップ」とは、単に若い企業ではなく、革新的な技術やビジネスモデルを武器に急成長を目指す企業を指します。多くのスタートアップは資金調達や競争の中でスピーディーな成長を求められる一方、その潜在的な価値は売上規模だけでは測れません。
買い手企業が重視するのは、独自の技術・優秀な人材・顧客基盤といった、将来的な事業シナジーを生み出す要素です。
売り手側は買い手に正しく価値を理解してもらうため、財務数値以上に自社の強みや市場での独自性、成長ポテンシャルなどを整理し、言語化して伝えることが重要です。
M&Aの意味
近年のスタートアップM&Aは、IPOできなかった場合の代替策ではなく、事業を加速させるための積極的な戦略手段として位置づけられています。政府の「スタートアップ育成5か年計画」でも、M&Aは大企業との連携を通じて新たなイノベーションを生み出す重要な仕組みとされています。
売り手にとっても、早期の資金回収や次の挑戦へのステップアップを実現できる有効な出口戦略です。たとえば、すぐれたAI技術を持つ企業が営業力のある大企業の傘下に入ることで、短期間で社会実装を実現するケースもあります。
M&Aを検討する際は、会社を売るだけでなく、自社のビジョンをもっとも早く実現できるパートナーを探す発想が成功の鍵となるでしょう。
M&AとIPOの違い
スタートアップの経営者にとって、M&AかIPOかの選択は、誰と成長し、どのように事業をという根本的な経営判断です。
M&Aは、特定の企業とパートナーシップを結び、スピーディに成長を実現する手段であり、合意が成立すれば半年〜1年ほどで実行できます。ただし、経営の主導権は買い手に譲渡されるのが一般的です。
一方、新規上場株式であるIPOは、経営の独立性を保ちながら大規模な資金調達が可能です。しかし、上場準備に数年を要し、上場後も情報開示などの責任が続きます。
市場環境や資金繰り、成長スピードの観点から、自社にとってビジョンを実現できる道を見極めることが重要です。M&AかIPOどちらを選ぶかという視点よりも、どのような未来を描きたいかが判断の軸となります。
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スタートアップのM&Aが増加している背景

スタートアップのM&Aが注目される中で、今なぜ件数が増加しているのか、その背景を3つの側面から深く掘り下げて解説します。
M&Aを検討する経営者にとって、マクロな市場環境の変化を理解し、自社の戦略を考える上での大きな流れを掴むきっかけになるでしょう。
1. 大企業による新規事業創出・オープンイノベーションの加速
近年、スタートアップM&Aが増えている理由は、大企業が自社だけで新しい事業を生み出すことの限界を感じ、外部の技術やスピードを取り込むオープンイノベーションを経営戦略の中心に据えているためです。
市場のデジタル化が進む中、スタートアップの買収は研究開発にかかる時間とコストを短縮し、新市場に素早く参入する有効な手段となっています。
さらに政府も後押ししており、「オープンイノベーション促進税制」では、大企業がスタートアップ株式を取得する際、その25%を所得控除できる制度が導入されたことでM&Aの動きはいっそう活発化しています。
売り手側は、自社の技術やサービスがどの業界のどのような課題を解決できるのかを明確にし、最適な買い手に訴求することがM&A成功の第一歩となるでしょう。
2. 資金調達環境の変化とIPOのハードル上昇
近年、スタートアップがM&Aを選ぶ背景には、資金調達の難化とIPO基準の厳格化があります。投資家が事業の収益性をより厳しく見るようになり、赤字覚悟で成長を追う企業が追加資金を得ることが難しくなっています。
さらに、証券取引所の再編により、IPOには高いガバナンス体制や継続的な利益が求められ、準備に時間とコストがかかるようになりました。
資金が尽きるまでのランウェイが短く、次の調達が見込めない状況で大企業の傘下に入るM&Aは、事業の継続性と従業員の安定を守りながら、ビジョンを実現し続ける現実的な選択肢となっています。
3. 明確なEXIT戦略として捉える動きの広がり
近年、スタートアップ経営者の間では、M&AをIPOに失敗した結果ではなく、事業を次の成長段階へ託す前向きな選択肢として捉える考え方が広がっています。
M&A成功事例の増加により、創業者が大きなリターンを得て次の起業や投資家として活動する連続起業の流れも一般的になりました。とくに注目されるのが、スイングバイIPOという戦略で、一度大企業の傘下に入りリソースを活用して事業を成長させた後、再び上場を目指す手法です。
M&Aは終着点ではなく、さらなる飛躍のステップにもなり得ることを示しています。ポジティブな価値観を社内や株主と共有し、オープンに議論できる文化を育むことが、これからのスタートアップ経営において重要です。
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スタートアップのM&Aのメリット

スタートアップがM&Aという戦略を選択することで、以下のようなメリットが得られます。
M&Aは単なる売却ではなく、企業の成長を加速させ、かかわるすべての人々の未来をより豊かにするための強力な選択肢になるでしょう。
短期間での売却利益を得られる
スタートアップがM&Aを行うメリットは、短期間で創業者が利益を得られることです。IPOのように数年単位の上場準備や市場環境の変動に左右されることがなく、合意成立後はスピーディに取引が完了するからです。
実際、M&Aでは買い手企業との合意から半年〜1年ほどで取引が完了し、創業者は株式を売却してその対価を現金で受け取れます。これにより、将来設計を見据えた早期の資産形成が可能です。
また、自社の技術や事業に強いシナジーを感じる企業への売却であれば、起業家は次の挑戦に向けて安定した基盤を築けます。
従業員の雇用確保につながる
スタートアップがM&Aを行うことによって、創業時から雇用してきた従業員の雇用を確保できます。
経営に苦戦し事業縮小せざるを得ない状況に陥った場合でも、自社の技術やノウハウが評価され、M&Aを実現できれば、買い手企業で従業員の雇用を維持できる場合があります。
従業員の雇用確保は、キャリア形成にもつながるメリットです。従業員が路頭に迷うことなく働くことができ、新たな環境でキャリアを継続できることはM&Aのメリットであると同時に、スタートアップの経営者として責任を果たすことでもあるでしょう。
経営リスクや後継者問題を解消できる
経営リスクや後継者問題を解消できることも、スタートアップM&Aのメリットです。M&Aによって大企業の経営基盤や組織力を活用できるようになり、創業者が抱えてきた資金繰り・競争・労務などのリスクを大幅に軽減できるからです。
実際、スタートアップ経営は創業者の力量や体力に依存しやすく、精神的な負担も大きくなっています。しかし、M&Aによって法務・経理・人事といった管理機能を大企業の体制に委ねられれば、経営の安定性が格段に向上する可能性があります。
また、創業者が次のステップに進みたい場合でも、後継者問題をスムーズに解決できるという点もメリットです。
M&Aは経営者を過度なプレッシャーから解放し、事業を持続的に成長させるための現実的な手段といえるでしょう。
新規事業への迅速な参入が可能になる
スタートアップがM&Aを実施することで、新規事業への迅速な参入が可能になります。スタートアップが持つ革新的な技術やプロダクトを、買い手企業の販売網・顧客基盤・ブランド力といったリソースと掛け合わせることで、短期間で市場展開を加速できるからです。
多くのスタートアップはすぐれた製品を持ちながらも、営業力や社会的信頼の不足によって成長が頭打ちになるケースが少なくありません。M&Aを通じて大企業の経営資源を活用できれば、その壁を突破し、事業を非連続的に拡大させることが可能です。
買い手企業の販売チャネルやブランドを活かすことで、従来は参入が難しかった業界や大規模市場への展開が実現するケースもあります。
M&Aは単なる事業の売却ではなく、創業者のビジョンをより早く、そして大きく実現するための飛躍の戦略といえるでしょう。
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スタートアップのM&Aの課題

M&Aはメリットをもたらす反面、課題やリスクもあります。
ここで紹介する課題を事前に理解し対策を講じておくことで、スタートアップとしてM&Aを成功に導くきっかけとなるでしょう。
売却後に希望利益を得られない可能性がある
スタートアップのM&Aでは、売却価格がそのまま創業者の利益になるとは限りません。最終的な手取額は、過去の資金調達時に締結した投資契約の条件や、M&A契約に含まれる価格調整条項によって大きく変動する可能性があるからです。
多くのスタートアップが発行する優先株式には、投資家が売却時に出資額を優先的に回収できる清算優先権が付与されています。とくに、回収後も残りの利益に参加できる参加型優先株の場合、創業者の取り分が大幅に減少することもあります。
そのため、企業価値が10億円で評価されても、実際に創業者の手元に残るのは契約内容次第で数億円単位で変わるケースも珍しくありません。
このようなリスクを避けるためには、交渉初期の段階からウォーターフォール分析(分配シミュレーション)を行い、想定される売却価格ごとの分配額を可視化することが重要です。
従業員の雇用条件や報酬の調整が必要になる
スタートアップM&Aでは、従業員の雇用条件や報酬体系の見直しが避けられません。なぜなら、M&Aは組織体制や制度を統合するプロセスであり、買い手企業の人事制度・給与体系に合わせる必要が生じるからです。
一緒に働いてきた従業員にとって、雇用条件や報酬体系の変更はキャリアや生活に直結する問題です。十分な説明や対話を怠ると、不安が募り、主要人材の離脱につながるおそれがあります。
とくに注意が必要なのがストックオプションの取り扱いで、現金で買い取る場合は給与所得扱いとなり最大55%の課税が発生する一方で、税制適格ストックオプションであれば約20%に抑えられる可能性があります。
そのため、M&A後の報酬・インセンティブ設計を丁寧に見直し、税務面も含めて従業員にわかりやすく説明することが重要です。
経営方針や組織文化が合わないリスクがある
スタートアップのM&Aの成功を左右するポイントは、経営方針や組織文化の融合です。このような無形資産がフィットしないと、買収後にシナジーが生まれず、従業員のモチベーション低下や人材流出を招くおそれがあります。
スタートアップの強みであるスピード感・挑戦的な文化・フラットな組織が、大企業の階層的な構造や慎重な意思決定プロセスと衝突するケースは少なくありません。たとえば、CEOの判断で即決できていた開発予算が、買収後は稟議に数週間かかり、商機を逃す可能性もあります。
このようなリスクを防ぐためには、交渉段階で相手企業の価値観や働き方を見極めるカルチャー・デューデリジェンスが不可欠です。
さらに、契約締結後はPMI(統合計画)を迅速に実行し、最初の100日で互いの文化を尊重しながら一体感を築くことが成功の鍵となるでしょう。
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スタートアップのM&Aを成功させるポイント

スタートアップのM&Aを成功させるために、以下3つのポイントを押さえておきましょう。
M&Aのプロセスは複雑ですが、ポイントを押さえることで、交渉の軸が定まり、後悔のない意思決定が可能になります。
1. M&Aの目的を明確にして買い手を選定する
スタートアップM&Aを成功させるためには、なぜM&Aを行うのかという目的を明確にすることが重要です。単に高い買収額を提示した企業を選んでも、目的が曖昧なままでは交渉の軸がぶれ、買収後にシナジーが生まれず成長が止まるリスクがあります。
たとえば、以下のように目的を明確にすれば、交渉の方針が定まり、より本質的な議論が可能になります。
- 自社の技術を大企業の販路で拡大したい
- 資金や人材を得てプロダクト開発を加速したい
- 経営リスクを軽減し、次の事業や新たな挑戦に集中したい
買い手候補を検討する際には、シナジーマップを活用するのがおすすめです。
シナジーマップとは、縦軸に水平統合(同業)と垂直統合(顧客・仕入先)、横軸に技術・製品シナジーと販路・チャネルシナジーを設定し、自社の目的と相手企業の強みがどこで交わるかを可視化するツールです。
M&A検討の出発点は、どのような企業が自社のビジョンを加速させてくれるかを定義することにあります。目的を軸に買い手を選ぶことで、売却ではなく、成長のパートナーシップとしてのM&Aを実現できるでしょう。
2. 自社の価値を正しく評価する
スタートアップM&Aを成功させるには、自社の価値を買い手の視点で正しく評価することが重要です。単に計算式でバリュエーションを算出するだけでは、買い手にとっての魅力や将来性を正しく伝えられないからです。
とくに赤字先行のスタートアップでは、利益ベースの評価手法が通用しにくく、将来の成長を裏付けるデータをもとに、どの要素が企業価値を生むのかを明確にする必要があります。
たとえば、SaaS企業であれば、ARR(年間経常収益)の成長率やNRR(売上継続率)、LTV/CAC(顧客生涯価値と獲得コストの比率)といったKPIが評価の中心となります。
これらのデータをCIM(Confidential Information Memorandum:企業情報概要書)に整理し、将来の成長シナリオを論理的に説明できる状態に整えることが、交渉を有利に進める武器となるでしょう。
3. 市場相場を把握し売却条件を設定する
適切な売却条件を設定するには、自社の価値評価だけでなく、市場全体のM&A動向や相場感を正確に把握することが不可欠です。スタートアップのバリュエーションの中でも、ARRマルチプル(年間経常収益の何倍で評価されるか)はとくに、市場環境によって大きく変動します。
相場からかけ離れた希望価格を提示すると、有力な買い手との交渉機会を失うリスクもあります。さらに、価格以外の要素であるアーンアウト(成果連動の追加支払い)や、表明保証(リスク分担の条件)なども、実際の取引価値に影響するでしょう。
類似企業のM&A事例を調べたり、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)や仲介会社から最新の市場情報を得て、自社の規模・成長率に適した相場を仮定することが重要です。
その上で、希望価格や最低ライン、現金と株式の比率といった条件を整理しておけば、交渉の場でも冷静に判断できます。客観的データと専門家の知見を活かし、複数の買い手から競争的な提案を引き出す戦略設計が成功の秘訣といえるでしょう。
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スタートアップのM&Aの事例5選

大手企業がスタートアップを買収した、以下5つのM&Aの事例を見ていきましょう。
- 富士ソフト株式会社が株式会社モバオクを買収
- 株式会社ノジマがストリートホールディングスを買収
- オリックス株式会社が株式会社ルルアークを買収
- KDDI株式会社が株式会社ソラコムを買収
- クックパッド株式会社がコーチ・ユナイテッド株式会社を買収
売り手にとってどのような効果があるか参考になる事例なので、ぜひ参考にしてください。
1. 富士ソフト株式会社が株式会社モバオクを買収
2025年3月31日、富士ソフト株式会社は株式会社DeNAおよびKDDI株式会社から、株式会社モバオクの全株式を取得する契約を締結しました。取引形態は株式譲渡で、譲渡価格は非公表です。
富士ソフトは、組み込み系ソフトウェアから業務システム、ネットビジネスまで幅広く手がける独立系SIerです。一方、モバオクはインターネットオークションやフリマサービスの運営で知られ、CtoC(個人間取引)領域に強みを持っています。
このM&Aにより、富士ソフトは自社の高度なシステム開発力とモバオクのCtoCサービス運営ノウハウを融合。
EC分野での新たな事業展開を推進し、CtoCプラットフォームの強化やデジタルビジネス領域の拡大を図りました。
参考:富士ソフト、インターネットオークション・フリマサービスの企画・運営を行う株式会社モバオクの株式譲渡契約締結に関するお知らせ
2. 株式会社ノジマがストリートホールディングスを買収
2025年3月、家電量販大手の株式会社ノジマは、ダイレクトマーケティングおよびデジタルトランスフォーメーション(DX)事業を展開する、株式会社ストリートホールディングスを子会社化しました。
株式会社ノジマは、投資ファンドを保有していた持株会社BCJ-59の株式を取得することで、ストリートホールディングスをグループ傘下に迎え入れています。(取引の詳細については非公表です)
このM&Aにより、株式会社ノジマはストリートホールディングスのマーケティング力とデジタル施策のノウハウを活用し、グループ全体の販促効率化や顧客満足度の向上を目指す方針を示しています。
参考:株式会社ストリートホールディングスの子会社化完了に関するお知らせ
3. オリックス株式会社が株式会社ルルアークを買収
2025年、オリックス株式会社は、カプセルトイ専門店「ガチャガチャの森」を全国展開する株式会社ルルアークの全株式を取得しました。
株式会社ルルアークは、主要玩具メーカーとの強固なネットワークを背景に、在庫管理を自動化した独自の店舗運営体制を確立し、全国で急成長を遂げてきた企業です。カプセルトイ市場は近年急拡大しており、2024年度には約1,410億円規模に到達し、今後もエンタメ消費の多様化を背景に高い成長が期待されています。
オリックスは今回のM&Aを通じて、株式会社ルルアークの出店拡大や人材採用、データ活用による運営効率化を支援し、さらなる事業成長を後押しします。
参考:カプセルトイ専門店の運営会社「ルルアーク」へ出資~競争力の高い事業組織の構築を支援し、成長市場での事業拡大を後押し~
4. KDDI株式会社が株式会社ソラコムを買収
2017年、KDDI株式会社は、IoT通信プラットフォーム「SORACOM(ソラコム)」を提供する株式会社ソラコムの全株式を取得し、連結子会社化しました。
株式会社ソラコムは、通信とクラウドを融合したIoT向けプラットフォームを開発し、API連携やウェブ管理機能を通じて、迅速かつセキュアなIoT導入を可能にすることを強みとしています。2015年のサービス開始からわずか2年で、国内外7,000社以上に導入され、IoT業界で急成長を遂げました。
KDDI株式会社は、これまで培ってきたIoT/M2M分野での提供実績と、ソラコムの先進的な技術基盤を掛け合わせることで、国内外で通用する次世代IoTプラットフォームの構築を目指しています。
参考:~グローバルにも通じる「日本発」のIoTプラットフォーム構築へ~
5. クックパッド株式会社がコーチ・ユナイテッド株式会社を買収
クックパッド株式会社は、プライベートレッスンマッチングサービス「Cyta.jp」を運営するコーチ・ユナイテッド株式会社を、完全子会社化する基本合意書を締結しました。
Cyta.jpは、語学や楽器、スポーツ、資格など約140ジャンルの個人レッスンを提供するプラットフォームです。今後は家事代行やベビーシッターなど、地域密着型の「サービスEC」への発展を目指しています。
クックパッド株式会社は、国内最大級のレシピサイト運営で培ったユーザー基盤とスマートフォン分野のノウハウを活かし、生活全般にかかわるサービス領域への事業拡大を図ります。
参考:コーチ・ユナイテッド株式会社の子会社化に関する基本合意書を締結〜クックパッドの利用者の中心である既婚女性向けの生活領域で「サービスEC」を提供〜
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まとめ

本記事では、スタートアップM&Aを成功させるための戦略と実務の全体像を解説しました。もっとも重要なのは、IPOとの比較を通じて、自社にとって最適な出口戦略は何かを見極め、M&Aの目的を明確にすることです。
そのうえで、提示された企業価値と最終的な金額の差、従業員のストックオプションの取り扱い、組織文化の統合など、見落とされがちなリスクを事前に把握することが不可欠です。
また、自社の価値を示すKPI(主要指標)を明確にし、市場相場を踏まえて適切な買い手を選定する戦略が、納得できるM&Aにつながるでしょう。
>>M&A・事業承継に強い千代田中央法律事務所について詳しく見る

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

