「自己破産後はクレジットカードはいつから作れる?」「何年待てば審査に通るの?」と不安になっていませんか。
自己破産すると、今持っているクレジットカードは使えなくなり、一定期間は新規のクレジットカードも作れません。
本記事を読めば、自己破産後にクレジットカードを新しく作るまでの具体的な計画が見えてきます。また、クレジットカードが使えない期間に代替できる決済方法もわかります。
自己破産後のクレジットカードはどうなる?

自己破産をすると、クレジットカードの利用や契約に、さまざまな影響を及ぼします。何も知らないままだと、支払いが滞ったり信用回復が遅れたりするかもしれません。
ここでは、自己破産がクレジットカードに与える以下4つの具体的な影響を解説します。
1. 保有しているクレジットカードは強制解約となる
2. 信用情報機関に事故情報が登録される
3. 最短でも5年程度はクレジットカードを作れない
4. 社内ブラックになると二度と同じ会社でカードを作れない
上記の影響を把握することで、今すぐできる対策が見えてくるでしょう。
1. 保有しているクレジットカードは強制解約となる
自己破産を弁護士に依頼すると、保有するすべてのクレジットカードは強制解約となります。破産の対象にならなかったカードや残高がないカード、さらには家族カードも例外ではありません。
弁護士がカード会社に受任通知を送った時点で利用停止となり、借金が増えるのを防ぐ仕組みになっています。
そのため、カード決済を利用している携帯料金や公共料金、月契約のサービスなどは滞納扱いになるおそれがあります。
自己破産の手続きを開始されたら、すみやかに支払い方法を見なおすことが重要です。具体的には、クレジットカード払いで契約したサービスを、口座振替やデビットカードに切り替えることで、延滞なく支払いを継続できるでしょう。
2. 信用情報機関に事故情報が登録される
自己破産をすると、信用情報機関に事故情報として登録され、いわゆるブラックリスト状態に陥ります。その影響で、あらたなクレジットカード発行やローン契約は不可能です。
日本の三大信用情報機関であるCIC・JICC・KSCには、カード会社や銀行などに向けて、自己破産したという記録を共有する仕組みがあります。
たとえば、CICには法定免責、KSCには官報情報が登録され、ネットワークを通じて各機関に事故情報が伝わります。
情報機関に事故情報が登録されている限り、あらたにクレジットカードやローンを契約することはできません。
3. 最短でも5年程度はクレジットカードを作れない
自己破産をすると、最短でも5年程度は新しいクレジットカードを作れません。事故情報が信用情報機関に登録されている間は、審査に通るのは不可能です。
事故情報が消えるまでの期間は、5〜7年が目安ですが、起算点は機関ごとに異なります。たとえば、銀行系のKSCは破産手続開始決定日から7年と明確です。
カード会社が多く参照するCICやJICCでは、免責許可が確定し、債権者が報告した日から5年程度となっています。
4. 社内ブラックになると二度と同じ会社でカードを作れない
自己破産後に信用情報が抹消されても、自己破産の対象になった会社ではカードを作れない場合があり、この状態を社内ブラックといいます。
カード会社やそのグループ会社が、自社データベースに事故情報を半永久的に保存しているため、自己破産の対象になった会社や系列企業で再びカードを申し込んでも、審査に通らない可能性が高いでしょう。
たとえば、銀行系カードで自己破産した場合、10年以上経っても同じ銀行や関連する会社では契約が難しいケースがあります。
あらたにクレジットカードを作る際につまずかないためにも、申し込み時には過去の債権者リストを確認し、その会社やグループを避けることが賢明です。
自己破産後のクレジットカード以外の決済手段

自己破産後にクレジットカード払いができない場合、代替できる決済手段として、以下4つの方法があります。
上記の決済手段を活用することで、クレジットカードがなくても、さまざまな支払いに対応できるでしょう。
1. デビットカード
自己破産後のキャッシュレス決済では、デビットカードがおすすめです。デビットカードは、利用代金が銀行口座から即時引き落とされる仕組みで、信用情報にもとづく審査が不要です。
銀行口座さえあれば破産直後でも作成でき、クレジットカード払いの代替手段として活用できます。
とくに、VISAやMastercardなどの国際ブランド付きであれば、クレジットカードとほぼ同様にオンラインショッピングやスーパーでの買い物、公共料金や携帯料金の支払いなどにも利用可能です。
ただし、ETCカードの代わりにはならず、レンタカーや一部ホテルなど与信枠が必要な契約で利用できない場合もあります。
2. プリペイドカード
プリペイドカードは、事前にチャージした金額の範囲でのみ使える前払い式のため、発行時の審査がなく安心して使用可能です。
とくに、使いすぎを防ぎたい場合や家計管理を徹底したい場面に役立つでしょう。また、デビットカードでは決済できない一部のサブスクリプションサービスや、海外のオンラインサイトでも利用できるケースもあります。
たとえば、AppleやGoogle Playのギフトカードを購入してアカウントに残高をチャージすれば、カード情報を登録せずにコンテンツを購入可能です。
用途を限定して使えることから、趣味の支出管理やオンライン決済専用として一枚持っておくのがおすすめです。
デビットカードを主軸にしつつ、プリペイドカードを補完的に活用することで、キャッシュレス生活の幅を広げられます。
3. 家族カード
自己破産後に家族カードを利用することは可能ですが、あくまで一時的な緊急手段と考えるほうがよいでしょう。なぜなら、家族カードは本会員である家族の信用にもとづいて発行され、あなた自身の信用回復にはつながりにくいからです。
家族カードの利用分の請求や支払い義務はすべて本会員である家族にあり、万が一自分が支払いを滞らせれば、助けてくれた家族の信用情報に傷がつくおそれがあります。
そのため、利用する際は必ず事前に家族とルールを決め、必要最小限の使用に留めることが大切です。
4. QRコード決済
自己破産後でもすぐに使える便利な決済手段が、QRコード決済です。クレジットカードを登録せずに、銀行口座連携や現金チャージで利用でき、信用情報の審査もありません。
たとえば、PayPayに銀行口座を登録すれば、支払い時に即座に口座から引き落とされ、デビットカードのように活用できます。また、コンビニATMで現金をチャージすれば、プリペイドカード感覚で使うことも可能です。
QRコード決済を活用すれば、クレジットカードを持てない状況でも、キャッシュレスでの支払いを維持でき、決済手段に関する不安を軽減できるでしょう。
スマホひとつで買い物や支払いが完結するのも、QRコード決済の魅力です。自己破産後の生活をスムーズに立てなおすためにも、デビットカードと併用して活用するのがおすすめです。
自己破産後にクレジットカードを作るまでの6つのステップ

ここでは、自己破産という経験を乗り越え、再びクレジットカードを取得するための具体的な6つのステップを紹介します。
- 事故情報が消えるまで待つ
- 仕事をして収入を安定させる
- 審査に通りやすいカード会社に申し込む
- キャッシング枠をゼロに設定する
- まずはひとつのカード会社のみ申し込む
- 別会社のクレジットカードも申し込んでみる
ただ闇雲に申し込むのではなく、正しい知識と順番で行動することで、審査通過の可能性が高まります。
1. 事故情報が消えるまで待つ
クレジットカードを再取得するためには、まず信用情報機関から事故情報が抹消されるまで待つことが重要です。
事故情報が残っている間に申し込んでも、返済能力に問題ありと判断され、審査に落ちる可能性は高いでしょう。
事故情報が消えるまでの期間は、それぞれの情報機関ごとで、以下のように異なります。
- CIC・JICC:免責許可確定から5年程度
- KSC:破産手続開始決定日から7年程度
そのため、5~7年で消えるという曖昧な目安だけでなく、3機関すべてに情報開示請求をおこない、自分の抹消時期を確認しましょう。
2. 仕事をして収入を安定させる
自己破産後、事故情報が消えるまでの5~7年は、安定した収入と勤務実績を作るための重要な準備期間です。
信用情報が抹消された直後は、スーパーホワイトと呼ばれる真っ白な状態で、クレジットカードの過去の利用履歴がないため、カード会社は申込者の現在の属性を重視します。
具体的には、勤務先や勤続年数、年収、居住年数などが評価対象です。年収300万円でも、勤続1年の人より5年以上同じ会社に勤めている人の方が、返済能力が高く安定した生活を送っていると判断され、審査では有利になります。
そのため、信用情報の回復期間中は転職を避け、ひとつの勤務先で安定した勤続年数を積み上げることが、再びクレジットカードを持つための信頼作りとして有効です。
3. 審査に通りやすいカード会社に申し込む
信用回復後の最初のクレジットカードは、審査が比較的柔軟なカード会社を選ぶことも重要です。銀行系カードは審査が厳しい一方、流通系や消費者金融系カードは自社の顧客獲得を目的に独自基準で審査をおこなうケースもあります。
たとえば、楽天カードやイオンカード、消費者金融系のアコムACマスターカードなどは、信用回復直後の申込者でも審査に通りやすいクレジットカードのひとつです。
ただし、自己破産の対象カードやそのグループ会社は社内ブラックの可能性が高く、申込先として避けたほうが無難です。
自己破産後に最初に申し込むクレジットカードは、ブランドやステータスにこだわらず、審査が通りやすい会社に絞って戦略的に申し込むことが、スムーズな信用回復への第一歩となるでしょう。
4. キャッシング枠をゼロに設定する
クレジットカードの申込時には、キャッシング枠を「0円」または「希望しない」と記入しましょう。キャッシング枠の審査は貸金業法に基づき厳格におこなわれるため、希望しないことで審査のハードルを下げられます。
ショッピング枠は買い物用の決済手段として審査されますが、キャッシング枠は現金を借りることが目的のため、過去の事故情報が審査に影響する可能性が高いでしょう。
キャッシングを希望しないことで、借金目的ではなく決済手段としてカードを求めているという、健全な利用意欲を示し、よい印象を与えられます。
5. まずはひとつのカード会社のみ申し込む
自己破産後のクレジットカードの申し込みは、まず1社だけに絞りましょう。
短期間に複数の会社へ申し込むと、多重申込として信用情報に記録され、審査でのマイナス評価につながるかもしれません。
多重申込の状態は、情報機関に数ヶ月間登録されます。審査担当者は、多重申込の状況を見て、「お金に困っているのでは」「他社で断られているのでは」と判断し、より厳しく審査される可能性があります。
最初の1社に申し込んだら、結果に関わらず次の申し込みまでは、最低でも6ヶ月以上空けるといいでしょう。
6. 別会社のクレジットカードも申し込んでみる
1枚目の申し込みで審査に落ちても、諦める必要はありません。審査に落ちたのはその会社の審査基準に合わなかっただけで、別の会社では通過するといったケースもあります。
具体的な計画としては、6ヶ月間の申し込みをしない期間を置いた後、前回と異なる系統のカード会社に申し込むのがよいでしょう。
また、流通系カードで否決された場合は、次に消費者金融系カードを検討するといった、アプローチを変えることも有効です。
自己破産とクレジットカードに関するよくある質問

最後に、自己破産とクレジットカードについて、多くの方が抱く疑問や不安にQ&A形式でお答えします。
正しい知識を得ることで、誤った情報に惑わされず、自己破産後のクレジットカードについて理解でしょう。
Q. 自己破産によるクレジットカードの事故情報の確認方法は?
A. 自己破産によるクレジットカードの事故情報を正確に確認するには、信用情報機関への開示請求が必要です。
確認の手順としては、CIC・JICC・KSCの3機関すべてに情報開示を請求しましょう。各機関の公式サイトから簡単に申し込みでき、届いた報告書には事故情報の保有期限が明記されています。
正式な情報を把握することで、漠然と5〜7年で消えるらしいと不安に思うのではなく、自分自身の信用回復の正確な時期を知ることが可能です。
Q. 自己破産後でもクレジットカードを持つメリット・デメリットは?
A. 自己破産後にクレジットカードを持つメリットは、生活の利便性を回復できる点です。現代社会では、ネットショッピングやホテル予約、ETCカードの利用など、カード決済が前提の場面が多いため、カードがないと不便を感じるでしょう。
一方で、管理が不十分だと再び借金をしてしまうリスクがある点がデメリットです。クレジットカードは、手元に現金がなくても買い物できる手軽さが、過剰な支出につながる可能性があります。
クレジットカード取得後は「必ず一括払い」「リボ払いは使用しない」といったルールを設けることが、再び安全にカードを活用するためには必要でしょう。
Q. 自己破産後は家族のクレジットカードも使えなくなる?
A. 自己破産をしても、配偶者や親など家族が本人名義で契約しているクレジットカードは、問題なく利用可能です。
信用情報は個人と金融機関の間で管理され、家族は別人格であるため、自分の破産情報が家族の信用情報に登録されることはありません。
たとえば、夫が自己破産しても、妻が自身で契約したクレジットカードは問題なく使えます。ただし、例外として、破産した本人が本会員で家族がその家族カードを使っていた場合は、家族カードも本会員と同時に強制解約となります。
家族が独自に契約しているカードであれば影響はないため、過度に心配する必要はありません。
まとめ

自己破産後にクレジットカードを新しく持つためには、5年〜7年程度という信用回復期間を目安にしつつ、今できることを確実に積み上げることが重要です。
信用情報が回復するまでは、収入を安定させたり、クレジットカード以外の決済手段を活用したりしながら、あらたにクレジットカードを作るための準備期間にしましょう。
信用情報が回復したら、まずはひとつのカード会社でクレジットカードの申し込みをして、審査結果を待ちましょう。
自己破産後にクレジットカードを作りたい場合は、本記事の内容を参考に、今できることをコツコツ続けることが大切です。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

