自己破産

自己破産後の生活は何が変わる?財産・家族・仕事への影響と乗り越え方 | 千代田中央法律事務所

破産と書かれた紙と人形 自己破産

「自己破産をしたら今までどおりに生活できないのだろうか?」

「自己破産後の生活はつらいものになるのだろうか?」

自己破産の手続きを検討するにあたり、このような不安を抱く方もいるのではないでしょうか。

自己破産によって、いくつかの制限があることも事実ですが、基本的にはこれまでどおりの生活を送れます。

本記事では、自己破産で制限されるもの・されないもの、よくある誤解についても詳しく解説します。正しい情報を得たうえで、生活再建について前向きな計画を立てましょう。

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自己破産後の生活で制限されること・影響がでること

カードを持つ手

まずは、自己破産後の生活で避けられない制限や影響について、具体的なポイントを解説します。

自己破産をすると以下のような影響がある点に注意が必要です。

具体的にどのような制約があり、どう対処すればよいのかをみていきましょう。

自己破産の基礎情報は、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

自己破産とは?手続きの進め方や条件、費用相場、注意点を解説

価値ある財産(家や車など)は処分される

自己破産の手続きを開始すると、申立人が所有する一定の価値を持つ財産は換価処分され、手放すことになります。

しかし、所持しているすべての財産が没収されるわけではありません。

市場価値が20万円以下の車やバイクなどは、自由財産とみなされるケースが一般的で、自己破産後もそのまま使用することが可能です。自由財産とは、生活に必要な財産として、自己破産後も所持できる財産のことを指します。

ただし、この金額や内容の基準は裁判所の運用によって異なる可能性があるため、あくまで目安と捉えてください。

基準を超える価値がある資産でも、自由財産の拡張が認められれば、所有を維持できるケースもあります。

ローンやカードが約5~7年利用できない

自己破産をすると、信用情報機関に事故情報として登録されます。

信用情報機関ごとの事故情報の登録期間は、以下が目安です。

信用情報機関事故情報の登録期間の目安
CIC(指定信用情報機関)約5年
JICC(日本信用情報機構)約5年
KSC(全国銀行個人信用情報センター)約7年

いわゆる「ブラックリストに載る」といわれる状態であり、この期間中はクレジットカードの新規発行や各種ローンは原則利用できません。

なお、登録期間と情報が登録される起算点は、機関ごとに異なるため、各機関のルールを確認しておくとよいでしょう。

スマホの分割払いの審査に通りにくい

自己破産後の生活では、スマートフォンの端末代金を分割払いで購入することが難しくなる傾向があります。

前述のとおり、信用情報機関に自己破産の記録が残っていると、分割払いの返済能力に懸念があると判断されるためです。

ただし、これはあくまで端末の分割購入に関する制限であり、通信サービスそのものの契約を禁じられるわけではありません。

手続き前に携帯電話料金の滞納がなく、債権者に携帯電話会社が含まれていなければ、現在使用している回線契約をそのまま維持できるのが一般的です。

賃貸の入居審査に影響がでることがある

家賃の滞納などがなければ、自己破産をしても現在住んでいる賃貸住宅を追い出されることはありません。

注意が必要なのは、新たに物件を借りる際の入居審査です。近年の賃貸契約では家賃保証会社の利用が一般的となっており、保証会社の種類によっては審査に影響がでるケースが考えられます。

保証会社の母体が信販系保証会社やクレジットカード会社の場合、ブラックリスト状態だと断られてしまう可能性があります。

保証会社が使えない場合は、親族に連帯保証人になってもらう、あるいは保証人が原則不要の物件を選択肢に入れるなどの方法を検討しましょう。

奨学金などの保証人になれない

自己破産後、信用情報に事故情報が登録されている期間は、他者のために保証人・連帯保証人になることはできません。

ブラックリストに情報が載っている場合、保護者であっても子どもの奨学金の連帯保証人になれないため注意しましょう。

ただし、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金には、保証料を支払うことで保証機関が連帯保証人となる機関保証という制度があります。これを利用すれば、親が保証人になる必要はありません。

また、配偶者や両親、兄弟など他の親族に保証人を依頼する方法も考えられます。家族の将来に関わるため、制度をよく調べて対応を検討することが大切です。

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自己破産後の生活に関する誤解と正しい情報

財布からお札を出す人

インターネット上には、「自己破産すると〇〇ができなくなるらしい」などといった情報が数多く散見されます。

ここでは、自己破産に関するよくある誤解を解き、正確な情報をお伝えします。

自己破産による周囲の影響については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

自己破産するとどうなる?家族や職場への影響と自己破産以外の解決策を紹介

戸籍や住民票に記録が残ることはない

自己破産をした事実は戸籍や住民票に記載されないため、これらの公的な証明書から、債務整理の経歴が第三者に知られる心配はありません。

結婚や就職などでこれらの書類を提出する際に不安に思う方がいるかもしれませんが、安心して提出してください。

選挙権を失うことはない

自己破産をしても、選挙権や被選挙権(立候補する権利)といった公民権が失われることはありません。

選挙権は国民固有の基本的な権利であり、個人の経済的な問題である自己破産を理由に、このような権利が制限されることは法律上ありません。

手続き中であっても、免責が許可された後であっても、他の国民と何ら変わりなく投票できます。

給与が全額差し押さえられることはない

「自己破産をすると給与をすべて差し押さえられて生活できなくなる」というのも、よくある誤解です。

法律では、債務者の生活を保障するため、給与の全額が差し押さえられることはないと明確に定められています。

原則として給与の4分の3にあたる金額は、差押禁止財産として保護されており、生活費として手元に残すことが可能です(手取り額が44万円以下の場合)。

生活保護は受けられる

自己破産をしたという理由で、生活保護の受給が不利になることはありません。

生活保護の受給条件を満たしていれば、他の国民と同様に申請し、受給する権利があります。

自己破産は「過去の借金を法的に清算する」裁判上の手続き、生活保護は「最低限度の生活を保障する」行政の制度であり、両者は管轄も目的も異なるためです。

家賃滞納がなければ強制退去はない

現在住んでいる賃貸物件について、家賃を滞納していなければ、自己破産したことを理由に大家さんから強制的に退去させられることはありません。

賃貸借契約において、借主のもっとも基本的な義務は家賃を期日通りに支払うことです。

家賃をきちんと支払い続けている限り、貸主側には契約を解除する正当な理由が存在しません。

ただし、家賃を滞納している場合は、当然ながら住む権利がないため、退去勧告をされることになるでしょう。

海外旅行や引越しも基本的には可能

自己破産の手続きがすべて完了すれば、海外旅行や引越しは自由におこなえます。

ただし、自己破産手続の期間においては、裁判所の許可なく居住地を離れることが制限されることがあるため注意しましょう(管財事件の場合)。

職業制限は手続き中のみで一時的

弁護士や警備員、保険募集人といった他人の財産を扱う一部の職業や資格は、自己破産の手続き中に一時的な制限を受けます。

しかし、この制限は永続的なものではなく、手続きが完了すれば自動的に解除(復権)されます。

期間は手続き内容によりますが、通常3か月〜1年程度です。「その職業が一生できなくなる」というのは誤解であるため、正しい情報を把握しておきましょう。

自己破産の事実が周囲に知られることは少ない

自己破産をした事実が、近所の方や職場などに知られることは少ないといえます。

自己破産をすると国が発行する官報という機関紙に氏名と住所が掲載されますが、これを日常的に購読している一般の方はほとんどいないと考えられるためです。

「誰かに知られたらどうしよう」という不安から、手続きをためらってしまうかもしれませんが、あまり心配する必要はないでしょう。

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自己破産後の生活で家族への影響はある?

割れた貯金箱と人形など

次に、自己破産が家族に与える影響について、以下3つのポイントに絞って解説します。

  1. 家族に借金の返済義務は生じない(連帯保証人の場合を除く)
  2. 家族の信用情報に影響はでない
  3. クレジットカードの家族カードは解約になる

自己破産の際の家族への影響については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

自己破産の家族への影響|家族の貯金や収入、家族名義の車や家はどうなる?

1. 家族に借金の返済義務は生じない(連帯保証人の場合を除く)

自己破産はあくまで個人の手続きです。そのため、原則として配偶者や親、子どもといった家族が借金を肩代わりする法的な義務は生じません。

ただし、例外として家族が連帯保証人になっているケースでは、大きな影響があります。

この場合、主債務者であるあなたが自己破産をすると、債権者は連帯保証人である家族に対して一括請求をおこなうことになります。

連帯保証人は、本人に代わって全額を返済するという独立した契約を債権者と結んでいるため、その責任からは逃れられません。

つまり、家族が借金返済を代わりにおこなう必要があり、これが難しい場合は家族自身も自己破産などの債務整理を検討することになりかねません。

2. 家族の信用情報に影響はでない

自己破産をしても、配偶者や子どもなど、ご家族の信用情報に傷がつくことはありません。ご家族はこれまでどおり、自身の信用にもとづいて金融サービスを利用できます。

信用情報機関が管理している信用情報は、あくまで個人単位のものです。家族がブラックリストに載っていても、その情報が他の家族に影響することはありません。

3. クレジットカードの家族カードは解約になる

自己破産をする本人が主契約者となっているクレジットカードに紐づいている家族カードは、自己破産の手続きを開始すると使えなくなります。これは、主契約が強制解約されることに伴う必然的な措置です。

自己破産の申し立てをするとすぐに家族カードは使用できなくなるため、クレジットカードを使いたい場合は、家族それぞれが個人名義で作成する必要があります。

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自己破産後の生活を立て直すコツ

家計簿をつける人

ここでは、自己破産後の生活を再建し、盤石な家計を築くために実践したい3つの習慣を紹介します。

  1. 家計簿をつけて収支を可視化する
  2. 少額でも先取り貯金をする
  3. 信用情報の回復時期を把握し再申込の計画を立てる

自己破産における免責許可はゴールではなく、借金のない安定した未来を築くための新たなスタートラインだと認識しましょう。

1. 家計簿をつけて収支を可視化する

経済的自立を取り戻すために、もっとも基本的で効果的な習慣が、家計簿をつけ続けることです。

お金の流れを見える化し、自身の消費行動を客観的に把握することが、家計再建の土台となります。

お金の管理を習慣化することで、再び赤字家計に陥ることを防ぎ、貯蓄できる体質へと改善していくことが可能になります。

2. 少額でも先取り貯金をする

家計の黒字化に成功したら、次に先取り貯金の仕組みを作りましょう。「月末に残ったら貯金しよう」という方法では、貯蓄はなかなか増えません。

収入があった時点で、先に貯金額を別の口座に移してしまうことで、残ったお金で生活する習慣が身につきます。

急な病気や冠婚葬祭などに対応できる緊急用の資金として、少額ずつでも貯金を継続することがおすすめです。

3. 信用情報の回復時期を把握し再申込の計画を立てる

信用情報が回復する5〜7年後を見据え、いつから何ができるようになるのかを具体的に計画しておくことが、社会的な信用を再構築するポイントとなります。

時期が来たら信用情報機関で「本人開示請求」をおこない、事故情報が抹消されたかを確認しましょう。

情報がクリアになっていることを確認したうえで、新たな金融サービス(クレジットカードやローンの申し込み)の申し込みをおこなえば、審査落ちを回避しやすくなります。

無計画に申し込んで審査に落ちるという失敗を避けるため、スケジュールを把握しておくことが重要です。

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まとめ

豚の貯金箱

自己破産は、借金問題を法的に解決し、経済的な再スタートを切るための重要な制度です。

手続き後の生活には、財産の処分や金融サービスの利用制限など、一定期間の制約が伴いますが、その多くは未来の生活を安定させるための一時的な措置です。

一方で、「戸籍に傷がつく」「選挙権がなくなる」といった多くの不安は、誤った情報です。正しい情報を知り、必要以上に恐れないことが大切です。

家計管理の習慣を身につけることができれば、自己破産後でも安定した暮らしを取り戻すことは十分に可能です。

もし深刻な借金問題で悩んでいるなら、一人で抱え込まず、弁護士などの専門家に相談することからはじめてみてください。

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京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。

千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。