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自己破産で所有している車はどうなる?ローンの有無による違いを解説 | 千代田中央法律事務所

ガレージの車 自己破産

「自己破産を検討しているけど、今持っている車はどうなるの?」「処分しなければいけないの?」といった不安を持っていませんか?

自己破産をしたからといって、必ずしも車を処分しなければいけないわけではありません。

本記事では、自己破産した場合に所有している車が処分の対象になるのか、わかりやすく解説しています。ローンの有無や査定額によって、処分の対象になるかどうかは異なるため、自己破産を選択する前に車の取り扱いを理解しておきましょう。

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自己破産すると所有している車はどうなる?

車とビジネスマン

ここでは、自己破産手続きにおいて、生活に不可欠な車がどのように扱われるのかを解説します。車を残せるかどうかは、自動車ローンの有無によって異なります。

自分の状況がどちらに当てはまるかを確認し、次のステップを考えるための基礎知識を整理しましょう。

ローンの支払いが残っている場合

自動車ローンが残っている車は、自己破産をすると原則として手元に残せません。多くのローン契約には、所有権留保という特約があり、完済するまでは法的所有者がローン会社やディーラーになります。

破産手続きを弁護士に依頼すると返済が停止され、ローン会社は正当な権利として車を引き上げる別除権を行使します。

別除権は破産手続きとは別に保護され、弁護士が受任通知を送った後、数週間から数ヶ月以内に引き上げが実行されるのが一般的です。そのため、通勤や家族の送迎などで車が必要な場合は、代替手段の確保を早めに準備することが重要です。

ローンの支払いが残っていない場合

自動車ローンを完済しており、車検証上の所有者があなた自身の場合、その車は財産として残せる可能性があります。

裁判所では車の査定額を基準に判断され、実務上は20万円以下であれば換価するほどの価値がないとみなされ、自由財産として手元に残せます。

年式が古く初年度登録から長期間経過している車は、査定額が20万円以下になる可能性があるため、所有が認められるでしょう。一方、査定額が20万円を超える車は、原則として破産管財人により処分され、債権者への配当に回されます。

どうしても車を残したい場合は、自由財産の拡張として裁判所に特別申立てをおこなうことで、例外的に所有が認められるケースもあります。事前に所有している車の価値を確認し、必要に応じて裁判所への申立てを検討することが重要です。

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自己破産しても車を所有できる条件

複数の車


続いて、自己破産手続きを進める中でも、生活に欠かせない車を手元に残すための具体的な条件について解説します。主な条件は、以下のとおりです。

車の査定額が20万円以下である

ローンを完済しており車検証上の所有者が自分で、車の評価額が20万円以下であれば、自己破産後も車を残せる可能性があります。

実務上、多くの裁判所は20万円以下の財産は生活必需品と判断し、自由財産として処分の対象外として扱います。年式が古い車や走行距離の多い車であれば、対象外になる可能性もあるでしょう。

ただし、古いから大丈夫だろうといったわけではありません。裁判所に客観的に示すためには、必ず日本自動車査定協会(JAAI)のような期間が発行する査定書が必要です。

車を残したい場合は、事前に査定を受け20万円以下であることを証明できれば、手続きを有利に進められるでしょう。

通勤や通院など日常生活で不可欠と認められる

たとえ車の価値が20万円を超えていても、車がなければ生活の維持が著しく困難になることを客観的に証明できれば、例外的に所有を認められる場合があります。

自己破産は債務者の再出発を支援する制度であり、車を失うことで通勤や通院が不可能になれば再起そのものが阻害されてしまいます。

ただし、車がないと困るという抽象的な主張では認められません。裁判所に対して、公共交通機関の少なさを示す時刻表や勤務先の通勤証明書、医師の診断書や通院指示書など、第三者が作成した客観的な証拠を提出する必要があります。

残りのローンを家族や友人に返済してもらう

ローンが残っている車でも、ご両親や兄弟といった親族が代わりに一括返済する第三者弁済という方法があります。

ローンが完済できれば、ローン会社の所有権留保が外れて名義が自分に移るため、手元に残せる可能性が高まります。しかし、所有権が移った瞬間に車は財産となり、査定額が20万円を超えていれば破産管財人による処分対象となるでしょう。

そのため、家族が返済してくれたにもかかわらず結局車を失う事態になりかねません。さらに、自分のお金で自動車ローンだけを優先的に返すと、偏頗弁済(へんぱべんさい)という禁止行為にあたり、自己破産手続きそのものが不利に進むおそれがあります。

家族や友人にローンを返済してもらう方法は、車の価値が20万円以下であると確認できる場合に限り、慎重に検討すべき限定的な手段です。

裁判所に自由財産の拡張の申立てをして認められる

車の価値が20万円を超えても、通勤や通院などで不可欠な事情がある場合は、裁判所に自由財産の拡張の申立てをおこなうことで所有を認めてもらえる可能性があります。

自由財産の拡張の申立ては、破産法で認められた正式な手続きで、車を残すための最終手段です。申立てには、車が生活維持に欠かせない理由を記した申立書と、医師の診断書や勤務先の証明書など客観的な資料が必要です。

裁判所は必要性や代替手段の有無、債権者の利益を踏まえたうえで、拡張を認めるか判断します。自由財産の上限は99万円とされ、車の評価額と現金が上限を超える場合は、超過分を破産財団に納める条件が付くこともあります。

ハードルの高い方法ですが、生活再建にどうしても車が必要な方にとっては、検討したい制度といえるでしょう。

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自己破産で車を守るためにしてはいけないこと

売買契約書に記入する人

ここでは、自己破産の手続きにおいて、車を残したいという気持ちからついしてしまいそうな禁止行為について解説します。

上記の行為は、単なる手続き上のミスではなく、借金の免除が認められなかったり、刑事罰の対象となったりするおそれがあります。

勝手に車を処分する

自己破産を検討している段階で、弁護士に相談せず自分の判断で車を処分することは禁止です。たとえ名義が自分でも、車はすべての債権者に公平に分配されるべき財産に含まれるため、自分の判断で車を売却したり譲渡したりするのは避けましょう。

価値のある車を知人に相場より安く売却したり、無償で譲ったりすると、不当な財産処分とみなされ、債権者の利益を害する行為として厳しく追及されます。

たとえば、本来50万円の車を10万円で友人に売却した場合、破産管財人の調査権限により取引を無効にし、車を戻されてしまう可能性があります。

どうしても車の処分が必要なら、必ず弁護士に相談し指示を仰ぐことが重要です。

車のローンだけを優先的に返済する

車だけは残したいと考え、自動車ローンだけを優先的に返済するのは避けるべき行為です。特定のローンのみを返済する行為は、自己破産手続きにおける禁止行為である偏頗弁済にあたり、債権者平等の原則に反します。

自己破産では、すべての債権者を公平に扱うことが大前提であり、特定の債権者だけを優遇することは許されません。

偏頗弁済は免責不許可事由の代表例であり、発覚すれば借金の免除が認められない可能性もあります。

免責が不許可となれば、財産を失ったうえに借金だけが残るという最悪の事態に陥ります。弁護士に依頼した後は、自分の判断で返済せず、必ず専門家の指示に従いながら手続きを進めることが重要です。

車のローンが残っていることを隠す

自己破産の申立てでは、すべての財産と借金を正直に申告する義務があります。自動車ローンを意図的に隠し、支払いを続けて車に乗りたいと考えるのは危険です。

ローンを隠す行為は、偏頗弁済を裏でおこなうことと同じであり、さらに裁判所に虚偽の申告をする行為として免責不許可事由に該当する可能性が高まります。

仮に申立書の債権者一覧にローン会社を記載しなくても、破産管財人は銀行口座や入出金履歴を詳細に調査するため、定期的な支払いから必ず発覚します。

意図的に隠していた事実が明らかになれば、裁判所の評価は悪化し、免責が認められない深刻な事態になりかねません。どんなに不利な情報でも、弁護士に正直に伝えることが、最終的に自身を守る方法です。

車の名義を自己破産直前に変更する

自己破産直前に車の名義を配偶者や親、友人へ変更する行為は財産隠しとみなされ、悪質な禁止行為に該当します。

意図的な名義変更による財産隠しは、免責不許可となるだけでなく、詐欺破産罪として刑事責任を問われる可能性もあるため避けたほうがよいでしょう。

バレなければ大丈夫と思っていても、破産管財人は過去の財産移転も調査するため、直前の不自然な名義変更は必ず発覚します。

さらに、名義変更に協力した家族まで共犯とみなされるリスクも否定できません。車を残したい気持ちを優先するのではなく、必ず法律に則った正規の手続きで解決を図りましょう。

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自己破産しても車に乗れる方法

ハンドルを持つ人

自己破産して車を失ったとしても、以下のような方法で再び車を持つことが可能です。

自己破産の手続き直後はさまざまな制約がありますが、計画的に準備することで、再び車のある生活を取り戻すことは可能です。

破産後5年〜10年待ってローンを申し込む

自己破産をすると、信用情報機関に事故情報として登録され、あらたに自動車ローンを組めなくなります。事故情報への登録はいわゆるブラックリストの状態ですが、永久に続くものではありません。

CICやJICCといった信販会社系の機関では、免責許可決定から約5年で情報が削除されます。銀行系が加盟するKSCでは、官報情報が約7年間保有されるため、5〜7年が経過すれば再びローンを組める可能性が出てきます。

事故情報が消滅する期間はただ待つだけではなく、安定収入の確保や家計の改善、頭金の準備など信用回復に向けた努力を積み重ねることが重要です。

現金一括で購入する

自己破産後に車を手に入れる確実な方法は、現金での一括購入です。現金での購入であればローン審査は一切不要で、信用情報も関係ありません。

手元にお金があれば、手続きが完了した翌日でも車を入手できます。自己破産後の生活再建期は、無理のない範囲で貯金を積み重ね、予算内で購入できる車を選べば、再び車を持つことは可能です。

破産後の車の入手を考える際は、現金での一括購入を第一目標に据え、計画的に資金を準備しましょう。

家族名義のローンで購入してもらう

配偶者や両親など安定収入のある家族の協力が得られる場合、家族名義で自動車ローンを組み、自分が使用する方法もあります。

ローン審査は契約者である家族の信用情報と返済能力にもとづくため、自己破産した自分の信用情報は影響しません。

家族が審査に通れば車を購入可能で、車検証上の所有者やローン契約者は家族になりますが、自分も運転者として任意保険に加入すれば日常使用も問題ありません。

ただし、支払いの滞納があれば家族の信用情報にも影響するため、一緒に車を使う身としてローン返済に積極的に協力することが重要です。家族であっても返済計画や約束事を事前に明確にし、慎重に購入を検討しましょう。

リースやサブスクなどを利用する

カーリースやサブスクは契約時に信用情報が影響するため、自己破産後すぐに利用することは難しいでしょう。しかし、約5〜7年経過後、出費を抑えて車を所有する方法のひとつとして有効です。

一部の中古車販売店の自社ローンや、独自審査のリース会社であれば利用できる可能性はありますが、保証人が必要だったり月額料金が高額だったり、車種が限定されたりすることもあります。

また、リースやサブスクを利用する場合は、審査なしや誰でもOKといった宣伝に惑わされず、契約内容や総費用を慎重に確認しましょう。短期間だけ車が必要な場合は、レンタカーを利用するのも現実的な選択肢です。

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自己破産と車に関するよくある質問

現金と車

最後に、自己破産と自動車について、多くの方が抱える以下4つの具体的な疑問にQ&A形式でわかりやすくお答えします。

Q. 配偶者や家族名義の自動車はどうなる?
Q. 自己破産後いつ車を持っていかれる?
Q. 10年落ちの車でも処分の対象になる?
Q. 車がないと困る場合でも処分される?

それぞれ詳しい回答を見ていきましょう。

Q. 配偶者や家族名義の自動車はどうなる?

A. 自己破産の手続きで処分の対象となるのは、破産を申し立てる本人名義の財産だけです。配偶者や家族が自身の収入で購入、所有している車は、自分が自己破産しても影響を受けず、通常通り使用できます。

ただし、家族名義でも購入資金やローン、税金や保険料などを自分が負担している場合、その車は実質的に本人の財産と判断される可能性があります。

この場合、財産隠しとみなされ、車が処分対象になるだけでなく、破産手続きにも影響するかもしれません。

家族名義の車がある場合は、購入経緯や費用負担を正直に弁護士に伝え、適切な対応を取ることが重要です。

Q. 自己破産後いつ車を持っていかれる?

A. ローンが残っている車は、自己破産をすると原則として引き上げられますが、申立て直後すぐに持っていかれるわけではありません。

通常、弁護士がローン会社に受任通知を送付すると、ローン会社は引き上げの準備を開始します。その後、弁護士とローン会社の間で引き渡し日時や場所が調整され、実際の引き上げがおこなわれます。

状況により異なりますが、通知送付から数ヶ月以内に引き上げが実行されるのが一般的です。

数ヶ月の猶予期間は、代替交通手段を確保するといった生活設計を整えるために重要なため、弁護士に依頼した時点で、車を失う前提で準備を進めましょう。

Q. 10年落ちの車でも処分の対象になる?

A. 10年落ちの車が処分対象になるかどうかは、ローンの有無によって異なります。ローンが残っている場合、所有権はローン会社にあるため、年式に関係なく引き上げの対象です。

一方、ローンを完済し所有者が本人名義であれば、10年落ちの車は手元に残せる可能性が高いでしょう。裁判所では、評価額20万円以下を自由財産とみなし、処分対象外としています。

一般的な国産車であれば、10年経過で中古車市場価値は大幅に下がり、基準を下回る可能性が高いでしょう。

ただし、10年落ちで古いから大丈夫と自己判断せず、公平な第三者機関での査定書を取得し、20万円以下の価値であることを客観的に証明することが重要です。

Q. 車がないと困る場合でも処分される?

A. 田舎暮らしで通勤や通院、家族の介護などに車が不可欠な場合でも、原則としてローンが残っている車は引き上げられ、価値が20万円を超える車は処分されます。

自己破産は債務者の再起を支援すると同時に、債権者への公平な配当を目的としているためです。

だからといって一人ひとりの事情を完全に無視するわけではなく、価値が20万円を超える車でも、失うと日常生活が著しく困難になると裁判所が認めれば、例外的に所有を認められる可能性があります。

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まとめ

車庫の車

自己破産をしても、状況に応じて正しい手順を踏めば車を残せる可能性があります。ローンがない車は、査定額20万円以下であれば、売却することなく所有し続けることが可能です。

20万円以上で価値が高くても、通勤や通院に不可欠な場合は、自由財産の拡張を申し立てる道もあります。

ローン中の車は原則として引き上げられますが、第三者弁済のような例外的な手段も存在します。自己破産しても車を残したいという理由から、名義変更や一部だけの返済といった自己判断はリスクの高い行為です。

まずは、弁護士をはじめとした専門家に相談し、今の状況に合ったもっとも安全で最適な解決策を見つけましょう。

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京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。

千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。