「金利上昇で住宅ローンの返済が苦しい」
「このままでは破産するかもしれない」
住宅ローンの返済に悩まされており、自己破産を検討するような不安をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
マイホームはかけがえのない財産ですが、毎月の支払いが難しくなり手放すことを考える方もいるでしょう。
本記事では、住宅ローンによる破産の現状や、よくある原因とその対応策について解説します。さまざまな解決策を知っておくことで、今の家で暮らし続けるための道筋が見つかるかもしれません。住宅ローンの返済でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
住宅ローンによる破産とは?

住宅ローンによる破産とは、住宅ローンの支払いが難しくなり、債務整理をすることを指します。
住宅ローンによる破産の出発点となるのは、毎月の返済が継続的にできなくなる支払不能の状態です。
これは、単に一度の返済が遅れることではなく、客観的にみて返済を継続する能力を失った状態を指します。
たとえば、「病気になり以後の収入の目途が立たない」「降格により給与が大幅に減る」などの理由があげられます。
返済の滞納を放置した場合、金融機関から残額の一括返済を求められることが一般的です。
高額な住宅ローンを一括で返済するのは現実的ではなく、返せない場合は家を手放す(売却)しか方法がなくなるでしょう。
売却時、住宅の価値がローン残債より低い場合は、足りない分を自身で補填しなければなりません。
しかし、その金額が数百万以上など高額である場合、払い切れずに債務整理を検討するケースがあります。
住宅ローンによる破産は本当に増えている?最新動向

住宅ローンによる破産が増加しているかという点について、客観的なデータにもとづいて以下の2点を解説します。
それぞれを詳しくみていきましょう。
1. 返済条件を緩めてもらっている人の割合
失業や収入の減少などによって住宅ローンの返済が困難になった場合、金融機関に相談することで返済条件変更の交渉が可能です。
条件変更が認められて、返済期間の延長や月々の返済額の減額といった措置が取られている住宅ローンのことを、貸出条件緩和債権と呼びます。
住宅金融支援機構が公開した資料「統合報告書2024 資料編」によると、返済が困難になっているローン全体(リスク管理債権)のうち、この貸出条件緩和債権は約57%を占めています。
詳しい数字は以下の表をご覧ください。
| 年度 | 貸出条件緩和債権額 | 債権額合計 |
|---|---|---|
| 令和3年度 | 4,950億円 | 255,565億円 |
| 令和4年度 | 4,652億円 | 253,599億円 |
| 令和5年度 | 4,263億円 | 246,046億円 |
参照:独立行政法人住宅金融支援機構「統合報告書2024 資料編」
このデータだけをみると、貸出条件緩和債権の金額は減少傾向にあります。
これは、過去に条件緩和を受けた人の状況が改善し、通常の返済に戻ったケースやローン自体が完済されたことなどが考えられます。
一方で、返済継続が困難になり任意売却に至った、あるいは金利の低い他のローンへ借り換えたことで、当該債権の対象から外れたパターンもあり得ます。
数字だけで背景を把握することは難しいため、住宅ローンの返済が厳しく相当額の貸出条件緩和債権額が毎年あることを認識しておきましょう。
2. 3か月以上返済が滞っている人の割合
同じく、住宅金融支援機構の「統合報告書2024 資料編」を参考に、返済条件の変更などがおこなわれず、実際に3か月以上にわたって返済が滞ってしまっている債権額をまとめました。
詳しい数字は以下の表をご覧ください。
| 年度 | 3か月以上延滞債権額 | 債権額合計 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 令和3年度 | 587億円 | 255,565億円 | 約0.23% |
| 令和4年度 | 623億円 | 253,599億円 | 約0.25% |
| 令和5年度 | 667億円 | 246,046億円 | 約0.27% |
参照:独立行政法人住宅金融支援機構「統合報告書2024 資料編」
表が示すとおり、この債権額は令和3年度の587億円から令和5年度には667億円へと、2年間で約13.6%増加しており、増加傾向にあります。
さらに注目すべきは、債権額合計に占める割合も年々わずかながら上昇している点です。
これらの情報から、金融機関への相談や条件変更交渉が間に合わないまま、返済困難に陥る世帯が増加していることがわかります。
住宅ローンで破産する原因

ここでは、住宅ローンによる破産に陥りやすい人の共通点や、その背景にある原因について深掘りします。
それぞれを詳しくみていきましょう。
返済負担率が高い
年収に占める年間ローン返済額の割合である総返済負担率が、安全圏とされる25%を超えている場合、破綻リスクが高い状態といえます。
上限ぎりぎりでローンを組んでいる場合、わずかな金利上昇や収入減少が家計を圧迫し、支払いが厳しくなる可能性が高いためです。
予期せぬ出費や金利上昇が続いた場合、他の支出を削るにも限界があり、やがて滞納に至る可能性が高まります。
ボーナス払いや変動金利に頼りすぎている
ボーナスは会社の業績次第で増減・消滅する不確定な収入です。返済の多くをボーナス払いに頼っていると、ボーナスが半減した際に返済が難しくなるでしょう。
また変動金利で契約している場合、金利上昇時の返済計画について、しっかりシミュレーションしておく必要があります。
ボーナス払いや金利変動に依存しすぎていると、環境の変化による支払い額の増加に耐えられなくなるケースがあるため注意しましょう。
固定資産税や修繕費など維持費を把握していない
固定資産税やマンションの修繕積立金といった、住宅の維持費を返済計画に含めていない場合、想定外の支出増で破綻するリスクがあります。
これらの維持費は合計で年間数十万円に上るケースも珍しくなく、将来的に値上がりする可能性も十分に考えられます。
ローン返済とは別に住居維持費のための口座を作り、毎月一定額を積み立てる習慣をつけることが、長期的な家計の安定に不可欠です。
病気や介護など不測の事態への備えがない
30年以上にわたる長い返済期間では、病気や介護などの予期せぬ出費は起こりうると考えておくべきです。
不測の事態への備えが不十分な場合、突然の収入減や支出増に対応できず、ローン破綻に直結するリスクがあります。
備えをしっかり確保しておくことで、住宅ローンによる破産を回避できるでしょう。
離婚や転職など収入減少を想定した返済計画がない
住宅ローンは多くの場合、長期に及ぶ契約であり、その間に仕事や夫婦関係が変化しない保証はありません。
とくにペアローンや連帯債務は、離婚しても金融機関への返済義務は解消されず、きわめて複雑な問題を残すことがあります。
共働きでローンを組む際は、万が一の場合の家の処分方法や債務の分担について、事前に話し合っておくべきです。
また、転職を考えるなら、収入が途絶える期間の生活費とローン返済額をあらかじめ貯蓄しておくことがリスク管理の基本となります。
住宅ローンによる破産を回避するために今すぐできる対策は?

ここでは、住宅ローンによる破産を回避するため、今日からでも着手できる具体的な対策を3つ解説します。
それぞれを詳しくみていきましょう。
1. 家計簿をつけるなどして収支を正確に把握する
住宅ローンによる破産を回避するための第一歩は、ご自身の家計の健康状態を正確に把握することです。
現状を客観的な数字で直視してはじめて、本当に持続可能な返済計画なのか、どこに削減の余地があるのかを判断できます。
家計改善につなげるための基礎情報となりますので、まずは継続して記録することからはじめましょう。
2. 固定費を削減しキャッシュフローを改善する
家計の収支を把握したら、次に着手すべきは固定費の見直しです。
毎月決まって引き落とされる通信費や保険料、各種サブスクリプション料などを少しでも減らすことが、手元の現金を増やすうえで効果的です。
これらの見直しを実行すれば、月に1万円以上のキャッシュフロー改善も不可能ではありません。
3. 金利の安いローンに借り換えを検討する
家計の見直しのなかで、とくに大きなインパクトが期待できるのが、住宅ローンの借り換えです。
住宅ローンは借入額が大きいため、わずかな金利差であっても、数百万円の差額が発生することもあります。
現在より低い金利のローンに切り替えることで、月々の返済額と将来支払う利息の総額を大幅に削減できる可能性がありますので、資料を取り寄せるなどして借り換えを検討してみましょう。
住宅ローンの返済が苦しくなったときの具体的な選択肢

ここでは、住宅ローンの返済が実際に苦しくなった際の具体的な選択肢を紹介します。
それぞれの選択肢の内容や、注意点などを理解していきましょう。
金融機関に返済条件変更を申し出る
住宅ローンを滞納する前に取るべき最初の行動は、借入先の金融機関への相談です。
金融機関が応じてくれる可能性のある条件変更(リスケジュール)の主な内容は、以下のとおりです。
- 返済期間を延長して、月々の返済額を減らす
- 元金返済を猶予して、一定期間は利息のみを支払う
相談の際は、家計の状況がわかる資料を準備すると交渉が円滑に進む傾向があります。
督促状が届いてからでは立場が不利になりかねませんので、返済が1日でも遅れそうだと感じたら、すぐに自ら電話を入れるようにしましょう。
住宅の売却(任意売却)を検討する
住宅ローンの返済がどうしても難しく、ご自宅を手放すことを考えなければならない場合、任意売却と競売という2つの方法があります。
このうち、強制的に手続きが進む競売を待つのではなく、ご自身の意思で売却する任意売却のほうが、より有利な選択肢となります。
それぞれの違いは以下のとおりです。
| 種類 | 売却価格 | 引越し時期 |
|---|---|---|
| 任意売却 | 市場価格に近い価格が期待できる | 買主との交渉で調整可能 |
| 競売 | 市場価格より大幅に安くなる傾向がある | 強制的に立ち退きを求められる |
ローンの滞納が続いていても、競売の入札開始前までであれば、任意売却は可能です。
返済を続けるのが難しいと判断したら、1日も早く任意売却に詳しい弁護士に相談し、すぐに売却の準備を進めるようにしましょう。
個人再生で住宅を残しながら家計を立て直す
住宅ローン以外の借金が家計を圧迫している場合、個人再生の「住宅資金特別条項」を利用すれば、マイホームを手放さずに生活を立て直せる可能性があります。
この制度は、裁判所を介しておこなわれる法的な手続きで、以下の2点を両立させることを目指します。
- 住宅ローンは、計画通りまたは計画を修正して返済を続ける
- 住宅ローン以外の借金は、元本を大幅に圧縮し、それを原則3年で分割返済する
マイホームを残しつつ、家計を立て直せる制度となっていますが、利用には安定した収入の証明などの条件があります。
まずは弁護士に相談し、ご自身が個人再生を選択できるかどうか判断してもらいましょう。
自己破産の申立を検討する
収入が途絶えるなど、今後どのような形でも返済の継続が不可能な場合の最終的な手段が自己破産です。
自宅などの財産は手放すことになりますが、税金などを除くすべての借金の支払義務が免除され、生活をゼロから再建する機会を得られます。
自己破産について詳しくは、次の章で解説します。
住宅ローンが払えず破産したら、生活はどうなる?

ここでは、実際に住宅ローンの返済が難しく、自己破産の手続きをおこなったら、生活にどのような影響がでるかを解説します。
自己破産の申立は、メリット・デメリットを理解したうえでおこなうようにしましょう。
自己破産についての基礎情報は、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
自己破産のメリット
自己破産のメリットのうち、代表的な3つを紹介します。
1. 免責が認められれば住宅ローンの返済義務はなくなる
自己破産の最大のメリットは、裁判所から免責許可決定が下りれば、住宅ローンを含むほとんどの借金の支払義務がなくなることです。
仮に数千万円のローン残高があっても、免責が許可されれば税金などを除き、以後返済する必要はありません。
ただし当然ながら、その家にそのまま住むことはできませんので、新しい住まいを探す必要があります。
2. 生活必需品など一定の自由財産は保持できる
自己破産をしても、すべての持ち物を失うわけではなく、生活に必要な一定の財産は所持できます。
具体的には、99万円以下の現金や、生活に不可欠な家具・家電、仕事で使う道具などは原則として手元に残すことが可能です。
3. 借金のストレスが軽減し生活を立て直せる
自己破産を選択することで、返済のプレッシャーや将来への不安といった、重い精神的ストレスから解放されます。
免責が認められれば借金がない状態で人生を再スタートできるため、経済的な再生はもちろん、精神的な面でも新たな気持ちでやり直すことができるでしょう。
ただし、自己破産は誰でもできるわけではありません。自己破産できる条件については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
自己破産のデメリット
自己破産のデメリットのうち、代表的な3つを紹介します。
1. マイホームは手放すことになる
自己破産を選択した場合の大きなデメリットは、資産価値のあるマイホームを手放さなければならないことです。
破産手続きでは、高額な財産を売却し、それを債権者に公平に分配することが原則だからです。
もし自宅だけは残したいという強い希望があるならば、自己破産ではなく、まず個人再生を検討してみましょう。
2. 連帯保証人がいる場合は、その人に返済義務が移る
自己破産によってご自身の返済義務はなくなりますが、借金自体が消滅するわけではありません。
連帯保証人がいる場合、その人に対して残りのローン全額が一括で請求されることになります。
連帯保証がついている債権の場合、連帯保証人を巻き込むことは避けられないため、きわめて重い決断となるでしょう。
3. 信用情報機関に事故情報が登録される
自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が登録され、いわゆるブラックリスト入りの状態となります。
これにより、約5〜7年間は分割払いやクレジットカードの利用ができなくなります。ローン審査の申し込みをしても、審査が通る可能性はほとんどありません。
現金やプリペイド方式のカードなどしか使えなくなるため、不便に感じるシーンも多いでしょう。
住宅ローン滞納で立ち行かなくなったときの相談先

最後に、住宅ローンの返済問題が深刻化し、自力での解決が困難になった場合に頼るべき、専門的な相談窓口について解説します。
これらの窓口の存在を知っておくことで、いざというときの助けになるでしょう。
債務整理に詳しい弁護士に相談する
住宅ローンの滞納が続き、自己破産といった法的な手続きを具体的に検討する段階になった場合、もっとも頼りになる相談先は弁護士です。
弁護士は法律のプロとして、あなたの代理人となり、以下のような対応をおこないます。
- 金融機関との交渉
- 裁判所への複雑な手続きの代行
- 最適な解決策の提案
弁護士に依頼した時点で、金融機関からの督促は法的に停止されますので、安心して日常を過ごせるようになります。
弁護士に依頼する際は、自己破産などの債務整理の実績を多く持っている弁護士事務所を選ぶことがおすすめです。
自己破産について弁護士に相談する際には、以下の記事も参考にしてください。
自己破産を弁護士に依頼する際の基礎知識│費用や選び方、家族にバレない方法を紹介
法テラス(日本司法支援センター)を利用する
弁護士に相談したくても、経済的な事情で費用が支払えない場合、国が設立した公的な相談窓口「法テラス(日本司法支援センター)」を利用できます。
収入や資産が一定基準以下などの条件を満たせば、「民事法律扶助制度」を利用し、お金の心配をすることなく専門家の助けを借りることが可能です。
まずはサポートダイヤルに電話し、ご自身が制度を利用できるか確認してみましょう。
まとめ

本記事では、住宅ローン破産の原因や回避策、そして万が一返済困難になった場合の具体的な選択肢を解説しました。
正しい知識を持ち、早期に行動すれば、最悪の事態を回避できる可能性は十分にあります。
重要なのは、家計の状況を正確に把握したうえで早めに対策を練ること、そして金融機関や弁護士といった専門家に相談することです。
ひとりで悩まずに、まずはお近くの弁護士事務所に一度相談してみてください。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

