自己破産を検討しているものの、弁護士に依頼することを躊躇している方はいませんか。
「どのくらい費用がかかるのだろう」「どの弁護士に依頼すればよいのだろう」といった不安から、一歩が踏み出せずにいる方もいるかもしれません。
この記事では、自己破産における弁護士の役割を多角的に掘り下げ、依頼するメリットとデメリットを比較します。
信頼できる弁護士を見極めるためのチェックポイントや、家族に知られずに相談を進める方法もまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
自己破産は弁護士に相談すべき?
結論として、自己破産の手続きは弁護士に依頼するのがおすすめです。
なぜなら、自己破産の手続きは非常に複雑であり、専門性の高い内容が多く含まれるためです。
ここでは、自己破産を弁護士に相談するメリットとデメリットについて解説します。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・精神的負担から解放される ・手続きが円滑に進む ・免責許可が認められる可能性を高められる | ・弁護士費用の経済的負担がある ・自分に合う専門家を選ぶのが難しい |
自己破産を弁護士に相談するメリット
自己破産を弁護士に相談することで得られるメリットは、主に以下の3点です。
それぞれを詳しくみていきましょう。
1. 精神的負担から解放される
弁護士に正式に依頼すると、直ちにすべての債権者へ受任通知が発送されます。
この通知によって、債権者からの督促が速やかにストップします。
債権者からの頻繁な電話や督促状、自宅や職場への訪問などが原則として制限されるため、債務者は精神的な苦痛から解放されるでしょう。
2. 手続きが円滑に進む
弁護士に依頼することで、時間と費用を無駄にしないというメリットが期待できます。
自己破産の手続きは、申立書の作成から裁判所との折衝、裁判官との面談など法的知識と経験が多く求められます。
弁護士はこれらの専門知識を持つだけでなく、裁判所や管財人との連携経験も豊富なため、手続きをスムーズに進めることが可能です。
3. 免責許可が認められる可能性を高められる
弁護士に依頼することで、借金の支払い義務を免除してもらう「免責許可」を得られる可能性を高められます。
とくに、免責不許可事由*1を抱える複雑なケースでは、弁護士の助力の有無が結果を左右する場合があります。
通常だと免責許可が下りないようなケースであっても、弁護士は説得力のある主張を通じて裁判官によい心証を与え、裁量免責*2の可能性を高めます。
免責不許可事由に心当たりがある方ほど、弁護士への依頼を前向きに検討すべきでしょう。
*1:自己破産をしても借金の支払いが免除されない原因となる、ギャンブルや財産隠しといった法律で定められた行為のこと。
*2:免責不許可事由があっても、裁判官の裁量により、例外的に借金の支払義務を免除する制度のこと。
自己破産を弁護士に相談するデメリット
自己破産における弁護士への依頼には多くのメリットがある一方、いくつかのデメリットも存在します。
ここでは、以下2つのデメリットについて解説します。
それぞれを詳しくみていきましょう。
1. 弁護士費用の経済的負担がある
自己破産を弁護士に依頼する際のデメリットは、経済的な負担です。
経済的に追い込まれている状況で、新たに数十万円の弁護士費用を支払うことは大きな障壁に感じられるかもしれません。
弁護士費用は、同時廃止事件の場合で30~60万円、管財事件の場合は40~80万円程度が必要です。目安の金額となるため、実際にかかる費用は個々の案件により異なります。
2. 専門家を選ぶのが難しい
自己破産の手続きを開始すると、数か月から1年以上にわたって弁護士と密接に連携することになります。そのため、専門性だけでなく、信頼関係を築ける人間的な相性も大切です。
ホームページや広告だけでは、その弁護士の真の実力や人柄を判断するのは難しいかもしれません。
そこで有効なのが、多くの事務所が提供している初回無料相談です。無料相談を利用して直接対話し、「この人になら任せられる」と感じるかどうかを確かめましょう。
自己破産の弁護士費用の相場
自己破産を考えたとき、もっとも気になるのが弁護士費用ではないでしょうか。
ここでは気になる弁護士費用について、以下2つにわけて解説します。
費用の全体像がわからないと、相談するにも一歩踏み出せないことが多いため、あらかじめ相場を把握しておきましょう。
1. 弁護士費用の内訳
自己破産の弁護士費用は、主に着手金・報酬金・実費の3つで構成されており、これらの合計額が依頼者が支払う総額となります。
それぞれの目安金額は、以下のとおりです。
| 費用の種類 | 金額の目安 | 内容 |
|---|---|---|
| 着手金 | 20~50万円程度 | ・弁護士に正式依頼した時点で支払う費用 ・結果にかかわらず返金されないのが一般的 |
| 報酬金 | 0~30万円程度 | ・免責許可決定を得られた場合に支払う成功報酬 ・事務所によっては0円の場合もある |
| 実費 | 1~50万円以上 | ・裁判所に納める申立手数料や予納金、郵券(切手)代など ・手続きの種類で大きく変動する |
手続きになるかによって費用が大きく変わるため、弁護士との初回相談の際に、総額の見積もりはいくらかを確認してください。
2. 弁護士費用が払えない時の解決策
費用を捻出するのが難しい状況でも、利用できる有効な解決策が用意されています。
多くの法律事務所では、依頼者の経済状況に合わせて10回程度の分割払いに柔軟に対応しています。一括での支払いが難しい場合は、分割払いを相談してみましょう。
収入や資産が一定基準以下の方は、法テラス(日本司法支援センター)の「民事法律扶助制度」を利用できる可能性があります。
これは、法テラスが弁護士費用を立て替え、利用者は手続き後に月々5,000~1万円程度の無利息分割払いで返済していく制度です。
払えないと諦めてしまう前に、まずは複数の事務所の無料相談を利用し、自分にとって最善と思われる解決策を探りましょう。ひとりで悩まず、思い切って専門家に頼ることが問題解決への第一歩です。
自己破産の手続きを弁護士に依頼する際のチェックポイント
ここでは、信頼できる弁護士を見極めるために、初回相談などで確認すべき5つのチェックポイントを解説します。
何を基準に選べばよいのかわからない方は、ぜひこれらの要素を軸に判断してみてください。
1. 解決実績や経験
弁護士の得意分野は、離婚問題や交通事故、企業法務など多岐にわたります。
自己破産は専門性が高く、さらに地方裁判所ごとに細かな運用ルールが存在するため、その地域での経験値が手続きのスムーズさに直結します。
「相談実績〇〇万件」といった大きな数字よりも、あなたのケースに近い具体的な事例を取り扱った経験のある弁護士を選ぶとよいでしょう。
できれば複数の法律事務所に相談し、各弁護士の経験と実績を比較検討することをおすすめします。
2. 料金体系
費用に関する説明が曖昧なまま契約すると、後から想定外の追加費用を請求されるなど、トラブルの原因になりかねません。
安心して依頼するためにも、以下の点を確認しましょう。
- 費用の内訳が明確か
- 支払い方法が柔軟か
- 費用が追加になる可能性があるか
「今すぐ契約すれば割引します」などと、急いで契約を迫るような場合は、注意が必要かもしれません。
信頼できる弁護士は、費用について依頼者が納得するまで丁寧に説明してくれるはずです。
3. 相談しやすさ
借金問題はプライベートな悩みであり、弁護士に相談すること自体、大きな勇気が必要な方も少なくありません。
だからこそ、相談者の心理的ハードルを下げてくれる環境が整っているかが、信頼関係を築くポイントとなります。
たとえば、以下のような項目をチェックしてみるのがおすすめです。
- 無料相談を実施しているか
- 夜間や土日も相談できるか
- 法律用語を避け、わかりやすい言葉で説明してくれるか
- 話をじっくりと、遮ることなく聞いてくれるか
- 不安や懸念に寄り添い、共感する姿勢を見せてくれるか
対面での面談やビデオ通話などで、会話をしっかりしたうえで契約に進みましょう。
4. レスポンスの速さ
自己破産手続きをスムーズに進めるうえで、弁護士からのレスポンスの速さと、手続き対応の迅速さは重要なチェックポイントです。
とくに、債権者からの厳しい督促に悩まされている状況では、弁護士の対応の速さが精神的な救いにも直結します。
契約後すぐに受任通知を発送してくれる事務所と、準備に時間がかかる事務所とでは、平穏な日常を取り戻すまでの時間に大きな差が生まれます。
手続きをできるだけ早く完了させるためにも、ある程度のスピード感をもって取り組んでくれる弁護士のほうがよいかもしれません。
5. 自分との相性
弁護士との相性の良し悪しは、自己破産手続の成功率に大きな影響を与えることがあります。
相性が悪いと意思疎通が難しくなり、スムーズな進行の妨げになるおそれがあるためです。
相性を見極めるための視点として、以下をチェックしてみてください。
- 高圧的な態度や、逆に頼りない印象はないか
- 質問に対して、はぐらかさず誠実に答えてくれるか
- 価値観や人柄は信頼できるか
- 苦しい状況に共感し、寄り添う姿勢があるか
弁護士には、力強く交渉するタイプや、優しく寄り添うタイプなどさまざまな個性があり、どのタイプがよいとは一概にはいえません。
長い付き合いになることを想定し、自分と相性がよさそうな弁護士を探しましょう。
自己破産の際に弁護士選びで失敗しないコツ
ここでは、自己破産を相談する弁護士選びで後悔しないための具体的な3つの行動指針を解説します。
表面的な情報に惑わされず、ご自身にとって最適な代理人をみつけてください。
1. 口コミやランキングだけで選ばない
インターネット上の口コミは、一見すると便利な情報源に見えますが、これらだけを基準に弁護士を選ぶのは危険な場合があります。
なかには、広告料を支払えば上位に表示される仕組みのものもあり、必ずしも実際の専門性や実績を正確に反映しているとは限りません。
また、口コミは個人の主観的な感想であり、あなたと同じ状況に当てはまるとはいえません。
表面的な評価に頼るのではなく、一次情報である事務所のホームページをしっかりと読み込み、初回相談で直接確かめる姿勢が大切です。
2. 相見積もりをする
「弁護士費用は高いから、とにかく安いところにしよう」という考え方は、結果的に損をしてしまうリスクがあります。
弁護士費用は事務所によって大きく異なり、その内訳も複雑なため、複数の事務所から見積もりを取って比較検討することが賢明です。
相見積もりでは、費用の内訳や分割払いの手数料など、細かい部分まで確認しましょう。
できれば2~3か所の弁護士事務所から相見積もりを取り、安さだけでなく、提供されるサービスの価値で選ぶ視点を持ちましょう。
3. 無料相談を利用する
多くの法律事務所が提供している初回無料相談は、弁護士選びにおける便利なサービスです。
単なる情報収集の場ではなく、あなたが弁護士を面接する絶好の機会といえます。
書面やホームページの情報だけでは伝わらない、弁護士の人間性や対応の誠実さを直接確認できるのが無料相談の価値です。
無料相談は対面のほか、電話やビデオ通話などに対応している弁護士事務所もあるため、積極的に利用しましょう。
家族にバレずに弁護士に自己破産の相談をする方法
借金のことを家族に知られたくないという思いから、自己破産の相談をためらってしまう方は少なくありません。
ここでは、プライバシーを守りながら専門家に相談する方法と注意点を解説します。
いくつかの工夫をすることで、家族にバレずに手続きを進めることは十分に可能です。
匿名でできるオンライン相談を活用する
弁護士事務所によっては、匿名性を保ったままやり取りを進められます。
匿名相談の主な方法として、メールやLINEを用いた相談があげられます。
より詳しく話したい場合には、ビデオ通話などを用いたオンライン相談を利用することも可能です。
なお、相談は匿名でも可能ですが、実際に依頼する際は身分を隠したままにしておくことはできないためご注意ください。
郵送物が自宅に届かないように依頼する
自己破産の手続きを家族に内密に進めるうえで、難関となるのが郵送物の管理です。
弁護士事務所からの契約書や、裁判所からの通知書類などが自宅に届くと、家族に知られてしまう原因となります。
自宅に郵便物を届けたくない場合は、あらかじめ弁護士に依頼しておきましょう。
手続きに関するすべての書類を、代理人である弁護士の事務所宛に送付してもらうことが可能です。
秘密厳守は弁護士の基本的な義務であり、多くの事務所では依頼者のプライバシーに配慮した柔軟な対応をおこなってくれます。
弁護士に自己破産を依頼する際によくある質問
最後に、弁護士に自己破産を依頼する際のよくある質問に回答します。
トラブルを未然に防ぎ、円滑に手続きを進めるための知識としてお役立てください。
Q. 弁護士に自己破産を断られたのですが、なぜですか?
A. 弁護士に相談したにもかかわらず、自己破産の依頼を断られてしまうケースがあります。
断られる主な理由と内容は、以下のとおりです。
| 断られる主な理由 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 免責不許可事由が極めて重大である | 財産隠しが悪質であったり、借金のほとんどがギャンブルや浪費であったりするなど、裁量免責を得るのが著しく困難だと判断された場合 |
| 依頼者との信頼関係が築けない | 相談の際に虚偽の説明をしたり、重要な情報を隠したりするなど、誠実な対応が見られない場合 |
| 過去7年以内に免責許可を受けている | 破産法上、前回の免責許可決定の確定日から7年以内は、原則として再度免責を受けることができません |
| 弁護士の専門分野外である | 相談した弁護士が、自己破産などの債務整理を専門としていない場合 |
| 弁護士費用を支払える見込みがない | 分割払いの原資となる収入がまったくないなど、費用回収の見込みが立たないと判断された場合 |
これらの理由があった場合、受け入れてもらえない可能性がありますが、すぐに自己破産を諦める必要はありません。
弁護士によって方針や経験値は異なり、別の弁護士であれば依頼を受けてくれるケースもあるからです。
断られた場合は、その理由を可能な範囲で確認し、複数の事務所にセカンドオピニオンを求めましょう。
Q. 弁護士の変更や解任はできますか?
A. 自己破産の手続き中であっても、弁護士を解任および再任することは、法的に可能です。
ただし、弁護士の変更には以下のような注意点があります。
- 支払い済みの着手金は、返金されない傾向がある
- 新たな弁護士にも着手金を支払う必要がある
- 引継ぎに時間がかかり、手続きが一時的に停滞するリスクがある
弁護士に不満がある場合は、まずその旨を直接伝えて改善を求めてみましょう。
それでも解決しない場合は、変更に伴うリスクやデメリットを十分に理解したうえで、ほかの弁護士に相談してみてください。
まとめ
本記事では、自己破産手続きにおける弁護士の重要性や費用などについて解説しました。
弁護士への依頼は、督促の停止による精神的平穏の確保や、複雑な手続きの円滑化といったメリットをもたらします。
費用面の課題はあるものの、分割払いや法テラスの活用といった解決策が存在することを理解いただけたでしょう。
重要なのは、自己破産が人生の再スタートを切るための法的な手続きであり、その成否は信頼できる代理人との連携に大きく左右されるという事実です。
無料相談の機会を積極的に活用し、自分にあう弁護士を探しましょう。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

