コラム29
個人事業者が破産申立てを行う際、法人とは異なる特有の留意点があります。
まず、個人事業者の破産手続きは、基本的に事業資産を整理するため、通常は管財事件として取り扱われます。この点は、法人破産と共通する部分です。
個人事業者が保持する資産や負債の状況に応じて、資産調査が必要であり、これに基づいて破産財団が形成されます。事業用の設備や什器、在庫などが資産に含まれる場合、管財人がこれらを評価・換価し、債権者に対する適切な分配を行います。
そして、事業を継続しない場合、個人事業者の破産では自由財産の範囲に留意しながら資産を換価し、破産財団に組み入れることが求められます。差し押さえ禁止財産が認められることもあり、事業の廃業に伴い、事業者が持つ資産がどのように分類されるかが重要です。
さらに、個人事業者が自宅や事業所を保持している場合、これらの不動産資産も破産財団に含まれることになります。破産管財人は、必要に応じて不動産の任意売却や自由財産の拡張を検討し、事業者の生活再建が可能な範囲で対応することがあります。
個人事業者の破産申立てにおいても、事業の清算が完了しているか、事業資産がすでに処分されているかの確認が求められます。また、賃借物件を使用している場合は、事業所や店舗の明け渡しが完了していることを確認する必要があります。こうした事務手続きが漏れなく行われることが、申立てを円滑に進めるための鍵となります。
最後に、個人事業者の破産申立ては、税務面でも留意点が必要です。破産手続きが開始されると、破産管財人が消費税の申告義務を負う場合がありますが、通常は破産者本人が所得税や消費税の申告を行う必要があります。