M&A(企業の合併・買収)において弁護士は、取引全体の法的安全性を確保するうえで欠かせない存在です。契約書の作成・交渉はもちろん、デューデリジェンス(法務調査)や取引スキームの設計、紛争リスクの予防まで幅広い役割を担います。
適切なタイミングでM&Aに強い弁護士に相談することで、想定外のトラブルや損失を未然に防ぐことが可能です。
本記事では、M&Aで弁護士が果たす具体的な役割や依頼の流れ、費用相場、自社に合う弁護士の選び方までをわかりやすく解説します。
弁護士を戦略的なパートナーとして位置づけることで、安心で円滑なM&Aの実現に近づけるでしょう。
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M&Aにおける弁護士の重要性

M&Aプロセスにおいて、なぜ弁護士の存在が不可欠なのか、その具体的役割とメリットを解説します。
M&Aは単なる事業の売買ではなく、法的なリスクが随所に潜む複雑な取引です。
専門家である弁護士を適切なタイミングで活用することで、リスクを最小化し、取引の成功確率を高められるでしょう。
契約トラブルやリスクを未然に防げる
M&Aで弁護士を依頼する最大のメリットは、契約書に潜む法的リスクを事前に見抜き、トラブルを未然に防げることです。
M&Aにおける契約書には、当事者の権利や義務を定める重要な条項が多く含まれており、内容を十分に理解しないまま署名すると、後に想定外の責任を負う危険があります。
たとえば、基本合意書(LOI)を法的拘束力はないと思い込み、独占交渉権条項に違反してしまえば、違約金を請求される可能性があります。また、最終契約書における表明保証条項に違反した場合、売り手側に過失がなくても損害賠償責任を問われるかもしれません。
とくに中小企業のM&Aでは、経営者自身が交渉の前線に立つことが多いため、弁護士は会社と経営者個人を法的トラブルから守る盾として機能します。事前にリスクを洗い出し、契約内容を精査・調整することで、取引を安全かつ有利に進められます。
交渉をスムーズに進められる
M&Aに関して弁護士にサポートしてもらうことで、交渉を法的・実務的に整理し、全体の進行をスムーズにできます。
M&Aにおける交渉では、価格や事業計画といったビジネス面と契約条件やリスク分配などの法務面が複雑に絡み合うため、経営者がこれらすべてにひとりで対応すると、論点を整理できず交渉が停滞するおそれがあります。
弁護士が交渉チームに入ることで、法務・税務・ビジネスの論点を切り分け、経営者は本来の意思決定に集中できるでしょう。
さらに、公認会計士やM&A仲介会社と明確に役割分担することで、専門知識を無駄なく活用し、重複コストを防げます。
たとえば、財務デューデリジェンスで公認会計士が訴訟引当金を発見した場合、弁護士はその訴訟の内容や勝敗見込みを法的に分析し、補償条項を契約書に盛り込むという形で具体的な解決策につながるでしょう。
買い手との交渉で有利な条件を引き出せる
M&Aに精通した弁護士を起用することで、市場慣行への理解と交渉術を駆使して、有利な契約条件を引き出し、依頼者の経済的利益を最大化できます。
M&Aの契約条件である価格調整メカニズムや補償範囲の設計は、最終的な手取り額に影響します。専門的な法的知見がなければ、取引後に想定外の損失を被るリスクもあるでしょう。
また、取引完了時の資産額に応じて売却価格を後から調整する方法は、公平ではあるものの、トラブルになりやすい点がデメリットです。そのため弁護士は、あらかじめ価格を確定しておく方式を提案し、売り手が早い段階で安心して代金を受け取れるようにサポートします。
事前調査で問題点を早期に把握できる
M&Aにおける弁護士の重要な役割のひとつは、法務デューデリジェンスによって、対象企業に潜む法的リスクを早期に発見し、取引破談(ディールブレイク)を防ぐことです。
M&Aは情報の非対称性との戦いであり、売り手が開示しない限り潜在的なリスクを把握できません。そのため、弁護士が第三者の立場から調査を行い、法的なリスクを可視化することが不可欠です。
法務デューデリジェンスでは、契約、労務、知的財産権、許認可など、あらゆる側面を精査し、リスクを体系的に洗い出します。
弁護士が早期にリスクを発見すれば、取引先への事前確認や価格調整などでトラブルを防げます。
M&A後のトラブルのリスク管理になる
M&Aにおける弁護士の役割は、契約締結で終わりではありません。取引成立後の統合プロセス(PMI)を法務面から支援し、買収効果を最大化することも重要です。
M&Aの成功はクロージングではなく、その後の経営統合が円滑に進むかどうかにかかっています。弁護士は、経営統合において就業規則や人事制度の統合、契約関係の名義変更などを実行し、従業員の離反や取引先トラブルを未然に防ぐのが主な役割です。
経営統合の対応を怠ると、元オーナーが同業で事業を再開したり、知的財産権の帰属が不明確なまま紛争に発展したりするリスクがあります。弁護士は、これらのリスクを事前に想定し、トラブルを未然に防ぐための契約設計を行います。
このように、M&Aはクロージングがゴールではなく、統合後の安定した事業運営までを見据えた法的サポートこそが、真の成功を支える鍵となるでしょう。
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M&Aにおける弁護士の役割

M&Aにおける弁護士の役割は、主に以下の6つです。
- 法務リスクの洗い出しと精査(デューデリジェンス)
- 契約内容の確認とドラフト作成のサポート
- 必要書類や法的手続きの対応支援
- 交渉時の法的アドバイザーとしての対応
- M&Aスキームの設計と実行支援
- 統合プロセス(PMI)における法務フォロー
具体的にどのような役割を担うのかを、M&Aのリスク軽減や効果を最大化する観点を含めつつ解説します。
1. 法務リスクの洗い出しと精査(デューデリジェンス)
M&Aにおける弁護士の重要な役割のひとつは、法務デューデリジェンスによって見えないリスクを可視化し、安全な意思決定を支援することです。
M&Aでは、買い手が自社の内部情報をすべて正確に把握できるわけではなく、常に情報の非対称性が存在します。そのため、売り手側が自社の法務リスクを正確に把握し、適切に開示しておくことが重要です。
弁護士は、契約書や許認可、労務や知的財産権などを網羅的に確認し、帳簿には表れない潜在的な債務や法的リスクを洗い出します。
とくに中小企業では、主要取引先との契約に含まれるチェンジ・オブ・コントロール条項や、未払い残業代、知的財産権の帰属などが問題になることがあります。これらを事前に整理しておけば、交渉時に信頼性を高め、価格の減額交渉を防ぐことが可能です。
2. 契約内容の確認とドラフト作成のサポート
M&Aにおける弁護士の中心的な役割は、契約書を作成・レビューして依頼者の利益を守り、法的リスクを最小化することです。
M&Aにおける契約書は、取引の法的な設計図であり、表明保証や補償、価格調整など専門的かつ複雑な条項が含まれています。これらの内容を正確に理解し、自社に有利な条件で合意できるかどうかが、取引の成否や将来の紛争リスクに影響するでしょう。
たとえば、売り手側であれば、将来の責任範囲を限定するために「表明保証に知る限り」という文言を追加したり、補償金額に上限(キャップ)を設ける交渉を行ったりします。
3. 必要書類や法的手続きの対応支援
独占禁止法や外為法への対応、許認可の承継など、複雑な法的手続きを正確にナビゲートすることも、M&Aにおける弁護士の重要な役割のひとつです。
M&Aは契約交渉だけでなく、多数の法令や行政手続きが関わる取引であり、ひとつの手続きミスがM&A全体の進行を止めてしまうリスクがあります。
たとえば、一定規模以上のM&Aでは、公正取引委員会への事前届出が義務付けられており、届出を怠ると取引を進められません。また、事業に必要な許認可の承継はスキームによって可否が異なり、場合によっては再取得が必要です。
さらに、合併の場合は債権者保護手続として1ヶ月以上の公告期間が必要であり、建設業許可は事業譲渡では原則として承継できないといった、業種ごとの特有な規制にも注意しましょう。
弁護士はこれらの法的要件を正確に判断し、必要な書類の作成や提出、行政庁との折衝を代行することで、手続きの抜け漏れによる契約の中断リスクを未然に防ぎます。
4. 交渉時の法的アドバイザーとしての対応
M&A交渉において、弁護士は依頼者の法的な頭脳として機能し、経営者が最適な判断を下せるよう支援するのが主な役割です。
交渉の現場では、価格やスケジュールといったビジネス条件と、補償範囲や表明保証などの法務条件が同時に議論されます。経営者がこれらをひとりで対応しようとすると、複雑な法的リスクを見落とし、不利な条件を受け入れてしまう可能性があります。
弁護士が同席すれば、相手方の提案に潜む法務リスクを即座に分析し、法的根拠に基づいた反論や代替案を提示できるでしょう。
たとえば、相手から「この表明保証条項は一般的だから受け入れてほしい」と求められた際も、弁護士は実務慣行や判例を踏まえて妥当性を判断し、依頼者にとってもっとも有利な形で合意内容を導いてくれるでしょう。
5. M&Aスキームの設計と実行支援
M&Aにおける弁護士は、依頼者の目的に応じて最適な取引スキームを設計する戦略家としての役割を担います。
M&Aには株式譲渡や事業譲渡、会社分割など複数の手法があり、どのスキームを選ぶかによって法務・税務リスク、手続きの煩雑さなどが異なります。誤った選択は、想定外の債務引き継ぎや手続きの遅延につながるかもしれません。
たとえば、株式譲渡は手続きが簡便な反面、売り手も把握していない簿外債務を引き継ぐリスクがあります。一方、事業譲渡は簿外債務のリスクを避けられるものの、従業員や取引先から個別の同意を得る必要があり、手間と時間がかかります。
また、後継者不在の中小企業オーナーのM&Aでは、個人保証の解除が課題となり、スキーム選択がその成否を左右するでしょう。
弁護士はメリットとデメリットを総合的に分析し、依頼者に最適なスキームを提案することが重要です。
6. 統合プロセス(PMI)における法務フォロー
M&Aの成功は契約したら終わりではなく、クロージング後の統合プロセス(PMI)をいかに円滑に進められるかが大切です。
弁護士は、経営統合の段階で発生する法務課題を整理解決し、M&Aの効果を最大化させる伴走者としても重要な役割を担います。
文化や制度の異なる企業が一体となる経営統合では、就業規則の統一や従業員処遇のすり合わせ、取引契約書の見直しなど、多岐にわたる法務タスクが発生します。これらを後回しにすると、従業員の離反や取引先とのトラブルに発展するかもしれません。
たとえば、買収先企業の就業規則が法改正に対応していなかった場合、弁護士はすみやかに改訂作業を支援し、従業員への説明会を実施できるようサポートします。さらに、クロージング後の法務ロードマップを作成することで、統合作業を計画的かつ着実に進められる体制を整えます。
弁護士によるPMI支援は、M&Aで得た成果を定着させ、事業を持続的に成長させるための最終プロセスです。
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M&Aのサポートを弁護士に依頼するタイミング

M&Aのプロセスにおいて、どのタイミングで弁護士に依頼するのが効果的なのかを、3つの主要な段階に分けて具体的に解説します。
すでにM&Aの手続きを開始している場合でも、状況によっては途中で専門家の介入が必要になるでしょう。
検討・計画の初期段階
M&Aを弁護士に依頼する最適なタイミングは、相手方との具体的な交渉に入る前の検討・計画段階です。M&Aの成否は初期設計が影響しやすく、法務リスクを早期に把握することで、後のトラブルや追加コストを大幅に減らせるからです。
この段階で弁護士が関与すれば、株式譲渡や事業譲渡、会社分割など最適なスキームを法務・税務両面から検討でき、独占禁止法などの規制対応の要否も判断できます。
早期に法的論点を明確にすることこそ、もっとも効果的なリスク管理であり、結果的にコスト削減につながるでしょう。
基本合意書や契約書を作成する段階
M&Aで弁護士に依頼すべき最終タイミングは、秘密保持契約(NDA)や基本合意書(LOI)を締結する前です。これらの文書は、仮の合意と見なされがちですが、実際には法的拘束力を持つ条項が含まれており、以後の交渉を制約するリスクがあるためです。
とくに基本合意書に盛り込まれる独占交渉権条項は、不当に長い交渉期間に合意してしまうと、その後により有利な買い手が現れても交渉できず、チャンスを逃す可能性があります。
相手から提示された基本合意書に安易に署名した結果、不利な価格算定基準が明記されており、最終契約で価格交渉が不利に進む可能性もあります。
M&Aの実務経験が社内にない場合は、NDAやLOIにサインする前のリーガルチェックが不可欠です。弁護士が契約条項を精査することで、後々の交渉リスクを未然に防ぎ、取引全体を安全に進められるでしょう。
交渉中やトラブルが発生した段階
M&Aの交渉が行き詰まったり、デューデリジェンスで想定外の問題が見つかったりする場合でも、弁護士に依頼することで状況を打開できる可能性があります。
交渉の当事者同士が感情的に対立している場面でも、弁護士が第三者として介入し、法的論点を整理することで、冷静かつ建設的な議論に戻すことも可能です。
たとえば、デューデリジェンスで未払い残業代の存在が発覚し、交渉が中断した場合は弁護士が潜在的な債務額を法的に評価し、その金額を譲渡価格から減額します。
トラブル発生後では取れる選択肢が限られることもありますが、もう手遅れと諦める前に弁護士へ相談することで、最適な落としどころを見つけられるでしょう。
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M&Aのサポートを弁護士に依頼する場合の費用

M&Aのサポートを弁護士に依頼する際の費用について、気になる方も多いでしょう。
ここでは、「費用相場がわからず不安」「金額だけで比較して後悔したくない」といった悩みを解消するために、各料金体系の特徴や、メリット・デメリットをわかりやすく整理します。
費用に関する疑問を解消したい方は、ぜひご覧ください。
初回相談
多くの法律事務所では、M&Aに関する初回相談を無料または比較的低額で提供しています。初回相談は、本格的な依頼の前に弁護士の専門性や、対応態度などを確認できる有効な機会です。
初回相談では、経営者が案件の概要を説明し、弁護士が法的論点や潜在リスク、進行手順、概算費用などを整理して提示します。
たとえば、事業承継を検討する中小企業のオーナーが相談を利用し、自社の株主構成に所在不明の少数株主がいるという課題を打ち明けたとします。その場合、経験豊富な弁護士であれば、その場で会社法上の解決策や費用の目安を提示してくれるでしょう。
一般的には、1時間あたり数千円〜数万円が初回相談料の相場で、複数の事務所の相談を活用して、信頼できるパートナーを見極めることがM&A成功の第一歩となります。
着手金・成功報酬
売り手側が弁護士にM&A支援を依頼する場合、着手金と成功報酬を組み合わせた料金体系が一般的です。
着手金の相場は数十万円から数百万円で、100万〜200万円程度を目安とする法律事務所もあり、契約書レビューや法務デューデリジェンス支援など、初期業務に着手するための費用です。
一方、成功報酬はM&Aが成立した時点で支払う成果報酬であり、取引金額の5%程度が目安となります。売り手にとっては、成立しなければ高額な費用が発生しないという安心感がある一方で、取引金額が大きいほど報酬総額も増えることは把握しておきましょう。
この料金体系を選ぶ際は、契約前に成功の定義や取引金額の算定基準を明確に確認することが重要です。事前の確認を行い、成立後の報酬トラブルを防ぎましょう。
タイムチャージ
弁護士が案件に費やした時間にもとづいて費用を算定するタイムチャージは、M&A業務でもっとも一般的かつ透明性の高い料金体系です。担当する弁護士の役職に応じて時間単価が設定され、誰が・どの業務に・何時間かけたかを明確に把握できます。
国内の法律事務所では、1時間あたり2万〜5万円程度が一般的な相場で、案件の難易度や事務所の規模によっては5万〜8万円程度になることもあります。
一方で、作業時間によって総額が変動するため、依頼時には上限金額の設定や進捗報告の頻度を確認しておくことが重要です。
業務範囲を明確に限定することで、不要なコストを抑えつつ、必要な法的支援を柔軟に受けられる点がタイムチャージのメリットです。
契約書の作成・企業調査
契約書の作成や企業調査(法務デューデリジェンス)にかかる弁護士費用は、M&Aの中核を担うため、総費用の大部分を占めることが多く、規模と複雑さ次第で変動します。
たとえば、契約書のレビューだけをスポットで依頼する場合、固定報酬で数十万円~数百万円が目安となります。
一方で、譲渡価格が5億円程度の企業買収において、買い手が法務デューデリジェンスから最終契約書作成までを一貫して弁護士に依頼するケースでは、数百万円以上に達する場合もあるでしょう。
依頼時は、金額だけでなく、契約や労務などの調査範囲や、成果物の内容を見積もりで明確に確認することが大切です。
顧問契約
月額固定料金で継続的に法的サポートを受ける顧問契約は、M&Aを経営戦略として活用する企業や、将来的な事業承継を見据える中小企業にとって、コストパフォーマンスの高い選択肢です。
M&Aの検討初期には、このスキームは法的に問題ないか、どのタイミングで専門家に入るべきかといった短時間の相談が多く発生します。顧問契約を結んでいれば、その都度タイムチャージを気にせずに弁護士へ相談でき、法務リスクの早期発見と迅速な初動対応が可能です。
国内の法律事務所における顧問料の相場は、月額数万〜数十万円程度が一般的で、相談頻度や企業規模によって変動します。
弁護士が普段から企業の実態を把握しておくことで、M&Aが本格化した際にもスムーズな意思決定と迅速な実務対応が可能になり、将来への備えとして有効です。
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M&Aに失敗しない弁護士の選び方

M&Aという重大な経営判断を成功に導くためには、重要なパートナーである弁護士の選び方が成功の鍵になってきます。ここでは、M&Aをサポートしてもらう弁護士の選び方について解説します。
「費用だけで選んで後悔したくない」「誰に相談すればいいかわからない」といった悩みを解決し、信頼できる専門家を見極めるためのポイントを参考にしてください。
M&Aの経験が豊富な弁護士を選ぶ
M&Aを成功させるには、M&A実務の経験が豊富な弁護士を選ぶことがもっとも重要な条件です。
M&Aは会社法だけでなく、労働法や知的財産法、独占禁止法など多岐にわたる専門知識と、交渉実務のノウハウが求められる高度な分野です。一般的な企業法務の経験だけでは、複雑な契約条項やリスク分配に的確に対応できません。
面談の際は、直近のM&A案件の規模やスキーム、法務デューデリジェンスで発見した問題とその解決策などを具体的に尋ねると、弁護士の実力が見えてきます。
自社と類似する案件を扱った経験があるかを確認することで、安心して任せられる専門家かどうかを見極められるでしょう。
自社の業界に詳しい弁護士を選ぶ
M&Aを円滑に進めるには、自社が属する業界特有の法規制や商慣習に詳しい弁護士を選ぶことが重要です。
医療法人や建設業、ITや不動産など、業界ごとに異なる許認可や法律が存在し、ビジネスモデルもそれぞれ異なります。業界知識の乏しい弁護士では、重要なリスクを見落としたり、実態に合わない助言をしてしまうおそれがあります。
面談時には「弊社の業界でM&Aを担当した経験はありますか?」と質問し、回答の具体性と深さで専門性を見極めることが、失敗しない弁護士選びのポイントです。
説明がわかりやすい弁護士を選ぶ
M&Aを成功させるには、専門用語をビジネスの言葉に翻訳して説明できる弁護士を選ぶことも重要です。
最終的な意思決定を行うのは経営者自身であり、弁護士の助言が難しいと、リスクの大きさや選択肢の妥当性を正しく判断できません。
優れた弁護士は、「この表明保証条項のリスクは、万が一〇〇が起きた場合に最大で譲渡代金の50%を支払う可能性があります」といったように、法的リスクを具体的なビジネス上の影響に置き換えて説明できます。
対応が丁寧な弁護士を選ぶ
M&Aを安心して進めるためには、レスポンスが迅速で、依頼者の懸念に真摯に耳を傾けてくれる弁護士を選ぶことも大切です。
M&Aはスピードが重要な取引であり、回答の遅れが交渉のチャンスを逃す要因にもなります。また、会社の将来を左右する重要な決断を伴うため、経営者の不安や疑問に寄り添える誠実なパートナーでなければ信頼関係は築けません。
初回相談への返信スピードや内容の丁寧さは、その弁護士の姿勢を見極める指標になります。面談では、こちらの話を遮らず最後まで聞き、懸念を正確に理解しようとしてくれるかを確認しましょう。
スキルや実績だけでなく、対応の早さや誠実さ、人間的な相性も重視することが、M&Aのプロセスを円滑に乗り切るためのポイントです。
他の専門家と連携できる弁護士を選ぶ
M&Aを成功させるには、仲介会社や公認会計士、税理士など他の専門家と円滑に連携できる弁護士を選びましょう。
M&Aは法務だけでなく、財務や税務、ビジネスが密接に関わる総合プロジェクトです。弁護士が法的視点に固執して、他の専門家と協力できなければ、情報共有が滞り、重複作業によるコストや判断ミスが発生するおそれがあります。
たとえば、公認会計士が財務デューデリジェンスで簿外債務を発見した場合、弁護士がその内容を法的に評価し、補償条項として契約書に反映することで、リスクを的確にコントロールできます。
面談では「他の専門家とどのように役割分担をしていますか?」と質問し、チームとして動ける姿勢とコミュニケーション力を確認しましょう。
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まとめ

M&Aにおける弁護士は、法務リスクの発見から契約交渉、そしてPMI(統合プロセス)まで、すべての工程で成功を左右する重要な役割を担っています。
検討初期の段階から関与してもらいながら、リスクを最小限に抑えるのが理想的です。費用については、初回相談を活用して見積もりや業務範囲を丁寧に確認し、納得のいく値段で依頼しましょう。
何より大切なのは、金額だけでなく、M&Aの実績や業界理解、コミュニケーションの相性などで弁護士を選ぶことです。
信頼できる弁護士と出会えれば、自社のM&Aは単なる取引ではなく、次の成長への確かな一歩になるでしょう。
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京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

