帝国データバンクが発表した「脱毛サロン・クリニック(脱毛業界)」動向調査(2024 年度)」によると、2024年度の脱毛業界の倒産件数は18 件に達し、過去最多を更新しています。
「美容のため」「面倒な手入れの手間を減らすため」という理由で脱毛サロンに通う人は、脱毛サロンの経営状況を今一度確かめておいたほうがよいでしょう。
脱毛サロンの破産が増えているのは、何が要因なのでしょうか。また、実際に被害に遭った場合はどうしたらよいのでしょうか。
この記事では、脱毛サロンの破産被害を防ぐ方法や被害時の対処法を解説します。
破産した大手脱毛サロンの代表例

まずは、近年破産した大手脱毛サロンを紹介します。どういった背景があったのかを把握し、脱毛サロンの経営に関する理解を深めましょう。
ミュゼプラチナム
美容脱毛サロン最大手として知られる「ミュゼプラチナム」は、2015年に運営会社が事実上の経営破綻(任意整理)に陥り、その後も親会社を転々としながら経営を続けてきました。
しかし、予約の取りづらさや返金遅延といったトラブルも浮き彫りになり、2025年5月ごろに全店舗休業が続き、債権者から第三者破産申立が行われた旨が公表されました。さらに報道によれば、同年8月に破産手続開始決定が出ています。
アリシアクリニック(旧じぶんクリニック)
医療脱毛で知名度の高い「アリシアクリニック(旧じぶんクリニック)」は、コロナ禍の影響を受けたことや他社競争との激化により、売上が減少していきました。
じぶんクリニックとの統合により経営方針を転換、改善を図りましたが、アリシアクリニック・じぶんクリニックともに2024年12月に破産手続開始決定(東京地裁)が出ています。
C3(シースリー)
全身脱毛専門サロンのC3は、無制限の通い放題プランが特徴でした。
積極的に出店を続けていましたが、新規顧客をなかなか獲得できず、コロナ禍も打撃となり、運営会社の株式会社ビューティースリーなどは破産に至りました。
負債総額は約80億円と、業界でも最大級の倒産でした。
銀座カラー
銀座カラーは、創業約30年の老舗で、2020年4月期には売上高125億円を計上していました。
しかし、コスト高騰などで次第に負債が増えていき、2023年に運営元の株式会社エム・シーネットワークスジャパンが破産しました。
負債額は約58億円で、こちらも規模の大きな倒産となっています。
脱毛ラボ
脱毛ラボは、2022年に運営元の株式会社セドナエンタープライズが破産手続きを開始しました。
負債総額約60億円と規模が大きいだけでなく、消費者庁から景品表示法に基づく措置命令を受けたことで、社会的信用も失った形です。
脱毛サロンが破産する原因

脱毛サロンの倒産や医療脱毛クリニックの閉院が増えているのは、経営ミスだけではなく、業界特有のビジネスモデルにも原因があると考えられています。
脱毛サロンが破産する主な原因を解説します。
自転車操業になりやすい前受金ビジネスの仕組み
脱毛サロン破産の要因は、サービス提供前に代金を全額受け取る「前受金ビジネス」の構造にあります。 利用者が高額なコースを契約し決済すると、サロン側には即座に現金が入ります。
本来、この資金は将来の施術を行うための「負債」として確保すべきものです。しかし、実態は手元の現金を店舗の拡大や広告宣伝費に流用してしまうケースがあるのです。
その結果、新規契約者の前受金で過去の契約者の施術コストを賄うという自転車操業状態に陥ります。新規顧客が増え続けている間は、こうしたリスクは表面化しませんが、顧客獲得が難しくなると、資金繰りが厳しくなり破産に至ります。
新規顧客獲得の難しさ
脱毛業界は急成長を遂げましたが、市場の飽和と消費者の意識変化により、新規顧客の獲得が困難になっています。
自転車操業での経営に陥ることもあるサロンにとって、新規契約の減少は致命的な打撃となります。新規顧客の流入は既存契約者へのサービスもままならなくなるためです。
広告費や設備コストの高騰
コストの増加も、脱毛サロンの経営を圧迫する要因です。脱毛機の多くは海外製であるため、円安の影響で導入・メンテナンス費用が高騰しています。加えて、家賃や人件費の上昇もコスト高騰につながっています。
なかでも広告宣伝費の高騰は深刻です。脱毛サロンは競合が多く、顧客を獲得するために多額の予算をテレビCMやWeb広告に投じる必要があります。
脱毛サロンの経営システムは、 売上が集客コストや固定費に消え、内部留保が枯渇しやすい体質となっているといえるでしょう。
価格競争の激しさ
生き残りをかけた価格競争も、業界全体の課題です。「月額1000円」「実質無料」といった低価格キャンペーンは、脱毛サロンの利益率を押し下げます。 とくに「通い放題」のようなモデルは、企業側にコスト負担を強いる仕組みであり、会員数が増えるほど施術コストが増え、収益を圧迫するようになってしまうのです。
安さで他社より優位に立とうとしても、採算割れをしてしまっては経営にダメージが及びます。こうしたキャンペーンを実施する脱毛サロンは、サービスの停止が近い可能性も考えられるでしょう。
返金トラブルの増加
破産直前には「返金トラブル」の前兆が現れることが多いです。資金が枯渇し始めると、解約を申し出た顧客への返金を先延ばしするようになります。 「担当者不在」「システムトラブル」などを理由に手続きが遅延し、約束の期日に振り込まれない事態が頻発するのです。
しかし、こうした対応は現代においては逆効果で、口コミやSNSですぐに情報が拡散されていきます。最終的に、既存会員の解約、新規顧客の減少により、急激に資金繰りが悪化するのです。
返金の遅延は事務処理の問題ではなく、会社に現金がないことを示す危険なサインといえるでしょう。
脱毛サロンの破産被害を未然に防ぐ方法

脱毛サロンの破産に巻き込まれて金銭的な被害を受けないためには、契約前や契約中に自分で策を講じる必要があります。
脱毛サロンの破産被害に遭わないための対策を解説します。
倒産の兆候がある脱毛サロンを利用しない
倒産前には、どの脱毛サロンにも予兆が見られるため、それを見逃さないことが重要です。
予兆のひとつに、スタッフの対応やサービスの質の低下が挙げられます。給料の未払いや遅配があるサロンでは士気が下がり、退職者が相次ぎます。その結果、予約枠の減少や、施術中の強引な勧誘が発生します。
また、現金一括払いなら大幅値引きといったキャンペーンを突然はじめた場合も、経営が苦しい可能性があります。脱毛サロンの自転車操業が限界に達し、現金を早急に回収しようとするフェーズにある可能性が高いです。
このほか、店舗の清掃不備や消耗品の不足など、物理的な変化にも注意しなければなりません。
予約やサービスなどに対する口コミや評価を確認する
脱毛サロンの倒産リスクを見極める際は、公式サイトよりもSNSや口コミをチェックしてみるとよいです。予約が取れない、電話がつながらないといった投稿がある場合は、要注意です。
こうした投稿や口コミがある脱毛サロンは、すでに資金不足に陥っている可能性があります。「人気がある」という理由とは別の要因で予約が取れない場合などは、その脱毛サロンを利用し続けるか慎重に判断しましょう。
長期・高額契約は慎重に検討する
長期契約や高額契約は、より慎重に検討する必要があります。複数年にまたがる契約や一括前払いは、脱毛サロンが破産してしまった場合には、リスクの高い選択となります。
とくに「永久保証」や「通い放題」は、事業者の存続を前提としたものです。破産すれば権利は消失し、支払った金銭も戻ってこない可能性があります。
万が一に備えて、短期コースや回数の少ないプランの契約からはじめ、破産被害を防ぎましょう。
都度払いなどリスクの低い支払い方法を選ぶ
施術のたびに支払うなど、できる限りリスクの低い支払い方法を選ぶのも効果的です。
現金一括払いや銀行振込での前払いは、破産時に現金がかえってくる可能性が低いため、支払い損になってしまいます。都度支払うようにすれば、脱毛サロンが倒産しても、未施術分の代金を持ち逃げされるリスクはなくなります。
コース契約をする際は、ローンを組むのが有効です。破産時に「支払停止の抗弁」を行うことで、残債の支払いをストップできる権利が認められているためです。
他社の救済措置について調べておく
契約先が破産した場合に備え、他者の救済措置があるかどうか確かめておきましょう。脱毛サロンが倒産すると、ほかのサロンやクリニックが「乗り換え割」や「特別優待」などの支援策を発表するケースがあります。
救済措置を受けるには、破産した脱毛サロンの会員であった証明が必要です。倒産後は会員サイトへアクセスできなくなるため、紙や写真で、契約書の控え・会員証・施術履歴を残しておくとよいでしょう。
脱毛サロンが破産したときの対処法

契約中のサロンが倒産した場合、被害を最小限に抑えるために取るべき行動を解説します。
返金の有無や破産の手続きを確かめる
脱毛サロンが破産したという情報を受け取ったら、まずは正確に状況把握をしましょう。具体的には、管財人の選任状況や問い合わせ窓口を、公式サイトや帝国データバンク、破産管財人の特設サイトなどで確認します。
破産手続き開始後は、資産管理が破産管財人に委ねられるため、返金の見通しは管財人からの発表を待つことになります。 契約内容や施術履歴などを証拠として残しておき、返金交渉や支払い停止手続きで利用しましょう。
クレジットカード会社やローン会社へ支払い停止手続きをする
クレジットカードでの分割払いやローンを利用している場合、まずはカード会社・ローン会社に連絡しましょう。割賦販売法では「支払い停止の抗弁」という権利が認められており、サービスが提供されなくなった場合は、それ以降の支払いを拒否できます。
カード会社やローン会社には「脱毛サロンが破産したことでサービスを受けられないこと」「抗弁を申し出たいこと」を伝えてください。その後、日本クレジット協会の書式などを参考に抗弁書を作成し、送付します。
抗弁は支払い停止に対する法的に認められた権利のため、サロン破産後も引き落としが続かないよう、確実に行使しましょう。
破産管財人に債権届を提出する
破産手続きが開始されると、債権者である利用者自身に、管財人から通知書が届く場合があります。この際は、「返金してもらう権利がある」と法的に主張する手続きをするため、同封の「破産債権届出書」に記入し、期限内に提出してください。
ただし、破産企業の資産は税金や従業員給与に優先して充てられます。そのため、利用者への配当率は1%未満、あるいは一切ないケースも少なくありません。
消費生活センターに相談する
「何から手をつければよいかわからない」「書類の書き方に自信がない」といった場合は、公的な相談窓口を利用しましょう。「188(消費者ホットライン)」へ電話すれば、最寄りの消費生活センターにつながり、専門相談員からアドバイスを受けられます。
場合によっては、弁護士への相談を提案してもらえる可能性もあるでしょう。公的機関の力を借りて冷静に対処していくことが重要です。
弁護士に相談する
被害額が高額な場合や、詐欺的な勧誘が疑われるような悪質性が高いケースでは、弁護士への相談も選択肢となります。 被害者が多数に上る場合は、集団訴訟等の形で連携し、交渉力を高めることも可能です。
ただし、個人で依頼する場合は、弁護士費用がかかります。もし返金されなかった場合は、支出だけが増えてしまう点に注意しましょう。
まずは法テラスなどの無料法律相談を利用し、回収の見込みと弁護士費用のバランスを見極めるのがポイントです。
脱毛サロンが破産したときは弁護士への相談を検討しよう

自力での解決が困難な場合や、状況を正確に把握したい場合は、法律の専門家である弁護士に相談するとよいです。
脱毛サロンの破産について弁護士に相談するメリットを解説します。
最新の破産情報について教えてくれる
脱毛サロンが倒産した直後は、SNSやWeb上に真偽不明の情報が流れるため、被害者自身がかえって混乱してしまいます。最新の破産情報について理解し、冷静に対処するには、弁護士の力を借りましょう。
弁護士に相談すれば、現在のサロンの状況が破産手続き中なのか、民事再生手続き中なのかを確かめられます。民事再生であれば、事業が継続する可能性がありますが、破産となると事業は停止されます。
また、裁判所や破産管財人から送られてくる書類には、専門用語が多く、一目で理解するのは困難です。弁護士であれば書類の内容を正確に読み解き、今後の見通しやリスクを具体的に提示してくれます。
返金請求の手続きを支援してくれる
破産債権届出書の提出や支払停止の抗弁書の作成には、専門的な知識が必要です。不備があると権利が認められないおそれもありますが、弁護士に依頼すれば作成代行や送付を一任できます。
とくに、争点となる「未施術分の残金計算」については、法的な根拠に基づき正当な金額を主張し、交渉を進められます。
ただし、弁護士費用に対して、どれくらいの金額を取り戻せる可能性があるかは、よく確かめておかなければなりません。
訴訟などの法的手段に踏み切れる
脱毛サロンの破産に計画倒産や詐欺的な手口などの疑いがある場合、経営者個人の責任を追及する損害賠償請求や刑事告訴といった手段を検討できます。とくに、大規模な破産事案では、被害者の会といった集団訴訟へ発展することもあります。
諦めなければならないような状況でも、専門家と連携することで交渉力を高められる可能性があります。状況が深刻な場合は、現状と今後のビジョンについて、相談してみるとよいでしょう。
まとめ

脱毛サロンの破産は、近年急激に増えていることもあり、トラブルに巻き込まれる人が後を経ちません。
破産・倒産の兆候が見られる際は、速やかに解約したり契約を見送ったりすることが重要です。もし被害にあった場合は、弁護士などの専門家に相談して、今後どのようにするかを決めていくとよいでしょう。
千代田中央法律事務所では、脱毛サロンの破産をはじめ、破産被害にあった人の相談を受け付けています。初回相談は無料ですので、返金を諦めきれない人は、利用を検討してみてください。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

