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会社の休眠とは?廃業やみなし解散との違い、メリット・デメリットを解説 | 千代田中央法律事務所

灰色の高層ビル 法人破産

「会社の事業活動を一時的に停止したい、しかし将来的な再開の可能性も残しておきたい」このような悩みを抱える経営者の方は少なくないでしょう。

この記事では、そのような状況で有効な選択肢となり得る、会社の休眠という制度について詳しく解説します。

会社の休眠の基本的な定義から、具体的なメリットやデメリット、必要な手続きについて紹介します。

廃業やみなし解散との違い、借金がある場合の注意点に至るまで、網羅的に情報をまとめてますので、ぜひ参考にしてください。

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会社の休眠とは?

紙に署名する人の選択的な焦点写真

会社の休眠に関する基本的な概念と意義について、4つの項目にわけて解説します。

  1. 休眠会社の定義
  2. 会社を休眠させる目的や理由
  3. 会社の休眠と廃業の違い
  4. 会社の休眠とみなし解散の違い

以下で詳しくみていきましょう。

1. 休眠会社の定義

休眠会社とは、法人格を維持したまま、事業活動を一時的に停止している状態の会社のことを指します。

具体的には、売上や仕入れといった営業活動をおこなわず、事務所の運営や従業員の雇用もなく、収入や支出も発生しない状態です。

法律上(会社法第472条)の定義では、休眠会社について以下のように規定しています。

  • 株式会社:最後の登記から12年間、何の登記もおこなわなかった場合
  • 一般社団法人・一般財団法人:最後の登記から5年間、何の登記もおこなわなかった場合 

上記に該当すると、法務局はその会社を休眠会社とみなし、みなし解散の手続きを進められます。

 一方、実務では税務署や地方自治体に「異動届出書」を提出して休業の旨を届け出た会社を休眠会社と呼びます。

参照:令和6年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について(法務省)

2. 会社を休眠させる目的や理由

会社を休眠させる主な目的は、将来的な事業再開の可能性を残しながら、一時的に経営上のコストや負担を軽減することです。

「今は活動を停止したいけれど、将来の可能性は残しておきたい」という思いから会社の休眠を選択するケースが多いでしょう。

具体的な会社の休眠理由としては、経営者の高齢化や病気による一時的な活動停止、後継者が見つかるまでの時間確保、事業再編/再生のための準備期間確保などがあげられます。

また、市場環境の一時的な悪化への対応や、経営者のライフステージの変化に合わせて、いったん事業を休止するケースもあります。

3. 会社の休眠と廃業の違い

会社の休眠は法人格を維持したまま事業活動を一時停止する状態であるのに対し、廃業は解散・清算を経て法人格を完全に消滅させる手続きです。

選択の分かれ道は、将来の事業再開の可能性と、法的義務からの完全な解放のどちらを優先するかにあります。

会社の休眠はコストを抑えつつ比較的、簡単な手続きでおこなえますが、毎年の税務申告や役員変更登記などの継続的な管理義務は残ります。

事業再開の可能性が具体的にあり、許認可や社歴といった無形資産を維持したい場合は会社の休眠を、将来的な義務から完全に解放されたい場合は廃業が最適かもしれません。

4. 会社の休眠とみなし解散の違い

会社の休眠は経営者が主体的に選択する事業活動の一時停止状態であるのに対し、みなし解散は長期間の登記懈怠によって法務局から強制的に解散させられる状態を指します。

みなし解散は以下のステップで進行します。

  1. 法務大臣が官報に公告を掲載する
  2. 対象となる休眠会社に対し、2ヶ月以内に「まだ事業を廃止していない」旨の届出または必要な登記申請をおこなうよう通知する
  3. 同時に、会社の登記簿上の本店所在地宛にも通知書が発送される
  4. この2ヶ月の期間内に何の対応もなされない場合、会社は解散したものとみなされ、登記簿に解散の旨が記載される

みなし解散となると元の取締役は自動的に解任され、清算会社となり、その後に通常の事業をおこなうことはできません。

ただし、みなし解散の登記から3年以内であれば、株主総会の特別決議等により会社を継続することは可能です。

休眠状態の会社がみなし解散に陥らないためには、役員の任期管理を徹底し、任期満了時には忘れずに変更登記をおこなう必要があります。

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会社の休眠がもたらす6つのメリット

床に立っている2つの金色と銀色のコインの写真

会社が休眠するメリットについて、解説します。

  1. 事業の維持費を大幅に減らせる
  2. 廃業にかかる出費を抑えられる
  3. 社会保険や労働保険の負担が減る
  4. 事業再開の道を残せる
  5. 取得済みの許認可を維持できる
  6. ブランド名や実績をそのまま残せる

以下で詳しくみていきましょう。

1. 事業の維持費を大幅に減らせる

会社を休眠状態にすると、通常の事業運営にかかる固定費や経常経費を大幅に削減できます。

とくに毎月の家賃や人件費は企業経営における大きな負担ですが、会社の休眠によってこれらをゼロにできるのは大きなメリットです。

また、税金面でも負担が軽減されます。事業活動がないため、法人税や消費税の課税対象となる所得や売上も発生しません。

さらに法人住民税の均等割についても、多くの自治体では休眠状態を適切に届け出ることで免除または減額される制度を設けています。

この維持費削減効果を最大化するためには、税務署への異動届出書(休業届)の提出が必要です。

なお、法人住民税均等割の免除申請をおこなう場合は、管轄の都道府県税事務所・市区町村役場に対しても休業届を提出しなければなりません。

自治体によって対応が異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

2. 廃業にかかる出費を抑えられる

会社を休眠させることで、廃業に伴うコストを回避できます。

廃業の際は登記関係の費用が約4万円、官報公告費用が約3~4万円、加えて専門家(弁護士や税理士など)への報酬が必要です。

とくに専門家への費用は一般的に数十万円以上が必要です。廃業時の会社の状態や依頼先にもよりますが、10~100万円程度の費用がかかるでしょう。

一方、会社の休眠の場合は税務署等への異動届出書の提出が主な手続きであり、直接的な費用はほとんどかかりません。

3. 社会保険や労働保険の負担が減る

会社を休眠状態にすると、社会保険(健康保険・厚生年金保険)や労働保険(雇用保険・労災保険)の事業主負担がなくなり、大幅なコスト削減になります。

通常、事業主は従業員の給与から天引きする保険料に加えて、事業主負担分、従業員給与の約15%程度を支払う義務があります。

会社が休眠することに伴い従業員が全員退職する場合や事業実態がなくなる場合、この負担がゼロになります。

また、経営者自身も被用者保険から国民健康保険・国民年金へ切り替えることで、保険料負担が軽減される可能性があります。

4. 事業再開の道を残せる

会社を休眠状態にしておくことで、将来的な事業再開の可能性を残し、再開時のハードルを下げられます。

会社の休眠では法人格を維持したまま事業活動を一時停止するだけであるため、状況が好転した際には比較的簡単な手続きで事業を再開できます。

また、会社設立に伴う煩雑な手続きも回避でき、再開までの期間も大幅に短縮されます。

5. 取得済みの許認可を維持できる

会社を休眠状態にすることで、取得済みの許認可を失効させることなく維持できる可能性があります。

事業をおこなうためには、建設業許可、宅建業免許、古物商許可などの特定の許認可が必要なケースがあります。

これらの許認可は取得に多大な時間や労力、費用がかかるものが少なくありません。

会社を廃業した場合、これらの許認可も失効しますが、休眠を選択すれば原則として許認可は維持されます。

ただし、建設業許可のように営業実態が問われるものや、宅地建物取引業免許のように1年以上の事業休止で免許取消の対象となるものもあります。

詳しくは、管轄の許認可庁に維持・更新するための要件を確認することが不可欠です。

6. ブランド名や実績をそのまま残せる

会社を休眠状態にすることで、長年かけて築き上げたブランド名や取引実績といった無形の資産を失うことなく維持できます。

会社のこれらの無形資産は、長期間の事業活動を通じて徐々に蓄積されるもので、一朝一夕には構築できません。これらは貸借対照表に表れない隠れた資産でありながら、事業の成功において大きな役割を果たします。

会社を廃業してしまうと、これらの価値はすべて失われますが、会社休眠を選択すれば、法人格とともにこれらの無形資産も維持されます。

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会社の休眠に伴うデメリットと注意点

テーブルの上の電卓とペン

次に会社の休眠におけるデメリットについても解説します。

以下で詳しくみていきましょう。

法人住民税の均等割を支払う義務がある

会社を休眠状態にしても、原則として法人住民税の均等割は継続して課税されます。

資本金や従業員数に応じて税額が決まり、小規模な会社でも年間約7万円程度の負担となります。

自治体によっては休眠状態である旨の届出により、均等割を減免する制度を設けていますが、その適用条件や手続きは自治体ごとに大きく異なり、免除制度がない場合もあります。

事前に、本店所在地を管轄する自治体のホームページや窓口などで確認しましょう。

放置するとみなし解散になるリスクがある

休眠状態の会社を放置し、何の登記もおこなわないと、法務局によって強制的にみなし解散とされるリスクがあります。

先述の通り、最後の登記から株式会社は12年間、一般社団法人・一般財団法人は5年間が目安となる期限です。

みなし解散となると、元の取締役は自動的に解任され、会社は清算会社となります。ただし、みなし解散の登記から3年以内であれば、株主総会の特別決議等により会社を継続することは可能です。

定期的な税務申告とそれに伴う出費が発生する

休眠中の会社であっても、法人格が存続する限り、事業年度終了後に法人税・地方税の確定申告書を提出する義務があります。

事業活動をおこなっていない場合、所得も納税額も発生しないため、いわゆるゼロ申告をおこなうことになるでしょう。

税理士に確定申告を依頼する場合は、年間、数万円程度の費用が発生することが一般的です。

税務申告にかかる労力と、必要な税理士費用についても把握しておきましょう。

役員登記の更新を怠るとペナルティが生じる

会社が休眠中であっても、役員の任期満了に伴う変更登記を怠ると、代表者個人に対して行政上の制裁金が科される可能性があります。

株式会社の取締役や監査役などの役員には、法律上の任期が定められています。公開会社でない場合、取締役の任期は原則2年ですが、定款で最長10年まで延長することが可能です。

この任期が満了した場合、たとえ同じ人物が再任(重任)するとしても、その旨の変更登記を法務局におこなう義務があり、休眠状態の会社であってもこの義務は免除されません。

登記を怠ると、会社法第976条に基づき、会社の代表者個人に対して100万円以下の過料が科されることがあるため注意しましょう。

参照:休眠会社・休眠一般法人の整理作業について(法務省)

会社名義の資産に税金がかかる

会社が休眠中であっても、会社名義で保有している不動産や車両などの資産には、固定資産税や自動車税などの税金が継続して課税されます。

固定資産税や自動車税は、会社の収益性や活動状況に関わらず、資産の所有という事実に基づいて課税される税金です。

そのため、会社が休眠状態に入ってもこれらが免除されることはありません。

長期間の会社休眠を検討している場合は、会社名義の資産を必要最小限に整理することを検討しましょう。

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会社の休眠に関する手続きと費用

人の手を上にして本を開く

会社の休眠に関する具体的な手続きとそれにかかる費用について紹介します。

以下で詳しくみていきましょう。

会社の休眠手続きの具体的な流れ

会社を休眠状態にするための手続きは、主に税務署などへの異動届出書の提出から始まります。

まず社内で会社を休眠させる意思決定をおこない、株主総会や取締役会での決議を経るのが一般的です。

次に、管轄の税務署に対して異動届出書を提出します。この書類には休業する旨と休業開始年月日を明記します。

従業員に給与を支払っていた場合は給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書も提出します。同時に都道府県税事務所や市区町村役場にも同様の異動届出書を提出しましょう。

各自治体によって様式が異なる場合があるため、事前に確認が必要です。

従業員がいる場合は社会保険関係の手続きも欠かせません。

年金事務所に健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届や被保険者資格喪失届を提出し、ハローワークには雇用保険適用事業所廃止届、労働基準監督署には労働保険確定保険料申告書を提出します。

会社の休眠手続きにかかる費用

会社を休眠させたい場合、手続きにかかる費用は基本的に無料です。前述のとおり、自治体などに必要書類を提出するだけで済むからです。

しかし、専門家に依頼する場合はそれなりの費用が発生します。書類の作成や提出の代行などは、司法書士や税理士などに依頼することが可能です。

相場はさまざまで、企業規模によって大きく異なります。顧問の税理士がいれば、まずは相談してみるとよいでしょう。

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借金がある会社が休眠する際のポイント

チェックボックス

ここでは、借金がある会社が休眠する際のポイントを解説します。

借金がある場合とない場合では準備などが大きく変わるため、注意点をチェックしましょう。

会社に借金(債務)があっても会社を休眠させることはできる

会社に借金(債務)があっても、会社を休眠させることは可能です。

会社の休眠は単に事業活動を停止する状態を指し、債務の有無とは直接関連しません。

ただし、借入金の返済が滞っている状態や、多額の未払金がある状態での会社の休眠は、債権者から破産申立てといった法的手続きを取られるリスクがあります。

トラブルを避けるため、会社が休眠する前に債権者と返済計画について合意しておくことが望ましいでしょう。

会社が休眠しても借金返済の義務は残る

会社を休眠状態にしても、債務に対する返済義務は継続します。

会社の休眠は単に事業活動を停止する状態であり、法人格は存続するため、会社が負っている法的義務や責任は原則としてすべて継続します。

借金を理由に事業継続が困難になったからといって、会社が休眠することによってその返済義務から逃れられません。

会社が休眠中に返済を怠ると、延滞利息が発生し続け、強制執行や破産申立てなどのリスクが高まります。

また、保証人がいる場合は、会社の支払い不能により保証人への請求がおこなわれる可能性もあります。

返済が厳しい状況であれば、債務免除や債権放棄の交渉、法的整理も選択肢として検討する必要があるでしょう。

金融機関との交渉が必要なケースがある

借入金がある会社が休眠する場合、金融機関との事前交渉が欠かせません。事業活動の停止は通常、融資契約上の期限の利益喪失事由に該当する可能性があるためです。

期限の利益とは、分割返済などの契約において、約定通りに返済を続ける限り、残債務を一括返済しなくてもよいという借り手側の利益です。

この利益を失うと、残債務の一括返済を求められる事態に発展するおそれがあるため、できるだけ早い段階で金融機関に相談しましょう。

現在の財務状況、会社の休眠を選択する理由、将来の事業再開計画などを金融機関に共有し、隠し事のない誠実な対応を心がけることが求められます。

場合によっては破産を検討する必要がある

債務が返済不能な状態に陥っている場合や債務超過が深刻な場合は、会社の休眠ではなく破産などの法的整理を検討する必要があります。

会社の休眠は法人格を維持したまま事業活動を一時停止する選択肢ですが、債務返済の見込みがない状態での会社の休眠は、問題の先送りに過ぎません。

債務超過が著しく、資産売却等をおこなっても債務を大幅に上回っている場合や、借入金の返済が滞り複数の債権者から法的措置を受けている場合などは、会社の休眠よりも破産を検討すべき可能性があります。

会社の休眠と破産のどちらを選ぶべきか判断に迷う場合は、弁護士や税理士など、法的整理に詳しい専門家に相談し、客観的な視点からアドバイスを受けましょう。

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まとめ

土から芽が出た植物

本記事では会社の休眠に関する基礎知識、そのメリットとデメリットなどを解説してきました。

会社の休眠は、将来の事業再開の可能性を保持しつつ、一時的に経営上の負担を軽減するための戦略的な選択肢です。

ただし、借金などの状況によっては、ほかの選択肢のほうが最適なケースも存在します。

状況に応じて専門家のアドバイスも活用しながら、再建にむけた最適な道筋を見つけ出してください。

ひとりで悩まずに、まずは弁護士や税理士などに相談してみることがおすすめです。無料相談などを活用するとよいでしょう。

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京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。

千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。