会社の経営がうまくいかず、対処法や解決策を探るなかで「会社を潰そう」と廃業の判断をする場合もあるでしょう。
会社を潰すことによるメリット・デメリットがあるのでしょうか。また、会社を潰す際は、どういった手続きが必要なのでしょうか。
この記事では、会社を潰すことについて、メリット・デメリットや注意点を解説します。会社を潰す社長の特徴も解説するので、経営を建て直したい経営者の方はぜひ参考にしてください。
「会社を潰す」とは破産によって法人格を失うこと
会社を潰すとは、破産して法人格を消滅させることです。会社が債務の支払いができなくなった支払不能、または負債が資産を上回る債務超過状態に陥った場合、破産法にもとづいて行われる清算型の法的整理手続きとなります。
たとえば、売上減少により毎月の支払いに窮するようになり、取引先への買掛金や金融機関からの借入金の返済が困難になった会社は、破産の検討が必要でしょう。
会社の財務状況が悪化し破産を検討する場合は、まず破産処理に詳しい弁護士に相談するのが重要です。
破産だけでなく、民事再生や特別清算などほか法的整理手続きを提示してくれる場合もあります。状況にあわせて、最適な選択肢を検討しましょう。
会社を潰すメリット
会社を潰すメリットは、以下の3つです。
会社を潰せば、精神的な不安などを解消できます。メリットを詳しく見ていきましょう。
1. 取り立てが止まる
会社の資金繰りが悪化すると、債権者からの取り立てに悩まされます。しかし、法人破産の手続きを開始すると、債権者からの取り立て行為は法的に停止されます。
弁護士に破産申立ての依頼をし、弁護士から各債権者に受任通知が発送されると、直接の取り立て行為ができなくなるのです。これにより、電話や訪問者への対応といった精神的な負担から解放されます。
債権者からの取り立てに精神的に追い詰められている場合は、早めに弁護士に相談してみましょう。弁護士を通じた債権者とのコミュニケーションにより、取り立ての状況が改善する可能性もあります。
2. 借金を返さずに済む
会社が破産手続きを終結すると、会社の法人格は消滅し、残った負債も法的に消滅します。法人と個人は別人格だからです。
たとえば、会社が1億円の負債を抱え、破産手続きでは3,000万円の配当しかできなかった場合でも、残りの7,000万円について会社は返済義務を負いません。
ただし、代表者が連帯保証をしている場合は、会社が破産しても個人として返済義務を負い続けます。
このような状況では、経営者自身も自己破産や債務整理を検討する必要があるでしょう。
会社の債務と経営者個人の保証債務は区別して考え、破産を検討する際には、経営者自身の連帯保証の範囲と影響を事前に把握しておくとよいでしょう。
3. 経営のプレッシャーから解放される
会社を潰すことで、経営のプレッシャーから解放されます。経営難に陥った企業の経営者は、従業員の給与支払い、取引先への支払い、銀行返済など、常に資金繰りに追われます。
この状態が長く続くと、心身の健康を損なうこともあるでしょう。
会社を破産させることで、資金繰りの心配や経営判断の重圧から解放され、精神的な負担が軽減されます。
経営の重圧に耐えられなくなったと感じたら、心身ともに疲弊している可能性が高いです。早めに弁護士や中小企業診断士などの専門家に相談し、再建の可能性や破産など複数の選択肢を冷静に検討してください。
会社を潰すデメリット
会社を潰すデメリットは、以下の3つです。
会社を潰すと、資産やノウハウ、経営者としてのプライドなど、さまざまなものを手放さなければなりません。また、従業員の生活を大きく変えてしまう苦しさもあるでしょう。デメリットを詳しく見ていきます。
1. 会社の資産がなくなってしまう
会社を潰すと、資産はすべて換価処分されます。
破産手続きでは、会社の全財産が破産財団として破産管財人の管理下に置かれ、債権者への配当のために売却されるのです。
不動産、設備、在庫、知的財産権、営業権など、あらゆる資産が含まれます。加えて、長年かけて構築してきた顧客基盤、ブランド価値、技術ノウハウといった無形の価値も、会社とともに消滅してしまいます。
会社独自の技術やノウハウ、ブランド価値を失いたくない場合は、破産に踏み切る前に、事業譲渡やM&A、民事再生などの選択肢も検討しましょう。
2. 従業員へ解雇を告げなければならない
会社を潰す際は、従業員へ解雇通知をしなければなりません。破産手続きをすると一般的には事業を停止するため、従業員を雇う必要がなくなり、解雇せざるを得ないのです。
突然の解雇は従業員にとっても経済的・精神的に打撃を受けるため、動揺する人は多いでしょう。
未払賃金立替払制度の活用、ハローワークと連携した再就職支援、関連企業への就職あっせんなどの対策をとって、従業員の生活への影響を最小限にとどめるようにしましょう。
3. 経営者としての自信を失ってしまう
会社を潰すことは、経営者の自信喪失につながってしまいます。
経営者にとって会社は単なる事業体ではなく、自分自身のアイデンティティや人生の目標と深く結びついています。
会社を潰すことになれば、単なる事業の失敗ではなく、自分自身の能力や判断力の不足を必要以上に感じてしまうのです。社会的評判や信用の低下、周囲の批判を見たり聞いたりすれば、精神的に大きなダメージを受けるでしょう。
とくに、創業者や先代から事業を引き継いだ2代目、3代目経営者の場合「家業を潰してしまった」という自責の念を強く感じるかもしれません。心身の健康を優先し、必要に応じて専門家のサポートを受けることも検討しましょう。
会社を潰す社長の特徴とは
会社を潰す社長の特徴としては、以下の4つが挙げられます。
経営者の方は、上記の内容が自分に当てはまっていないか振り返ってみましょう。
1. 高慢さや過信が目立つ
会社を潰す社長には、自分の能力や判断を過信し、批判や助言を受け入れない傾向が見られます。高慢な経営者は「自分は間違えない」「自分だけが正しい」という思い込みから、市場の変化や顧客のニーズを見誤りがちです。
また、部下や専門家からの率直な意見やフィードバックを受け入れないため、経営判断の修正機会を逃し、同じ間違いを繰り返す場合もあります。
経営者は定期的に自己評価を行い、周囲からの率直なフィードバックを積極的に求める仕組みを作るのが大切です。
取締役会に社外取締役を入れる、従業員の匿名アンケートを実施する、顧客の声を直接聞く機会を設けるといった方法が効果的でしょう。
2. 財務を十分に理解していない
会社を潰す社長の多くは、経営の根幹である財務管理を十分に理解できていません。財務知識を身につけておらず、事業の実態を正確に把握できないのです。
表面的な売上増加に目を奪われてしまうと、実際の利益率や資金繰りの悪化に気づかないため、深刻なトラブルが起きる前に対策を立てられません。
専門知識がなくても最低限の財務指標を理解し、定期的にチェックする習慣を身につけましょう。とくに、月次の損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書を見る習慣はつけておくとよいです。
3. 創業者の背中を追いかけ過ぎる
2代目、3代目の経営者が陥りやすい失敗として、創業者のビジネスモデルや手法を盲目的に踏襲し、変化する市場環境に適応できなくなることが挙げられます。
創業者が築いた成功体験は、いつの時代も通用するものとは限りません。創業者が強いカリスマ性を持つ場合、後継者はその影響力から脱却できず、「創業者ならこうしただろう」という思考に縛られてしまう傾向にあるのです。
後継経営者は、創業者の理念や価値観は尊重しつつも、時代にあわせてビジネスモデルや手法を柔軟に変化させていくことが重要です。
4. 自分だけで経営してしまおうとする
会社を潰してしまう社長には、専門家や部下の意見を求めず重要な経営判断を自分だけで行う「ワンマン経営」の傾向が見られます。
経営判断は多角的な視点からの検討が必要ですが、ひとりですべての決断を下そうとすると、自らの知識や経験だけで判断をしようとしてしまい、選択ミスを犯す可能性があるのです。
また、情報や権限を共有しないことで組織内のチェック機能が働かず、誤った判断がそのまま実行されてしまいます。
経営者は、自分ひとりでできることには限界があると認識し、さまざまな意見を吸収する習慣を身につけましょう。また、役員会や経営会議を定期的に開催し、重要な経営判断を複数人で検討する習慣をつけるのも重要です。
会社を潰す手続き「法人破産」とは
会社を潰す際には、法人破産という手続きをとります。法人破産の概要や費用、具体的な流れを解説します。
破産手続きの概要
法人破産とは、支払不能または債務超過の状態に陥った法人が、裁判所の監督下で資産を清算し、法人格を消滅させる法的手続きです。
企業が経済的に破綻した場合、債権者間の公平を図りながら、法律にもとづき各情報を整理して破産手続きを終結させる必要があります。
破産手続きでは、中立的な立場にある破産管財人が選任され、会社財産の管理・換価・配当を行います。これにより、特定の債権者だけが優遇されるといった事態を防ぎ、法にもとづいた公正な清算ができるのです。
会社の財務状況が悪化した場合は、早い段階で専門家に相談し、適切な対応を検討しましょう。
法人破産にかかる費用
法人破産には、裁判所への予納金、弁護士費用、登記費用など、さまざまな費用が発生します。通常は150万円から300万円程度、債務の大きさや会社の規模によってはそれ以上の費用が必要な場合もあるでしょう。
中小企業の一般的な破産手続きにおける費用の目安は、以下のとおりです。
| 裁判所への予納金 | 約20〜70万円 |
| 弁護士費用 | 50万円~150万円 |
| 登記費用 | 解散登記約39,000円清算結了登記約2,000円 |
| 官報公告費用 | 約33,000円 |
| その他実費 | 数万円 |
合計すると、小規模な会社でも最低150万円程度、事案が複雑な場合やより大きな企業では300万円以上の費用が必要です。
破産手続きでは、法律知識や破産実務の経験などが求められ、代表者ひとりで手続きするのは難しいでしょう。
破産手続きの費用を準備することが難しい場合でも、弁護士への相談はためらわずにしてください。弁護士事務所によっては、費用の分割払いに応じてくれる場合もあります。
法人破産の流れ
法人破産の手続きは、弁護士に相談してから終結するまで、数ヶ月から1年以上の期間を要します。厳格な法的手続きであり、一連の法定手続きが定められているためです。
主な流れは、以下のとおりです。
- 弁護士への相談・依頼
- 受任通知発送・支払停止
- 破産申立て準備
- 破産手続開始決定
- 破産管財人選任
- 破産管財人による財産管理・換価
- 債権者集会の実施
- 配当の実施
- 法人格の消滅
とくに長期化しやすいのは、財産の換価です。破産手続開始決定後は会社の財産管理権が破産管財人に移り、経営者は会社財産を処分できなくなります。
破産管財人は会社の財産をすべて調査するため、財産の洗い出しに時間がかかる傾向にあるのです。
破産手続きは長期的なプロセスです。精神面・実務面ともに適切な準備をして、余裕を持った計画を立てて進めていきましょう。
会社を潰す際の注意点
会社を潰す際は、以下の3点に注意しましょう。
会社を潰すことは、相応の覚悟が必要です。自身の生活再起や従業員への丁寧な対応など、さまざまな点に配慮した行動が大切になります。
1. 破産手続き完了まで特定の職には就けない
会社の破産と経営者個人の破産を同時にする場合、破産手続き中や免責許可決定確定までの間は一部の職業や資格が制限されます。
職業制限が課されるのは、以下の職種です。
- 弁護士
- 司法書士
- 行政書士
- 税理士
- 公認会計士
- 保険募集人
- 旅行業務取扱管理者
- 宅地建物取引士
- 古物商
- 質屋
制限期間は破産手続開始決定から免責許可決定確定までで、通常3〜6ヶ月程度です。会社破産後の個人的なキャリアプランを考える際は、こうした職業制限を念頭に置き、免責決定までの期間の生活設計を立てておきましょう。
2. 連帯保証人の場合は個人破産も必要な場合がある
代表者自身が会社の連帯保証人となっている場合は、法人だけでなく個人の破産も必要な可能性が高いです。
日本の中小企業金融では、経営者個人が会社の借入金に対して連帯保証を提供することが一般的慣行となっています。連帯保証とは、会社が返済できなくなった場合に、保証人が会社に代わって全額を支払う義務を負うことです。
会社が法人破産しても、保証人である経営者個人の保証債務は自動的には消滅しません。会社の破産を検討する際は、必ず経営者個人の連帯保証の状況を確認し、個人の債務についてもどう処理するか検討する必要があります。
3. 従業員への丁寧な説明を怠ってはいけない
会社が破産する際は、従業員への丁寧な説明と適切な対応が重要です。乱雑な対応だと、従業員の生活に深刻な影響を与え、経営者自身の社会的評価にも悪影響をおよぼします。
破産手続きが開始されると、原則として全従業員が解雇されます。従業員にとって、突然の解雇は経済的にも精神的にも大きな打撃です。
適切な説明と手続きを行わなければ、従業員の生活が苦しくなるだけでなく、訴訟を起こされる可能性もあります。
破産を決断した場合は、従業員への対応について十分に配慮することが大切です。
まとめ
会社を潰すことは、経営者として苦渋の選択です。資産を失ったり従業員に苦しい思いをさせたりするうえ、自身のプライドも傷つくでしょう。
しかし、会社を潰すことで精神的なプレッシャーから解放され、再起の準備を進められます。
会社を潰す際は「法人破産」の手続きをする必要があります。適切に手続きを進めて、自身の生活を立て直していきましょう。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

