資金繰りが厳しくなり、会社の将来に深刻な不安を抱えている経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
そうした状況で「計画倒産」という言葉が頭をよぎったとき、多くの方が「それは違法行為ではないか?」という疑問を抱きます。
計画倒産という言葉には、どこかネガティブなイメージがつきまといますが、具体的にどのような状態を指し、何が問題となるのでしょうか。
本記事では、まず計画倒産とは何かをわかりやすく解説し、そのうえで違法となるケースと、合法的な手続きとの明確な違いを法的な根拠にもとづいて説明します。
正しい知識を身につけ、万が一の際に冷静な判断ができるよう、具体的な手順と注意点を知っておきましょう。
計画倒産とは
計画倒産を理解するうえで、主なポイントは以下のとおりです。
それぞれを解説します。
計画倒産の意味
計画倒産という言葉は、一般に、債権者を害する意図をもって会社を計画的に倒産させる際に使われます。
ただし、計画倒産は法律で明確に定義された用語ではありません。
故意に借金を踏み倒し、会社の事業を畳む行為のことで、場合によっては破産法や刑法などに抵触する可能性があります。
「計画的な倒産」との違い
計画倒産が違法な行為を指すのに対し、「計画的な倒産」は法律に則った会社清算の方法を指します。
両者の違いは、以下のとおりです。
| 比較項目 | 計画倒産(違法) | 計画的な倒産(適法) |
|---|---|---|
| 意図 | 債権者を害し、債務を踏み倒す目的 | 関係者への影響を最小限に抑える責任ある清算 |
| 資産取扱 | 資産隠し、不当な移転・散逸 | 法的手続きにもとづく債権者への公正な配当 |
| 債権者対応 | 欺罔行為、特定の債権者のみを優遇する偏頗弁済 | 公平・平等な処遇と、手続きの透明性確保 |
| 適法性 | 違法(民事・刑事責任の対象となりうる) | 適法(多くの場合、推奨される対応) |
事業の継続が困難になった企業が、事前に準備を進めて秩序をもって会社を清算するプロセスは、違法ではありません。
経営危機に直面した際は、早期に弁護士へ相談し、計画的な倒産を選択肢として検討することもひとつの手段です。
事業停止のタイミングを定め、透明性を確保しながら手続きを進めることは、関係者に対する責任ある行動といえます。
計画倒産が違法と判断されるケース
ここでは、計画倒産が違法とみなされやすい具体的なケースを紹介します。
それぞれを詳しくみていきましょう。
返済できる見込みのない融資を受けた場合
経営状況が悪化しているなかで、事実を隠して金融機関などから新たに融資を受ける行為は、詐欺罪(刑法246条)に該当する可能性があります。
とくに、実質的に破綻状態にあるにもかかわらず、決算書を粉飾するなどして経営が健全であるかのように装い、融資を引き出す行為は悪質と判断されやすいでしょう。
返済の意思や能力がないまま貸主を欺くことは、10年以下の懲役という重い刑罰の対象となるおそれがあります。
資金繰りが厳しいと感じたら、安易に新規融資に頼るのではなく、まずは倒産法務に詳しい弁護士に相談しましょう。
弁護士は、金融機関との誠実な交渉方法や、適切な法的整理のタイミングについて助言してくれます。
適切ではない大量仕入れをおこなった場合
倒産を目前に、支払う意思がないにもかかわらず、掛買いで商品を大量に仕入れた場合も詐欺行為とみなされます。
このような行為は、仕入先である取引先を欺いて商品をだまし取るものと評価され、詐欺罪が成立する可能性があります。
こうした行為は、破産手続において破産管財人による調査の対象となるだけでなく、経営者個人が刑事責任を問われるリスクも高いため、注意が必要です。
会社の財産を極端に安価で譲渡した場合
会社の資産を公正な市場価格よりも著しく低い価格で売却したり、無償で譲渡したりする行為は、債権者の利益を害する「詐害行為」とみなされることがあります。
とくに、譲渡先が経営者の親族や関連会社である場合、財産隠しの意図が強く疑われる傾向にあります。
会社の資産を適切に処分したいときは、第三者による査定を受けるなど、取引の公正性・客観性を示す証拠を残しておくことが大切です。
不当に売却・譲渡する行為は、債権者への配当に充てられるべき財産を減らす行為であるため、法的に問題視されます。
なお、破産法ではこうした不当な財産処分を取り消し、財産を取り戻すための「否認権」という権限が破産管財人に与えられています。
合法的な「計画的な倒産」で期待できるメリット
スケジュールを決めたうえで会社を畳む計画的な倒産は、事業継続が難しい際の有効な解決策のひとつです。
ここでは、合法的な計画的倒産におけるメリットを解説します。
やむを得ず倒産を選択する場合は、できるだけ円滑に進められるように準備しましょう。
代表者個人の資産を守りやすくなる
弁護士などの専門家と連携し、合法的な計画的な倒産を進めることで、会社破産後も代表者個人の資産を守れる可能性が高まります。
多くの中小企業では、代表者が会社の債務に対して個人保証をしているため、会社が破産しても個人の保証債務は残るのが通常です。
しかし、早期に適切な法的手続きをおこなうことで、自己破産による免責や個人再生による債務圧縮など、状況に応じた解決策を検討できます。
経営危機に直面したら、まずは倒産法務に精通した弁護士に相談し、会社と個人の問題を一体的に捉えた最適な戦略を立てることが求められます。
従業員や取引先への影響を最小限に抑えられる
計画的に倒産手続きを進めることで、従業員や取引先といった関係者への悪影響を抑制することにつながります。
具体的には、以下のような対応が可能になると考えられます。
- 従業員への最終給与や解雇予告手当の支払原資を確保しやすくなる
- 未払賃金立替払制度の申請をスムーズにサポートできる
- 取引先へ丁寧に事情を説明し混乱を最小限に抑えられる
事業停止日を定め、計画的に準備を進めることで、従業員説明会で今後の手続きを丁寧に説明できます。
こうした誠実な対応は、経営者の社会的信用を維持し、将来の再起にもよい影響を与えるでしょう。
精神的なプレッシャーと取り立てから解放される
弁護士に債務整理を依頼すると、弁護士は各債権者に対して受任通知を送付します。
貸金業法では、弁護士からの受任通知を受け取った貸金業者が、債務者本人へ直接取り立てをすることを禁止しています。
これにより、経営者は心身の健康を取り戻し、冷静な判断のもとで再建や清算手続きに着手できるでしょう。
精神的に追い詰められていると感じたら、できるだけ早く弁護士に相談することが、状況を好転させる第一歩となります。
事業譲渡でブランドや技術を残せる可能性がある
会社の財務状況が悪化していても、事業自体に価値が残っているケースは少なくありません。
このような場合、破産による清算の前に、事業譲渡(M&A)によってブランドや技術、顧客基盤といった無形の資産を残せる可能性があります。
たとえば、特許技術や製造ノウハウ、優良な顧客リストなどは、他社にとって魅力的な買収対象となることがあります。
適切なM&Aアドバイザーに相談し、事業価値を正しく評価してもらうことで、よりよい条件での譲渡が実現するかもしれません。
事業譲渡が成功すれば、従業員の雇用や取引先との関係を維持しつつ、債権者への返済原資を増やすことにもつながります。
再起への道筋を残しやすくなる
違法行為を避け、関係者に対して誠実な対応を貫きながら適法に会社を清算することで、経営者としての社会的信用を可能な限り維持し、将来の再起への道筋を残しやすくなります。
たとえば、日本政策金融公庫には、一度事業に失敗した経験を糧に再挑戦する起業家を支援する「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」という制度があります。
しかし、詐欺的な倒産などの前歴がある場合、こうした公的支援の利用は難しくなると考えられるでしょう。
倒産の経験から学び、誠実な対応を心がける姿勢が、将来の可能性を拓くうえで大切です。
参照:日本政策金融公庫│再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)
計画的な倒産のデメリットと注意点
ここでは、合法的な倒産処理を選択する際に考慮すべきデメリットや注意点を解説します。
以下で詳しくみていきましょう。
手続きに費用がかかる
合法的な倒産処理を進めるには、弁護士費用や裁判所への予納金といった経済的負担が伴います。
| 費用の種類 | 内容・詳細 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 弁護士費用 | 案件の規模や複雑さによって変動する、手続きを依頼する弁護士への報酬。 | 数十万円〜数百万円 |
| 裁判所への予納金 | 破産管財人の報酬などに充てられ、裁判所に納める費用。負債総額に応じて変動。 | 最低20万円程度〜数百万円 |
弁護士への報酬は、案件によって異なるため、あくまで目安程度とお考えください。実際に依頼を検討する際は、費用について弁護士事務所に直接相談してみましょう。
社会的信用が低下するリスクがある
合法的なプロセスを踏んだとしても、倒産という事実自体が、経営者個人や関連事業に対する社会的な信用を低下させるリスクは避けられません。
とくに、以下の点は長期的な影響を及ぼす可能性があります。
| 具体的な内容 | 期間や影響 |
|---|---|
| CIC、JICC、KSCといった信用情報機関に、自己破産した事実が事故情報(いわゆるブラックリスト)として登録される | 【期間】・CIC・JICC: 最長5年・KSC: 7年 【影響】期間中、新たな借入れやクレジットカードの作成、ローンの契約などが非常に困難になる。 |
| 国の機関紙である「官報」に、氏名や住所とともに破産した事実が掲載される | 一度掲載されると情報は残り、誰でも閲覧できる状態となる |
| 弁護士、税理士などの「士業」や、警備員、保険募集人など、特定の資格や職業に就くことが制限される | ・破産手続の開始から免責許可が下りるまでの期間(数ヶ月〜1年程度)に限定される ・免責許可後に「復権」すれば制限は解除される |
なお、これらの影響は会社の倒産に伴って、経営者が債務整理をおこなった際に生じるものです。
債務整理により生活に影響が生じるケースはあるものの、債務整理をおこなうことで、経営者自身の生活を再建できる可能性が高まるでしょう。
計画的な倒産の手続きの流れ
ここでは、計画的な倒産(法人破産)を進める際の一般的な手続きの流れを紹介します。
それぞれを詳しくみていきましょう。
1. 弁護士へ相談する
計画的な倒産を成功させるための最初のステップは、倒産法務に精通した弁護士への早期相談です。
法的手続きは極めて専門的であるため、専門家のサポートなしに進めることは事実上不可能に近いでしょう。
相談の際は、会社の財務状況や資産・負債の状況などを正確に伝えるため、以下のような書類を準備しておくと話がスムーズに進みます。
- 会社の登記簿謄本、定款
- 決算書、確定申告書(過去2~3期分)
- 資産状況がわかる資料(不動産登記、預金通帳の写しなど)
- 債権者一覧表
弁護士はこれらの情報をもとに、会社の状況にあった最適な法的手続きを提案してくれます。
2. 債権者・従業員へ通知をおこなう
弁護士に正式に依頼した後、戦略的に重要なのが、債権者への「受任通知」の送付と、従業員への説明です。
債権者への受任通知は弁護士が代理人となったことを知らせ、以降の連絡をすべて弁護士宛にするよう要請するものです。
これにより、直接の取り立てが停止し、落ち着いて手続きの準備を進められます。
従業員に対しても、事業停止の経緯や今後の手続きや未払賃金の支払いなどについて、伝える必要があります。
伝達の際は、全従業員に同時に伝えることを徹底し、事前にあいまいな情報で混乱させないよう注意しましょう。
3. 裁判所へ申し立てをする
弁護士の支援のもと、必要な書類を準備し、管轄の裁判所へ破産手続開始の申立てをおこないます。
申立てに必要な書類は多岐にわたりますが、主に以下のようなものがあげられます。
- 破産手続開始申立書
- 債権者一覧表、労働債権者一覧表
- 財産目録
- 貸借対照表・損益計算書
- 取締役会議事録
- 陳述書(破産に至った事情説明書)
申立てが受理され、裁判所による破産手続開始決定が出されると、会社財産の管理処分権は裁判所が選任する破産管財人に移るのが一般的です。
破産管財人による財産調査や換価、債権者集会での説明などが実施され、最終的に債権者への配当がおこなわれて終結となります。
計画倒産に関するよくある質問
最後に、計画倒産に関するよくある質問に回答します。
疑問点をクリアにしたうえで、どのような手続きをおこなうのか検討しましょう。
Q1. 計画倒産は借金を踏み倒すことになりますか?
A. 適法な計画的な倒産に関しては、法律が認めた債務整理の手段であり、踏み倒しとは本質的に異なります。
決定的な違いは、その意図と方法にあります。適法な倒産処理は、支払不能となった企業が、法律に則って債権者全体の公平な利益を考慮しながらおこなう清算プロセスです。
ただし、倒産するのを前提とした借入や仕入れなどは故意に借金を踏み倒す行為と同じであるため、おこなわないように注意しましょう。
Q2. 計画倒産をすると訴えられますか?
A. 故意な借金の踏み倒しは、違法な計画倒産とみなされて、法的な措置を取られる可能性は高いでしょう。
破産手続では、裁判所が選任した破産管財人が会社の財産状況や破産に至った経緯を調査します。
その過程で、不当な財産処分や資産隠しといった行為が発覚した場合、破産管財人は否認権を行使して財産を取り戻したり、経営者の責任を追及したりすることがあります。
Q3. 計画倒産で問われる可能性のある罪はなんですか?
A. 違法な計画倒産の手法を用いた場合、問われる可能性のある主な罪として「詐欺罪」と「詐欺破産罪」があげられます
【詐欺罪(刑法246条)】
他人を欺いて財産をだまし取る行為を罰する犯罪です。計画倒産の文脈では、返済能力を偽って融資を引き出したり、支払う意思なく商品を仕入れたりする行為が該当し、10年以下の懲役が科される可能性があります。
【詐欺破産罪(破産法265条)】
債権者を害する目的で、破産財団に属する財産を隠したり、不当に処分したりする行為。法定刑は10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方です。
自身の行為が法に抵触していないか心配な場合は、迷わずに弁護士に相談しましょう。
まとめ
本記事では、違法な「計画倒産」と適法な「計画的な倒産」の違いを軸に、具体的な手続きの流れ、メリット・デメリット、そして法的なリスクについて詳しく解説しました。
重要な点は、債権者を害する意図でおこなわれる資産隠しや不当な融資の獲得は、詐欺罪などの重い刑事罰につながることです。
「知らなかった」では済まないケースもあるため、最低限の知識はつけておきましょう。
経営状況に深刻な悩みを抱えている場合、決して一人で判断してはいけません。
手遅れになる前に倒産法務に精通した弁護士へ早期に相談することが、会社とご自身の未来を守るための賢明な一歩となります。
まずは一度、信頼できる弁護士に相談してみましょう。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

