資金が枯渇し、会社の経営が不可能になると、その法人は破産状態に陥ります。法人破産の際は、法的に適切な手続きをして、会社を畳まなければなりません。法人破産の手続きを放置すれば、さまざまなデメリットやリスクが生じ、日々の生活にも影響がおよびます。
この記事では、法人破産の手続きを放置するデメリット・リスクや、手続き費用が払えない場合の対処法、破産後の生活再建の仕方を解説します。
法人破産を放置するデメリット・リスク

資金繰りが限界に達し、会社の経営が立ち行かなくなった際、現状を放置するのは避けるべきです。法的整理をしなかったり、事務所を閉鎖したまま無対応を貫いたりすることは、事態の悪化を招きます。
会社を適切に畳むのは、経営者自身と家族の生活を守り、再出発の基盤を整えるための手続きです。法人破産を放置することで生じるリスクやデメリットをおさえておきましょう。
督促や取り立てが止まらない
会社を放置しても、借金や支払義務は消滅しません。弁護士による「受任通知」が債権者に届かない限り、債権者は正当な権利として督促を継続します。
たとえば、郵便物が破産当初は会社宛てに来ていたとしても、会社と連絡がつかなくなれば、代表者の自宅や実家、携帯電話へと対象が広がります。休日や夜間を問わず督促が続く状況は、経営者にとって大きなストレスとなり、日常生活にも支障をきたすでしょう。
とくに、強硬的に債権回収をする債権者がいる場合、自宅や職場への訪問、近隣への聞き込みなど、家族も巻き込まれるトラブルに発展しかねません。
取り立てを止めるには、専門家である弁護士に依頼するのが有効です。依頼せずに放置してしまうと、支払いがすべて完了するまで債権者からの督促が届きます。
差し押さえや強制執行の対象になる
債務の不履行を放置し続けると、債権者は債権回収のために裁判所を通じた法的手続きに移行するのが一般的です。訴訟となり判決が確定すると「強制執行」の対象になります。
具体的には、会社の銀行口座が凍結されたり、取引先から入金される予定の売掛金が差し押さえられたりします。とくに売掛金の差し押さえは、取引先に経営難であることが知れ渡るため、事業の継続が困難になる可能性が高いです。
法的な破産手続きを行えば、こうした個別の強制執行を停止・禁止し、すべての債権者に対して公平な清算ができます。放置すると清算手続きが難しくなる場合もあるため、早急な対処が求められます。
社会的信用が失墜する
適切な清算手続きを経ずに会社を放置する行為は、取引先や従業員、顧客に対する背信行為です。経営者としての責任を果たしていないといえ、長年築き上げてきた社会的信用が失墜します。
信用を失うと、将来的に再起を図る際や、別の会社に就職しようとした際の障害となります。とくに、従業員への給与未払いや解雇予告手当の不支給を放置したままの場合は、労働基準監督署の是正勧告対象となるだけでなく、元従業員からもよく思われないでしょう。
取引先や従業員に誠実に対応するためにも、責任をもって会社を畳む手続きを進めましょう。
税金や社会保険料の滞納処分が続く
銀行などの民間債権者とは異なり、国や自治体が管轄する税金・社会保険料の滞納は免除されません。税金や社会保険料は、破産手続きにおいても原則として免除されない「非免責債権」に該当するためです。これらの滞納が続く場合、役所・役場は裁判所の判決を経ることなく財産の差し押さえを執行できます。
税金・社会保険料の滞納は、民間債権と異なり滞納処分により差し押さえなどが進みやすい分野です。延滞税(延滞金)も加算され、税目・時期により適用率が変動します。
民間債権と公的債権の違いについても、理解しておきましょう。
| 比較項目 | 民間債権(銀行・取引先) | 公的債権(税金・社保) |
|---|---|---|
| 差し押さえの条件 | 裁判所の判決・許可が必要 | 役所の判断のみで実行可能(自力執行) |
| 実行までの期間 | 数ヶ月から1年以上かかることが一般的 | 督促状送付から最短10日程度で可能 |
| 遅延ペナルティ | 契約にもとづく遅延損害金 | 一定額の延滞税・延滞金 |
早期に弁護士へ相談して、適切に清算を進める必要があります。
連帯保証人に返済義務がおよぶ
日本の中小企業融資では、代表者が会社の連帯保証人となっているケースが大半です。会社が借金を返済できなくなれば、支払義務はそのまま連帯保証人である代表者個人へと移行します。
会社を放置して法人格を残したままでも、返済期日が到来すれば銀行や保証協会から代表者個人へ一括返済が請求されます。無視し続ければ、代表者の自宅や車、個人の預貯金が差し押さえの対象となります。
会社が事実上の倒産状態にある場合、代表者個人も同時に支払不能に陥るケースがほとんどです。99万円以下の現金などの自由財産を手元に残すためにも、法人の破産と同時に代表者個人の自己破産も申し立てて、手続きするのが望ましいです。
刑事・民事の法的責任を問われるおそれがある
経営に行き詰まった際、会社に残っている現金を持ち逃げしたり、親族や知人に不当に安い価格で資産を譲渡したりする行為は避けましょう。これらの行為は、破産法における「否認権」の行使対象となるだけでなく、破産法265条にもとづく詐欺破産罪に該当するおそれがあります。
詐欺破産罪が適用されると、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。また、会社法429条にもとづく任務懈怠(にんむけたい)の責任を問われ、債権者から個人的な損害賠償請求を受けるリスクも生じます。
不透明な資産隠しは、裁判所が選任する破産管財人により厳しく追及される可能性が高いです。資産は隠さず正直に報告し、適正な手続きをしましょう。
精神的なプレッシャーで生活が破綻しやすい
督促の不安や誰にも相談できない状況は、大きなストレスになります。放置しても支払義務からは逃れられないため、日々精神的なプレッシャーを感じることになるでしょう。
こうした状態が続くと、冷静な判断力が失われ、ヤミ金融に手を出してしまったり、極端な選択をしてしまったりする危険性が高まります。また、家庭内の不和を招き、家族間でのトラブルにつながるケースもあるでしょう。
適切な方法で借金を清算して再起を図るほうが、今後の人生においても損失が少なくて済みます。
法人破産を適切に進めるメリット

法人破産はネガティブな印象を抱きがちですが、法律にもとづいて債権・債務の関係を整理できるため、メリットもあります。
適切に法人破産の手続きを進めるメリットを解説します。
債務が免除される
法人破産のメリットのひとつは、会社が抱える債務が消滅することです。支払える見込みのない借金から解放され、財務状況をリセットできます。
代表者個人が連帯保証している場合も、個人の自己破産を同時に行えば、個人の借金についても支払義務の免除(免責)を受けられます。免責が許可されれば、法的な返済義務がなくなり、収入を生活の立て直しに充てられます。
経済的に再起するのであれば、数年間の制約を受け入れたうえで立て直しに注力したほうがよいでしょう。
受任通知により督促・取り立てが制限される
弁護士に破産手続きを依頼し、各債権者へ受任通知(介入通知)を送付することで、債権者からの直接的な督促や取り立てが制限されます。
貸金業法では、弁護士が介入した後の債務者への直接接触を禁止しています。消費者金融などの貸金業者はこのルールを厳守するため、受任通知が届いた時点で電話や手紙は止まるのです。
また、受任通知により債権者対応の窓口がすべて弁護士に一本化されるため、経営者は債権者と話す必要がなくなります。精神的な安定を取り戻すことで、破産申立ての準備や自身の生活再建に注力できます。
従業員・取引先への被害を限定できる
会社を放置して音信不通になると、従業員は未払い給料を受け取れないほか、失業保険の手続きに必要な離職票も受け取れず、生活困窮に陥ります。
弁護士が介入して適切に破産手続きをすれば、従業員に対して今後の見通しを説明し、解雇手続きや離職票の発行がスムーズに進みます。また、会社に支払能力がない場合でも「未払賃金立替払制度」を利用できるよう手配することで、未払い給料の一部を国に立て替えてもらえます。
取引先に対しても、弁護士名義で通知を出せば、トラブルのリスクを最小限に抑えられるでしょう。
法人破産の費用が支払えないときの対処法

法人破産の手続きには、相応の費用が必要です。しかし、手元資金が枯渇しているからといって諦める必要はありません。
会社を放置して事態を悪化させる前に検討すべき、費用の捻出方法や対処法について解説します。
対処法をより詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
法人破産の費用がない・払えないときの対処法|費用相場やスケジュールも解説 | 千代田中央法律事務所
売掛金の回収や在庫処分で現金を用意する
会社に残っている資産を適正な価格で換価し、それを破産費用に充てることは、正当な行為として認められています。
たとえば、未回収となっている売掛金の回収を急いだり、社用車や機械設備、パソコン、在庫商品といった資産を売却したりするのが方法のひとつです。ただし、相場より著しく安い価格で売却したり、特定の債権者だけに優先して弁済したりすると、後で管財人から否認権を行使されるリスクがあります。
どのような資産をどう処分すべきかは、弁護士の指示を仰いでください。専門家の管理下で透明性のある現金化を行い、それを原資として申立て費用を確保しましょう。
親族の支援を受ける
会社の資産だけでは費用が不足する場合、親族から援助を受けることも検討しましょう。
親族からの支援金は、返済不要の贈与資金や援助資金として受け取る形が望ましいですが、借用書を作成して借り入れる形でも問題ありません。そのお金が「破産手続きを遂行するための費用」として使われるのであれば、形式は問われません。
親族の協力が得られれば、速やかに受任通知を送付でき、取り立ても制限できます。家族に対して正直に状況を説明し、支援してもらうことも重要です。
役員私財で支払う
会社に資金がない場合、代表者個人の預貯金や解約返戻金(生命保険)などを、会社の破産費用に充てるのも有効です。
法人と代表者が同時に破産する場合、裁判所によっては「少額管財」という運用が適用され、裁判所に納める費用である「予納金」が低額に抑えられることがあります。
破産法で認められた自由財産(99万円以下の現金等)の範囲を考慮しながら、費用を捻出できるかシミュレーションしましょう。
弁護士に相談して分割払いを交渉する
一括で費用を用意できない場合は、費用の分割払いに対応している法律事務所に相談しましょう。
受任通知を送付すると、債権者からの督促が制限されます。これまで返済に回していた資金を、弁護士費用の積立に回すことで、数ヶ月かけて費用を用意する形です。ただし、裁判所へ納める予納金については、原則として申立て時に一括納付が必要となるため、積立が完了してからの申立てとなります。
費用がないからといって破産状態のまま放置すると、破産したくてもできない状態に陥る可能性が高いです。弁護士に相談する際に費用について確認し、分割払いや費用の工面の仕方をともに考えてくれる弁護士事務所に依頼するとよいでしょう。
法人破産後の生活再建について知っておくべきこと

破産しても、生活が完全に崩壊するわけではありません。破産によって法的に再起を図れば、これまでのように生活できる可能性も高まります。
法人破産後の生活再建で、事前に知っておきたいことについて解説します。
清算・休眠など法人の畳み方について詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
会社の清算手続きとは?解散との違いから流れ・費用・必要対応まで徹底解説 | 千代田中央法律事務所
借金があっても会社は休眠できる?判断基準やそのほかの選択肢を解説 | 千代田中央法律事務所
信用情報に影響する期間
破産手続きをすると、信用情報機関に事故情報が登録されます。これにより、一定期間は以下の行為が難しくなります。
- 新規のクレジットカード作成
- 住宅ローンや自動車ローンの契約
- スマートフォン端末の分割払い(割賦契約)
- 銀行からの借り入れ
事故情報の登録期間は5年〜10年程度です。
ただし、この期間中であっても、銀行口座の開設や利用は制限されません。給与の振込や公共料金の引き落としもこれまでどおり行えます。また、クレジットカードの代わりにデビットカードやプリペイドカードを利用すれば、キャッシュレス決済が必要な場面でも困ることはありません。
事故情報の登録期間は、借金に頼らない健全な家計管理を身につけるための期間と捉え、生活基盤を立て直していくのが大切です。
職業制限・資格制限の有無
破産手続きの開始決定から免責許可が確定するまでの数ヶ月間は資格制限により、一定の資格を必要とする職業に就くことが制限されます。
制限対象となる主な資格・職業は以下のとおりです。
- 士業(弁護士、公認会計士、税理士、司法書士など)
- 宅地建物取引士
- 警備員(警備業法による制限)
- 生命保険募集人
- 質屋、古物商の管理者
この制限は一生続くわけではありません。免責が確定して復権すれば制限は解除され、再び元の資格を使って働けます。
また、一般的な会社員や公務員、パート・アルバイトなどの職種には制限がありません。そのため、破産手続き中であっても問題なく就労を継続できます。
再就職・再起業に必要な準備
破産をしたからといって、再就職が禁止されるわけではありません。履歴書の賞罰で破産の事実を書く必要はなく、面接で聞かれない限り自ら申告する義務もありません。破産手続開始決定通知が会社に届くわけでもないため、官報をチェックしている企業でない限り、就職先に知られる可能性は低いといえるでしょう。
また、破産後に再び起業することも法律上禁止されていません。過去の倒産経験を糧にして再起業し、成功を収めることも十分可能です。ただし、前述のとおり融資を受けるのは当面難しくなるため、自己資金の範囲内で再起業するか、出資者を募るなどの工夫が必要です。
まずは破産手続きを放置せずに進め、ある程度手続きが順調に進んだら、今後の再起について考えてみるとよいでしょう。
まとめ

法人破産を放置することは、法的なリスクだけでなく、家庭や自身の精神にも悪影響を及ぼします。放置していても、根本的な解決にはつながりません。早期に弁護士へ相談し、適切な手続きを進めれば、債務の免除や督促の制限といった法的保護を受けられ、再起への道が開けます。
千代田中央法律事務所では、法人破産および代表者個人の債務整理に関する無料相談を受け付けています。費用面での不安や、今後の生活への懸念についても、経験豊富な弁護士が親身に対応いたします。事態が深刻化する前に、一度ご相談ください。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

