自己破産

建設業者の破産手続きの流れと注意点|破産以外の対処法も紹介 | 千代田中央法律事務所

督促状を持つ作業服の男性 自己破産

建設業を続けていると、工事代金の入金遅れや資材費の高騰、人件費の増加などによって、資金繰りが苦しくなることもあるでしょう。

建設業では、工事完成まで代金が入らない契約もあり、下請けや資材業者への支払い、職人への賃金、リース料などを先に負担しなければならない場面も少なくありません。そのため、帳簿上は利益が出ていても、手元資金が足りずに経営が立ち行かなくなるケースがあります。

本記事では、建設業者が破産する場合の基礎知識や破産前に検討できる対処法、実際の手続きの流れ、注意点をわかりやすく解説します。

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目次
  1. 建設業者が自己破産する場合の基礎知識
    1. 個人事業主の建設業者は自己破産を行う
    2. 法人の建設会社は法人破産を行う
    3. 倒産や廃業との違い
  2. 建設業者が破産する前に検討できる4つの対処法
    1. 弁護士へ早めに相談して解決策を検討する
    2. 会社売却や事業譲渡で借金問題を解決できないか検討する
    3. 任意整理や個人再生など自己破産以外の債務整理を検討する
    4. 廃業してから債務整理を行う方法もある
  3. 建設業で資金繰りが悪化しやすい業界特有の仕組み
    1. 請負契約では工事完成まで代金が支払われない
    2. 多重下請け構造により元請けの倒産が連鎖しやすい
    3. 資材費や人件費を先に支払うため資金繰りが苦しくなりやすい
    4. 利益が出ていても資金不足で倒産する「黒字倒産」が起こりやすい
  4. 建設業者が破産すると起こる主なトラブル
    1. 工事途中の現場が止まり施主とのトラブルになる
    2. 元請会社や取引先との契約トラブルが発生する
    3. 下請業者や資材業者への未払いが発生する
    4. 従業員や職人への給与未払いが発生する
  5. 建設業者が破産する場合の手続きの流れ
    1. 1. 弁護士へ相談して破産手続きを進める
    2. 2. 工事契約や未完成の工事現場を整理する
    3. 3. 取引先や従業員へ事情を説明する
    4. 4. 裁判所へ破産を申し立てる
    5. 5. 破産管財人が資産や債務を調査・整理する
    6. 6. 会社の清算が行われ手続きが終了する
  6. 建設業者が破産手続きを行う際の注意点
    1. 工事途中の現場の扱いを確認する
    2. 下請業者や資材業者への支払い対応は慎重に行う
    3. 建設機械や工具のリース契約を確認する
    4. 特定の債権者だけに返済する偏頗弁済を行わない
    5. 契約書や工事台帳など取引資料を正確に整理する
  7. 建設業の自己破産に関するよくある質問
    1. Q. 建設業者が自己破産する場合の費用はいくら?
    2. Q. 自己破産すると建設業許可はどうなる?
    3. Q. 工事途中の現場はどのように処理される?
    4. Q. 自己破産したあと建設業を再開できる?
  8. まとめ

建設業者が自己破産する場合の基礎知識

書籍を持つ女性弁護士

建設業の経営が厳しくなると、「個人事業主なら自己破産になるのか」「会社の場合はどう違うのか」「廃業だけではだめなのか」など、さまざまな疑問が生じるでしょう。

まず理解しておきたいのは、個人事業主として営んでいるのか、法人として経営しているのかによって、取るべき法的手続きが異なるという点です。

ここでは、建設業者が破産を検討する際に知っておきたい基本的な考え方を解説します。

個人事業主の建設業者は自己破産を行う

個人事業主として建設業を営んでいる場合、借金は原則経営者個人の債務として扱われます。個人事業では、事業と個人が法律上明確に分かれていないためです。

たとえば、工事に必要な資材代・建設機械のローン・事務所の家賃などの支払いができなくなった場合は、事業主本人が自己破産を含む債務整理を検討することになります。

自己破産の基本的な仕組みについては、以下の記事でわかりやすく解説しているので参考にしてください。

自己破産とは?手続きの進め方や条件、費用相場、注意点を解説 | 千代田中央法律事務所

法人の建設会社は法人破産を行う

法人として建設会社を経営している場合は、法人破産を検討するのが一般的です。法人破産とは、会社の資産や負債を整理し、会社を法的に清算する手続きです。

たとえば、会社名義の預金・重機・工具・売掛金などに関する債権などを整理し、残っている財産を債権者へ配当していくことになります。法人の債務は原則として法人が負うため、経営者個人がすべての責任を負うわけではありません。

ただし、金融機関からの借入れやリース契約などで代表者が連帯保証人になっている場合は、法人破産とあわせて代表者個人も自己破産を行うケースがあります。

法人破産については、以下の記事で詳しく解説しています。

法人破産とはどういう手続き?費用相場やメリット・デメリット、スケジュールを解説 | 千代田中央法律事務所

倒産や廃業との違い

破産と似た言葉に、倒産や廃業がありますが、それぞれ意味や使われ方が異なります。

廃業とは、事業者が自らの意思で事業をやめることです。たとえば、後継者不在や経営判断によって営業を終了するケースが該当します。

一方で破産は、裁判所を通じて財産と借金を法的に整理し、最終的に支払い義務の免除(免責)を受けることを目的とした手続きです。

これに対して倒産は、会社や事業が経済的に行き詰まり、支払いができなくなった状態を指す総称です。法律上の正式な手続きの名称ではなく、破産や民事再生、会社更生、特別清算などを含めた広い概念として使われます。

建設業のように、仕入れや外注費、給与などの支払いが多い業種では、廃業だけでは債務問題が解決しないことも少なくありません。返済の見通しが立たない場合は、破産を含む法的手続きを検討する必要があります。

廃業や倒産などの違いについては、以下の記事も参考にしてください。

廃業とはどういう意味?倒産や解散との違い、メリット・デメリットなどを解説 | 千代田中央法律事務所

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建設業者が破産する前に検討できる4つの対処法

考え事をする作業服の男性

資金繰りが厳しくなったとしても、すぐに自己破産や法人破産を選ばなければならないとは限りません。状況によっては、別の方法で借金問題や経営問題を整理できる可能性があります。

ここでは、建設業者が破産する前に検討できる主な対処法を紹介します。

弁護士へ早めに相談して解決策を検討する

経営が苦しいと感じたら、まずはできるだけ早く弁護士へ相談することが大切です。早い段階で相談すれば、破産以外の選択肢も含めて冷静に判断しやすくなります。

弁護士に依頼すると、債権者に受任通知が送られ、金融機関や取引先からの督促が制限されるため、連日の請求や催促に追われている場合は精神的な負担が軽減します。

また、資金繰りの状況や債務内容に応じて、任意整理や民事再生など複数の手段を比較しながら、適切な対応方針を相談できるのもメリットです。

会社売却や事業譲渡で借金問題を解決できないか検討する

会社全体や事業の一部に価値が残っている場合は、会社売却や事業譲渡によって借金問題の解決を図る選択も可能です。

たとえば、元請けとの取引基盤、技術力のある職人、特定分野の施工実績などに価値があれば、第三者に引き継ぐことで資金化できる可能性があります。

会社売却や事業譲渡ができれば、従業員の雇用や取引先との関係を維持しやすいといった効果も期待できます。

事業譲渡やM&Aの流れについては、以下の記事も参考にしてください。

M&Aの流れを9つのステップに分けて解説|成功ポイントも紹介 | 千代田中央法律事務所

任意整理や個人再生など自己破産以外の債務整理を検討する

借金を整理する方法は、自己破産だけではありません。個人事業主であれば、任意整理や個人再生を検討できる場合もあります。

任意整理は、金融機関やクレジット会社などと交渉し、将来利息のカットや返済条件の見直しを図る手続きです。個人再生は、裁判所を通じて借金を大幅に減額し、原則3〜5年で返済していく制度です。

継続的な収入があり、保有財産を残したい事情がある場合には、自己破産よりも任意整理や個人再生のほうが適しているでしょう。

以下の記事では、個人再生のメリットやデメリット、具体的な手順をわかりやすく解説しています。

個人再生とは?メリットやデメリット・具体的な手順や利用時の注意点を解説 | 千代田中央法律事務所

廃業してから債務整理を行う方法もある

今後の受注見込みがなく、営業を続けるほど赤字が広がる場合は、まず廃業してから債務整理を行う方法もあります。

たとえば、受注を維持するために赤字工事を続けたり、新たな借入れで資金繰りをつないだりすると、負債がさらに膨らむおそれがあります。

その場合は、廃業によって早めに営業を止めて固定費の流出を抑え、事態の悪化を防ぐことが先決です。廃業を検討する際も、まずは弁護士に相談し、その後の対応を検討しましょう。

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建設業で資金繰りが悪化しやすい業界特有の仕組み

電卓を示す作業服の男性

建設業は、仕組み上、他業種と比べて資金繰りが悪化しやすい傾向があります。売上があるように見えても、実際には資金が不足しているケースも少なくありません。

ここでは、資金繰りが悪化しやすい建設業特有の仕組みを解説します。

請負契約では工事完成まで代金が支払われない

建設業では請負契約に基づき、工事の完成や引渡し後に代金が支払われるケースが一般的です。そのため、契約上は売上が見込めていても、工事期間中は現金収入がない状態が続くことがあります。

一部では出来高払いや中間金が設定される場合もありますが、必ずしも十分な資金が確保できるとは限りません。一方で、資材費や外注費、人件費などの支払いは工事の進行に応じて発生します。

入金は後・支出は先という構造により、受注が増えているにもかかわらず手元資金が不足するケースも少なくありません。

多重下請け構造により元請けの倒産が連鎖しやすい

建設業では、元請けから一次・二次下請けへと業務が分かれる多重下請け構造が一般的です。そのため、上位に位置する元請会社の経営状況が、下請業者の資金繰りに影響します。

たとえば、元請会社が資金難に陥り工事代金の支払いが滞ると、下請業者は売掛金を回収できず、外注費や給与の支払いに支障が出るおそれがあります。

さらに、資材業者などにも影響し、取引先全体で連鎖的に経営が悪化するケースもあるでしょう。建設業は、一社の経営悪化が関係者全体に広がりやすい点が特徴です。

資材費や人件費を先に支払うため資金繰りが苦しくなりやすい

建設業では、工事代金を受け取る前に、資材費や外注費、人件費などを先行して支払う必要があります。

資材価格の高騰や人手不足による人件費の上昇が続き、先行支出の負担が大きくなるおそれもあるでしょう。また、工期の遅延や追加工事が発生した場合でも、支払いが増える一方で入金時期が変わらず、資金繰りがさらに圧迫されます。

受注が順調でも、手元資金が不足すれば工事の継続が難しくなるため、日々の資金管理が重要です。

利益が出ていても資金不足で倒産する「黒字倒産」が起こりやすい

建設業では、会計上は利益が出ていても、実際の現金が不足して倒産する「黒字倒産」が起こりやすい業界です。売掛金や未収金として利益が計上されていても、入金までに時間がかかるためです。

たとえば、大型工事を受注して売上や利益が増えていても、入金が遅れている間に外注費や給与の支払いが重なると、資金がショートする可能性があります。

損益と資金繰りは必ずしも一致しないため、利益だけでなくキャッシュフローを重視した経営が求められます。

黒字倒産については、以下の記事でわかりやすく解説しているので参考にしてください。

黒字倒産とは?主な原因や回避する7つの対策、事例を紹介 | 千代田中央法律事務所

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建設業者が破産すると起こる主なトラブル

資材置き場

建設業者が破産すると、経営者や従業員だけでなく、施主・元請会社・下請業者など、多くの関係者に影響が及びます。

ここでは、建設業者が破産した際に起こりやすい主なトラブルを解説します。

工事途中の現場が止まり施主とのトラブルになる

破産によって工事を継続できなくなると、工事途中の現場が停止し、施主との間でトラブルに発展するおそれがあります。

住宅建築やリフォームの場合、「いつ完成するのか」「追加費用は発生するのか」などの不満につながり、契約内容によっては施主側が別業者を手配しなければいけません。前払金を受け取っている場合は、返金対応が問題となることもあり、損害賠償を求められるケースもあります。

感情的な対立に発展しやすいため、早期の状況説明と弁護士への介入依頼が大切です。

元請会社や取引先との契約トラブルが発生する

下請として工事を請け負っている場合、破産により契約の履行ができなくなることで、元請会社との契約トラブルが発生します。

契約不履行に伴う違約金や損害賠償の問題が生じるほか、代替業者の手配や工程の遅延による影響も広がります。さらに、資材業者や外注先との取引でも、未払い・契約解除などの問題が重なり、関係者との調整が複雑化しやすいでしょう。

元請会社や取引先は契約内容によって対応が異なるため、弁護士と協力しながら、丁寧に個別対応しましょう。

下請業者や資材業者への未払いが発生する

資金繰りが悪化した状態で破産に至る場合、下請代金や資材費の未払いが発生することがあります。

建設業は関係業者が多いため、一度未払いが生じると影響が広範囲に及び、連鎖的な資金難を引き起こすおそれもあります。

また、特定の取引先だけに優先的に返済すると、偏頗弁済として問題視されるかもしれません。関係者には公平な対応が求められるため、支払い判断は慎重に行うことが大切です。

従業員や職人への給与未払いが発生する

建設業者が破産すると、従業員や職人への給与・残業代・退職金などが未払いになることがあります。

給与は生活に直結するため、従業員とのトラブルに発展しやすく、会社への不信感や混乱が広がる原因にもなります。未払賃金については、一定の条件を満たせば国の未払賃金立替払制度を利用できますが、支給額には上限があり、全額が補填されるわけではありません。

そのため、制度の対象となるかを早めに確認するとともに、必要書類の準備や申請手続きを進められるよう、弁護士に相談することが重要です。

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建設業者が破産する場合の手続きの流れ

書類を記入する男性弁護士

建設業者が破産する場合は、契約関係や未完成工事、重機や工具などの資産を整理しながら、裁判所を通じて手続きを進めていくことになります。

主な流れは、以下のとおりです。

  1. 弁護士へ相談して破産手続きを進める
  2. 工事契約や未完成の工事現場を整理する
  3. 取引先や従業員へ事情を説明する
  4. 裁判所へ破産を申し立てる
  5. 破産管財人が資産や債務を調査・整理する
  6. 会社の清算が行われ手続きが終了する

ここでは、建設業を経営している法人であることを前提に解説します。

1. 弁護士へ相談して破産手続きを進める

建設業の継続が難しいと感じたら、まず弁護士へ相談し、破産手続きの準備を進めましょう。状況によっては、破産以外の選択肢が取れないかも含めて検討することが重要です。

建設業では、工事契約や下請関係、リース契約などが複雑に絡み合うため、自己判断で進めると対応を誤るおそれがあります。早期に弁護士へ相談することで、取るべき手順や優先順位が明確になり、不要なトラブルを避けられます。

破産以外の債務整理については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

法人の債務整理とは?費用内訳や種類、メリット・デメリットを解説 | 千代田中央法律事務所

2. 工事契約や未完成の工事現場を整理する

破産手続きを進める場合、進行中の工事契約や未完成の現場を整理することが必要です。

工事の進捗状況をはじめ、未収金や前受金の状況、引渡し前の案件の有無などを把握しましょう。住宅工事が途中で止まると、施主が別業者へ依頼し直す必要が生じ、追加費用の負担や精算方法をめぐってトラブルになることがあります。

現場ごとの状況を正確に整理し、どの契約が継続困難かを明確にしておけば、後の手続きを円滑に進められます。

3. 取引先や従業員へ事情を説明する

破産申立ての準備が進んだ段階で、必要に応じて取引先や従業員へ事情を説明します。建設業は関係者が多いため、説明のタイミングや範囲を慎重に判断することが重要です。

とくに従業員については、給与や離職手続きに直結するため、不十分な説明は不信感や混乱を招く原因になります。

一方で、早すぎる情報開示は現場の混乱や信用低下につながることもあるため、弁護士と相談しながら、報告する適切なタイミングを見極めることが大切です。

4. 裁判所へ破産を申し立てる

準備が整ったら、裁判所へ破産申立てを行います。申立てでは、財産や負債、債権者一覧、契約関係、経営悪化の経緯などを整理して提出します。

建設業の場合は、工事契約書や請求書、工事台帳など、確認すべき資料が多いのが特徴です。

情報に漏れがあると手続きが遅れるため、事前に資料を整理し、記入漏れや誤りがないよう丁寧に進めていきましょう。

5. 破産管財人が資産や債務を調査・整理する

破産手続き開始後は、裁判所が選任した破産管財人が資産や債務の調査を行います。建設機械や車両、工具、売掛金などが対象となり、必要に応じて換価されます。

また、未収金や未払いの下請代金、工事契約の状況なども整理され、債権者への配当に向けた準備が進められます。

建設業特有の契約関係も含めて詳細に確認されるため、正確な資料提出と説明が必要です。ひとりで行うには負担が大きいため、弁護士のサポートを受けながら、漏れなく手続きしましょう。

6. 会社の清算が行われ手続きが終了する

法人破産では、最終的に会社の資産が処分され、債権者への配当が行われたうえで、会社は清算・消滅します。

個人が対象の自己破産にある免責という概念はなく、会社そのものが法的に終了する点が特徴です。

なお、代表者が会社の借入に個人保証をしている場合は、法人破産とは別に、代表者個人も自己破産を検討する必要があります。法人と個人では手続きの影響が異なるため、あわせて対応方針を整理することが重要です。

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建設業者が破産手続きを行う際の注意点

指を立てる女性弁護士

建設業の破産では、未完成工事や下請代金、リース機械など特有の問題が多く、対応を誤るとトラブルが拡大するおそれがあります。事前にポイントを押さえておくことで、リスクを最小限に抑えられるでしょう。

ここでは、建設業者が破産時に注意すべき点を解説します。

工事途中の現場の扱いを確認する

自己破産を検討する際は、まず工事途中の現場の状況を正確に把握することが重要です。未完成のまま放置すると、施主や元請会社とのトラブルに発展します。

住宅工事が途中で止まれば、施主は別業者を探す必要があり、追加費用や工期遅延の問題が生じるでしょう。その責任をめぐりトラブルになるケースもあります。

履行できない契約内容や、現場の残された資材や機械などを整理し、弁護士と対応方針を確認しながら手続きを進めましょう。

下請業者や資材業者への支払い対応は慎重に行う

資金繰りが厳しくなると、付き合いの長い取引先へ優先的に支払いたくなるかもしれません。しかし、特定の相手だけに優先して支払うと、その後の破産手続きで問題となる可能性があります。

たとえば、親しい下請業者にだけ先に支払った場合、他の債権者との公平性が損なわれると判断され、後で否認の対象になったり、説明・対応が必要になったりするでしょう。

支払いのタイミングや対象は自己判断で決めず、弁護士と相談しながら慎重に進めることが大切です。

建設機械や工具のリース契約を確認する

建設業では、重機や車両、工具をリース契約で利用しているケースもあります。破産手続きに入ると、これらの機械は原則として返却が必要です。

リース中の重機を無断で使い続けたり、売却・譲渡したりすると、契約違反となり、損害賠償請求や返還請求を受けるおそれがあります。

また、リース会社との契約条件によっては、残リース料の一括請求が発生するケースもあります。契約内容を事前に確認し、返却時期や対応方法を整理しておくことで、法的な請求や支払いトラブルを防ぎましょう。

特定の債権者だけに返済する偏頗弁済を行わない

自己破産を検討している段階で、特定の債権者だけに返済する偏頗弁済は避けましょう。債権者平等の考え方に反し、破産手続きを進める上で問題になる可能性があるためです。

親族や知人からの借入を優先的に返済した場合でも、後から返還を求められるケースがあります。

感情的な判断で支払いを進めるのではなく、全体の公平性を意識しながら、弁護士の助言をもとに丁寧に対応しましょう。

契約書や工事台帳など取引資料を正確に整理する

破産手続きを進める際は、契約書・請求書・工事台帳などの資料を正確に整理することが重要です。情報が不足していると、手続きがスムーズに進まない原因になります。

どの工事がどこまで進んでいるのか把握できないと、関係者への説明や精算に時間がかかり、破産手続きも進みません。

資料は漏れなく整理し、財産や契約関係を正確に把握しておくことで、手続きを円滑に進められるでしょう。

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建設業の自己破産に関するよくある質問

六法全書と弁護士バッジ

建設業者が自己破産を検討するときは、費用や許可、工事途中の現場の扱いなど、実務的な疑問を持つ方が多いでしょう。

ここでは、よくある質問を解説します。

Q. 建設業者が自己破産する場合の費用はいくら?
Q. 自己破産すると建設業許可はどうなる?
Q. 工事途中の現場はどのように処理される?
Q. 自己破産したあと建設業を再開できる?

Q. 建設業者が自己破産する場合の費用はいくら?

A. 建設業者が破産する場合、自己破産でも法人破産でも、以下の費用がかかります。

費用の種類金額の目安内容
着手金20~50万円程度・弁護士に正式依頼した時点で支払う費用
・結果にかかわらず返金されないのが一般的
報酬金0~30万円程度・免責許可決定を得られた場合に支払う成功報酬
・依頼する事務所によっては不要な場合あり
実費1~50万円以上・裁判所に納める申立手数料や予納金、郵券(切手)代など
・手続きの種類によって金額は変動

必要な費用は、借入金の規模や債権者の数に加え、未完成工事の有無やリース契約などによっても変動します。詳しい金額や見通しについては、弁護士と相談しながら確認することが大切です。

自己破産の弁護士費用や依頼する流れなどは、以下の記事で詳しく解説しています。

弁護士に自己破産手続きを依頼するメリットは?費用相場や流れ、弁護士の選び方も解説 | 千代田中央法律事務所

Q. 自己破産すると建設業許可はどうなる?

A. 自己破産をすると、建設業許可に影響が出る可能性があります。建設業許可には欠格要件があり、破産手続開始決定を受けて復権していない間は、許可の取得や更新ができません。

また、すでに個人事業主として許可を受けている場合でも、破産によって欠格要件に該当すると、許可の維持が難しくなるケースがあります。ただし、自己破産の免責決定により復権すれば、再度許可を取得することは可能です。

そのため、建設業許可への影響や事業継続の可否については、破産手続きを進める前に弁護士へ相談し、今後の対応を慎重に検討しましょう。

Q. 工事途中の現場はどのように処理される?

A. 自己破産を行う場合、工事途中の現場はそのまま継続できるとは限りません。契約内容や工事の進捗状況、元請・施主との関係によって対応は異なりますが、破産手続きにより契約の履行が難しくなるケースが一般的です。

未完成工事については、契約の解除や他業者への引き継ぎなどが検討され、返金や精算が必要になる場合もあります。ただし、具体的な対応は個別の契約内容や状況によって異なります。

そのため、自己判断ではなく、破産申立前から弁護士に相談し、適切な対応方針を確認しておくことが重要です。

Q. 自己破産したあと建設業を再開できる?

A. 自己破産をしたあとでも、建設業を再開することは可能です。破産は借金を整理して再出発するための制度であり、将来の仕事が制限されるものではありません。

ただし、すぐに再開できるとは限りません。建設業は許可が必要な場合があり、破産手続き中は取得できないおそれがあります。また、信用情報への影響により融資やリース契約が難しいため、資金調達に苦労するでしょう。

自己破産後の建設業の再開にあたっては、弁護士に相談しながら、資金や取引先の確保など、段階的に準備を進めることが重要です。

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まとめ

通帳を見る作業服の男性

建設業者が破産を検討する場合は、個人事業主であれば自己破産、法人であれば法人破産を検討するのが一般的です。

建設業は請負契約や多重下請け構造、先行支出の多さなどから、資金繰りが悪化しやすい業界でもあります。さらに、未完成工事の処理、下請業者や資材業者への未払い、従業員への給与対応など、一般的な事業よりも注意事項が多いのが特徴です。

そのため、経営が苦しくなった段階で早めに弁護士へ相談しましょう。破産だけでなく、会社売却や事業譲渡、個人再生なども含めて最適な方法を検討することが重要です。

決してひとりで抱え込まず、専門家とともに状況を整理しながら、今後の生活や事業の再出発につながる道を考えていきましょう。

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京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。

千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。