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破産管財人とは|対応する手続きの範囲や費用、選任されるケースを解説 | 千代田中央法律事務所

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破産手続きでは、手続き全般を担当してくれる弁護士以外の人ともやり取りをします。コミュニケーションを取る機会が比較的多いのが、破産管財人です。

破産管財人とは、どういった役割を担う人なのでしょうか。また、どのように選ばれるのでしょうか。

本記事では、破産管財人の概要や選任されるケース、対応する業務の範囲などを解説します。破産を検討している人は、破産管財人について理解を深めておきましょう。

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破産管財人とは

弁護士イメージ

破産管財人とは、破産申立者の財産を代わりに管理し、処分する人のことです。破産手続きにおける破産管財人の役割や、手続き全般を担当する弁護士である「申立代理人」との違いを解説します。

破産管財人の役割と目的

破産管財人は、裁判所が選任する弁護士が担当し、破産手続きを公正に進められるようサポートする役割を担います。

具体的には、破産申立者の財産一式(破産財団)を管理・処分する役割です。この役割は、破産法第2条12項で「破産手続において破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者」と定められています。

破産管財人の主な業務は、破産申立者の財産を調査・管理・処分して、債権者に分配することです。個人破産の場合、借金の免除を認めるべきかどうか、裁判所へ意見を提出する役割もあります。

「財産を取り上げる人」ではなく、破産申立者が無事に再出発できるよう支援してくれる人と捉えましょう。

申立代理人との立場・役割の違い

自己破産の手続きでは、破産管財人と申立代理人という専門家と携わることになりますが、それぞれ果たす役割は異なります。

申立代理人は自身が破産手続きを依頼した弁護士です。申立書類の作成や必要書類の収集、債権者からの取り立てを止める受任通知の送付など、自身の立場に立って法的なアドバイスをしてくれます。

一方、破産管財人は裁判所が選任する第三者であり、手続き全体の公正さを守る役割を担います。自身の立場だけでなく相手の立場にも立って手続きを進めていきます。

そのため、破産管財人とのやりとりは、基本的に申立代理人と相談したうえで対応するのが一般的です。

破産管財人との面談などをする際は、可能な限り申立代理人に同席してもらいましょう。

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破産管財人が選任されるケース

弁護士/検察官

破産管財人が選任されるケースとしては、以下の3つが挙げられます。

  1. 一定額以上の財産を保有している場合
  2. 免責不許可事由の調査が必要な場合
  3. 個人や法人が破産する場合

それぞれのケースについて解説します。

1. 一定額以上の財産を保有している場合

破産管財人がつくかどうかの判断基準は、処分できる価値を有する財産があるかです。

多くの裁判所では「20万円基準」という運用がなされており、現金化すると20万円以上の価値が見込まれる財産がある場合は破産管財人が選任される可能性が高まります。

一部例外として、東京地方裁判所では33万円以上の現金を持っている場合に管財事件となります。

また、預貯金や生命保険の解約返戻金、不動産や自動車の査定額が20万円超などの場合も破産管財人が選任される可能性が高いです。

ただし、不動産については、住宅ローン残高が不動産の評価額を大幅に上回るオーバーローンの場合は、破産管財人を選ばずに手続きが終了する同時廃止となる場合もあります。

2. 免責不許可事由の調査が必要な場合

免責不許可事由の調査が必要な場合、破産管財人がつく可能性があります。免責不許可事由とは、借金の支払義務を免除すべきではない特定の事情のことで、該当すると免責が認められません。

主な免責不許可事由は、以下のとおりです。

  • ギャンブルや浪費による著しい財産減少
  • 財産隠し
  • 特定の債権者だけへの偏った返済(偏頗弁済)
  • 裁判所や破産管財人への虚偽説明
  • 過去7年以内の自己破産

上記のような行為があると、裁判所は破産管財人を選任して詳しく調査させる場合があります。

免責不許可事由があっても、諸般の事情を考慮して裁判所が免責を許可する裁量免責の制度もありますが、そのためには破産管財人の調査と意見が重要です。

破産管財人の質問には正直に答え、必要な書類は迅速に提出し、調査に全面的に協力しましょう。

3. 個人や法人が破産する場合

破産管財人の選任基準は、申立人が個人か法人か、個人の場合は事業主かどうかによっても異なります。

法人が破産申立をする場合は、財産の有無や金額にかかわらず、原則すべての事件で破産管財人が選任されます。法人の財産関係や契約関係、従業員関係などは複雑で、専門家による整理・清算が必要なためです。

一方、個人の場合は前述の財産基準や免責不許可事由の有無によって判断されますが、個人事業主の場合は会社員などと異なり、基本的に破産管財人が選任されます。

法人と同様、事業に関わる複雑な債権債務関係、店舗の賃貸借契約や機器のリース契約、従業員の給与問題など、専門家の管理が必要な事情が多いためです。

自身の破産ケースで破産管財人が選任されるかどうか確かめたい場合は、弁護士に相談してみるとよいでしょう。

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破産管財人の対応範囲

紙に書くビジネスマン

破産管財人が対応する業務は、以下のとおりです。

破産管財人の指示や要請には、協力する必要があります。どのような業務をしているか理解しておけば、スムーズにやり取りできるでしょう。

債権額の調査・確定

破産管財人は、公平な配当を実現するために、各債権者から提出された債権届出書を精査します。

たとえば、ある債権者が貸付金3,000万円と届け出た場合、実際に貸付契約書が存在するか、返済は順調にできているか、利息制限法に基づく引き直し計算が必要ないかなどを調査します。

調査の結果、実際の債権額が2,500万円と判断したら、その金額で債権を認め、債権者表に記載します。

あわせて、税金や労働債権など優先的に支払われるべき債権の確認も破産管財人が行う業務のひとつです。

破産者が知人や親族への借金を隠していても、管財人の調査で発覚するため、破産管財人からの債権に関する照会には誠実に回答しましょう。

適切に回答するには、手元に残っている契約書や返済記録などの資料を提供するとよいです。

破産者の財産調査と管理・換価処分

破産者の財産管理や換価処分は、破産管財人の中心的な業務です。

破産管財人は、破産者が提出した財産目録の精査だけでなく、本人からの聴取・金融機関への照会・不動産登記簿の確認・実地調査・郵便物の確認など、さまざまな方法で調査を行います。

破産申立前の預金口座の出入金記録を確認し、大きな出金があったとした場合は、使途を尋ねられる場合もあるでしょう。

調査で特定された財産は換価処分の対象となります。それぞれ以下のような方法で売却・換価されます。

  • 不動産:競売や任意売却
  • 自動車:買取業者に売却
  • 預貯金:管財人口座に移管

ただし、個人の自己破産では、自由財産として、99万円以下の現金や生活必需品を手元に残せます。

財産状況については正直かつ正確に申告するのが大切です。財産隠しをすると刑事罰の対象となる場合があるので、避けてください。

破産者宛の郵便物の管理

破産者宛の郵便物は、破産管財人が管理します。破産法第81条、82条にもとづき、管財事件では、裁判所の嘱託により、破産者宛の郵便物が破産管財人の事務所に転送され、内容を確認されます。

この措置が取られるのは、未申告の財産や債権者を発見するためです。

転送されるのは、日本郵便が取り扱う郵便物で破産者本人宛のもののみです。また、職務に関係ない私的な手紙やダイレクトメールなどは、破産管財人の確認後に破産者に返還されます。

返還方法は破産管財人によって異なりますが、月に一度の面談時に手渡されたり、まとめて郵送されたりするのが一般的です。

重要な郵便物が届く予定がある場合は、弁護士を通じて管財人に伝えておけば、速やかに返還してもらえる可能性があります。

債権者集会での報告

債権者集会で破産手続きの現状を報告するのも、破産管財人の役割です。債権者に破産手続きの進行状況を説明し、意見を聴取します。もし債権者から質問がある場合は、適切に回答していきます。

報告される内容は、以下のとおりです。

  • 破産に至った経緯
  • 財産の管理・換価状況
  • 収支計算、今後の見通し

なお、個人の自己破産の場合は、免責不許可事由の有無や裁量免責に関する意見も述べられます。債権者集会は事案の複雑さによって1回で終わることもあれば、数ヶ月ごとに複数回開催されることもあります。

破産者の出席も求められるケースが多いため、事前に申立代理人弁護士と相談し、必要な準備をしておきましょう。

債権者への配当

破産管財人は、債権者への配当も担当します。配当とは、換価や処分などで集めた財産(配当原資)を債権者に分配することです。

配当は以下の優先順位で行われます。

  1. 別除権者:不動産の抵当権者など。担保物から優先的に弁済を受ける。
  2. 財団債権:破産管財人の報酬や破産手続きの費用
  3. 優先的破産債権:租税債権や労働債権
  4. 一般破産債権:一般の借入金やクレジットカード債務

破産管財人は配当表を作成し、裁判所の許可を得たうえで各債権者に支払いを行います。換価に時間を要する場合は数回に分けて配当されるケースもあります。

ただし、債権者への配当はほとんどないか、一切ないケースもある点に注意が必要です。

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破産管財人にかかる費用

腕組みするビジネスマンとお金

破産管財人へ支払う費用は、破産手続き時に裁判所へ納める予納金から支出します。

予納金は破産管財人の報酬のほかに財産調査費用、郵便費用、官報公告費用などに充てられるもので、破産手続きを進めるためには必須の費用です。金額は破産手続きの種類によって大きく異なります。

簡素な手続きで費用が抑えられる少額管財事件では、20万円程度が標準的な目安です。なお、少額管財事件が適用されるには、弁護士による破産申立が必要です。

一方、通常管財事件になると、個人では最低50万円から、法人では最低70万円からと費用は高額になります。負債額や事案の複雑さによっては、さらに負担が増えるでしょう。

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破産管財人が選任された後の注意点

悩む男性

破産管財人が選任された後は、以下の4点に注意しましょう。

  1. 破産管財人の指示は原則従う必要がある
  2. 郵便物が管理され内容が確認される
  3. 引越しや旅行の際は裁判所の許可が必要になる
  4. 一部の資格が制限される

一部の行為・行動に制限があるため、指示を拒否したり勝手に手続きを進めたりすることのないようにしましょう。

1. 破産管財人の指示は原則従う必要がある

破産管財人の指示や依頼には、原則従うようにしてください。

破産管財人が選任されると、破産者には管財人の指示に従い、調査に協力する法的義務である説明義務が生じます。

銀行口座の明細や給与明細、確定申告書といった、破産管財人が求める資料はすべて提出し、面談への出席要請にも応じなければなりません。また、質問に対しても誠実に回答する必要があります。

協力を怠ったり虚偽の説明をしたりすると、破産法第252条1項8号や9号に基づき、債務が帳消しにならない可能性があります。

情報を隠したり、嘘をついたりする行為は破産手続きがうまく進まない要因にあるため、指示には必ず従うようにしてください。指示内容が不明確な場合や対応に迷う場合は、自己判断せず、まず申立代理人に相談しましょう。

2. 郵便物が管理され内容が確認される

前述のとおり、破産管財人は破産申立者の郵便物を管理します。管理される郵便物は都度内容がチェックされるため、未申告の財産や伝達していない債権者が見つかる可能性があります。

もしこうしたケースが発覚した場合、財産隠しなどの違法行為を疑われる可能性もあるでしょう。破産管財人の質問や依頼には、嘘偽りなく回答・対応するようにしてください。

なお、私的な文書は内容確認後に破産者に返還されます。また、荷物の宅配や家族宛の郵便物は破産管財人には転送されません。

3. 引越しや旅行の際は裁判所の許可が必要になる

引越しや旅行の際は、破産法第37条1項にもとづき、裁判所の許可を得る必要があります。

破産管財人や裁判所からの事情聴取に応じられるよう破産者の所在を明確にしておくこと、財産の隠匿や無断処分を防ぐこと、破産者の逃亡を防ぐことが目的です。

引越しが必要な際は、破産管財人に転居の必要性や新住所、転居理由などを説明し、同意を得てから行うようにしてください。

管財人の同意が得られれば、管財人が裁判所に許可申請を行うか、破産者の申請を後押しする形で手続きが進められます。

日帰りや1泊程度の短期間の旅行であれば裁判所の許可は不要なケースがありますが、長期旅行や海外旅行は要注意です。

裁判所の許可なく無断で転居すると、免責不許可となる可能性があるため、事前に必ず弁護士に相談しましょう。

4. 一部の資格が制限される

破産手続開始決定を受けると、一部の職業に就くことや特定の資格を用いて業務を行うことが制限されます。制限は、弁護士法や税理士法など、それぞれの資格や職業に関する法律に定められています。

制限を受ける資格は以下のとおりです。

  • 弁護士
  • 司法書士
  • 税理士
  • 公認会計士
  • 行政書士
  • 警備員
  • 宅地建物取引士
  • 生命保険募集人
  • 株式会社の取締役・監査役

医師、看護師、薬剤師、教員、一般的な公務員、企業の一般従業員などは通常制限を受けません。

制限は永続的なものではなく、一定期間が経過すれば解除されます。裁判所から免責許可決定が確定した場合などは、手続きがなくとも制限解除となります。

個人破産事件では、申立てから数ヶ月~半年程度で免責許可決定が確定し、同時に資格制限も解除されるのが一般的です。資格制限が仕事に影響する場合は、勤務先に状況を報告し、対応を協議しましょう。

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破産手続き終結後の注意点

書類に印鑑を押す女性と促す男性の手元

破産手続きが終わった後も、日常生活において注意が必要なことがあります。

それぞれ念頭に置いたうえで、再起への準備を進めましょう。

信用情報の回復までは5〜7年かかる

個人破産すると、信用情報の回復までに時間を要します。破産すると、CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センター(KSC)などの信用情報機関に、破産の事実が「事故情報」として登録されます。

ブラックリストとも呼ばれるこの状態は、CIC、JICCでは契約終了後から5年、KSCでは破産手続開始決定の日から最長7年続いてしまうのです。

ブラック状態だと、クレジットカードの新規発行やローン契約、携帯電話の分割払いなどは、ほぼ不可能です。

破産手続き中にはクレジットカードが解約されてしまうため、デビットカードやプリペイドカードといった代替手段の利用を検討しなければなりません。数年後のライフプランに大きな影響を与えかねない点には、注意が必要です。

信用情報が回復するまでの期間は、お金との健全な関係を構築する期間と捉え、収入の範囲内で生活する習慣を身につけましょう。

税金や社会保険料の支払いは免除されない

法人が破産すると税金や社会保険料の債権は消滅しますが、個人が自己破産しても、税金や社会保険料の支払いは免除されません。

個人破産における税金や社会保険料などは「非免責債権」として扱われ、自己破産後も支払義務が継続します。

税金や社会保険料を非免責債権とする理由は、税金や社会保険料が国家や地方公共団体の財政基盤であり、公共サービスの提供に不可欠なものだからです。

そのため、破産手続きを終えたら、税金や社会保険料をどのように支払っていくか、考えていく必要があります。

滞納分の納付については、自治体の税金や年金・健康保険の窓口で分割払いについて相談しましょう。現状に応じた無理のない支払計画を提示し、期限内に適切に納付できるよう努めてください。

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まとめ

弁護士

破産管財人は破産手続きを公正に進める役割を持ちます。自身と債権者に平等に対応するため、指示が難しく厳しいと感じることもあるでしょう。

申立代理人の弁護士と相談し合いながら破産管財人とも良好な関係を築きつつ、破産手続きの終結に向かいましょう。

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京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。

千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。