個人再生は借金を大幅に減額できる魅力的な制度ですが、利用できないケースや手続きが認められないケースもあります。
本記事では、個人再生ができない代表的な11のケースと、利用できない場合の7つの対処法をわかりやすく解説します。また、利用できない場合にやってはいけないNG行為にも触れています。
個人再生の仕組みと注意点を正しく理解し、個人再生をはじめ自分に合った解決策を見つけて生活を再建しましょう。
個人再生ができない11のケース

個人再生ができないのは、主に以下11のケースです。
- 継続的な収入がない
- 借金の総額が上限を超えている(5,000万円以上)
- 借金の総額が少ない(100万円以下)
- 収入や財産を隠している
- 個人再生をしても返済の見込みが立たない
- 小規模個人再生で債権者の同意が得られない
- 偏頗弁済(特定の債権者にだけ返済)をしている
- 書類の提出期限や記載事項を守らない
- 履行テストで支払いが遅れた
- 手続き中に新しく借金をした
- 個人再生をする費用が準備できない
事前にできないケースを知っておくことで、避けるべき行動がわかります。それぞれ具体的に解説するので、参考にしてください。
1. 継続的な収入がない
個人再生を行うには、毎月確実に返済できる継続的な収入が欠かせません。正社員でなくても、パートや派遣など継続的に働いていれば認められます。
転職直後でまだ給料をもらっていない場合は、数ヶ月分の給与明細を確保できるまで働き、仕事が続いている実績を示すことが必要です。
将来にわたり安定した収入が見込めると証明できなければ、裁判所は計画どおり返済できないと判断するため、個人再生は認められません。
2. 借金の総額が上限を超えている(5,000万円以上)
個人再生では、住宅ローンを除いた借金の総額が5,000万円以下であることが利用の条件です。この金額には、消費者金融やカードローンだけでなく、ショッピング利用、事業用の借入、知人からの借金などの債務も含まれます。
さらに、元金だけでなく利息や遅延損害金も合計に含まれるため、長期間借り入れをしている場合は残高が膨らみ、上限を超えてしまうおそれがあります。
1円でも超えれば利用不可となるため、弁護士に相談し現時点の総額を早めに把握することが重要です。
3. 借金の総額が少ない(100万円以下)
借金が100万円未満の場合は原則として減額できず全額返済になります。100万円以上でも最低弁済額があるため、負債額によっては減額メリットが小さいことがあります。
ただし、将来の利息カットや毎月の返済額を減らせるといった効果は期待できます。極端な例ですが、借金50万円で個人再生を利用しても、負担が増える可能性が高いです。
借金の総額が100万円以下の場合は、将来の利息をカットしたり過払い金請求につながったりする任意整理が向いています。
過払い金請求については、以下の記事で詳しく解説しています。借り入れ期間が長いと、利息を取り戻せる可能性があるため、心当たりのある方はぜひ参考にしてください。
過払い金請求とは?仕組みや算出方法・対象者などをわかりやすく解説 | 千代田中央法律事務所
4. 収入や財産を隠している
個人再生を利用する場合は、収入や財産を正直に申告する必要があり、収入や財産隠しは不正な手続きと判断され裁判所からの許可がおりません。
たとえば、生命保険の解約返戻金や車、預貯金などを申告しなかったり、家族名義の口座にお金を移して隠したりする行為が該当します。また、悪意がなくても、大きな金額を申告し忘れると、財産隠しとみなされるかもしれません。
収入や財産の申告は弁護士と相談しながら、こまかい部分まで確認し、確実に個人再生が認められるように手続きしましょう。
5. 個人再生をしても返済の見込みが立たない
個人再生で裁判所がもっとも重視するのは、減額後の借金を確実に返済できるかどうかです。生活費を差し引いたあと、返済に回せるお金がほとんど残らない場合は、どんなに借金が減っても計画は認められません。
たとえば、毎月の収支が常に赤字だったり、ギャンブルや浪費が続いていたりすると、継続的な返済は難しいと判断され個人再生は認められません。
個人再生を利用するなら、まずは家計簿をつけて無駄な支出を見直し、少なくとも月々数万円の余裕を作ることが重要です。そのうえで、現実的な返済計画を立て、裁判所に認めてもらいましょう。
6. 小規模個人再生で債権者の同意が得られない
小規模個人再生では、債権者からの不同意が一定の基準(人数または金額)に達すると手続が廃止され、再生計画が認可されません。具体的には、債権者の人数の過半数が賛成し、反対した債権者が持つ債権額の合計が全体の半分を超えていないことが条件です。
万が一、債権者の同意が得られない場合は、給与所得者等再生を選択することになりますが、これは会社員が対象で個人事業主は利用できません。
債権者の同意が得られるか心配な方は、弁護士に相談し、個人再生以外の債務整理も検討しながら解決策を見つけましょう。
7. 偏頗弁済(特定の債権者にだけ返済)をしている
偏頗弁済が発覚した場合は、個人再生が認められない可能性があります。たとえば、会社に知られたくないから勤務先への借金だけ返す、親族に迷惑をかけたくないから内緒で返済するといった行為は避けましょう。
偏頗弁済で返済した金額も、保有している財産とみなされ、結果的に返済額が増えるおそれもあります。最悪の場合、申立てが却下されるかもしれません。
自己判断で一部の債権者にだけ返済するのは避け、どうしても返済したい相手がいる場合は、必ず弁護士に相談しましょう。
8. 書類の提出期限や記載事項を守らない
個人再生は裁判所のスケジュールに沿って進むため、期日を守ることが重要です。とくに再生計画案といった重要書類は、提出が1日遅れるだけでも手続きが打ち切られるおそれがあります。
たとえば、役所で発行してもらう書類を忘れた場合、期限当日に慌てて用意しようとしても、窓口の営業時間外であれば準備できません。
そのため、必要書類はすみやかに準備し、提出期限よりも早めに提出できるよう余裕をもって手続きを進めましょう。
9. 履行テストで支払いが遅れた
個人再生では、本格的な返済期間に入る前に、履行テストと呼ばれる試験的な返済期間を設けています。これは、将来の返済額と同じ金額を数ヶ月間返済し、返済能力の有無を確かめるテストです。
履行テストで一度でも入金が遅れたり、金額が不足したりすると、返済困難と判断され、個人再生が認められないおそれがあります。
履行テストは、裁判所が返済能力を判断する重要なチェックポイントです。個人再生が認められるかどうかは、履行テストを遅延なくクリアする必要があります。
10. 手続き中に新しく借金をした
個人再生の手続き中に、新たな借金をした場合は、生活再建の意思がないと判断され、申立てが認められないおそれがあります。
クレジットカードの分割やキャッシングはもちろん、スマホ決済の後払いなども事実上の借金とみなされるかもしれません。個人再生の手続きを弁護士に依頼しておけば、受任通知で返済は一旦止まるため、この期間に生活費を見直すことが大切です。
個人再生の本格的な返済が開始される前に、家計簿で収支を把握し、継続的に返済できる計画を立てておきましょう。
11. 個人再生をする費用が準備できない
必要な費用を準備できない場合も、個人再生を利用できません。個人再生を利用するには、弁護士費用や裁判所に納める実費など、一定の費用がかかります。
一般的には50万円程度で、住宅ローン特則を使う場合はさらに数万円上乗せされるケースもあります。弁護士に依頼すれば、受任通知によって借金の返済が止まるため、その期間に積み立てて個人再生の費用に回すことが可能です。
それでも費用が準備できない場合は、個人再生後の返済も続けられない可能性が高いため、弁護士に相談し、別の債務整理を検討しましょう。
個人再生の具体的な費用については、以下の記事を参考にしてください。
内部リンク:No.103_【個人再生 費用】
個人再生ができない場合にやってはいけないこと

個人再生ができない場合に、焦って新たな借り入れをしたり、弁護士への相談を先延ばしにしたりするのは避けましょう。
ここでは、リスクをともなうNG行動と、やってはいけない理由をわかりやすく解説します。
闇金や違法業者から借入れをする
個人再生ができず生活費が足りないからといって、闇金や違法業者から借金をするのは避けましょう。こういった業者は、審査が甘くすぐにお金を貸してくれる反面、違法な利息で多額の返済を求めてくるリスクがあります。
さらに、自宅や職場に繰り返し電話が来るといった、悪質な取り立てをする業者もあり、借金だけでなく精神的な負担もかかります。
すでに違法業者から借り入れをしてしまった場合は、早めに弁護士に相談し、解決策を見つけることが重要です。
税金や公共料金などの滞納を放置する
税金や公共料金などの滞納は、債務整理をしても減額されません。そのため、支払いを放置せず計画的に払うことが大切です。
滞納が続くと最悪の場合、給与や銀行口座、自宅などを差し押さえられるリスクもあります。たとえば、固定資産税を長期間滞納すると、不動産が差し押さえられ、個人再生を利用する場合に住宅ローン特則は使えなくなります。
さらに公共料金を滞納すると、電気やガスなどが止まり、目の前の生活自体が難しくなります。税金や公共料金などの滞納がある場合は、まず役所や各社にその後の支払いを相談し、差し押さえを防ぎましょう。
無理な自力返済で生活を圧迫する
個人再生ができないからといって、無理な自力返済で生活を圧迫するのは避けましょう。たとえば、返済のために食費を極端に削ったり、病院に行かず健康を損ねたりすると、健康にも影響を及ぼします。
無理に返済を続けたことで、個人再生以外の債務整理に必要な費用も準備できず、解決策がなくなるおそれもあります。
家計が限界を迎えている場合は、無理に返済を続けるのではなく、まずは弁護士に相談し、支出の見直しや個人再生以外の選択肢も検討しましょう。
専門家への相談を先延ばしにする
個人再生できない場合にまずやるべきことは、一刻も早い弁護士への相談です。相談が遅れると、無理な返済を続けて健康を損ねたり、しつこい督促に悩まされ続けたりするリスクがあります。
すみやかに弁護士に相談すれば、受任通知で督促や返済を一旦停止し、債権者との対応もすべて任せられます。
法律事務所によっては相談自体は無料な場合もあるため、早めに弁護士に相談し、現場の改善と効果的な解決策を見つけましょう。
家族や職場に隠し続けて孤立する
借金問題をひとりで抱え込みすぎて孤立すると、精神的に追い詰められ、冷静な判断ができなくなるおそれがあります。
たとえば、支払いに追われて気持ちが不安定になり、仕事のパフォーマンスが落ちたり、家族へ嘘をついて信頼を損ねたりすることも考えられます。家族や知人に相談するのを避けたい場合は、まず弁護士に相談し気持ちを整理することが重要です。
誰かに悩みを打ち明けストレスが軽減すれば、冷静に現状を受け入れられるようになり、今後の生活再建のヒントも見えてくるでしょう。
個人再生がすぐにできない場合の7つの対処法

個人再生がすぐにできない場合は、以下のような対処法で現状を改善したり、他の解決策を検討したりすることが有効です。
個人再生ができない場合でも、状況を立て直す手段はあります。ここでは、7つの対処法をわかりやすく解説します。
1. 収支の改善を行う
個人再生がすぐにできない場合でも、今後の返済につなげるためには、家計簿をつけて収支の改善を図ることが不可欠です。
たとえば、スマートフォンの通信費を格安プランに変え、外食を減らすだけでも月に数万円の節約になります。こういった余剰資金は返済計画を作成する上でも重要で、債務整理をするために必要になってきます。
家計簿をつける場合は、アプリの活用やレシートの保存など、記録の方法はシンプルで構いません。不明な支出をなくすだけでも収支は改善し、現実的な再生計画につながるでしょう。
2. 申立て費用を積み立てて確保する
費用の関係ですぐに個人再生ができない場合は、まず申立てに必要な資金を確保することが大切です。
弁護士に個人再生の手続きを依頼すれば、受任通知により返済は一旦止まるため、その期間に申立て費用を積み立てましょう。毎月1〜2万円でも継続すれば、半年で10万円程度は準備でき、初期費用に充てられます。
積み立てができることで、返済能力があることも証明できます。無理のない金額で積み立てを続け、個人再生の申立てと返済能力の証明に活用しましょう。
3. 再生計画の変更を検討する
再生計画が認められず個人再生が却下された場合は、計画案を変更し再度申立てしてみましょう。たとえば、月5万円の返済を3年間続けるのが苦しい場合は、期間を5年に伸ばすことで毎月の負担を軽減できます。
ただし、返済期間が延びるとその分生活が再建するまでに時間がかかるうえ、家計の見直しや積み立てを長く維持する必要があるというデメリットも生じます。
現実的な再生計画を立てるためにも弁護士に相談し、自分の返済能力と無理なく返済できる金額・期間をバランスよく設定しましょう。
4. 公的支援制度を活用する
生活再建を目指すためには、公的支援制度を活用し、生活基盤を整えることも有効です。
たとえば、総合支援資金を利用して当面の生活費を確保する方法があります。また、家賃の支払いが難しい場合は、住居確保給付金を利用し、住む場所を確保しながら生活を立て直すことも可能です。
個人再生をはじめとした債務整理を検討する場合でも、まずは生活基盤を整え、将来の継続的な返済につなげましょう。
5. 家族や知人などに協力してもらう
信頼できる家族や知人がいる場合は、素直に現状を伝え、協力してもらうことで生活再建につながります。
専門家に再生計画に必要な家計簿づくりを手伝ってもらったり、個人再生に必要な費用の一部を支援してもらったりするだけでも、現状は確実に改善します。また、借金問題をひとりで抱え込まないことで、精神的な負担も軽減するでしょう。
家族や知人に協力してもらうことは、決して甘えではなく、生活再建に必要な戦略的な選択です。
6. 弁護士に相談しサポートしてもらう
借金問題を解決するためには、専門家である弁護士への相談は不可欠です。個人再生が難しい場合でも、自己破産や任意整理など他の債務整理を視野に入れつつ、解決策を検討してくれます。
また、弁護士に債務整理の手続きを依頼すれば、受任通知によりその瞬間から督促や取り立てなどは一旦制限されます。その間に、生活費を見直し、申立て費用を準備することも可能です。
借金問題はひとりで判断せず専門家にサポートしてもらうことで、現実的な解決策に導いてくれるでしょう。
7. 他の債務整理を検討する
個人再生ができない場合は、以下のような債務整理を検討することも可能です。
- 任意整理: 利息や将来利息を減らし、毎月の返済を軽くする
- 自己破産: 返済が困難な場合に、法律上すべての借金をゼロにできる
任意整理の場合は、払いすぎた金利を取り戻せる過払い金請求も可能なため、返済期間が長い場合に有効です。自己破産は、免責が認められれば借金の支払い義務がすべてなくなるため、収入状況によっては有効な解決策になります。
ただし、財産処分や職業制限などのデメリットもあるため、どの手続きが適しているかは必ず弁護士と相談しながら判断しましょう。
まとめ

継続的な収入がない場合や、借金の総額が基準以上または基準以下の場合などは、個人再生は利用できません。
また、利用できないからといって、闇金融に新たな借り入れをしたり、無理な返済で生活を圧迫したりすると、状況はさらに悪化します。そのため、個人再生が利用できない場合は、まず弁護士に相談し、今後の返済計画や効果的な解決策を考えましょう。
ひとりで抱え込まず、弁護士に協力してもらうことで、家計の見直しや公的支援の活用など、今やるべきことが明確になります。不安の解消を先延ばしにせず、今日できることからはじめることが大切です。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

