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黒字倒産とは?主な原因や回避する7つの対策、事例を紹介 | 千代田中央法律事務所

計算をする作業服の男性 法人破産

黒字倒産とは、決算書上は利益が出ているにもかかわらず、資金不足によって倒産してしまう状態を指します。

売上代金の回収遅れや在庫の増加、過剰な投資などが原因で、現金が手元に残らないケースは少なくありません。

本記事では、黒字倒産が起こる仕組みを基礎から整理し、見逃しやすい危険な兆候や事前にできる対策を具体例とともに解説します。

記事を読み終える頃には、自社の財務状況を正しく見極め、資金繰りリスクを早期に察知できるでしょう。

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黒字倒産とは?

黒字倒産の積み木と人形

黒字倒産とは、決算書上は利益が出ているにもかかわらず、手元の現金が不足して支払いができなくなり倒産する現象です。

ここでは、黒字倒産が起きる仕組みと、赤字倒産との違いを整理し、なぜ黒字でも倒産するのかを理解するための基礎知識を解説します。

黒字倒産の仕組み

黒字倒産とは、損益計算書(PL)上では黒字でも、実際の現金が不足し倒産する状態で、利益と現金の時間差が原因で起こります。

売上は商品を販売した時点で計上されますが、入金は翌月以降になることが多く、このタイムラグが資金不足を生みます。一方で仕入れ代金や人件費、家賃、税金などの支払いは滞りなくやってくるため、支払い続けなければいけません。

とくに成長企業では、売上増加に伴い仕入れや外注費が先行し、運転資金が急増します。この入出金のズレを埋める資金がなければ、黒字でも資金不足になり、支払い不能に陥るでしょう。

赤字倒産との違い

赤字倒産は、赤字が続くことで純資産が徐々に減少し、決算書の悪化という明確な兆候を経て発生します。そのため、業績の推移を見ていれば、一定の予測や対策が可能です。

一方、黒字倒産は、業績が良好に見える中で、資金繰りの管理不足によって突然起こったように表面化するのが特徴です。利益は出ていても、入出金のタイミングを把握していないと、支払日に現金が足りず一気に行き詰まります。経営者自身が危機に気づきにくく、銀行や取引先の信用が保たれたまま資金が尽きるケースも少なくありません。

とくに近年は、物価高や賃上げ、借入返済の再開により、黒字企業でもキャッシュフローが悪化しやすい環境です。そのため、利益だけでなく、現金の動きを重視した経営判断が不可欠となっています。

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黒字倒産の主な6つの原因

電卓を持つビジネスマン

黒字倒産の主な原因は、以下の6つです。まずは原因を把握することで、効果的な対策が見えてきます。

  1. キャッシュフローを正確に把握できていない
  2. 売掛金の未回収や貸し倒れで資金繰りが悪化する
  3. 負債の増加で利益を圧迫している
  4. 過剰在庫によって管理費用が増加する
  5. 無理な設備投資で資金が枯渇する
  6. 急な売上増加で運転資金が不足する

1. キャッシュフローを正確に把握できていない

キャッシュフローを正確に把握できていないと、黒字倒産につながるおそれがあります。決算書や通帳残高だけを見ていると、納税や返済などの支出を見落としがちです。利益が出ている安心感から、予定外の支出をしてしまうケースもあるでしょう。

キャッシュフローを正確に把握するためには、資金繰り表を作成し、数ヶ月間の現金の動きを可視化することが重要です。資金不足は事前に予測し、未来の現金を適切に管理しましょう。

2. 売掛金の未回収や貸し倒れで資金繰りが悪化する

売上が計上されても、入金されなければ会社の資金として機能しません。売掛金は資産(債権)ですが現金ではなく、回収遅延や貸し倒れは資金繰りに直結します。

とくに大口取引先への依存は危険で、入金が1ヶ月遅れるだけで、支払いが滞ることもあります。売掛金の管理を徹底し、入金遅延は即対応、取引先の分散も行うことでリスクを抑えられるでしょう。

3. 負債の増加で利益を圧迫している

借入金の元本返済は経費にならないため、黒字でも現金が減り続ける原因になります。利益以上の返済額があると毎年資金が不足し、資金不足を追加借入で補う状態が続けば、いずれ限界を迎えます。

定期的に利益とキャッシュフローのバランスを確認し、返済負担が過大であれば、条件変更や借入構成の見直しが必要になるでしょう。

4. 過剰在庫によって管理費用が増加する

過剰在庫は、管理費用の増大による資金不足の要因になります。在庫は資産として計上されるため、利益は出ていても現金は減ります。さらに保管費や廃棄ロスも発生し、資金繰りを悪化させるかもしれません。

在庫は本来、現金になるはずだった資産ですが、長期滞留在庫は現金化できず、資金を固定化させます。そのため、価値が下がる前に早期処分し、現金へ戻す判断が重要です。

5. 無理な設備投資で資金が枯渇する

設備投資は一時的に多額の現金流出を伴いますが、会計上は減価償却で分散されるため、黒字のまま資金不足に陥るかもしれません。自己資金で無理に賄うと、運転資金が不足し、日常の支払いができなくなるおそれがあります。

長期的に使う設備は長期借入で調達し、返済と収益のタイミングを合わせながら、資金不足を防ぐことが安全な経営につながるでしょう。

6. 急な売上増加で運転資金が不足する

売上増加のような急成長は、黒字倒産のリスクを高めます。売上が増えると、入金前に仕入れ・人件費・外注費などの支払いが急増します。売上増加=資金に余裕が生まれるわけではありません。

とくに成長期は、立替資金に耐えられる運転資金が不可欠です。急な売上増加に備えて銀行と連携し、増加運転資金の融資枠を事前に確保しておくことが重要です。

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黒字倒産の回避に有効な7つの対策

事業計画書と文房具

黒字倒産の原因を把握したら、倒産を回避するために有効な対策を確認しましょう。黒字倒産を回避するには、以下の対策が効果的です。

  1. キャッシュフローで経営を管理する
  2. 売上の回収サイトと代金の支払いサイトを適正に調整する
  3. 入出金の金額やタイミングを正確に把握する
  4. 十分な運転資金を確保する
  5. 適正な在庫量を維持する
  6. 資金調達力を強化する
  7. M&Aを活用する

1. キャッシュフローで経営を管理する

黒字倒産を防ぐためには、利益ではなく現金を基準に経営判断することが大切です。黒字倒産は、損益計算書(PL)上は利益が出ていても、入金が遅れ現金が不足することで起こります。

設備投資や採用、大口案件の受注時には、利益率よりも現金が入る時期を最優先にして判断しましょう。売上報告だけでなく、預金残高や資金繰りの見通しを確認し、全社で現金重視の意識を養うことが倒産回避につながります。

2. 売上の回収サイトと代金の支払いサイトを適正に調整する

資金繰りを安定させるためには、できるだけ早く回収し、支払いは無理のない範囲で遅らせることが重要です。売掛金の回収が遅く、仕入れの支払いが早いと、売上が伸びるほど資金不足に陥ります。

新規取引では短期回収を原則とし、既存取引先とも支払条件の見直しを検討しましょう。支払期限を調整するだけでも資金繰りは改善します。たとえば、請求を翌月末払い→翌月15日払いにできれば、入金が半月早まり資金繰りが楽になります。

3. 入出金の金額やタイミングを正確に把握する

黒字倒産は、資金管理ができていないと、突然起きたように見える現象です。一方、入出金予定を資金繰り表で可視化していれば、資金不足の時期は事前に把握できます。予測するためには、資金繰り表と日繰り表の管理が不可欠です。

数ヶ月の入出金を可視化すれば、資金が不足する時期を事前に把握できます。とくに直近は日単位で管理し、資金残高が減少するタイミングを特定しましょう。早期に把握できれば、融資や対策を余裕をもって実行できます。

4. 十分な運転資金を確保する

黒字倒産を防ぐには、目安としていわれることが多い、月商の3ヶ月分程度の運転資金を確保するのが理想です。運転資金を確保しておくことで、売上減少や取引先倒産などの不測の事態が起きても時間を稼げます。

無借金経営に固執し、資金が薄い状態で回す方がリスクは高いでしょう。業績が好調なときこそ、前向きな運転資金として融資を受け、手元資金を厚くしておくことが安全経営につながります。

5. 適正な在庫量を維持する

過剰に在庫を抱えることは、現金を寝かせてしまう原因になります。在庫は会計上の資産でも、財務的にはキャッシュの流出と同じです。在庫回転率を定期的に確認し、長期滞留在庫は原価割れでも現金化する判断が必要です。

在庫削減は、手元資金の増加とコスト削減を同時に実現できます。発注担当者の評価指標に在庫管理を組み込み、在庫を経営管理下に置きましょう。

6. 資金調達力を強化する

資金調達は、資金不足に陥ってからでは遅く、平時の準備が重要です。複数の金融機関と関係をもつマルチバンク体制を整え、業績が好調なときから情報開示を行いましょう。試算表や資金繰り表を定期的に共有することで、信頼関係を築きましょう。

銀行融資だけでなく、補助金やファクタリングなど選択肢を広げておくことも、資金繰りリスクの低減につながります。

7. M&Aを活用する

自社だけでの改善が難しい場合、M&Aを効果的に活用することで黒字倒産を回避できます。資金力のある企業の傘下に入ることで、資金繰り不安を解消し、事業継続が可能になります。

また、不採算事業を売却して現金を確保し、本業に集中する選択も有効です。M&Aを逃げではなく、従業員や事業を守るための戦略的手段として、早めに検討することが重要です。

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黒字倒産を未然に防ぐためにリスクを確認する方法

損益計算書と電卓

黒字倒産を未然に防ぐためにリスクを確認する際は、以下の視点をもちましょう。

損益計算書の収支状況は健全か

黒字倒産を防ぐには、損益計算書(PL)で利益の健全性を見極めることが重要です。単に当期純利益が黒字かどうかではなく、本業の稼ぎを示す営業利益が安定して出ているかを確認しましょう。

資産売却のように一時的な特別利益で黒字化している状況は、経営体力が弱っている証拠です。また、在庫が増えると会計上は利益が出やすくなりますが、実際には現金が減り資金繰りを悪化させます。

「営業利益は健全か」「利益に対して在庫が急増していないか」という視点で損益計算書を分析することが、黒字倒産リスクの早期発見につながります。

貸借対照表で自己資本比率は適正か

黒字倒産を防ぐには、貸借対照表(BS)で企業の安全性を確認することが欠かせません。とくに重要なのが、自己資本比率と流動比率です。

自己資本比率が低いと、少しの赤字や資産価値の下落で債務超過に陥りやすく、融資が止まるリスクが高まります。中小企業では、20〜30%を目安となりますが、自社の業種平均との差も踏まえて設定しましょう。

また、流動比率が100%を下回る場合、短期の支払い能力に問題がある危険な状態です。さらに、在庫を除いた当座比率も確認すると、より実態に近い資金余力を把握できます。定期的な貸借対照表のチェックが、黒字倒産のリスクの早期発見につながるでしょう。

キャッシュフロー計算書でキャッシュの動きに問題はないか

キャッシュフロー計算書を確認することで、黒字倒産のリスクを確認できます。とくに重要なのは、本業で現金を生み出せているかを示す営業キャッシュフローです。

たとえば、利益が出ているにもかかわらず営業キャッシュフローがマイナスの場合、売掛金の回収遅れや在庫過多により、資金が滞っている危険な状態に陥っています。

健全な経営の条件は、営業キャッシュフローが安定してプラスであることです。その範囲内で、借入金返済や投資が行えているかも確認しましょう。事業で稼いだ現金で事業を回せているかを厳密に把握することが、黒字倒産を防ぐポイントです。

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黒字倒産した有名企業の事例

経営破綻の新聞

ここでは、実際に黒字倒産した2つの企業の事例を紹介します。

  1. 株式会社アーバンコーポレイション
  2. 江守グループホールディングス株式会社

1. 株式会社アーバンコーポレイション

株式会社アーバンコーポレイションは、不動産流動化事業を軸に急成長し、2008年3月期には過去最高益を計上していました。しかし、サブプライムローン問題を契機に不動産市場が急冷し、保有物件が売却できず資金繰りが急激に悪化します。

契約条件の影響で想定より資金調達が伸びず、開示を巡る問題も含め信用不安が増幅したことで、金融機関が一斉に融資を引き揚げました。

帳簿上は黒字でも、借入金で膨らんだ在庫が資金を圧迫していた典型的な黒字倒産であり、利益だけでなくキャッシュフローとコンプライアンスの重要性を示す事例です。

2. 江守グループホールディングス株式会社

江守ホールディングスは、化学品専門商社として業績を伸ばし、2014年3月期まで売上・利益ともに過去最高を更新していました。しかし、中国事業への過度な依存により、大口取引先からの売掛金回収が滞り、中国子会社の不正が発覚しています。

多額の貸倒引当金を計上した結果、2014年末には債務超過に陥ります。表面上は黒字でも、営業キャッシュフローは5期連続でマイナスとなり、本業で現金を生み出せていませんでした。

借入で資金繰りをつないでいたものの限界を迎え、2015年に民事再生法を申請しました。売上や利益だけでなく、キャッシュフロー管理の重要性を示す典型的な黒字倒産の事例です。

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まとめ

お札と電卓

黒字倒産は、会計上の利益と手元資金の時間のズレによって起こります。売上が伸びていても、回収が遅れたり支払いが先行すれば、現金不足で企業は存続できなくなります。

このリスクを防ぐためには、適切な資金管理が欠かせません。資金繰り表で将来の現金の流れを可視化し、回収・支払サイトの見直しや在庫の適正化に取り組むことが重要です。

通帳残高だけでなくキャッシュフローに目を向け、利益を出して現金を残す経営へ転換しましょう。

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京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。

千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。