会社の資金繰りが行き詰まり、破産を検討せざるを得ない状況に追い込まれると、以下のような不安が出てくるのではないでしょうか。
- 会社が破産すると自宅や預貯金などの個人資産はどうなるのか
- 家族名義の財産は守れるのか
本記事では、会社破産の手続きにおける法人格と個人資産の切り分けや、連帯保証人の責任範囲、差し押さえ対象となる財産や守れる財産について詳しく解説します。
また、会社破産後に検討すべき個人資産を守るための手続きについても紹介しています。
会社破産を終わりではなく、新たな出発と前向きに捉え、自分や家族の生活を守るための道筋を見出しましょう。
会社破産の手続きをすると個人資産はどうなる?
会社破産の手続きをしたからといって、必ずしも経営者の個人資産が失われるわけではありません。ただし、状況によっては個人資産に大きな影響が及ぶこともあります。
たとえば、経営者が会社の借入に対して連帯保証人になっている場合、会社が返済できなくなった借金は経営者個人が返済しなければなりません。
また、自宅や車などの資産を会社の担保に提供していた場合、それらが差し押さえられるおそれもあるでしょう。
中小企業では経営者個人と会社のお金の管理が曖昧になっているケースもあり、破産管財人によって個人資産が調査され換価される可能性もあります。
一方、会社と経営者が法的にきちんと分離されており、個人保証や担保の提供がない場合は、個人資産が守られる可能性は高いでしょう。
会社破産を検討する際は、個人資産に関するリスクを事前に把握し、専門家に相談しながら手続きを進めることが重要です。
会社破産(法人破産)の概要は、以下の記事で詳しく解説しています。
法人破産とはどういう手続き?費用相場やメリット・デメリット、スケジュールを解説
会社破産で個人資産に影響が及ぶ3つのケース
会社破産の手続きをした際、経営者の個人資産に影響が出るのは、主に以下3つのケースです。
それぞれ具体的な内容を見ていきましょう。
1. 連帯保証人になっている
会社の融資を受ける際、経営者自信が連帯保証人になっているケースがあります。連帯保証人になると、会社の負債を返済できなくなったとき、経営者個人が全額返済する義務を負うことになります。
たとえば、銀行から5,000万円の融資を受け経営者が連帯保証人になっていた場合、会社が破産すると同時に、銀行は経営者個人に対して5,000万円全額の返済を直ちに請求できる仕組みです。
たとえ経営者の年収が500万円であっても請求は行なわれ、自宅や預貯金などの個人資産が差し押さえの対象となります。
連帯保証の影響を最小限に抑えるためには、まず自分がどの借入に連帯保証をしているのか、総額はいくらかを把握することが重要です。
2. 自己名義での借入がある
会社の資金繰りが厳しくなると、経営者が個人名義で資金を調達して会社に投入することがあります。たとえ会社のために借りたお金でも個人名義での借入の場合は、経営者自身の債務となります。
具体的な借入は、以下のようなケースです。
- 個人名義でのビジネスローン
- 会社経費の個人クレジットカードでの支払い
- 自宅を担保にした借入金の会社への投入
会社と個人は法律上別人格であるため、会社が破産しても、個人名義の債務は消滅せず、経営者自身が引き続き返済義務を負います。
たとえば、会社の運転資金として個人名義で1,000万円を借り入れ全額会社に投入した場合、会社が破産しても1,000万円は経営者個人の債務として残ります。
会社の破産と同時に個人の債務整理も検討する場合は、すべての借入状況を弁護士に正確に伝え、最適な解決策を見つけることが重要です。
3. みなし所有資産(実質的支配)がある
資産の名義が家族であっても、実質的な所有関係が重視されます。破産手続きでは、誰の名義かよりも誰がお金を出したか、誰が実質的に支配しているかなどが問われます。
破産直前に家族名義に資産移転をした場合、財産隠しと見なされ、破産管財人によって取り消されるかもしれません。
たとえば、破産直前に預金や不動産を配偶者名義に変更したり、経営者が日常的に使用している高級車が家族名義になっていたりするケースは、資産隠しと見なされる可能性があります。
家族の財産を守るためには、資産形成の経緯が明確で正当なものであることを証明することが重要です。たとえば、配偶者が自分の給与で貯めた預金や、親から相続した不動産などは原則として保護されます。
日頃から会社や個人、家族の財産を明確に区別し、それぞれの資金の流れを適切に記録しておくことが大切です。
会社破産で経営者が連帯保証人の場合のリスク
会社破産で経営者が連帯保証人の場合は、以下のリスクが発生する可能性があります。
会社破産(法人破産)による経営者の責任範囲については、以下の記事でも解説しているので参考にしてください。
法人破産の代表者の責任範囲はどこまで?生活への影響や手続きの流れを解説
会社の借金を個人で返済する義務が発生する
経営者が連帯保証人になっていると、会社が破産しても返済義務は消えず、経営者に債務が残ります。
連帯保証契約を交わした時点で、経営者は会社と同等の返済責任を負うことになります。
通常の保証人とは異なり、連帯保証人には「まず会社に請求してください」「会社の財産から先に回収してください」といった、催告の抗弁権や検索の抗弁権が与えられません。
会社が金融機関から数千万円を借入れ、経営者が連帯保証人になっていた場合、会社が倒産すると、債権者は経営者に直接全額の返済を請求できます。
生活が困窮していても給与や預金、不動産が差し押さえられる可能性があり、連帯保証人は実質的に会社の借金をすべて背負う立場となります。
経営者自身に多額の債務が残る場合は早急に弁護士に相談し、自己破産や個人再生、経営者保証ガイドラインの活用など、最適な債務整理の選択肢を検討することが重要です。
個人資産が差し押さえられる可能性がある
連帯保証人としてすぐに返済できない場合、債権者は裁判所を通じて経営者の個人資産を差し押さえることが可能です。
差し押さえの対象には、以下のようなものが該当します。
- 自宅や不動産
- 預貯金
- 自動車
- 保険の解約返戻金
- 株式
さらに給与も4分の1までであれば差し押さえられる可能性があるため、生活費に深刻な影響が出るおそれがあります。
給与自体を差し押さえられるといった最悪の事態を避けるためにも、早めに弁護士に相談し、最適な選択を検討しましょう。弁護士が債権者に受任通知を送れば、一時的に差し押さえを停止させることが可能です。
家族の財産が影響を受ける可能性がある
経営者個人が連帯保証人になっていると、家族の財産が影響を受ける可能性があります。原則として、家族が自分の収入で得た財産や相続した資産は、経営者が破産しても差し押さえの対象にはなりません。
しかし、破産直前に経営者名義の財産を家族名義に変えた場合や、実質的に経営者のお金で購入したものを家族名義にしていた場合なども、差し押さえの対象になる可能性があります。
家族の財産を守るには、日頃から個人と会社の資金を明確に分け、資産の取得経緯を記録することが重要です。また、余計なトラブルを防ぐためにも、家族に連帯保証人を依頼することはできる限り避けたほうがよいでしょう。
万が一、財産移転が詐害行為と見なされると、家族側にも調査や事情聴取が及ぶかもしれません。家族が破産トラブルに巻き込まれる可能性を避けるためにも、早い段階で弁護士に相談して対策を講じることが重要です。
会社破産後に検討すべき個人資産を守るための手続き
会社破産後に個人資産を守るためには、以下のような手続きを検討することが重要です。
それぞれ具体的な内容を確認しましょう。
早期相談と専門家のサポートによる資産保全
資金繰りの悪化を感じた段階で、破産手続きの専門家である弁護士に相談することが、個人資産を守るためのもっとも重要なステップです。
問題が深刻化してからでは、選択肢が狭まるだけでなく、手続きに必要な資金すら確保できなくなるリスクがあります。
弁護士に相談すべき判断基準は、以下のとおりです。
- 数ヶ月にわたる営業赤字の継続
- 資金繰り予測が立てられない状況
- 取引先への支払い遅延
- 税金や社会保険料の滞納
- 金融機関からの期限の利益喪失通知
- 従業員への給与支払いの遅れ など
早期に弁護士に依頼すれば、受任通知により債権者からの取り立てが即時に停止するほか、自己破産や個人再生、経営者保証ガイドラインなど多様な選択肢の中から最適な手段を提案してもらえます。
追い詰められた状況で相談者もいない状況だと、特定の債権者への偏頗弁済や財産隠しなど不適切な対応をしてしまうおそれもあるため、早期に専門家に相談しトラブルを回避しましょう。
自己破産による借金の免除
会社破産後に、連帯保証人である経営者自身の個人資産を守るために、自己破産で借金を免除してもらう方法が有効です。
自己破産をすると、自宅や車などの財産を手放さなければいけませんが、借金の返済義務からは完全に解放されます。
自己破産の流れは、以下のとおりです。
- 弁護士に相談・依頼する
- 裁判所に破産申立てを行う
- 裁判所が破産手続開始を決定する
- 破産管財人が選任され財産を調査する
- 免責審尋を経て免責許可が決定する
自己破産する場合、手元に残せる財産は自由財産と呼ばれる限られたものだけで、具体的には、99万円以下の現金や生活に必要な家財道具などが対象です。自宅や車などの高額資産は、原則処分されます。
そのため、自己破産は借金が資産を大幅に上回り、将来的にも返済の見込みがない場合の最後の手段として検討すべきでしょう。
個人再生による住宅の保護
個人資産の中でも自宅だけは守りたいという方は、個人再生による債務整理が有効です。
個人再生は、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)により債務を軽減しながら、住宅ローンを従来通り支払い続けることが可能です。
個人再生を活用する場合は、継続的かつ安定的な収入が条件となります。そのため、会社破産の手続きをしても、再就職や新たな事業で安定した収入を得られる見込みがなければいけません。
また、清算価値保障原則という制約があり、返済総額は保有資産の総価値以上である必要があります。
たとえば、自宅の市場価値が5,000万円で住宅ローン残高が2,000万円の場合、純資産価値は3,000万円となるため、個人再生での返済総額が3,000万円を下回ることはできません。
自宅の純資産価値が高いほど、返済額も高くなるため、現実的に返済可能かどうか慎重に判断することが重要です。
任意整理による返済条件の緩和
任意整理とは、裁判所を介さずに債権者と直接交渉し、将来の利息カットや返済期間の延長などを図る手続きです。
資産を手放す必要がなく、官報にも掲載されないというメリットはありますが、会社破産に伴う多額の連帯保証債務がある場合は活用が難しいかもしれません。
なぜなら、任意整理では基本的に元本自体は減額されず、将来利息のカットが主な譲歩となります。連帯保証債務のような高額債務の場合、元本を減らさなければ、返済は現実的に困難なケースがほとんどです。
債務整理は連帯保証債務よりも、経営者個人のクレジットカードやキャッシング債務など、比較的小規模な消費者金融系の債務整理に適しています。
連帯保証債務については、自己破産や個人再生、経営者保証ガイドラインなど、元本自体を減額できる手段を優先的に検討したほうがよいでしょう。
経営者保証に関するガイドラインの活用
2014年に策定された「経営者保証に関するガイドライン」は、誠実な経営者が再チャレンジできる環境を整備するための画期的なルールです。
ガイドラインを活用すれば、自己破産よりも多くの資産を手元に残しながら保証債務を整理でき、さらに信用情報にも傷がつかないという大きなメリットがあります。
具体的には、自由財産(99万円)を大幅に上回る資産の保持や、華美でない自宅の維持や一定期間の生計費(100万円〜360万円程度)の確保も検討されます。
また信用情報機関に事故情報が登録されないため、将来的な再起業や融資がスムーズになるのも魅力です。
ただし、ガイドラインの利用には、以下のような厳格な要件があります。
- 法人と個人の資産・経理が明確に分離されている
- 財務状況を適時適切に開示している
- 保証債務の整理について経済合理性がある
経営者保証に関するガイドラインは、金融機関との交渉が基本となるため、取引先への買掛金やリース債務など、金融機関以外の債務には適用されない点に注意が必要です。
会社破産の手続きと個人資産に関するよくある質問
会社破産の手続きと個人資産に関するよくある質問と回答を見ていきましょう。
会社破産を検討している方が事前に把握しておくべき内容なので、ぜひご覧ください。
Q. 会社破産と個人破産は同時にできる?
A. 会社破産と個人破産は同時に申し立てることが可能です。中小企業では、会社破産と同時に経営者自身の破産も申し立てるケースもあります。
同時に申し立てることで、以下のようなメリットがあります。
- 裁判所への予納金や弁護士費用を一本化できる
- 調査や書類作成を一元化できる
- 一体的な処理により財産隠しの疑いを防げる
会社破産だけでなく個人破産も必要な場合は、同時に申し立てることで費用や時間、労力などを大幅に軽減できるでしょう。
なお、裁判所も同時に申し立てることを好む傾向があり、場合によっては同時でなければ受け付けない場合もあります。
Q. 会社破産すると何が差し押さえられる?
A. 会社破産すると、経営者自身の資産も差し押さえられるか不安な方もいるでしょう。法律上は、会社と経営者は別人格のため、経営者個人の資産が差し押さえられることはありません。
しかし、中小企業の場合は、経営者自身が会社の借入金の連帯保証人になっているため、経営者個人の資産が差し押さえられるリスクがあります。
差し押さえられる主な個人資産は、以下のとおりです。
- 自宅をはじめとした不動産
- 預貯金や給与(一部)
- 自動車
- 生命保険の解約返戻金
- 株式や投資信託など
基本的には、価値のある資産はほとんどが差し押さえの対象になります。
ただし、自己破産をした場合は、99万円以下の現金や生活に必要な家財道具などは手元に残せる可能性があります。
Q. 会社の代表が自己破産するとどうなる?
A. 会社の代表者が自己破産すると、まず、代表取締役をはじめとした会社役員の地位は自動的に失われます。
なぜなら民法の規定により、自己破産すると会社との委任契約が終了するためです。ただし、自己破産後に再び取締役に就任することは法的には可能です。
破産手続中は弁護士や司法書士、公認会計士や税理士など特定の職業に就くことはできなくなりますが、制限は一時的なもので、免責許可決定が確定すれば解除されます。
自己破産によるもっとも長期的な影響は、信用情報に記録される自己情報です。自己破産すると、基本的には5年〜7年間は、新たな借入やクレジットカードの作成が極めて困難になります。
新たな借入ができない影響は、再起業する方にとっては大きな障壁です。しかし、自己破産は人生の終わりではなく、過大な債務から解放されて再出発するための法的手段です。
エンジェル投資家からの出資や日本政策金融公庫の再挑戦支援資金など、代替的な資金調達方法を模索することで再起業を目指せるでしょう。
まとめ
会社破産の手続きをする際は、法人と個人資産を明確に区別することが必要です。ただし、法人の連帯保証人になっている場合は個人資産へのリスクが生じるため、適切な対応が求められます。
たとえば、自己破産や個人再生、任意整理や経営者保証ガイドラインなど、状況に応じた選択肢があります。
最適な選択をするためには、早めに専門家に相談しながら、個人資産を守る対策が重要です。
会社破産は終わりではなく新たな出発点のため、適切な手続きを選ぶことで、必要な資産を守りながら再起への道を開けるでしょう。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

