法人破産

法人破産の代表者の責任範囲はどこまで?生活への影響や手続きの流れを解説 | 千代田中央法律事務所

考え事をする作業着の男性 法人破産

法人破産の手続きに臨む際、代表者はなかなか不安が尽きないものでしょう。従業員の生活に影響を与えたり、自身も苦しい生活を強いられたりと、精神的に疲弊することも少なくありません。

なかには「会社の代表としての責任は重たいのではないか」「経営者としてどう責任を取るべきか」といった悩みを持つ人もいるでしょう。

この記事では、法人破産における代表者への責任について解説します。法人破産の不安を解消したい人は、参考にしてください。

>>法人破産に強い千代田中央法律事務所について詳しく見る

法人破産時の代表者の責任

電卓に座る男性

法人は賛辞の代表者の責任は、どの範囲までおよぶのでしょうか。連帯保証人の場合や法人から借入している場合など、複数のケースに分けて解説していきます。

基本的に法的責任はない

法人破産の場合、原則として代表者個人は法人の債務に対して法的責任を負いません。「法人格の独立性」という法律上の原則があるためです。

会社と代表者は法的に別人格とされており、会社の債務は代表者ではなく会社の負債として扱われます。

たとえば、会社が3,000万円の負債を抱えて破産した場合でも、会社の財産で返済し切れない残りの債務は、法人の消滅とともに基本的には消えます。

代表者に特別な事情がなければ、代表者個人の預貯金や自宅などが債権者から差し押さえられることはありません。

ただし、この原則は実務上限定的な点も理解しておく必要があります。代表者は会社の連帯保証人になっていたり、会社に対する義務違反があったりするため、実質的に個人責任を負うケースは少なくありません。

会社の経営が悪化した場合は、早めに弁護士などの専門家に相談し、代表者個人としてのリスクを正確に把握しましょう。

連帯保証人の場合

代表者が会社の債務に対して連帯保証人となっている場合、法人が破産しても代表者個人は保証債務の返済義務を負います。中小企業が金融機関から融資を受ける際、代表者が連帯保証人となるのは一般的なことです。

連帯保証人には、以下のような通常の保証人が持つ権利がありません。

催告の抗弁権債務の支払いを債務者に請求してほしいと主張する権利
検索の抗弁権債務者に支払能力がある場合は、まず債務者の財産から回収してほしいと主張する権利
分別の利益債務を保証人の人数で分割して負担する権利

よって、会社の破産後、代表者個人は直ちに返済を求められるのです。

損害賠償責任が発生する場合

代表者が会社や第三者に損害を与えた場合、個人として損害賠償責任を負う可能性があります。

取締役である代表者は、民法第644条にもとづく「善良な管理者としての注意義務」と、会社法第355条にもとづく「忠実義務」を負っているためです。

会社に対する損害賠償責任(会社法第423条)は、代表者が不適切な経営判断や法令違反によって会社に損害を与えた場合に発生します。

法人が破産すると、損害賠償請求権は破産管財人と呼ばれる破産後の財産管理人に移るため、権利を行使される可能性があります。

また、第三者に対する損害賠償責任(会社法第429条)は、代表者の悪意または重大な過失により第三者に損害を与えた場合に発生するものです。

日頃から意思決定の過程や根拠を記録し、疑わしい取引については専門家の意見を求めるなど、注意義務を果たしておくのが重要です。

税の滞納がある場合

法人の税金滞納に関して、原則として代表者個人が納税義務を負うことはありません。しかし、源泉所得税などで納税義務が発生する場合があります。

法人格の独立性により、法人税や消費税などの法人自体の税金は、法人が破産して消滅すれば納税義務も原則なくなります。

しかし、従業員の給与から天引きする所得税である源泉所得税については、代表者に第二次納税義務が生じる可能性があるので注意が必要です。

源泉徴収した税金は実質的に従業員の財産であり、会社はそれを預かっているという性質のものだからです。

源泉所得税の納付は最優先事項として取り扱い、資金繰りが厳しくなった場合でも、他の用途に使うのは避けましょう。

法人から借入している場合

代表者が会社から借入をしている場合、法人破産後も代表者は借入金を返済しなければなりません。

代表者個人が会社から借り入れた金銭は、会社の資産である「貸付金債権」として扱われ、破産時に債権者の配当に充当されるべきものだからです。

会社と代表者は法的に別人格であるため、たとえ代表者自身が借りたお金であっても、会社破産後に破産管財人から返済を求められる債務となります。

金額を返済できない場合、代表者個人も自己破産を検討する必要があります。会社の資金と個人の資金は明確に区別し、安易に会社から借入するのは避けましょう。

財産隠しをした場合

法人破産の過程で会社の財産を隠したり、特定の債権者だけに優先的に弁済したりすると、代表者個人の免責が認められなくなる可能性があります。

破産手続きは債権者平等の原則に基づき、公正かつ透明に行われるべきものだからです。

こうした行為があった場合、破産管財人は否認権を行使して財産の取り戻しを図ります。また、代表者個人も自己破産を申し立てている場合には、免責不許可事由に該当する可能性があり、債務が消滅しないケースがあります。

自己判断で資産処分や特定債権者への返済を行うのは避けましょう。

刑事罰を受ける場合

法人破産の手続きで代表者が悪質な行為を行った場合、刑事罰を受ける可能性があります。法人破産自体は民事手続きであり、経営に失敗しただけでは刑事罰の対象にはなりません。

しかし、破産手続きに関連して特定の違法行為を行った場合は別です。

主な行為は以下のとおりです。

  • 詐欺破産罪(破産法第265条):債権者を害する目的で財産を隠匿・損壊したり、債務の負担を仮装したりする行為を処罰するもの
  • 粉飾決算、横領、背任などの犯罪行為

法人経営が厳しくなった場合でも、違法行為を働いてはいけません。早期に専門家に相談し、合法的な範囲で対応策を検討しましょう。

>>法人破産に強い千代田中央法律事務所について詳しく見る

法人破産時は代表者個人の破産も必要?

自己破産

法人破産をする際は、あわせて代表者個人も自己破産が必要になるケースがあります。法人破産と個人破産を同時にするべきシーンについて解説します。

連帯保証人は個人破産が必要な場合あり

代表者が会社の債務に対して連帯保証人となっている場合、法人が破産しても連帯保証債務は消滅しません。連帯保証人として、金融機関は代表者個人に対して債務全額の返済を求めることが可能です。

会社の債務を代表者個人で賄い切れない場合、個人破産を検討しなければなりません。

連帯保証人には、会社の返済能力に関わらず直ちに全額の支払義務が生じます。債務の支払いが難しく手立てがない場合は、弁護士に相談して、会社・個人の同時破産について相談してみましょう。

損害賠償責任があるなら必要な可能性あり

代表者が会社経営において会社や第三者に損害を与えた場合、個人として損害賠償責任を負うことがあります。この賠償額が代表者個人の返済能力を超えると、個人破産が必要です。

取締役である代表者は、民法第644条にもとづく「善良な管理者としての注意義務」と会社法第355条にもとづく「忠実義務」を負っています。

会社財産の私的流用や無謀な投資、粉飾決算などの行為があった場合、会社に対する損害賠償責任(会社法第423条)や第三者に対する損害賠償責任(会社法第429条)が生じる可能性があります。

損害賠償責任の有無と範囲は「役員責任査定」で判断されるのが一般的です。法令違反を犯してしまった場合は早期に弁護士に相談し、破産管財人の調査に誠実に協力してください。

個人の借入額が大きいときは必要な可能性あり

代表者個人の借入金が返済不能なほど大きい場合も、法人破産と同時に個人破産の検討が必要です。とくに「役員貸付金」として会社から借入がある場合、注意が必要です。

代表者が会社から借入している金銭は会社の資産として扱われます。そのため、法人が破産すると、貸付金債権が破産管財人の管理下となり、代表者個人に返済を求めてきます。

また、会社の運転資金のために代表者が個人的に消費者金融から借入していた場合も、返済能力を超えていれば債務整理が必要です。

中小企業では会社と代表者の財産が混同していることが多く、こうした問題が表面化しやすいです。会社資金と個人資金は明確に区別し、安易な借入は避けましょう。

すでに借入がある場合は、早期に返済するか、法人破産を検討する際に弁護士に相談してみましょう。

>>法人破産に強い千代田中央法律事務所について詳しく見る

法人破産と代表者の個人破産を同時にするメリット

女性弁護士

法人破産と代表者の個人破産を同時にするメリットは、以下の3つです。

  1. 債務を支払う必要がなくなる
  2. 手続きを一気に済ませられる
  3. 再起への準備ができる

同時に破産手続きをすれば、債務から解放され、再帰への準備ができます。それぞれの項目を解説していきます。

1. 債務を支払う必要がなくなる

法人破産と代表者個人の破産を同時に行うと、会社の債務と代表者個人の債務から一度に解放され、負債がなくなります。

法人が破産しても、代表者が連帯保証人となっている債務は消滅しません。たとえば、会社の銀行借入3,000万円に連帯保証している代表者が個人資産500万円しか持っていない場合、会社破産後も2,500万円の保証債務が残ります。

この状況で個人破産もして裁判所から「免責許可決定」を得られれば、自由財産を除く資産は処分されますが、残りの債務からは法的に解放されるのです。

また、会社から借りていた資金や、会社に対する損害賠償責任なども免責の対象となる可能性があります。

ただし、税金や詐欺的な行為による損害賠償などは免責されないため、手続きの際は弁護士に詳しく相談しましょう。

2. 手続きを一気に済ませられる

法人破産と代表者個人の破産を同時に進めれば、手続きが効率化でき、手続きにかかる時間を短縮できます。また、費用の削減も可能です。

たとえば、裁判所に納める予納金は同時申立てでは法人20万円、個人は約2万円程度に抑えられるケースがあります。同一の破産管財人が両方の手続きを担当することで、調査や報告の効率化が図れるためです。

また、弁護士費用もセット割引を適用している法律事務所が多く、別々に依頼するより総額が安くなることがあります。

さらに、同一の弁護士と破産管財人が両方の手続きを並行して進めるため、別々に行うより迅速に進む傾向があります。多くの必要書類が共通するため、準備の手間も軽減されるでしょう。

ただし、地域や裁判所によって同時申立ての取り扱いが異なる場合がありますので、地元の弁護士に相談してみましょう。

3. 再起への準備ができる

法人破産と個人破産を同時に行うと精神的な負担が軽減され、将来への明確な見通しを持って再出発の準備を進められます。

会社の破産と個人の破産を別々に進めると、一方の手続きが終わっても他方の手続きが続くため、どちらも終了するまでは精神的に落ち着きません。

同時破産をしてすべての債務問題を一度に解決することで、債権者からの取り立てや督促が止まり不安から解放されます。

また、破産による制限期間も同じ時期にすることができ、制限解除後の生活や事業の計画が立てやすくなります。免責後の再就職や再起業に向けた準備を、債務の心配なく進められるのです。

同時破産は「終わり」ではなく「新たな始まり」の機会と捉えましょう。

>>法人破産に強い千代田中央法律事務所について詳しく見る

法人破産と代表者の個人破産を同時にするデメリット

驚いて口を押える男性

法人破産と代表者の個人破産を同時にするデメリットは、以下の3つです。

  1. それぞれの破産ごとに費用がかかる
  2. 個人の信用情報に傷がつく
  3. 同時破産が認められない場合がある

 同時に破産する際は、費用の嵩みや信用への影響を考慮する必要があります。デメリットを詳しく解説します。

1. それぞれの破産ごとに費用がかかる

法人破産と個人破産を同時に行う場合、それぞれに対応する費用が必要です。

破産手続きには、裁判所に納める予納金、弁護士費用、書類取得費用などの実費が発生します。法人破産では予納金が少額管財事件で約20万円、個人破産では同時申立ての場合でも官報公告費用として約2万円が必要です。

また、弁護士費用については、法人破産で約50万円~100万円、個人破産で約30万円~50万円程度が相場とされており、両方あわせると約80万円~150万円の費用負担になります。

同時申立てによる「セット割引」があったとしても、総額でかかる金額は決して少ないものではありません。とくに中小企業の代表者にとって、すでに経営が苦しい状況でこうしたの費用を捻出するのは大きな負担となります。

法テラス(日本司法支援センター)を利用すれば、個人破産の弁護士費用の立替制度が利用できる場合もあるため、早めに弁護士に相談して費用面の相談をしておくとよいでしょう。

2. 個人の信用情報に傷がつく

代表者が個人破産を行うと、個人の信用情報機関に「事故情報」として登録され、長期間にわたって金融取引の制約を受けます。

信用情報への登録期間は、信用情報機関によって異なります。

  • CICとJICC:債務整理後5年間
  • 全国銀行個人信用情報センター(KSC):破産手続開始決定の日から7年間

この期間中は、住宅ローンのような大きな借入はほぼ不可能となるほか、クレジットカードの作成や分割払いの利用、携帯電話の分割契約などもしにくくなるため、注意が必要です。

また、破産の事実は官報にも掲載され、公的な記録として残ります。法人破産のみの場合は、基本的に代表者個人の信用情報には直接の影響を与えません。

しかし、個人破産を同時に行うことで、自身の信用に影響がおよんでしまいます。

金融取引ができない期間を「再起のための準備期間」と前向きに捉え、計画的に行動するのが重要です。

3. 同時破産が認められない場合がある

法人破産と個人破産を同時に申し立てても、ケースによっては裁判所が同時処理を認めず、別々の手続きを要求される場合があります。

同時破産が認められない可能性がある主なケースは以下のとおりです。

  • 代表者が会社の財産を私的に流用した場合
  • 破産管財人が代表者個人へ損害賠償請求をする可能性がある場合
  • 法人と個人の債権者が大きく異なる場合

代表者個人が他の会社の代表も務めており、複数の法人間での複雑な資金移動がある場合

法人と代表者の間の財産関係が複雑で調査に時間がかかると予想される場合は、利益相反の観点から別々の破産管財人が選任される場合もあります。

また、管轄地域や裁判所によっても、同時破産の取り扱いが異なるケースもあるようです。

弁護士への相談時に法人と個人の関係性や債務状況を詳細に説明し、同時破産の可能性を確認するようにしましょう。

>>法人破産に強い千代田中央法律事務所について詳しく見る

法人破産の手続きの流れ

相談を受ける弁護士

法人破産の大まかな流れは、以下のとおりです。

  • 弁護士へ相談する
  • 必要書類を作成する
  • 裁判所への破産申立手続きをする
  • 破産管財人が財産評価と換価をする
  • 債権者集会で債権者に状況を説明する
  • 債権者へ配当が渡る

まずは破産実務に強い弁護士に相談し、手続きを依頼しましょう。法人破産は複雑な法的手続きであり、ひとりで進めるのは難しいものです。

弁護士に手続きを代行してもらい、自身は従業員への対応や事業の再起などに集中しましょう。弁護士に依頼することで債権者に受任通知が送られ、取り立てが止まり精神的に安心できるのもメリットです。

その後は、必要書類の作成に移ります。法人破産の手続きではさまざまな書類が必要ですが、作成が必要な「破産手続開始申立書」や「債権者一覧表」などは弁護士がつくってくれます。

代表者は決算書や契約書の写しなど、自身で用意できる書類を収集し、弁護士に提供しましょう。書類ができあがったら、裁判所へ提出します。裁判所の審査を経て破産手続開始決定がなされると、正式に破産手続きが始まります。

手続きの開始後は、会社の財産を管理・換価する「破産管財人」により、会社の資産が現金化されていきます。また、債権者へ現状を説明する「債権者集会」を開いて、換価状況や配当の見通しなどを債権者に知らせましょう。

債権者集会には、代表者も出席しなければなりません。債権者への説明や質問への回答などをする必要があるため、事前に弁護士と打ち合わせしておくとよいです。

換価が完了したら、債権者へ配当が渡ります。債権には、以下のように優先順位があります。

  1. 財団債権(破産手続き費用、破産管財人の報酬、破産手続き開始後の労働債権など)
  2. 優先的破産債権(労働者の未払賃金、租税債権など)
  3.  一般破産債権(商取引債権、金融機関からの借入金など)
  4. 劣後的破産債権(利息、遅延損害金など)

会社の資産の大きさや換価後の金額によっては、一般の債権者への配当がない場合もあります。

配当が完了すると、破産手続きは終了です。法人登記が閉鎖され、法人は法的に消滅します。

>>法人破産に強い千代田中央法律事務所について詳しく見る

まとめ

手をかざす男性のイメージ

法人破産においては、代表者に明確な原因がなければ法的責任を負いません。しかし、会社の連帯保証人になっている場合や法人からの借入、税の滞納、財産隠しなどがある場合は、法的責任を負わなければなりません。

法的責任を負う際は、個人で債務を返済しなければならず、生活もままならなくなります。弁護士に相談して、法人・個人の同時破産を検討しましょう。

千代田中央法律事務所では、法人破産に関する案件を複数取り扱ってきています。同時破産に関することも、初回無料で相談を受け付けています。会社の破産により法的責任を負う可能性がある人は、一度相談してみてください。

>>法人破産に強い千代田中央法律事務所について詳しく見る

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。

千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。