「会社破産の手続きには、一体どれくらいの期間がかかるのだろう……」このような疑問をお持ちの方は多いでしょう。
従業員や取引先への説明、そしてご自身の再起のためにも、会社破産の手続き期間は最大の関心事ではないでしょうか。
この記事では、会社破産の手続きについて、その流れと目安期間を解説します。
会社破産の手続き期間の全体像を把握することで、漠然とした不安を軽減し、次の具体的な行動計画を立てるための一歩を踏み出せるはずです。
会社の資金繰りが限界で会社破産もやむを得ないとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
会社の破産(法人破産)とは
会社の破産(法人破産)とは、法的手段を用いて借金をなくし、会社を消滅させる手続きのことを指します。
具体的には、裁判所の監督のもと会社の全財産を現金化し、債権者へ公平に分配する手続きです。この手続きが完了すると、会社は消滅することになります。
会社破産は、単に経営が苦しいという理由だけでは認められません。破産法が定める以下の破産手続開始原因が必要です。
- 支払不能:弁済期にある債務を継続的かつ一般的に支払う能力がない状態。一時的な資金不足は含みません
- 債務超過:会社の全財産を売却しても、すべての債務を完済できない状態
いずれかに該当する会社は、破産手続の申し立てを検討できます。
会社の破産(法人破産)の流れ
会社の破産手続は、経営継続が不可能と判断された時点から会社が法的に消滅するまで、以下の段階で進められます。
- 弁護士への相談:会社の破産を検討したら、まずは破産実務に詳しい弁護士に相談し、破産の適切性や手続きの全体像について具体的な助言を得ます。
- 申立て書類の準備:弁護士に依頼後、裁判所に提出する財産目録や債権者リスト、決算書などの必要書類の収集・作成を進めます。
- 破産手続開始の申立て:必要書類の準備が整い次第、弁護士が代理人として裁判所に破産手続開始の申立てをおこないます。
- 破産手続開始決定と破産管財人の選任:裁判所が申立て内容を審査し、破産原因を認めると破産手続開始決定が出されるのと同時に会社の財産を管理・処分する破産管財人(通常は弁護士)が選任されます。
- 財産の調査・現金化と配当準備:破産管財人が主導し、会社の財産を調査して現金化を進め、債権者への公平な配当準備をおこないます。
- 手続きの終結または廃止:債権者への配当が完了した後、または配当すべき財産がないと判断された場合、裁判所によって手続きは終結または廃止され、会社は法人格を失い法的に消滅します。
全体の流れを把握しておくことで、よりスムーズな清算手続きがおこなえるでしょう。
会社の破産手続きにかかる期間
会社の破産手続にかかる期間の目安と内訳を解説します。先々のスケジュールをイメージしておくことは、不安軽減と今後の準備を進めるうえで重要です。
以下で詳しく解説します。
会社の破産手続の目安期間
会社が破産する場合、手続き全体にはおよそ6か月~2年程度を要します。これは個々の状況によって異なるため、期間には幅があります。
会社の規模が小さく、財産が少なく、法的な争いもないケースでは比較的早く完了する可能性が高いでしょう。
とくに費用や手続きが簡略化された少額管財事件の場合、より短期間で終結する傾向にあります。
一方、会社が大きい場合や、多数の債権者がいて利害関係が複雑なケースでは、2年以上の長期にわたる可能性があります。
これらはあくまで目安となるため、実際にかかる時間を正確に予測することは難しいでしょう。
申立て準備にかかる期間
裁判所へ破産を申し立てる前の準備期間は、通常1か月~3か月程度です。
準備期間におこなう主な内容は、弁護士との打ち合わせや会社の財産状況の確認、資料の作成・提出などです。
資料不足や会計処理の遅延があると、準備期間が長引くことになります。
裁判所手続きにかかる期間
裁判所に破産申立て後、法的手続きが開始され最終的に会社が消滅するまでの期間を、裁判所手続期間と呼びます。
事案の複雑さや手続きの種類で大きく異なりますが、裁判所手続期間の目安は3か月~1年以上です。
ここまでの流れと期間の目安を以下の表にまとめました。
| 段階 | 期間の目安 |
|---|---|
| 破産手続の申し立て(弁護士との初期相談) | 通常1~2か月 |
| 書類などの準備期間 | 通常1~3か月 |
| 財産調査・現金化・配当準備 | 3〜6か月資産が多い場合は長期化する |
| 配当(分配)・清算 | 3~1年以上資産が多い場合は長期化する |
| ※少額管財事件の場合 | 申立てから3〜6か月程度で終結 |
少額管財事件は比較的短期間で終わるメリットがありますが、債権者や債権額の多い法人の破産は原則として管財事件として扱われます。
管財事件では、破産管財人が会社の財産を調査・管理・現金化し、債権者へ公平に分配することになります。
この作業には時間がかかるため、ある程度長期戦になることは覚悟しておきましょう。
会社の破産手続を長引かせる要因
会社の破産手続が平均より長い期間を要する主な3つの要因を解説します。
以下で詳しくチェックしていきましょう。
1. 会社の資産状況
破産手続の期間を左右する大きな要因のひとつが、会社の資産状況です。
現金や預貯金、有価証券などは速やかに処理できますが、工場・店舗・土地などの不動産は、買い手探しや法的手続きに数か月以上かかる可能性もあります。
また、特殊な機械設備や知的財産権などの資産の場合は、評価や売却が困難な場合もあります。
さらに、未回収の売掛金が多い場合も、回収に時間と労力がかかるため期間が長引く要因となるでしょう。
2. 負債額や債権者の数
一般的に、負債額が大きく債権者の数が多いほど、手続きは複雑になり期間も長引きます。
債権者が多数の場合、それぞれに通知を出す必要があり、債権届出内容の確認に時間と手間がかかるためです。
負債総額が大きい場合は多くの財産を調査・回収する必要が生じ、配当計画の策定も複雑になります。
3. 訴訟をかかえているか
会社が破産手続き申立て時点で訴訟に関わっているかどうか、手続き中に新たに訴訟が必要となるかも、期間を大きく左右します。
会社が訴訟当事者の場合、訴訟が終結するまでは破産手続自体を完了できないケースが多くみられます。
すでに何らかの訴訟やトラブルを抱えている場合は、破産手続に影響することを念頭においておきましょう。
会社の破産手続期間を短縮するポイント
会社の破産手続期間を短縮するために、経営者ができることや心がけるべきポイントを3つ解説します。
経営者が適切な行動をすることで、不必要な長期化を避けられるでしょう。
1. 早い段階で弁護士に相談する
法人の破産手続を円滑に進めるためには、できる限り早い段階で破産実務に精通した弁護士に相談することが重要です。
弁護士は現状を正確に把握し、破産申立てに向けた最適な準備計画とスケジュールを立ててくれます。
これにより、無駄な時間を避け、誤った判断で事態を複雑化させるリスクを大幅に減らせるでしょう。
2. 必要な資料を迅速に提供する
破産手続の期間短縮には、弁護士や裁判所、破産管財人から求められるさまざまな資料を正確かつ迅速に提出することが不可欠です。
資料の提出遅延は、手続き全体の遅延に直結することを理解しておきましょう。
弁護士は提供された資料にもとづき、会社の財産や負債状況を把握し、裁判所へ提出する破産申立書や報告書を作成します。
資料不足や誤りがあると、弁護士が事実確認に時間を取られてしまうため、注意しましょう。
3. 破産管財人と適切に連携する
破産管財人が選任された後は、管財人の調査や財産管理業務に対し、経営者として誠実かつ全面的に協力しましょう。
管財人との良好な関係を構築し、適切に連携していくことが、手続きの期間短縮につながります。
経営者は会社の内部事情や財産状況などの情報を提供し、具体的な説明をおこなう法的義務があります。
会社の破産手続期間中に注意する行動
会社の破産手続を進めるにあたり、経営者として注意すべき行動を5つ紹介します。
これらの行動は破産手続の公正さを損なうだけでなく、経営者個人の法的責任問題に発展するおそれもあるため、事前に確認しておきましょう。
1. 会社の財産を不当に減少させてはいけない
経営状態悪化により破産を考え始めたときから、会社の財産を正当な理由なく不必要に減少させる行為は避けましょう。
具体的には、会社の資金で個人的な贅沢品を購入したり、会社の資産を市場価格よりも著しく低い価格で売却したりする行為があげられます。
これらは故意に債権者全体の利益を害する行為とみなされ、詐欺破産罪として刑事罰の対象となる可能性があります。
参照:破産法 265条1項
2. 会社名義の資産を他者に移転してはいけない
会社の破産が避けられない状況になったからといって、会社名義の資産を、正当な価格よりも著しく安い金額や無償で移転する行為はおこなってはいけません。
具体的には、不動産や車といった会社の資産を経営者自身や家族、または実質的に経営者がコントロールする別の会社などの名義に変更する行為です。
これらの行動は資産隠しとみなされ、重大な問題となります。
不適切な資産移転が判明した場合、破産管財人の否認権行使により効力が否定され、資産は取り戻されます。
悪質な隠蔽と判断された場合、詐欺破産罪に該当し刑事罰が科される可能性もあるので注意しましょう。
参照:破産法 265条1項
3. 一部の債権者へ偏って返済できない
会社がすでに借金返済が困難な支払不能状態に陥った後や、破産申立てを考え始めた段階で、特定の債権者だけに優先的に弁済をおこなうことは禁じられています。
これは、偏頗弁済(へんぱべんさい)と呼ばれ、他の多くの債権者への支払いが滞っているにもかかわらず、一部を優先して返済する行為のことです。
具体的には、親族や友人からの借入金や、特定の取引先への買掛金だけを勝手に優先し、返済する行為です。
このような行為は、破産手続の原則である「債権者平等の原則」に反するため、おこなわないようにしましょう。
4. 返済困難な新たな資金調達は避ける
会社の経営状態が悪化し、破産を避けられない状況であるにもかかわらず、その事実を隠して新たに資金を調達する行為は避けましょう。
事業の実態を偽って融資を申し込んだり、個人的にお金を借り入れたりすることは、後のトラブルにつながりかねません。
また、会社のクレジットカードを使用して高価な商品を購入し、それを現金化して当座の資金に充てようとする行為も同様に問題です。
破産を前提とした、返せる見込みのない借金行為は、詐欺罪に問われる可能性もあるので注意しましょう。
5. 関係者に対して虚偽の報告をおこなわない
破産手続の準備開始から完了までの全期間を通じて、弁護士や裁判所、破産管財人はもちろん、すべての関係者に対して虚偽の報告をおこなわないようにしましょう。
会社の財産状況や破産に至った経緯などについて、意図的に事実と異なる報告や説明をすることは避けるべきです。
このような行為は、破産手続の公正かつ円滑な進行を妨げ、信頼関係を損なう原因になります。
まとめ
会社の破産手続は複雑で、多岐にわたる知識と適切な対応が求められます。
しかし、専門家である弁護士と協力することで、期間を短縮しスムーズに再出発への道を歩むことが可能です。
会社の破産手続にかかる時間を少しでも短くするためには、事前にしっかり準備をしておくことや、経営者の適切な対応が求められます。
できるだけ短期間で手続きを終えることで、従業員や経営者自身も次のステップに進みやすくなるでしょう。
もし現在、会社の経営に関して不安を抱えているのであれば、専門家である弁護士に相談することを検討してみてください。
多くの法律事務所では、無料相談を受け付けているので、一度利用してみてはいかがでしょうか。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

