借金の返済が苦しくなり生活がままならない場合は、自己破産を検討するのも選択肢のひとつです。しかし、自己破産手続きをすべて自分でするのは、相応の労力がかかります。こうした手続きは、専門家に任せたほうが自身の生活を立て直しやすいでしょう。
自己破産手続きの依頼先としては、弁護士が挙げられます。弁護士に自己破産手続きを依頼すると、どういったメリットがあるのでしょうか。
この記事では、弁護士に自己破産手続きを依頼するメリットや費用相場、手続きの流れなどを解説します。
自己破産とは

自己破産とは、多額の借金を抱え返済の見込みが立たない状態にある人が、裁判所に申立てを行い、借金の支払い義務を法的に免除してもらえる、国の救済制度です。多重債務に苦しむ人が経済的な再出発を図るための正当な権利といえます。
自己破産の手続きには、以下の2種類があります。
- 同時廃止:資産がほとんどない場合
- 管財事件:一定の資産がある場合
どちらの手続きになるかは裁判所の運用基準によりますが、いずれの方式でも複雑な書類作成や裁判官との面接が必要です。自分ひとりでは手に負えない可能性もあるため、手続きの専門家である弁護士を頼ることを検討しましょう。
自己破産についてより詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
自己破産とは?手続きの進め方や条件、費用相場、注意点を解説 | 千代田中央法律事務所
自己破産の手続きを弁護士に依頼するメリット

自己破産の手続きを弁護士に依頼する主なメリットは以下の3点です。
とくに、返済の負担がなくなることや各種対応を一任できることが強みです。
1. 受任通知で直接の督促が制限される
弁護士に自己破産の手続きを依頼すると、すぐに債権者へ受任通知(介入通知)が送付されます。受任通知が届くと、貸金業者などでは法律上、本人への直接の督促が制限され、それ以外の債権者でも窓口が弁護士に切り替わり本人への連絡が減るのが一般的です。
督促・取り立てのストレスから精神的に解放される点は、今後の生活再建を考えるうえでもメリットといえるでしょう。
また、受任通知の送付後は、申立て準備のために支払いをいったん止める判断がしやすくなり、費用の積み立てに回すケースが多いです(具体的な対応は弁護士の指示に従ってください)。督促ストップで生活基盤を安定させ、あらためて破産手続きに必要な費用を整理しましょう。
2. 裁判所での手続きや対応を一任できる
自己破産は、裁判所に借金の支払いができない状態であることを認めてもらい、免責してもらうための手続きです。そのため、過去数年分の通帳履歴の精査や資産目録の作成など、膨大で緻密な書類作成が求められます。
申立書に不備や虚偽の記載があると、借金が残ってしまうリスクがありますが、弁護士であれば一連の手続きを専門家の視点で代行してくれるため、安心です。
また、管財事件になった場合の破産管財人との面談や、裁判官による免責審尋(面接)にも、代理人として同席し、サポートをしてくれます。 東京地方裁判所など一部の裁判所では、弁護士が代理人についている案件に限り「即日面接」という運用が適用され、手続き期間が大幅に短縮されるケースもあります。
3. 少額管財制度で費用を抑えられる
一定以上の資産がある場合や、浪費・ギャンブルが原因の破産といった免責不許可事由があるケースでは、裁判所の手続きが管財事件となるのが一般的です。 通常、管財事件になると、予納金として最低でも50万円以上を裁判所に一括で納めなければなりません。
しかし、弁護士に依頼している場合に限り、少額管財という制度を利用できる可能性があります。 少額管財では、弁護士が事前に財産調査等を行っていることを前提に、予納金を20万円程度まで抑えられます。
自分で手続きをする「本人申立て」では少額管財が適用されず、高額な予納金が必要になります。弁護士に破産手続きを依頼したほうが、トータルの支出を抑えられる可能性があるのです。
自己破産の手続きを依頼する際の弁護士費用の相場

自己破産の手続きを依頼する際の弁護士費用は、手続きの種類によって相場が異なります。2つのケースを例に弁護士費用の相場を見てみましょう。
同時廃止事件の場合
財産が少なく、借金の原因に特段の問題がない場合に適用される「同時廃止事件」であれば、弁護士費用の相場はおよそ30万円から50万円程度です。 破産管財人が選任されないことや、手続き期間が3〜4ヶ月程度と短く済むことから、費用が比較的安く設定されています。
ただし、手続きをする際は、別途裁判所に納める実費が必要です。主な費用と金額は以下のとおりです。
- 申立手数料(収入印紙代):約1,500円
- 予納郵券(切手代):3,000円〜5,000円
- 官報公告費:1万円〜1万9,000円
自身のケースが同時廃止に該当するかどうかは、資産状況などをもとに裁判所が判断します。事前に弁護士に相談し、破産手続きがどのような扱いになる見通しを立てておくとよいでしょう。
管財事件の場合
一定以上の資産がある場合や、浪費・ギャンブルによる破産といった免責不許可事由がある場合は「管財事件」として扱われます。 この場合の弁護士費用は、業務の複雑さによって変わり、40万円から80万円程度となる傾向にあります。さらに、裁判所へ納める予納金として、50万円以上の金額がかかります。
弁護士を代理人として申し立てて「少額管財」を利用できれば、少額管財が利用できる場合、予納金が通常より抑えられる可能性があります。 弁護士費用と予納金をあわせても、総額60万円〜80万円程度に抑えられる可能性が高いでしょう。
管財事件に該当するケースであれば、自分で申し立てるよりも弁護士に手続きを依頼したほうが、手間もコストも省きつつスムーズに手続きを進められるでしょう。
費用が払えない場合の対処法
手元に資金がなくても、法律事務所や弁護士事務所では「費用の分割払い(積立金制度)」に対応している場合があります。 受任通知により直接の取り立てが減るため、これまで返済に充てていたお金を弁護士費用の積み立てに回せば、費用を無理なく用意できるでしょう。
また、収入と資産が以下の基準を満たす場合は法テラス(民事法律扶助)を利用できる可能性があります。

出典:日本司法支援センター法テラス「弁護士・司法書士費用等の立替制度のご利用の流れ」
法テラスは、弁護士費用を立て替えてもらう代わりに、利用者は法テラスに対して月額5,000円〜1万円程度の分割返済を行うものです。弁護士に相談する際に、あわせて分割払いや法テラスの利用可否についても相談しておきましょう。
弁護士に依頼して自己破産手続きをする流れ

弁護士に依頼して自己破産をする際は、以下の手順で手続きを進めていきます。
それぞれのステップでどのようなことが行われるのか、解説します。
破産手続きについてより詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
破産手続きの流れは?費用相場や注意点などをわかりやすく解説 | 千代田中央法律事務所
1. 初回相談をして委任契約を結ぶ
まずは法律事務所の無料相談を利用し、借金額や資産状況、借入の理由などを弁護士に詳しく相談します。 破産に至った要因や現状の資産など、ネガティブなことも包み隠さず正直に話せば、弁護士も事情に即した方針を提案してくれるでしょう。
債務問題を解決する方法として自己破産が適した手段であると判断し、費用や方針に納得できた場合は、弁護士と委任契約を締結します。この契約締結をもって、弁護士が正式に破産手続きを代行してくれます。
2. 債権者に受任通知が送付される
委任契約後、弁護士は速やかに受任通知を債権者に送付します。 通知が到達した時点で、直接の取り立ては法的に制限されます。また、借金の返済自体も一時的にストップする判断をしやすくなるため、家計の収支を見直し、生活基盤を整える準備期間に入りましょう。
このときに、弁護士費用や裁判所への予納金としていくら捻出できるか確認し、必要に応じて弁護士に相談しておくと、金銭トラブルを防げます。
3. 申立書類を作成して裁判所に提出する
受任通知が送付された後は、裁判所に提出する申立書と添付書類の準備を進めます。 住民票、給与明細、預金通帳の写しといった資料を用意したり、家計収支表を作成したりします。
重要なのは「資産を隠さないこと」と「正直に申告すること」です。資産を隠したり虚偽の報告をすると、免責が認められない可能性があります。
書類が整い、予納金などの費用積立が完了すれば、弁護士が管轄の地方裁判所へ申立書を提出します。
4. 裁判所との面談を行う
申立書の提出後、裁判官や破産管財人との面談(審尋)が行われます。同時廃止事件の場合は免責審尋、管財事件の場合は管財人面談や債権者集会への出席が必要です。
ただし、基本的には代理人である弁護士が同席し、サポートをしてくれます。誠実に質問に答える姿勢を示せば、免責決定の可能性も高まるでしょう。
5. 免責許可決定が行われる
調査の結果、問題がないと判断されれば、裁判所から免責許可決定が出されます。免責許可決定後、手続きを経て数週間〜1ヶ月程度で確定することが多いです(事案により前後します)。
また、破産手続き開始後は一部の資格や職業が制限されますが、免責許可の決定が確定することで復権し、制限が解除されます。
自己破産に強い弁護士の選び方

自己破産に強い弁護士と契約するには、自己破産の解決実績や費用体系、丁寧な説明をしてもらえるかどうかなどを比較する必要があります。
自己破産手続きを依頼すべき弁護士の選び方を解説します。
自己破産の解決実績が豊富か
自己破産の実務経験や「申立てを行う地元の地方裁判所の運用に精通しているかどうか」は、弁護士に依頼する際によく見ておきたいポイントです。
管財事件と同時廃止の振り分け基準や、少額管財制度の利用要件には、裁判所ごとに独自の運用が存在することもあります。地元の裁判所の運用に詳しい弁護士であれば、少額管財として扱えるかどうかを判断してくれるため、予納金の負担を減らせるケースがあります。
費用体系が明確か
弁護士費用が「総額でいくらかかるのか」が明確かどうかも、チェックしておきましょう。 基本料金が安く見えても、後から事務手数料や日当などの追加請求が発生すると、想定以上の金額になるケースがあります。
初回の無料相談で、実費を含めた総額の見積もりを提示してもらい、それぞれの費用を比較しながら決めるとよいでしょう。
リスクやデメリットを丁寧に説明してくれるか
自己破産のメリットばかりでなく、リスクについても説明があるか確認しましょう。自己破産をすると、以下のようなデメリットも存在します。
- クレジットカードが作れなくなる
- 官報に掲載される
- 特定の職業に就けなくなる
具体的なリスクとそれに対する対策を提示し、不安な点にも誠実に答えてくれる弁護士に依頼すれば、免責の可能性も高まるでしょう。
このほかのデメリットについてより詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
自己破産後の生活は何が変わる?財産・家族・仕事への影響と乗り越え方 | 千代田中央法律事務所
自己破産で所有している車はどうなる?ローンの有無による違いを解説 | 千代田中央法律事務所
自己破産の手続きにおける弁護士に関するよくある質問

自己破産の手続きと弁護士に関する質問や疑問をまとめました。弁護士選びや破産検討時の参考にしてください。
Q. 破産管財人の弁護士は依頼した弁護士とどう違うのですか?
Q. 司法書士と弁護士のどちらに破産手続きを依頼すべきですか?
Q. 破産管財人の弁護士は依頼した弁護士とどう違うのですか?
A. 依頼した弁護士(申立代理人)は、自身の味方になってくれる立場です。一方、破産管財人は、裁判所から選任される「中立的な立場の調査役」です。
破産管財人の役割は、財産調査や免責不許可事由のチェックをすることです。申立代理人の弁護士は、破産管財人とのやり取りで、適切なフォローや代弁をしてくれる立場にあります。そのため、両者は同じ弁護士であっても、役割が異なるのです。
より具体的に違いを知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
破産管財人は弁護士が担当する!選任方法や業務内容、注意点を解説 | 千代田中央法律事務所
Q. 司法書士と弁護士のどちらに破産手続きを依頼すべきですか?
A. 自己破産手続きにおいては、弁護士に依頼するほうがよいでしょう。自己破産は地方裁判所で扱われるため、司法書士には代理人として裁判所手続に同席・対応できない範囲があります。
そのため、裁判所対応を本人が求められる場面が出やすく、弁護士に依頼するメリットが大きいといえます。
また、司法書士への依頼は実質的に本人申立て扱いとなるため、少額管財制度が適用されず、高額な予納金が必要になる可能性も高いです。総額の費用面でも、弁護士に依頼するのが望ましいでしょう。
まとめ

弁護士に破産手続きを依頼すれば、取り立てが止まるため精神的に安定した状態で手続きに臨めます。また、少額管財制度の適用が可能なケースでは、費用も抑えられます。コストを抑えつつ専門的な手続きを代行してもらえるため、生活再建に集中できるでしょう。
千代田中央法律事務所では、自己破産や債務整理に関する相談を受け付けています。初回は無料相談のため、現状や破産を検討する理由など、お気軽にご相談ください。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

