「会社の解散と廃業にはどのような違いがあるのだろう?」と疑問をお持ちの経営者の方もいるのではないでしょうか。この2つは、混同しやすい言葉ですが、法的な意味は異なります。
この記事では、会社における解散と廃業の違いに加えて、必要な費用とメリット・デメリットなどを解説します。自社の状況を整理し、次のステップへ進むための判断材料としてください。
会社の解散と廃業の違い

会社を畳む際に混同しやすい、解散と廃業の法的な意味と経営上の位置づけを解説します。
両者は事業を終える際に出てくる言葉ですが、法的な意味合いは明確に異なります。
解散:法人格を消滅させる法的手続き
解散とは、会社の法人格を法的に消滅させるための清算手続きを開始する、会社法で定められた法律行為です。
法人は法律にもとづき設立されるため、活動をやめても登記上・税務上は存在し続け、義務も残ります。
株式会社を畳む場合、株主総会の特別決議を経て、原則2週間以内に法務局へ解散登記と清算人の選任登記をおこなわなければなりません。
この登記が完了すると、会社は営業活動を停止し、清算会社となります。
廃業:事業活動の停止(法人格は残る場合あり)
一方、廃業とは経営者が事業活動の停止を決定することや、その状態を指す包括的な言葉であり、法律用語ではありません。
廃業の具体的な法的手段として、前述の解散や、法人格を残したまま活動を停止する休業などがあります。
経営者は自社の財務状況(資産超過か債務超過か)や事業再開の可能性を考慮し、解散や休業などの具体的な手続きを選択する必要があります。
会社の解散・廃業と混同しやすい用語解説

解散や廃業と似ていますが、法的な意味や選択すべき状況が異なる用語を解説します。
それぞれの違いを把握しておきましょう。
倒産
倒産とは、資金繰りの悪化や債務超過により、事業継続が不可能になった経済的な状態を指す言葉で法的な手続き名ではありません。
資産超過でおこなう自主的な廃業(解散)とは異なり、倒産は資金ショートなどで経営が行き詰まった状態を指すニュアンスが強いでしょう。
破産
破産とは、支払不能や債務超過に陥った会社が裁判所の監督下ですべての財産を清算し、法人格を消滅させる法的な倒産手続きのひとつです。
会社の資産で負債を返済しきれない債務超過の場合、経営者判断での財産整理は公平性を保てないため、裁判所が選任した破産管財人が中立的に財産整理をおこないます。
法人破産については、以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
法人破産とはどういう手続き?費用相場やメリット・デメリット、スケジュールを解説 | 千代田中央法律事務所
休業
休業(または休眠)とは、会社の法人格を存続させたまま、事業活動だけを一時的に停止することです。
解散が法人格の消滅を目指すのに対し、休業は法人格を維持する点が大きな違いです。
たとえば、経営者の健康問題や、将来の再開を見越して許認可を維持したい場合に選択されます。
閉店
閉店とは、複数の店舗や事業所のうち特定のものだけを閉鎖することで、会社全体の活動を停止する廃業や解散とはまったく異なります。
これは経営戦略上の選択と集中の一環であり、会社は事業を継続するため、解散登記や清算手続きは不要です。
最後の1店舗を閉める状況であれば、実質的に廃業と同じ意味合いになります。
閉業、閉店については、以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
閉業とは?閉店や廃業との違い・閉業の理由や必要な手続きなどを解説 | 千代田中央法律事務所
清算
清算とは、解散した後に続く、法人格を消滅させるための具体的な財産整理プロセスそのものを指します。解散と清算は、セットとなる一連の流れであることを覚えておきましょう。
解散登記をおこなうと、会社は清算会社となり、資産の現金化や債権回収などの業務をおこないます。最終的に残った財産(残余財産)を株主に分配する、という業務プロセス全体が清算です。
会社の解散・廃業(清算)の流れ

実際に会社を解散し、廃業に至るまでの具体的な手続きの流れを解説します。
手続きのより詳しい流れについては、以下の記事もあわせて参考にしてみてください。
廃業手続きの流れと必要書類│法人、個人事業主の違いや適切な相談先について | 千代田中央法律事務所
1. 株主総会で解散を決議する
会社の解散・清算手続きは、株主総会での特別決議によって正式に開始されます。この場で会社の解散と、後始末を担当する清算人の選任を決定します。
事前に税理士などと実態貸借対照表を作成し、資産超過で通常清算を進められるかを確認することが大切です。
2. 法務局で解散・清算人の登記をおこなう
株主総会の決議後、2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ解散登記と清算人選任登記を申請します。
登記は、会社が清算段階に入り、責任者が清算人に変わったことを第三者に公的に知らせるために必須の手続きです。
3. 官報で債権者に解散を知らせる
解散登記後、清算人は遅滞なく債権者保護手続きを開始します。
国の機関紙である官報に解散公告を掲載し、さらに会社が把握している既知の債権者へは個別に書面で通知(催告)をおこないます。
官報公告では2か月以上の申出期間を定める必要があり、この期間は法律で決められており短縮できません。この期間が満了するまで、原則として債権者への弁済や株主への財産分配はおこなえません。官報の掲載費用(約3〜4万円程度が目安)も発生します。
4. 財産目録・貸借対照表を作成する
清算人は、解散日時点での会社の財産状況を詳細に調査し、財産目録および貸借対照表を作成し、株主総会の承認を得ます。
これは、清算手続きを開始するにあたり、会社の全資産と全負債を法的に確定させるためです。この目録は、帳簿上の価値ではなく、実勢価格(時価)で資産を評価し直すことが求められます。
この財産確定にもとづき、事業年度の開始日から解散日までの期間について解散確定申告をおこないます。申告期限は、解散日の翌日から2か月以内となっているため注意しましょう。
もし、この財産調査の段階で債務超過が判明した場合、通常清算は即座に中止し、特別清算や破産の手続きに移行しなければなりません。
5. 債権を回収し残余財産を確定させる
債権者保護手続きの期間(最低2か月)が満了した後、清算人は資産の現金化と債務の弁済を実行します。
具体的には、売掛金などの債権回収、在庫商品や不動産などの資産売却処分などをおこなうのが一般的です。
こうして集めた現金から、税金や社会保険料、従業員給与などを優先しつつすべての債務を弁済します。
6. 残余財産の分配後に清算結了登記をする
すべての債務を弁済し残余財産が確定したら、それを株主の持株数に応じて分配しなければなりません。
この際、株主が受け取る分配額が元々の出資額を超える部分は、株主個人の配当所得とみなされ課税される可能性があります。
分配完了後、清算人は決算報告書を作成し、最後の株主総会で承認を得たのち、法務局へ清算結了登記を申請します。
清算結了後も、清算人は会社の帳簿書類などを10年間保存する義務があることを覚えておきましょう。
会社の解散・廃業にかかる費用の内訳

会社を畳むために総額でいくら必要なのか、費用の全体像を解説します。
資金繰り計画には、何に、いつ、いくら支払うかを正確に把握することが不可欠です。
登録免許税
会社の解散・清算手続きを法務局の登記簿に反映させるために、必ず支払う必要がある国税です。
- 解散及び清算人選任登記:合計39,000円
- 清算結了登記:2,000円
上記合計で、41,000円が必ず発生します。
官報公告費用
解散した事実を官報に掲載し、債権者に名乗り出てもらうために必須の費用です。
会社法で定められた清算人の義務であり、すべての債権者に公平に弁済の機会を与えるためにおこなうもので、省略はできません。
費用は掲載行数によりますが、約30,000〜40,000円が目安です。
専門家報酬(弁護士・税理士など)
法務局への登記申請や、解散確定申告といった特殊な税務申告が必須であり、専門家への依頼が一般的です。
解散・清算結了まで一括して依頼する場合、会社の規模や状況にもよりますが、報酬の目安は数十万円程度 + 登録免許税や官報公告費などの実費となることが多いでしょう。
なお、債務超過で破産手続を選択する場合には、別途「少額管財」「管財事件」といった手続きごとの予納金(裁判所に納める費用)が必要となり、負債総額に応じて20万円〜70万円以上かかるケースもあります。
費用を抑えようと自力で進めると、税務上の落とし穴に気づかず、かえって損をするリスクがあるため注意しましょう。
在庫・設備の処分費用
会社が保有する在庫、機械設備、什器などを現金化または廃棄する際にかかる費用で、総費用を左右しやすい変動費のひとつです。
多くの場合、二束三文での売却か、費用を払って産業廃棄物として処分することになりますが、ものによっては数十万~数百万円の費用が発生することもあります。
事前に専門業者から見積もりを取得し、廃棄した場合は廃棄証明書を必ず保管してください。
賃貸物件の原状回復・退去費用
事務所や店舗、工場を賃借していた場合、契約書にもとづき原状回復費用が発生します。
小規模オフィスでも数十万円、内装を変更した店舗などでは数百万円のケースもあり、敷金だけではまったく足りず、多額の追加費用が発生することもあります。
複数の業者から見積もりを取得し、費用を正確に計画に計上しましょう。
会社を解散・廃業するメリット

解散・廃業という決断がもたらすメリットについて解説します。
赤字経営や後継者不在で悩む経営者にとって、廃業は経営者自身と関係者の未来を守るための戦略的撤退となり得る側面があります。
経営のプレッシャーから解放される
会社を解散・廃業する大きなメリットのひとつは、経営者が日々直面している精神的・経済的プレッシャーから法的に解放されることです。
法的に会社を終結させることで、これらの重責から解放されます。精神的な健康を取り戻し、次の人生へ踏み出すための基盤を確保することにつながるでしょう。
倒産や破産リスクを回避できる
会社の資産が負債を上回っている資産超過の段階で、経営者が自ら解散を選ぶことで、資金ショートや債務超過による倒産・破産を回避できます。
破産手続きに移行すると、経営権は裁判所が選任した破産管財人に移り、経営者の意思が反映されない可能性が高くなります。
資産に余力があるうちに通常清算を開始すれば、経営者の主導権のもとで計画的に財産整理を進めることが可能です。
債務や契約を円満に整理できる
通常清算を選択することで、従業員や取引先、金融機関との契約を法的に正しくかつ円満に整理できる点もメリットです。
税金や社会保険料の支払いを放置したまま事業を停止すると、代表者個人への督促や損害賠償請求など、深刻なトラブルに発展する可能性があります。
通常清算では債権者保護手続きが義務付けられており、すべての債務を公正に弁済するプロセスが保証されます。
代表者の個人保証解除の可能性がある
中小企業の経営者にとって、金融機関からの借入金に対する個人保証や個人資産の担保提供は懸念事項です。
通常清算を選択できる資産超過の状態であれば、会社の資産を売却・現金化して借入金を全額弁済できます。
会社の主たる債務が法的に全額弁済されれば、それに付随する個人保証の義務も原則として消滅し、経営者は私財を失うリスクから解放されるでしょう。
会社を解散・廃業するデメリット

解散・廃業という選択をした場合に発生するデメリットについて解説します。
メリットがある一方で、事業活動を完全に停止することによる影響は少なくないでしょう。
従業員を解雇しなければならない
解散・廃業は事業活動の完全停止を意味するため、雇用している従業員を全員解雇せざるを得ません。
事業そのものが消滅し、従業員の働く場所が法的に失われるため、会社都合での整理解雇となります。
会社の解散は法的に正当な解雇理由とされますが、解雇日の30日以上前に解雇予告をおこなうか、不足日数分の解雇予告手当を支払う義務が発生することを理解しておきましょう。
ブランドの信用がなくなる
会社を解散・清算すると、その法人格と共に、長年築き上げてきた社名(ブランド)や取引先・顧客との関係や社会的な信用も消滅する可能性があります。
法務局の登記簿が閉鎖され、法的に会社が存在しなくなるため、取引先や顧客との関係も法的に断絶されます。
これまで築いた無形の資産もすべて失いたくない場合は、M&Aの検討も視野に入れるとよいでしょう。
技術やノウハウを引き継げなくなる
解散・清算の手続きにより、従業員が持つ技術や特許、独自のノウハウといった無形資産は評価されずに廃棄されます。
なぜなら、通常清算はあくまで財産整理が目的であり、事業そのものの価値を評価して引き継ぐプロセスではないからです。
もし自社に他社にはない技術や優良な顧客基盤があるなら、廃棄せずに済む方法を検討するのも有効な手段でしょう。
手続きに費用がかかる
会社を畳む際は、設立時と同等か、それ以上の費用と時間がかかると理解しておきましょう。法定費用や専門家報酬、事務所の原状回復費など多くの実費が発生します。
赤字だから辞めると決断しても、辞めるための資金(清算費用)が手元になければ、清算手続き自体を開始できません。清算費用をまかなえる体力が残っているうちに、決断することが必要なケースもあります。
まとめ

会社を法的に終結させる作業は、設立時以上に複雑な法務や税務、そして関係者への配慮が求められます。
大切な視点は、判断を先延ばしにして資金が尽き、破産という受動的な選択しか残らなくなる事態を避けることです。
自社の実態の資産と負債を正確に把握し、解散・清算だけでなく、休業やM&A、事業譲渡といった他の選択肢も含めて、早期に弁護士などの専門家へ相談することがおすすめです。

京都大学経済学部卒業、同大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。
千代田中央法律事務所を開設し、スタートアップの資本政策・資金調達支援、M&Aによるエグジット・成長戦略の専門職支援と法人破産手続き、事業再生手続きによる再生案件を取り扱う。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動経験あり。

